心からほめる|デール・カーネギー『人を動かす』

心からほめる|デール・カーネギー『人を動かす』

私たちは多かれ少なかれ、「自分は何らかの点で秀でている」「人よりも優れたものを持っている」と考えているものです。

だからこそ、自分がひそかに努力している事や誇りを持っていることを、誰かが賞賛してくれると、とても嬉しく思い、相手に好意を持つようになるのです。

デール・カーネギーも著書『人を動かす』の中で、「人は誰でも他人より優れた点を持ちたいと思っている。相手の心を確実に手に入れるには、相手の重要性を素直に認め、そのことを素直な気持ちで相手に悟らせることである」と強調しています。

相手の優れた点を見つけて褒めることは、相手にとって何よりも大切な「自分自身の重要感」を満たすことのできる、大切でかけがえのない行為です。

本記事では、デール・カーネギーの著書『人を動かす』の中で紹介されている、人を動かす原則のひとつである「心からほめる」について解説します。

なお、デール・カーネギー研修プログラムの受講者に配られる30の原則をまとめたデール・カーネギー・ゴールデンブックでは、「心からほめる」の原則が、「重要感を与える―誠意をこめて」となっています。

「心からほめる」よりも若干分かりづらいように感じますが、「心からほめる」と併せて見ると、何をすべきか、どんな姿勢で実践すべきかが、より伝わってくるように思えます。

同じ原則ですが、本記事内では、書籍の表記「心からほめる」に則って解説していきます。

<目次>

デール・カーネギー『人を動かす』の概要

記事では最初に「心からほめる」の原則が紹介されている書籍『人を動かす』と、著者デール・カーネギーについて簡単に紹介します。

デール・カーネギーとは?

『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーは、1888年にアメリカのミズーリ州で生まれました。カーネギーは、将来教師になることを夢見て、貧しいながらも大学に通い無事卒業します。

大学卒業したカーネギーは、新聞記者や販売職、セールス業などの職を転々とすることになりました。

いずれの仕事も長続きしなかったカーネギーですが、ある時YMCAが主催する夜間クラスで、話し方講座を担当する講師の職に巡り会います。

学生時代に学んだ弁論術を踏まえながら講義を行ったところ、カーネギーのクラスは瞬く間に評判となりました。

やがてカーネギーは独立を果たし、その後も、自己啓発やセールス、スピーチおよび対人スキルに関する数々のトレーニングプログラムを開発し、広く名を知られるようになりました。

著書『人を動かす』について

カーネギーはYMCAで担当した話し方講座を基に、独自のプログラムや教材の開発も進めていきました。

そして、自ら開発した教材や講義で得た経験・知見をまとめ上げ、1冊の本へと体系化します。1936年に出版されたこの本こそが、カーネギーの名を一躍有名にした書籍『人を動かす』です。

『人を動かす』には、良好な対人関係の築き方、相手を気持ちよく動かす方法といった、人を動かすための実践的なノウハウが実例を交えて紹介されています。

本書は、対人関係での悩みや課題を抱える数多くの人に読まれ、たくさんの支持を集め、現在までに全世界で1500万部を超えるベストセラーを記録することになりました。

「人に好かれる六原則」とは

カーネギーの著書『人を動かす』は、「人を動かす三原則」「人に好かれる六原則」「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」の4つのパートで構成され、全部で30の原則が紹介されています。

本記事のテーマである「心からほめる」は、上記のうち「人に好かれる六原則」のひとつです。「心からほめる」の詳細に入る前に、本章では「人に好かれる六原則」について簡単に紹介します。

1.誠実な関心を寄せる

私たち誰もが、もっとも深い関心を注いでいる対象は「自分自身」です。ですから、一番の関心事である「自分」に対して関心を寄せてくれる相手は、特別な存在となり好意を抱くようになります。

しかし、“相手を動かそう!”“気に入られよう!”と思うあまり、表面的なお世辞を言ったり、アイスブレイクなどのテクニックを駆使して関心を惹こうとしたりしても、相手には簡単に伝わってしまい、逆効果になってしまいます。

