従業員のエンゲージメントを高める9つの施策分野と実施のポイント

更新:2023/07/28

作成:2020/12/10

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

従業員のエンゲージメントを高める9つの施策分野と実施のポイント

従業員のエンゲージメントは、従業員の定着率や生産性、組織の業績アップに直結します。とくに変化が激しく、産業のサービス化が進むなかで、社員の主体性や自律性の発揮は重要度を増しており、それに伴って、従業員のエンゲージメント向上が組織の重要な経営課題となってきました。

 

記事では、「エンゲージメントとは何か」という基本的な事項を解説したあと、従業員のエンゲージメントを高めるポイントや具体的な9つの施策分野をご紹介します。

<目次>

従業員のエンゲージメントとは?

エンゲージメントとは、「従業員と仕事や組織との心理的な結びつきの強さ」を表す言葉です。

 

「自分はこの企業の一員である」という意識や、仕事や組織、職場への愛着を強く持てると、従業員はより主体的に仕事に取り組むようになります。そのため、従業員エンゲージメントを高めると、生産性や定着率、業績アップが期待できるのです。

 

エンゲージメントは、「帰属意識」「愛社精神」と似た言葉ですが、若干ニュアンスが異なります。帰属意識や愛社精神という言葉は、企業が「主」で、従業員を「従」と見るようなニュアンスがありますが、エンゲージメントという言葉は「企業と従業員は対等である」という前提を持っています。

 

こういったニュアンスの違いから、終身雇用が当たり前でなくなった現代には、帰属意識や愛社精神よりもエンゲージメントという表現のほうが馴染みやすいと言えるでしょう。

従業員のエンゲージメントを高めるポイント

横2列に並んでこちらを笑顔で見つめている男女

従業員のエンゲージメントを高めるために、とくに大切にしたいポイントが3つあります。具体的な施策を考える際にも、常に以下の3つを軸として意識してみてください。

 

 

「組織の目的」への共感

自社の目指す方向性や事業の目的に共感を抱いてもらうことが、エンゲージメントの基本となります。ミッションやビジョン、バリューへの共感は「自分はなぜこの組織で働くのか?」「この仕事をしている意味は何か?」への答えです。

 

朝礼やミーティング等あらゆる場を活用して、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させていきましょう。また、ミッションやビジョンを感じさせるような顧客の声を共有したり、自分なりの“この組織で働く意味”をアウトプットしてもらったり、ミッション・ビジョン・バリューを基準とした表彰制度等も効果的です。

 

 

「所属や承認の欲求」

生産性の向上やイノベーションを目指すには、ときにはリスクを背負いつつも、積極的に新たなことに挑戦する必要があります。従業員がチャレンジ精神を発揮して主体的に仕事に取り組むためには、「自分が組織に受け入れられている」という実感が不可欠です。

 

「あなたたち一人ひとりが大切な存在であり、あなたたちの人生やキャリアを尊重している」というメッセージをあらゆる形で伝えましょう。

 

「承認」には、存在の承認、行動の承認、結果(貢献)の承認といくつかのレベルがあります。また、伝え方も口頭、thnaksカードや誕生日カードのようなメッセージ、福利厚生や職場環境等の物理的なものを通したメッセージ等、さまざまな手段を組み合わせていきましょう。

 

 

「働きやすさ」の整備

心身ともに快適に働ける環境が用意されているかどうかも、エンゲージメント向上のための重要なポイントです。

 

働きやすさは、前述の所属や承認の欲求を満たすメッセージにもなりますし、実際にパフォーマンスを高めるためにも必要です。また、組織から正当に評価されているという感覚にも繋がります。

 

物理的なオフィス環境の整備以外にも、たとえば、テレワークの導入やフレックス制度等も「働きやすさ」に繋がります。

 

これまでの常識や前例にとらわれず、「従業員にとって働きやすい環境とはどういったものか?」「働きにくさを生み出しているものを排除できないか?」を考えてみましょう。

 

従業員のエンゲージメントを高める9つの施策分野

思い思いの方向を見据えている若いビジネスパーソン

エンゲージメント向上のための施策は、以下9つの分野に大きく分けることができます。どれも、従業員が主体的に仕事に取り組むことを促す大切なアクションです。

 

エンゲージメントを高めるアクションプランの立案や振り返りをする際には、紹介する各分野をバランス良くカバーできているか、ぜひ一度チェックしてみてください。

 

 

1. 働く意義

  • 自分は何のために働くのか?
  • 自分の仕事にはどのような価値があるのか?
  • 顧客にどのような価値を届けているのか?
  • 自分の仕事を通して、誰にどう貢献できるのか?

