セルフマネジメントとは、自己管理、自己統制といった意味を持ちます。具体的には、自分自身の時間や行動、感情、能力、目標などを自己管理し、自己改善や自己成長に向けたアクションを積極的に行う、立てた計画通りに実行する。新しい習慣を作ることを指します。自分自身を管理する能力は、人生をコントロールすることにつながります。
IT化・自動化等が進むなか、ホワイトカラーとして働くビジネスパーソンには、生産性や集中力を高め、創造性を発揮することが求められています。また、普及するリモートワークにおいても組織メンバー一人ひとりの自立が求められており、セルフマネジメントを高めることが重要です。しかし、セルフマネジメントは簡単ではありません。誘惑に負けたり、計画倒れしたり、習慣化できなかったり。そんな経験をしたこともあるかも知れません。
本記事では、セルフマネジメントへの理解を深めるとともに、実践の方法論を解説します。セルフマネジメントを身に付けたい方は、ぜひご一読ください。
<目次>
- セルフマネジメント(自己管理)とは?
- セルフマネジメントの重要性が増す3つの理由
- セルフマネジメントを身に付けて得られるもの
- セルフマネジメントの3要素
- セルフマネジメントはなぜ難しいか
- セルフマネジメントを成功させる22の方法
- セルフマネジメント力の向上に役立つ手帳術とおすすめ書籍
- まとめ
セルフマネジメント(自己管理)とは?
セルフマネジメント(self-management)とは自己管理のことで、スケジュールやタスク管理や行動、肉体・精神的安定の維持、感情のコントロールといった総合的な管理を意味します。つまり、自分自身のパフォーマンスを高めて成果を出すために、自分自身を管理することです。
セルフマネジメントを行なうことは、仕事における目標達成や生産性の向上、ストレス管理等に直結します。労働人口の減少やグローバル化による世界中との競争、ITによる自動化等が進むなかで、企業が生き残るためには社員一人ひとりの生産性を上げ、競争力を高めることが必要です。そのため、近年は社員のセルフマネジメント力を高めようと多くの企業が取り組みを行なっています。
セルフマネジメントの重要性が増す3つの理由
人生100年時代と言われ、リモートワークやキャリア自律といったキーワードも飛び交う中、セルフマネジメントの重要性は増しています。リモートワークで成果をあげるにも、キャリア形成をするにも、健康寿命を長く保つにも、セルフマネジメントは必須です。詳しくご説明します。
1.リモートワークの普及
コロナ禍以降、リモートで仕事をする人が増えてきました。リモートワークでは、近くに同僚や上司はいません。サボろうとは思えばいつでもサボれます。誘惑に負けずに仕事ができるかどうか、セルフマネジメントが鍵となります。
セルフマネジメントできない人はリモート中にサボるようになり、当然、生産性は下がります。社内での評価も悪くなるでしょう。このような人は、リモートには向きません。
反対に、リモートで成果を出せる人は可能性が広がります。通勤時間がない分、副業や資格勉強をする時間が確保できます。セルフマネジメント能力のある人とない人の差がますます広がっていくでしょう。
2.キャリア形成
セルフマネジメントは、キャリア形成にも大きな影響を与えます。帰宅後に勉強する人とYouTubeを見てダラダラと過ごす人。10年後、20年後、持っている資格やスキル、成果には大きな差がつくでしょう。
仕事のパフォーマンスにもセルフマネジメント能力の差が出ます。段取りよく仕事をテキパキとこなす人と先延ばしにして仕事を溜める人とでは、生産性に大きな違いが生まれます。どちらのキャリア形成がうまく行くかは、火を見るより明らかです。
キャリア形成は、就職から始まっているわけではありません。学生時代からすでに始まっています。学校から帰ってすぐに宿題を終わらせ自習する子、ゲームに熱中して宿題もやらない子。最終的には、学歴に大きな差がつきます。就職活動への取り組み見方も同様です。セルフマネジメント能力の差は複利的に成果の差となっていくでしょう。
3.人生100年時代
積み重ねてきた生活習慣によって、将来の健康状態は大きく異なります。自分の足で歩けなくなるお年寄りがいる一方で、亡くなる数日前まで自分の足で歩くお年寄りもいます。自分の生活習慣を振り返って、どちらになると思いますか?
