「キャリアの悩み」が退職原因に?若手社員の”もったいない退職”を防ぐ!最新取り組み事例 Vol.1

更新:2024/09/21

作成:2024/05/21

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

「キャリアの悩み」が退職原因に?若手社員の”もったいない退職”を防ぐ!最新取り組み事例 Vol.1

新入社員の研修を終え、現場配属となったばかりで退職されてしまう。最近、このような若手の早期退職が増えています。若手のキャリア観が変わってきたことも影響していますが、多くの企業から話を伺うと、“もったいない退職”も多いのが実態です。

 

本稿では、若手社員の早期退職にはどのような背景があり、どうすれば“もったいない退職”を防ぐことができるのか、若手定着の取り組み事例も踏まえて解説していきます。

 

*本レポートは2024年2月27日に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。

<目次>

若手社員はなぜ、退職するのか?

まずは早期離職の原因について見ていきたいと思います。

 

若手社員退職の原因

 

上記は、入社1年以内で早期退職した原因について、381名に実施したアンケート調査の結果です。

 

圧倒的に多い第1位は「人間関係が悪い」という理由での転職です。

 

2位の「長時間労働・休日への不満」は、働き方改革の前後からいらっしゃる方等であれば「昔と比べると残業しなくなった」とか「休みも取りやすくなった」と思われているかも知れません。

 

しかし、新卒入社1年目の場合は比較対象がありません。従って、残業や休日への不満は、入社前にイメージしていた、若しくは聞いていた情報とのGAPと捉えると良いでしょう。

 

このあたりは、いまの20代、Z世代の若手が持っている有給取得や労働時間(残業)に関する「当たり前」や「しんどい/ブラックだ」という価値観は、昭和世代の方が持っている感覚とだいぶ変わっています。

 

また、第3位は「仕事内容が合わない」です。これもいろいろな要因が絡んでいるとは思いますが、入社1年未満での退職です。入社前に持っていたイメージや新人研修内のやり方等によって、何かしらの捉え/思い違いを丁寧にほどいておけば退職は防げたというケースも多いでしょう。

1年未満の早期退職が起きるタイミング

辞めたくなるタイミング

 

入社1年以内で退職した方に「どのぐらいで辞めたいと思ったのか」を確認すると、ピークが入社して4~6カ月というデータになっています。

 

多くの会社でいうと、部門等に配属されてしばらく経ったタイミングです。この時期に揺れ動いたり悩んだりして、そこを超えると大きく減少し、入社1年のところで再び増える形になります。

 

学生から社会人に切り替わる入社直後(~3カ月)も大きな変化であり、ひとつの退職が生じるタイミングですが、それ以上に多いのが、配属されてしばらく経ったタイミングということになります。

1年未満の早期退職で誰に相談するのか?

こうした早期離職する人は、悩んでいる時や転職を検討している時、誰かに相談するのかを調べたデータが下記です。

 

退職の相談相手

 

1番多いのは家族や親戚です。

 

意外に感じる方もいるかもしれません。一方で、新卒採用に携わっている人事の方だと納得される方も多いのではないでしょうか。

 

なぜかと言うと、就職活動の中で、複数の内定を取った時にどこに行くか、またある内定を承諾するかという時に、「内定者が親御さんに相談した結果、反対されて辞退された」という経験がある方もいるでしょう。入社から日が浅い時期は、就活の時と同じで、親御さんの影響力が強いということです。

 

身近である家族は相談しやすいと同時に、相談した若手に一番親身になってくれる存在でしょう。ただし、同時に会社の実情をよく理解してなかったり、働いていた時期・時代が違ったりして、今の時代、また現実にフィットするアドバイスができていない可能性はあります。

 

また、2番目に多いのが相談してないという回答です。「相談していない」ケースは、親御さん等に相談する以上に本人の思い込みや先入観などが解きほぐされず、捉え違い等で辞めてしまうこともあり、これはもったいない退職が起こりがちです。

 