 

こういった問いに対して確固たる答えを持っている従業員は、日々の業務に主体的に取り組むことができます。研修等で上記のような問いを提起し、自分なりの答えをアウトプットしてもらう機会を設けると効果的です。

 

また、ミッションやビジョンの浸透、事業の価値や従業員が生み出した価値を知らせる「顧客の声」等を社内に発信し、浸透させるのも良いでしょう。

 

 

2. 期待される貢献の明確化

誰しも、自分がいったい何を期待されているのかよくわからない状況では、主体性を持ちづらいものです。

 

「仕事の成果としてどういったものを期待されているか?」「組織への貢献として、どのようなことを期待されているか?」を明確に理解できれば、エンゲージメントは向上します。

 

従業員一人ひとりにどういったことを期待しているかを日頃から伝えられるよう、マネジメントの仕組みを整えましょう。

 

 

3. 成果を上げることへの支援

従業員が仕事で成果を上げるためのサポートも、従業員エンゲージメント向上のために重要な施策の一つです。

 

日々の業務において、組織や上司から適切なサポートを受けることで、従業員は「自分は尊重されている」という感覚を得ることができます。この感覚が、エンゲージメントを高めていくのです。

 

求められている成果を上げて組織に貢献するために必要な環境が、各従業員に用意されているかをチェックしてみてください。

 

 

4. 貢献への承認と評価

従業員が企業に貢献したことをしっかり承認、評価することも重要です。

 

貢献への承認と評価を与えることで、「企業に貢献できている」「自分のがんばりが認められている」「企業は自分を正当に評価してくれている」という感覚を従業員に持ってもらうことが可能になります。

 

こまめなフィードバックや1on1ミーティング、また、評価制度に対する納得感を高めていく取り組みも大切です。

 

 

5. 存在承認と所属の欲求

組織のなかで自分の存在が認められている実感があると、従業員エンゲージメントは高まります。従業員一人ひとりに、「組織やチームに必要とされている」感覚や「組織やチームの一員として認められている」感覚を与えるような施策が効果的です。

 

存在承認や所属の欲求を満たすうえではコミュニケーションの活性化が重要です。とくにコミュニケーション頻度の向上、個人としての側面の尊重や興味関心を示すこと、従業員同士での感謝を伝えるコミュニケーション(thanksカード等)が有効です。

 

 

6. 成長の支援

従業員のスキルアップや新たな知識・経験の獲得を支援する施策も、従業員エンゲージメント向上に効果的です。「自分の成長を応援してもらえている」という感覚は、働きやすさややりがい、企業への信頼感を生み、それらが仕事に対する主体性な姿勢へと繋がります。

 

具体策としては、キャリア形成支援、チャレンジ目標の設定、勉強会やセミナーの参加費補助、また、通常業務から離れたプロジェクトへの抜擢や権限の委譲等が挙げられます。

 

 

7. 社内コミュニケーションの活性化

同僚や部署のメンバーとの関係構築も、エンゲージメント向上に役立ちます。スムーズなコミュニケーションが可能で、少しでも疑問や悩みが生じたらすぐ質問・相談できる職場は、従業員にとって働きやすい職場です。

 

また、自分の意見を気兼ねなく言える環境を作ることは、従業員の主体性の促進に直結します。ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる手段としても、社内コミュニケーションは重要です。

 

ランチ交流会や飲み会、業務の意見交換会、その他社内イベントを開催して、従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる場を用意しましょう。経営層と社員が交流できる機会を設けるのもおすすめです。

 

 

8. 自己決定権の尊重

仕事において「自分で決められる」という感覚が、自主的・主体的な行動を促進します。

 

組織において、すべてのことを一人ひとりの従業員に決めてもらうのは不可能ですが、目標の決め方、仕事の進め方等において、従業員自身に裁量を与えたり、従業員から意見を挙げてもらい一緒に決めたりすることはできるでしょう。

 

自己決定権による仕事の楽しさを従業員一人ひとりが実感することで、日々の業務においても、前例にとらわれない斬新なアイデアを提案したり、リスクを恐れず難しい課題に積極的に挑戦したりする文化も生まれるでしょう。

 

 

9. ワークライフハーモニー

ワークライフハーモニーとは、仕事と人生の調和を指す言葉です。Amazon社のCEOジェフ・ベゾス氏によって、ワークライフバランスを発展させた概念として提唱されました。

 

ワークライフハーモニーは、ワークライフバランスのように仕事と人生(私生活)を分断されたものとして天秤にかけるのではなく、ワークとライフの2つが組み合わさって一つの環をなすものとしてとらえる考え方です。仕事と人生(私生活)の両方を充実させることで、お互いの質が高まっていくと考えます。

 

従業員が仕事でも私生活でも幸せな時間を過ごし、良い循環が生まれるようにサポートすることも、エンゲージメント向上をもたらす方法の一つです。働き方改革等の勤怠管理に関する部分もワークライフハーモニーの一部と言えます。

まとめ

企業の存続と成長には、従業員エンゲージメントの向上が欠かせません。従業員エンゲージメントを高めるには、「組織の目的」への共感、「所属や承認の欲求」、「働きやすさ」の整備の3点が大切なポイントとなります。

 

本記事では、従業員エンゲージメントを高める施策を9分野に分けて紹介しました。従業員の定着率や生産性を上げて組織をさらに成長させるため、紹介した9分野のなかから、ぜひ自社でできそうな施策を選んで実行してみてください。

 

また、組織のエンゲージメントや自分のマネジメントを振り返るうえでも、9つの分野をバランス良くできているか、足りない分野がないかをチェックしていただくと有効です。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
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