栄養バランスの取れた食事に適度な運動、十分な睡眠が健康には大切だと誰もが知っています。にもかかわらず、暴飲暴食や運動不足、睡眠不足に陥っている人が多くいます。セルフマネジメントの問題です。
さらに言えば、数十年後に年金支給がどうなっているかは定かではありません。平均寿命が伸びたことを理由に、支給年齢が70歳、75歳、80歳と引き伸ばされる可能性も十分に考えられます。もし働けない健康状態であれば、お金の心配をしながら余生を過ごすことになります。人生100年時代だからこそ、セルフマネジメントが重要なのです。
以上のように、個人にとっても学生時代から社会人、そして余生までがセルフマネジメントによって決まります。
セルフマネジメントを身に付けて得られるもの
セルフマネジメント力が身に付くと、自分の感情や周りの意見に惑わされることがなくなるため、どのような状況でも的確でぶれない判断ができるようになります。また、自分でモチベーションを維持し、高い集中力を保つことも可能です。生産性UPはもちろん、時間やメンタル、コミュニケーションといった面でも安定が得られます。
以下は、セルフマネジメントができている人とできていない人の主な違いです。
セルフマネジメントできている人の特徴
- 自分の時間とパフォーマンスをコントロールできている
- 自分の集中力を高めたり、モチベーションを上げたりする技術を持っている
- 目標達成に向けた予期せぬ課題やハードルにも柔軟に対応できる
セルフマネジメントできていない人の特徴
- スケジュールやタスクが管理できない
- 外部からの影響を受けやすい
- ストレスを抱えやすい
- 感情やモチベーションに左右される
- 状況に追われて後手後手で動く
セルフマネジメントの3要素
セルフマネジメントは、3つの要素で成り立っています。健康・感情・行動です。それぞれが相互作用しています。健康は感情と行動に影響を与え、感情は健康と行動に影響を与え、行動は感情と健康に影響を与えます。ひとつずつ解説していきましょう。
1.健康
心身の健康状態は、感情や行動に顕著に表れます。身体が不調なら、集中力や意志力、自制心は保てません。当然、セルフマネジメントもままなりません。
健康的に人生を送るためにはセルフマネジメントが必要であると同時に、セルフマネジメントをするためには心身の健康が必要なのです。卵が先か鶏が先かといった話に聞こえますが、健康を損ねていたら、すべてのセルフマネジメントは上手くいきません。
想像してみてください。寝不足な人が、まともな仕事や運動ができるでしょうか?まずは健康であること。体調を万全にできれば、行動や感情をマネジメントするエネルギーを保てます。
2.感情
感情は、身体の健康状態に影響を与えます。心配事で食欲が減退した。あまりの腹立たしさに眠れなくなった。あなたも経験があるのではないでしょうか。イライラは、高血圧、心臓疾患のリスクを高めます。ストレスは心拍数を上昇させ、筋肉を緊張させ、免疫システムを弱めます。その逆に、よく笑って楽しい感情に満たされていれば、免疫システムは強まります。
感情は、行動にも影響を与えます。機嫌が悪い時は誰しも攻撃的になり、悲しみに暮れている時は引きこもりたくなります。仕事で大きなミスをして落ち込んでいる時は、何もする気が起きません。このように、感情は健康や行動に影響を与えています。
3.行動
「やる気があるから行動する」と考える人は多いでしょう。しかし、脳科学では、「行動するからやる気が出る」ということが分かっています。
たとえば、腕立て伏せ30回のつもりが、やり始めたら100回やっていた。10分間の勉強のつもりが、やり始めたら1時間も経っていた。そんな経験、ありませんか?これは、行動したことによってやる気が高まったからです。
最終的に、セルフマネジメントは行動に実現するものです。計画通りに仕事をするのも、規則正しく生活するのも、健康的な食事をするのも、運動をするのも、人間関係を充実させるのも、すべては行動です。こうした活動の積み重ねが、健康や感情に影響を与えます。行動をどれだけコントロールできるかが、健康や感情を左右します。