大切なのは「誠実な関心」であり、素直な心で相手に興味を持って接するという姿勢に他なりません。

2.笑顔を忘れない

人は目の前の相手の本音を判断する時、発した言葉以上に、表情や声のトーンなど非言語コミュニケーションを本能的に重視すると言われています。

だからこそ、友好的な感情が一目瞭然である「笑顔」は、百の着飾った言葉よりも、人に好印象を与えることになります。

カーネギーは本書の中でも、「動作は言葉よりも雄弁である」として、笑顔でいることの重要性を強調しています。

3.名前を覚える

私たちは、生まれてからずっと一緒に過ごしてきた「自分の名前」に対して、格別な親しみや思い入れを持っています。自分の名前は、自分自身を象徴するかけがえのない存在なのです。

だからこそ、相手が自分の名前を大切に扱ってくれる、親しみを込めて名前で呼びかけられたり、久しぶりに会った相手が自分の名前を覚えていてくれたりすると、「自分の存在を認めてくれている」「自分に関心を持ってくれている」と感じるものです。

従って、好ましい人間関係を作る上では、相手の名前を大切にする姿勢が重要です。

出会った人の名前を確実に覚え、相手の名前で呼びかけることは、相手に誠実な関心を寄せる行為にもつながります。

4.聞き手にまわる

繰り返しになりますが、私たちが最も強く関心を払っているのは「自分自身」です。

だからこそ、自分が興味・関心を持っているテーマを心置きなく話している時は、誰にとっても心地良い時間になります。

そして、そんな幸せな時間を提供してくれる聞き手に対しては、自ずと好感を抱きます。

先述したように、相手は、“あなた”に対して持っている何百倍もの興味・関心を“自分自身”に持っています。

したがって、良い関係を築くには相手の話を聞いてあげること、すなわち、良い聞き手になることが重要です。

5.関心のありかを見抜く

ここまでお伝えした通り、人は自分が興味・関心を抱いているテーマの話をすることが大好きです。

話の輪に口数少なく参加していても、興味・関心のある話題が始まると、とたんに饒舌になる人が多いのもこのためです。

だからこそ、相手の話を聞くことに加えて、相手の関心を見抜いて話題にすることは、人とのコミュニケーションにおいて大きな効果を発揮します。

相手に気持ちよく話してもらうためには、相手がどんなことに関心を持っているかを見抜いて、その話題を振ることが肝心です。

6,心からほめる

カーネギーは「人は誰でも他人より優れた点を持ちたいと思っている。相手の心を確実に手に入れるには、相手の重要性を素直に認め、そのことを素直な気持ちで相手に悟らせることである」と話しています。

相手の優れた点を発見し、素直に褒めてあげることで、相手は満足感を得られることでしょう。

そして、人は自分を満足させてくれる相手には、好印象を抱くものです。「心からほめる」の詳細については、次章で詳細を解説します。

人に好かれる六原則「心からほめる」とは?

繰り返しになりますが、人は誰もが「自分が重要な存在だと周囲から認めて欲しい」と思っています。心から称賛することは、相手が欲する自己重要感をしっかりと満たすことにできる行為です。

本章では、記事のメインテーマである”心からほめる”について詳しく解説します。

上辺のお世辞ではなく、心の底から相手を褒める

相手を褒める時は、上辺ではなく、心の底から褒めることが大切です。

相手に好かれようとして、本心で思ってもいないお世辞を口にすれば、相手から簡単に見透かされ、むしろ逆効果にもなってしまうでしょう。

“誰でもほめてもらうことはうれしい。だが、その言葉が具体性を持っていてはじめて誠意のこもった言葉、つまり、ただ相手を喜ばせるための口先だけのものでない言葉として、相手の気持ちをじかに揺さぶるのである。我々には、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には、反発を覚える”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

