セルフマネジメントとは、自己管理、自己統制といった意味を持ちます。具体的には、自分自身の時間や行動、感情、能力、目標などを自己管理し、自己改善や自己成長に向けたアクションを積極的に行うことを指します。
IT化・自動化等が進むなか、ホワイトカラーとして働くビジネスパーソンには、生産性や集中力を高め、創造性を発揮することが求められています。また、普及するリモートワークにおいても組織メンバー一人ひとりの自立が求められており、セルフマネジメントを高めることが重要です。
記事では、セルフマネジメントで得られる効果を確認し、セルフマネジメント力を高める方法を解説します。
<目次>
セルフマネジメント(自己管理)とは?
セルフマネジメント(self-management)とは自己管理のことで、スケジュールやタスク管理や行動、肉体・精神的安定の維持、感情のコントロールといった総合的な管理を意味します。つまり、自分自身のパフォーマンスを高めて成果を出すために、自分自身を管理することです。
セルフマネジメントを行なうことは、仕事における目標達成や生産性の向上、ストレス管理等に直結します。労働人口の減少やグローバル化による世界中との競争、ITによる自動化等が進むなかで、企業が生き残るためには社員一人ひとりの生産性を上げ、競争力を高めることが必要です。
そのため、近年は社員のセルフマネジメント力を高めようと多くの企業が取り組みを行なっています。
セルフマネジメントを身に付けて得られるもの
セルフマネジメント力が身に付くと、自分の感情や周りの意見に惑わされることがなくなるため、どのような状況でも的確でぶれない判断ができるようになります。また、自分でモチベーションを維持し、高い集中力を保つことも可能です。生産性UPはもちろん、時間やメンタル、コミュニケーションといった面でも安定が得られます。
以下は、セルフマネジメントができている人とできていない人の主な違いです。
できている人の特徴
- 自分の時間とパフォーマンスをコントロールできている
- 自分の集中力を高めたり、モチベーションを上げたりする技術を持っている
- 目標達成に向けた予期せぬ課題やハードルにも柔軟に対応できる
できていない人の特徴
- スケジュールやタスクが管理できない
- 外部からの影響を受けやすい
- ストレスを抱えやすい
- 感情やモチベーションに左右される
- 状況に追われて後手後手で動く
セルフマネジメントを身に付けるための方法
セルフマネジメントはトレーニングによって誰でも高めることが可能です。ここでは、セルフマネジメントを効果的に高める方法を7つご紹介します。
①自分を知る
セルフマネジメントを高いレベルで行なうためには、自分を深く理解することが大切です。自分の強みや価値観、信念、できること・できないこと等を明確にして理解することで、自分を統制しやすくなります。
自分の強みや特徴を理解するためには、自分の特徴やパターンに仮説を立て、それをもとに行動、検証を行なっていくのが効果的です。また、新しい役割やルールが求められる場面や大きな変化があったとき、日常の何気ない出来事からも新たな発見や気付きを得ることができます。
②目標を明確に設定する
自分が携わる業務を理解したうえで、ゴールや目的を明確にします。ゴールや目的が明確になれば自分のやるべきことも明確になり、時間やパフォーマンスをコントロールしやすくなります。
逆に、自分がなすべきことやゴール、役割や期待されている成果が明確でないと、優先順位を付けることができず、周囲の状況や依頼等に振り回されることになるでしょう。
③タスクブレイクの力を身に付ける
ゴールや目的を達成するまでの流れを考え、やるべき行動を洗い出すことがタスクブレイクです。タスクブレイクの力があると、戦略や施策が決まったあと、しっかりとタスクへと落とし込むことができるため、物事を前に進めることができます。
また、ゴールや実行の流れを想像して、漏れなく拾い上げていくことで、業務の抜け漏れや余計な中断等も生じず、業務の生産性を高めることができます。
④時間を管理する
セルフマネジメント力は、時間を管理する力でもあります。スケジュール管理と時間管理は似ていますが異なります。予定管理ではなく、時間管理こそがセルフマネジメントでは重要です。私たちに与えられた共通の資源である1日24時間、時間を有効に使うスキルを高めましょう。
優先度や重要度をもとに、「仕事を納期に間に合わせる」「重要だが期限がない仕事を確実に前に進める」ことで、自らの生産性を高めていきましょう。
⑤仕事にオーナーシップを発揮する
同じ仕事でも、企業から仕事をさせられている状態と、自分から仕事をしている状態とでは生産性が大幅に異なります。自分事として取り組むことで、課題やハードルに対しても前向きに取り組むことが可能です。
仕事に対する意識の持ち方、また目標に意味付けして自分事として取り組むスキルを身に付けること等を通じて、仕事にオーナーシップを発揮しましょう。
⑥成功体験を積み重ね自信を付ける
成功体験を積み重ねることで私たちの自己効力感が高まります。自己効力感を高めることで自分に自信が持てるようになり、さまざまな仕事に積極的に取り組むことが可能になります。
自己効力感はパフォーマンスの向上にも効果的なので、成功体験を定期的に振り返るようにしましょう。成功体験は大きなものである必要はありません。自分との小さな約束を守ることを積み重ねていくことが自己効力感の向上に有効です。
⑦自分自身をケアする