セルフマネジメントはなぜ難しいか
セルフマネジメントの重要性が分かっていても、なかなか実践できないのが人間です。「ダイエットのため甘いものは控えよう」「身体を鍛えるため筋トレを毎日しよう」と意を決したものの、つい甘いものを食べてしまったり、筋トレが3ヶ月と続かなかったりしたことはないでしょうか。
なぜこうもセルフマネジメントは難しいのでしょうか。人間はそう簡単に変われないように、目の前の誘惑に弱くできているからです。詳しく解説します。
1.習慣は簡単には変えられない
人間は習慣の生き物です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に出社し、同じような仕事をし、同じ時間に帰宅をする。こうした生活を誰もがしているはずです。それだけ習慣というのは私たちの生活の基盤となっています。
一度身についた習慣を変えることは簡単ではありません。悪い習慣を変えることは大変ですし、逆にいえば、簡単には変えられないからこそ、良い習慣に大きな価値があるとも言えます。
人間の脳は、未知や変化に対して、不安や抵抗、ストレスを覚えるようにできています。新しい仕事を始める時は、誰もが不安やストレスを覚えます。生活環境が変わるときは不安を感じることもあるでしょう。けれども、不安やストレスは段々と軽減されたはずです。これは「慣れた(習慣化した)」状態です。
習慣化された活動は、以前よりもエネルギーをかけずに行え、快適・安心・安定を感じるようになります。そして今度は、その慣れた活動や環境から離れたくないと思うようになります。快適や安心を手放して、不安やストレスを感じることを好む人は滅多にいません。だからこそ、習慣を止めたり、加えたりすることは難しいのです。
2.現在バイアスがある
現在バイアスとは、将来の利益よりも目先の利益を優先してしまう心の癖です。
分かりやすい事例として、1972年に行われた「マシュマロ実験」があります。平均年齢4歳半の子どもたちを対象に、マシュマロを目の前に見せます。「15分後に私が帰ってくるまで食べずに我慢できたら、もう一つあげるね」と伝え、大人が部屋から出ていきます。この15分の間で、我慢できずに食べてしまった子、我慢してもう一つもらった子を40年間追跡調査しました。
結果は、マシュマロを食べずに我慢できた子どもは、我慢できなかった子どもよりも社会的成功を収めている傾向があることが分かりました。
少し我慢すれば、大きな果実が手に入ると知っていながらも、近くにある小さな果実に手を伸ばしてしまう。これが現在バイアスです。
私たちは生活の中で、これと同じことに日々直面しています。今勉強しておけば将来の収入が上がると知りながらも、目の前の娯楽に走ってしまう。今甘いものを我慢すれば痩せられると知りながらも、お菓子に手が伸びてしまう。
人類の祖先は200万年間の狩猟採集時代、その日暮らしをしており、将来の利益のために何かをするという機会はほとんどありませんでした。機会というよりも、必要そのものがなかったのです。
約1万年前から農耕時代が始まり、「未来の利益のために投資をする」必要性が高まってきました。とはいえ、人類は未だに狩猟採集時代の脳を引き継いでおり、未来のための投資よりも目の前の利益を優先してしまうのです。狩猟採集時代から備わっている心理バイアスは、そう簡単には克服できません。
3.利益がすぐに得られない
現在バイアスをなんとか乗り越えて、苦痛を伴う活動、未来への投資を頑張ろうとするのは、その先に大きな利益があると考えるからです。とはいえ、頑張るにも限度があります。効果や利益が実感できなければ、モチベーションは続きません。
もし、筋トレした日に目に見えて筋肉が増えたら、誰もが面白がって続けるでしょう。ダイエットも、ケーキを我慢した日に体脂肪がハッキリと落ちたら、喜んで続ける人が増えるでしょう。しかし現実には、効果が表れるまでに一定の時間がかかります。だからこそ、効果が表れるまでモチベーションが続かないのです。