引用したように、カーネギーもうわべだけのお世辞を口にすることは、相手に反発を抱かせるだけであるとして、厳に戒めています。

事実や行動を具体的な言葉にして褒める

先述のカーネギーの言葉をもう一度引用します。

”誰でもほめてもらうことはうれしい。だが、その言葉が具体性を持っていてはじめて誠意のこもった言葉、つまり、ただ相手を喜ばせるための口先だけのものでない言葉として、相手の気持ちをじかに揺さぶるのである。我々には、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には、反発を覚える”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

カーネギーは「その言葉が具体性を持っていてはじめて」「相手の気持ちをじかに揺さぶるのである」と述べています。

確かに、ほとんどの人は、多かれ少なかれ褒められれば嬉しく感じるものです。

ですが、その言葉の中に具体性が伴っていない場合、「何となくノリで褒めてくれてるのかな」「心からの言葉じゃないんだろうな」と、なかなか本心から喜びづらいものです。

ですから、褒めるときには、「相手のどこがどのように素晴らしいのか」をしっかりと具体的に伝えるようにしましょう。

具体的な内容やエピソードがあることで、相手に「自分のことをしっかりと見てくれた上で、褒めてくれているのだな」と伝わります。

以上を踏まえ、「ただ頑張ったね」と漠然と褒めるのではなく、例えば「この間作ってくれたマクロのおかげで、○○の作業工数が半減して、とても助かったよ!」というように、事実や行動を具体的な言葉にして伝えることが大切です。

相手を観察し、小さな進歩や成長を見つける

何度も触れたように、人間は誰もが「自分が重要な存在でありたい」と思っています。心から称賛することによって、相手の自己重要感はしっかりと満たされます。

相手が努力していること、誇りを持っている事など、相手が自分でも気づいていない良い点を見つけ、積極的に褒めるようにしましょう。

一方で、私たちは、相手の良いところに気づくよりも、できていないところ、至らない部分の方がどうしても目につきがちです。

ビジネスシーンでいえば、「仕事でろくに成果も出せない相手には、そうそう褒める言葉なんて出てこない!」と感じる管理職の方も多いかもしれません。

“なぜ、鞭むちの代わりに肉を、批評の代わりに賞賛を用いないのだ? たとえ少しでも相手が進歩を示せば、心からほめようではないか。それに力を得て、相手はますます進歩向上するだろう。”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

相手を褒めることは求める基準や絶対値を下げるということではありません。どんな小さなことであっても、進歩や成長があれば心から褒めることが大切であると、カーネギーは話しています。

普段から相手に関心を持って接していれば、些細な変化や成長はきっとたくさん見つかるに違いありません。私たちの心掛け次第で、相手を褒める言葉はいくらでも出てくるのです。

まとめ

記事では、デール・カーネギーの人に好かれる六原則の一つである、「心からほめる」をテーマにお伝えしました。

何度か触れたように、人間は誰しも「自分が重要な存在だと、人から認めてもらいたい」と思っています。

相手を心から称賛し、言葉にして伝えてあげることで、相手の自己重要感をしっかり満たせることでしょう。

誰にでも心からほめることが自然に出来る人は、相手の心をしっかりと掴むことができる人でもあるのです。

もちろん、取ってつけたようなお世辞ではなく、心からの賛辞が大切であるのは言うまでもありません。

ビジネスシーンの中で「まだ全然求めるレベルに達していないのに褒め過ぎたら相手をだめにしてしまう」と考える人もいるかもしれません。

しかし、褒めることは求める基準やレベルを下げることではありません。

相手に関心を持って接していれば、日々のちょっとした変化や成長、努力など、相手を心からほめるための材料は、思っている以上にたくさん見つかります。

絶対的な基準としては合格点に達していなくても、小さな進捗や成果を褒めればいいのです。

そのためにも、周囲の人に積極的に普段から関心を持って接するということを、日々の習慣にしていきましょう。

なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、米国デールカーネギー・アソシエイツ社と提携して、日本でデール・カーネギー研修を提供しています。

「管理職のマネジメント力を高めたい」「営業職の営業力をあげたい」とお考えであれば、ぜひ下記の資料をご覧ください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

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