セルフマネジメントでは、自分の体調や疲労、ストレスに目を向け、計画的に休みを取ったり、ストレスを解消したりすることが大切です。疲労やストレスを放置すると突然の体調不良で仕事に悪影響をおよぼす可能性があります。
また、心身の状態は仕事に大きく影響をおよぼします。一流のスポーツ選手等と同じように、自分の心身を良い状態に保つための体調管理やストレス管理、習慣作りが重要です。
セルフマネジメント力の向上に役立つ手帳術とおすすめ書籍
セルフマネジメント力を高めるためには手帳の活用や書籍で学ぶことが有効です。本章では、セルフマネジメント力を高める手帳術とおすすめの書籍をご紹介します。
セルフマネジメント力を高める手帳術
手帳術は、手帳を使って自分の行動・情報・思考を管理する方法です。優れた手帳は単なるスケジュール・タスク管理ツールではなく、長期的な目的や目標、夢やビジョン、自分の価値観、役割等を明確にできるツールです。
中長期の目標や価値観と、短中期でのゴールやタスク管理、習慣形成をリンクさせることが、セルフマネジメント力の向上につながります。
以下では、単なる予定とタスク管理ではなく、セルフマネジメント力の向上につながる手帳をご紹介します。デジタル全盛期の時代ですが、セルフマネジメント力を高めるうえでは、あえて「紙に手書きする」こともおススメです。
「7つの習慣®」の考え方に基づくセルフマネジメントを実現するシステム手帳です。中長期における目標や価値観、重要度と優先度に基づく時間管理やタスク管理、好ましい習慣形成等、セルフマネジメント力の向上に役立ちます。
GMOグループの創業者である熊谷氏が提唱する手帳で、やりたいことリストや未来年表を書き込む「夢手帳」と、夢の実現に向けた行動を管理する「行動手帳」、夢をかなえる思考をサポートする「思考手帳」があります。
原田メソッドを開発した原田隆史氏が監修した手帳で、ウィークリー&マンスリーという構成になっているセルフマネジメント力向上につながる手帳です。日々の目標設定と振り返りを通じて自己成長につなげる構成が特徴的です。
セルフマネジメント力を高めるおすすめ書籍
書籍でもセルフマネジメントを高めるさまざまな方法が紹介されています。そのなかでも読みやすく、効果的な方法を紹介しているのが以下の9冊です。
全世界4,000万部を超えるビジネス書のベストセラーであり、人生哲学の定番としても有名です。セルフマネジメント力の向上を支える主体性の発揮、周囲との人間関係、人間性の磨き方等、人間的な自立と周囲と相乗効果を発揮する人間関係の作り方に関する7つの習慣が解説されています。
成果をあげるために必要な時間の管理、貢献、自分の強み、優先順位、意思決定を解説したドラッカーの名著です。
タイトルのような「経営者」だけに限定された内容ではなく、すべての知識労働者、ホワイトカラー、ビジネスパーソンに役立つ内容です。ドラッカーの書籍のなかでも非常に読みやすく、社会人初心者にもおススメです。
仕事に対する心構えが示されている書籍で、時間の使い方や思考習慣など、セルフマネジメントにつながる内容が多く盛り込まれています。ドラッカーの各書籍から「プロフェッショナルとして働く」という内容を抜粋・統合した内容となっています。
人間の行動は4割が習慣であり、良い習慣を増やし悪い習慣を減らすことで人生が好転していくという、習慣のメカニズムを詳述している書籍です。セルフマネジメント力の向上は仕事や思考に関する良い習慣を身に付けることで実現します。個人が習慣を変えるための方法も具体的に解説されています。
1日3時間「変わりたい」と思うよりも、1日5分の行動が人生を変えるという概念のもと、自分の行動に変化を起こす科学的アプローチが紹介されています。
手帳術でも紹介した原田隆史氏の著書です。人生を変えるには意識を変える必要があり、意識はちょっとした生活習慣を見直すことで大きく変わるという、基本的なことを実践的に解説している書籍です。セルフマネジメント力を高める原田メソッドの基本的な考え方が良くわかります。
京セラの創業であり、日本航空(JAL)立て直しの功労者である稲森和夫氏の名著です。
「嘘をついてはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」「一生懸命働く」等、人としての規範をあらためて見直せる一冊。セルフマネジメント力を向上させる根っことなる“生き方”のヒントが得られます。
日本の近代経済をけん引した渋沢栄一の著書です。孔子の生き方とされる論語を日常生活や仕事にどう応用すれば良いかを解説した一冊です。人生への取り組み方をはじめ、自分の強みを伸ばす工夫や良好な人間関係の築き方等が書かれています。
「まず相手に奉仕し、それから相手を導く」という奉仕するリーダーシップを提唱している書籍。セルフマネジメントにもつながる新たなリーダーシップのあり方を学べる一冊です。
まとめ
セルフマネジメントとは、自分自身のパフォーマンスを高めるための自己管理です。ホワイトワーカー(知識労働者)の比率が高まっており、また、リモートワークなどの自立性が求められる働き方が浸透するなかで、社員一人ひとりのセルフマネジメントを高めることが、組織全体の生産性アップにつながります。
セルフマネジメントは、自己理解、目標設定、時間管理、タスクブレイク、セルフケアなど、いくつかのスキルや習慣の組合せです。トレーニングすることで鍛えることができますので、ビジネスパーソンにとってセルフマネジメント力の向上は最もおススメの自己投資だといえるでしょう。
セルフマネジメント力の向上につながる手帳を活用したり、書籍を読んだりすることも効果的ですので、ぜひ記事を参考に積極的に取り入れてください。