確実に効果があるとしても、成果を得られるのが遠い未来であれば、先ほど紹介した現在バイアスが働き、得られる効果(価値)は小さく見えてしまいます。そして、「後でやろう」「明日やろう」「今度やろう」と先延ばしするようになるのです。
先延ばしした結果、多くのものを失います。
書籍『人はなぜ先延ばしをしてしまうのか』(著 ピアーズ・スティール)では、以下のデータが紹介されています。
・お金の問題を先延ばしにする人は、教育やキャリアでも先延ばしに陥るケースが多い。
・健康に関する問題を先延ばしにする人は、精神生活、レジャー、行動改善でも先延ばしに陥るケースが多い。
・先延ばし癖のある人の63%は、キャリアにおける成功の程度が半分以下だった。
どうしたら誘惑に負けず、先延ばしせずに済み、習慣化できるのか。これから、その方法について解説します。
セルフマネジメントを成功させる22の方法
セルフマネジメントはトレーニングによって誰でも高めることが可能です。ここでは、セルフマネジメントを効果的に高める22の方法をご紹介します。ぜひ自分にあったものから取り組んでください。
1.自分を知る
セルフマネジメントを高いレベルで行なうためには、自分を深く理解することが大切です。自分の強みや価値観、信念、できること・できないこと等を明確にして理解することで、自分を統制しやすくなります。
自分の強みや特徴を理解するためには、自分の特徴やパターンに仮説を立て、それをもとに行動、検証を行なっていくのが効果的です。また、新しい役割やルールが求められる場面や大きな変化があったとき、日常の何気ない出来事からも新たな発見や気付きを得ることができます。
2.目標を明確に設定する
自分が携わる業務を理解したうえで、ゴールや目的を明確にします。ゴールや目的が明確になれば自分のやるべきことも明確になり、時間やパフォーマンスをコントロールしやすくなります。
逆に、自分がなすべきことやゴール、役割や期待されている成果が明確でないと、優先順位を付けることができず、周囲の状況や依頼等に振り回されることになるでしょう。
3.タスクブレイクの力を身に付ける
ゴールや目的を達成するまでの流れを考え、やるべき行動を洗い出すことがタスクブレイクです。タスクブレイクの力があると、戦略や施策が決まったあと、しっかりとタスクへと落とし込むことができるため、物事を前に進めることができます。
また、ゴールや実行の流れを想像して、漏れなく拾い上げていくことで、業務の抜け漏れや余計な中断等も生じず、業務の生産性を高めることができます。
4.時間を管理する
セルフマネジメント力は、時間を管理する力でもあります。スケジュール管理と時間管理は似ていますが異なります。予定管理ではなく、時間管理こそがセルフマネジメントでは重要です。私たちに与えられた共通の資源である1日24時間、時間を有効に使うスキルを高めましょう。
優先度や重要度をもとに、「仕事を納期に間に合わせる」「重要だが期限がない仕事を確実に前に進める」ことで、自らの生産性を高めていきましょう。
5.仕事にオーナーシップを発揮する
同じ仕事でも、企業から仕事をさせられている状態と、自分から仕事をしている状態とでは生産性が大幅に異なります。自分事として取り組むことで、課題やハードルに対しても前向きに取り組むことが可能です。
仕事に対する意識の持ち方、また目標に意味付けして自分事として取り組むスキルを身に付けること等を通じて、仕事にオーナーシップを発揮しましょう。
6.成功体験を積み重ね自信を付ける
成功体験を積み重ねることで私たちの自己効力感が高まります。自己効力感を高めることで自分に自信が持てるようになり、さまざまな仕事に積極的に取り組むことが可能になります。
自己効力感はパフォーマンスの向上にも効果的なので、成功体験を定期的に振り返るようにしましょう。成功体験は大きなものである必要はありません。自分との小さな約束を守ることを積み重ねていくことが自己効力感の向上に有効です。
7.自分自身をケアする
セルフマネジメントでは、自分の体調や疲労、ストレスに目を向け、計画的に休みを取ったり、ストレスを解消したりすることが大切です。疲労やストレスを放置すると突然の体調不良で仕事に悪影響をおよぼす可能性があります。
また、心身の状態は仕事に大きく影響をおよぼします。一流のスポーツ選手等と同じように、自分の心身を良い状態に保つための体調管理やストレス管理、習慣作りが重要です。
8.睡眠をしっかりとる
セルフマネジメントには、自制心や意志力が必要になります。睡眠不足では理性を最大限に発揮することはできません。
2021年、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、加盟国33ヶ国の中でワースト1位です。同じく、2021年、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の労働生産性は加盟国38ヶ国中27位と低い結果が出ています。睡眠不足が生産性を下げているという研究報告もあります。
忙しいから寝不足になっているのか、寝不足だから忙しくなっているのか。どちらにしても、回らない頭では、仕事のスピードは格段に下がり、残業する羽目になります。そしてさらに睡眠不足になるという悪循環に陥ります。睡眠時間の確保は、最も大切なセルフマネジメントであり、セルフマネジメントするための最重要要素でもあります。
9.一つずつ始める
何か新しいことを始めたい、あるいは悪癖をなくしたいなら、1つずつ変えていくことが大切です。2つ以上の変化を同時に起こさない方がよいでしょう。
人の脳は、ただでさえ変化を嫌います。それが2つ以上となると、大きなストレスとなります。結果的にどちらも成功しなくなってしまいます。たとえば、「定期的に読書する」と「ダイエットのために食事制限をする」の2つを習慣化したいなら、一つができるようになってから、もう一つをしていきましょう。
10.小さく始める
人の脳は変化を嫌います。変化が大きいほど、ストレスは大きくなります。つまり、大きな変化ほど実践の難易度は高くなります。従って、何かを変えたいなら小さく始めることがおすすめです。たとえば、資格勉強なら毎日1時間ではなく、毎日テキストを開くことから始めましょう。そして徐々に15分、20分と増やしていきます。
また、先延ばししそうになったら、「毎日30回している腕立て伏せ、今日は1回だけにする」と、ハードルを下げることも一つです。始めてみると、1回のつもりが気づけば30回やれることも良くあります。
11.午前中に重要事項を、午後に作業する
意志力は、時間ともに消耗していきます。そのため、意志力を伴う重要な決定やクリエイティブな仕事は午前中に済ませ、あまり意志力を伴わない作業的な仕事は午後にすることがおすすめです。
意志力の残量を考慮した仕事配分をすることで生産性を高めることができます。また、意思決定を誤りにくくなるでしょう。
12.誘惑は遠ざける、小さくする、制限する
誘惑への対処は、意志の力ではなく物理的な力を借りることがおすすめです。基本は、「遠ざける」「小さくする」「制限する」です。
たとえば、禁煙をしたいならタバコを遠ざける、吸っている人とは付き合わない、タバコを売っているお店に入らない、taspo(タスポ)を処分するなどです。
散財グセを直したいならクレジットカードに制限をかける、財布の中に今日使う分だけの現金を入れるようにする、給料日になったら一部を定期預金に振り込むか自動引き落としで積立投資するように設定するなどです。
スマホ中毒なら、スマホからアプリを消す、タイムロッキングコンテナを使い、物理的に触れないようにします。食べ過ぎを減らしたいならお皿を小さくするなどが有効です。
このように、意志の力だけに頼らず、物理的な環境を準備することで、誘惑に勝ちやすくなります。
13.満たしてから活動をする
空腹時にスーパーに行くと余分に購入してしまうことが分かっています。お金でも同じです。「貧すれば鈍す」という言葉があるように、貧しているときはまともな判断ができなくなり、さらに状況を悪化させてしまいます。
3ヶ月間無収入でも生活できる程度の貯蓄があれば、誤った判断をしにくいでそう。加えて、貯金をすることによって自制心が鍛えられ、その他の活動でもよい影響がもたらされます。
14.コントロールできないことに意識を向けない
会社の方針、政治問題、流行といった、自分ではコントロールできないことに意識を向けても、エネルギーの無駄使いです。それよりも、自分がコントロールできることに意識を向けてください。
世界的ベストセラー『7つの習慣』(著 スティーブン・R・コヴィー)の第1の習慣では、自分がコントロールできない「関心の輪」には意識を向けず、自分がコントロールできる「影響の輪」にだけ意識を集中するようにと説かれています。
「影響の輪」に意識を向けることで成功を収めやすくなり、さらに「影響の輪」が広がっていきます。「影響の輪」が広がることで、いつしか「関心の輪」だった範囲が、自分の影響の輪に入ることもあるでしょう。
15.最大効果を得る方法を探る
スポーツ指導の世界で昔は、「汗をかいても水を飲むな」と言われていました。しかし、今ではパフォーマンスが落ちるどころか、熱中症のリスクが高まる間違った精神論だと捉えられています。
このように、知識が間違っているがために非効率な努力をしてしまう場合があります。たとえば、筋トレと有酸素運動をするなら、有酸素運動を後にした方が脂肪燃焼効果は高いです。朝と夜では、朝に有酸素運動をした方が脂肪燃焼効果は高いです。炭水化物よりも先に野菜を食べた方が太りにくいです。同じ活動や努力でも、順番を変えるだけで効果が変わります。
教科書を2回読んで暗記をするなら、同じ日ではなく1日以上空けてからした方が記憶の定着はよくなります。暗記科目であれば、朝よりも夜に学習する方が記憶の定着がよいです。
ほかにも、定期的な休憩を入れる、入れないのとでは、休憩を入れた方が生産性は高くなります。以下の2つは、効果があるとされている休憩の取り方です。
《ポモドーロ・テクニック》
25分間作業した後に5分間の休憩を取り、これを4回繰り返した後、15~30分の長い休憩を取る。
《52/17ルール》
52分間集中して作業した後、17分間の休憩を取る。
このように、できる限り投資対効果の高い方法を実践しましょう。1ヶ月で10の効果を得られるのと、20の効果を得られるのとでは、後者の方がモチベーションは維持できます。
16.小目標を設ける
夏休みの終わりが迫ってきて、慌てて宿題をした経験はありませんか? これは、締め切り効果と呼ばれるものです。締切が近づくにつれて、人は集中力を発揮します。この状況を意図的に作ることも生産性をあげる一つの方法です。
目標を掲げたら計画を作り、小目標を設けます。締切効果が発動し、集中力を持って取り組めるようになるでしょう。人は、大きな目標は抽象的に感じるため、先延ばしが起きやすいです。一方小さな目標は具体的に感じるため、先延ばしを抑止する効果があることがわかっています。
目標を分解して、スケジュールに落とし込む癖を作りましょう。
17.記録をつける
事実を把握することはどんなマネジメントでも重要です。家計簿、カロリー記録、行動記録、睡眠記録など、マネジメントしたい事柄に合わせて記録を取ります。
客観的に記された記録を見ることは、改善点を見つけるのにも役立ちます。加えて、努力の軌跡も見えるため、モチベーションの維持にも一役買います。ウォーキングや睡眠などの記録をつけてくれるアプリもあるため、活用するとよいでしょう。
18.紙に書き出す(ジャーナリング)
心がモヤモヤしていたり、イライラしていたりする時は、原因や感情を紙に書き出してみましょう。誰に見せるわけでもありませんから、思いっきり吐き出します。客観的に自分の感情を見つめ直すことで、心や思考が整理され、ストレス軽減にもつながります。
感情を紙に書き出す行為はジャーナリングと呼ばれ、「書く瞑想」として知られています。ジャーナリングは、感情のマネジメントに有効です。また、違うタイプのジャーナリングで効果が高いとされているのが、感謝の日記です。日々の生活の中で、感謝できる点を見つけては書き出すようにしてみてください。
19.ご褒美を用意する
自分で自分のモチベーションを上げる方法に、自分へのご褒美があります。この方法を当たり前のようにできる人と、できない人がいます。できない人は、こう考えている人もいるでしょう。「自分へのご褒美と言っても、ご褒美代は自分が出すわけで・・・。自分の懐を痛めるのでは、モチベーションが上がらない」
そういう人は、懐を痛めないご褒美を考えてみるのもよいでしょう。たとえば、日常的にしているゲーム。これを条件なしに享受するのではなく、ご褒美として位置付けるのです。たとえば、「45分間勉強したら15分間ゲームができる」と。
これなら懐を痛めずにご褒美が用意できます。
20.コミュニティーに入る
人は、社会性を持つ生き物であり、仲間がいた方が頑張れます。お互い励ましあったり、競争したりと刺激になるからです。
読書仲間を集めて読んだ本を紹介しあう。目標をともにする友人とジムに通う。今は、さまざまなコミュニティーがSNS上にあります。仲間を見つけて、互いに刺激し合えれば、モチベーションも維持できます。
いまの時代には、オンライン上で完結するコミュニティーもたくさんあります。そうった仲間とのつながりを上手く使うとよいでしょう。
21.時間ではなく量を意識する
「毎日◯分間の勉強をする」よりも「毎日4ページ進める」としたほうが継続しやすくなります。仮に、「9時から10時まで勉強する」と決めたとしましょう。もし何かの都合で10分遅れたら、それを理由に「今日はなし」としてしまうリスクがあります。
量ならその心配はいりません。ただし、ダラダラしてしまう可能性があります。
理想は、時間と量の両方です。「9時から10時までの間に4ページ進める」と設定すると、締切効果も合わさり、集中して励むことができるでしょう。
22.自分に売り込む
マーケティングや営業が商品のもたらすベネフィットを伝えて、お客様の購買意欲を刺激するように、目標達成した未来を自分自身に伝えてモチベーションを上げることもセルフマネジメントを実践するコツです。
目標達成が叶ったらどんな未来が待っているのか、どんな良いことがあるのかを紙に書き出してみましょう。「これは叶えたい!」と、書く前よりも思えたなら成功です。目につくところに貼って、毎日見返すとモチベーション向上につながるでしょう。
セルフマネジメント力の向上に役立つ手帳術とおすすめ書籍
セルフマネジメント力を高めるためには手帳の活用や書籍で学ぶことが有効です。本章では、セルフマネジメント力を高める手帳術とおすすめの書籍をご紹介します。
セルフマネジメント力を高める手帳術
手帳術は、手帳を使って自分の行動・情報・思考を管理する方法です。優れた手帳は単なるスケジュール・タスク管理ツールではなく、長期的な目的や目標、夢やビジョン、自分の価値観、役割等を明確にできるツールです。
中長期の目標や価値観と、短中期でのゴールやタスク管理、習慣形成をリンクさせることが、セルフマネジメント力の向上につながります。以下では、単なる予定とタスク管理ではなく、セルフマネジメント力の向上につながる手帳をご紹介します。デジタル全盛期の時代ですが、セルフマネジメント力を高めるうえでは、あえて「紙に手書きする」こともおススメです。
「7つの習慣®」の考え方に基づくセルフマネジメントを実現するシステム手帳です。中長期における目標や価値観、重要度と優先度に基づく時間管理やタスク管理、好ましい習慣形成等、セルフマネジメント力の向上に役立ちます。
GMOグループの創業者である熊谷氏が提唱する手帳で、やりたいことリストや未来年表を書き込む「夢手帳」と、夢の実現に向けた行動を管理する「行動手帳」、夢をかなえる思考をサポートする「思考手帳」があります。
原田メソッドを開発した原田隆史氏が監修した手帳で、ウィークリー&マンスリーという構成になっているセルフマネジメント力向上につながる手帳です。日々の目標設定と振り返りを通じて自己成長につなげる構成が特徴的です。
セルフマネジメント力を高めるおすすめ書籍
書籍でもセルフマネジメントを高めるさまざまな方法が紹介されています。そのなかでも読みやすく、効果的な方法を紹介しているのが以下の9冊です。
全世界4,000万部を超えるビジネス書のベストセラーであり、人生哲学の定番としても有名です。セルフマネジメント力の向上を支える主体性の発揮、周囲との人間関係、人間性の磨き方等、人間的な自立と周囲と相乗効果を発揮する人間関係の作り方に関する7つの習慣が解説されています。
成果をあげるために必要な時間の管理、貢献、自分の強み、優先順位、意思決定を解説したドラッカーの名著です。
タイトルのような「経営者」だけに限定された内容ではなく、すべての知識労働者、ホワイトカラー、ビジネスパーソンに役立つ内容です。ドラッカーの書籍のなかでも非常に読みやすく、社会人初心者にもおススメです。
仕事に対する心構えが示されている書籍で、時間の使い方や思考習慣など、セルフマネジメントにつながる内容が多く盛り込まれています。ドラッカーの各書籍から「プロフェッショナルとして働く」という内容を抜粋・統合した内容となっています。
人間の行動は4割が習慣であり、良い習慣を増やし悪い習慣を減らすことで人生が好転していくという、習慣のメカニズムを詳述している書籍です。セルフマネジメント力の向上は仕事や思考に関する良い習慣を身に付けることで実現します。個人が習慣を変えるための方法も具体的に解説されています。
1日3時間「変わりたい」と思うよりも、1日5分の行動が人生を変えるという概念のもと、自分の行動に変化を起こす科学的アプローチが紹介されています。
手帳術でも紹介した原田隆史氏の著書です。人生を変えるには意識を変える必要があり、意識はちょっとした生活習慣を見直すことで大きく変わるという、基本的なことを実践的に解説している書籍です。セルフマネジメント力を高める原田メソッドの基本的な考え方が良くわかります。
京セラの創業であり、日本航空(JAL)立て直しの功労者である稲森和夫氏の名著です。
「嘘をついてはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」「一生懸命働く」等、人としての規範をあらためて見直せる一冊。セルフマネジメント力を向上させる根っことなる“生き方”のヒントが得られます。
日本の近代経済をけん引した渋沢栄一の著書です。孔子の生き方とされる論語を日常生活や仕事にどう応用すれば良いかを解説した一冊です。人生への取り組み方をはじめ、自分の強みを伸ばす工夫や良好な人間関係の築き方等が書かれています。
「まず相手に奉仕し、それから相手を導く」という奉仕するリーダーシップを提唱している書籍。セルフマネジメントにもつながる新たなリーダーシップのあり方を学べる一冊です。
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まとめ
セルフマネジメントとは、自分自身のパフォーマンスを高めるための自己管理です。ホワイトワーカー(知識労働者)の比率が高まっており、また、リモートワークなどの自立性が求められる働き方が浸透するなかで、社員一人ひとりのセルフマネジメントを高めることが、組織全体の生産性アップにつながります。
セルフマネジメントは、自己理解、目標設定、時間管理、タスクブレイク、セルフケアなど、いくつかのスキルや習慣の組合せです。トレーニングすることで鍛えることができますので、ビジネスパーソンにとってセルフマネジメント力の向上は最もおススメの自己投資だといえるでしょう。
人間の特性を理解して、実践の方法論を知ることで、セルフマネジメントしやすくなります。セルフマネジメント力の向上につながる手帳を活用したり、書籍を読んだりすることも効果的ですので、ぜひ記事を参考に積極的に取り入れてください。
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