そして、同期や上司、先輩といった会社の人というのが、1位:家族・申請、2位:相談していない、3位:友人に比べると、ぐっと低い位置・比率になってきます。

 

これを見ても、若手の早期退職は会社ではキャッチアップしにくいことが分かります。「大丈夫です!頑張ります!」と人事や上司に言っていたのに、ある日突然「辞めます」と言われてしまうようなケースです。

1年未満の早期退職で多い3つの流れ

なぜ辞めるのか

 

先ほど相談データを基に、「キャッチアップしにくい」と書きましたが、一方で早期離職自体が突然起こるわけではありません。

 

どちらかというと、小さな悩みが大きくなって退職するというケースが大半です。「上司とのコミュニケーションがうまくいかなかった」「聞いていたよりも残業が多かった」など、必ず何かしら小さなモヤつきから生じます。

 

フォローアップの中で、モヤモヤが小さなうちに解消できると、またニュートラルな状態に戻って新人や若手は頑張れます。しかし、実は「話したら意外と解消できる」にも関わらず、社内に相談者がいないという新人が大半です。

 

この時、最も退職につながるケースは、モヤモヤが少し大きくなってきたタイミングで、転職エージェントに相談/面談に行かれてしまうケースです。そうすると転職エージェントからは「もっと良い環境の会社があるよ」という話をされて、徐々に転職意向が強まっていきます。

 

退職には必ず「きっかけ」と「決め手」があります。

 

新卒の場合、きっかけが生まれやすいのは、まず配属後のタイミングです。「人間関係につまずきがあった」とか「思ったより残業が多い」「自信がなくなった」といった小さなモヤモヤです。これが退職のきっかけです。

 

一方で、「きっかけ」だけで退職に至ることは少ないです。基本的に、モヤモヤが解消されず少しずつ蓄積されていった中で「決め手」が生じます。

 

上司が悪気なく「決め手」になってしまっているケースもあります。

 

たとえば、上司との1on1で「何を甘いことを言っているんだ。俺の時代は・・・」となっているケースはないでしょうか。この場合、上司に悪気はなくても、その1on1が退職の「決め手」になっていきます。

 

本人のモヤモヤに加えて、上司との面談で「管理職もこの認識なら、うちの会社ではダメだな」となって、退職に至るわけです。この場合、1on1が退職の決め手になってしまっているのに、意外と会社側は気づけていないというケースも多いです。

 

上司の感覚が若手のキャリア観と合っていなかったり、根性論や給与、昇進・昇格だけで引っ張ろうとしたりして、「そういうことじゃないんだよな…」となって、退職の決め手になってしまうことも意外と多いということです。

 

逆に、決め手を作らず、小さなギャップやモヤモヤを早期に解消していけば、もったいない早期退職は防げます。

もったいない退職の要因とは?

ここからは「もったいない退職を防ぐ」というテーマで、少しデータを紹介していきます。これは弊社のグループ会社Kakedas(カケダス)が提供している社外1on1サービスで、2023年4月入社の新卒を対象に実施した社外1on1/キャリア面談の対話データを解析したものになります。

 

もったいない退職とは

 

今回データを解析した新入社員が所属する企業は24社、企業規模は中小~中堅サイズです。弊社の公開型の新人研修に派遣いただいた参加者を対象に入社半年のタイミングで実施した社外1on1です。対象者は81名で、業界・職種はバラバラで、営業・事務・技術職などです。

 

社外1on1に際しては、まず23卒の新入社員に性格診断を受けていただき、性格特性や相談したいテーマを踏まえて、プラットフォームに登録している国家資格キャリアコンサルタントの中からAIでマッチングをかけています。

 

思考や性格・相談テーマを踏まえて、AIが候補者10名をピックアップして、そのうえで本人がキャリアコンサルタントの詳細プロフィール等も踏まえて、相談者を選択しています。また、「どんな話をしたかは会社に一切伝わらない」という心理的に安全な状態で60分の1on1が実施されています。

 

その60分の対話データ81人分を分析した結果が以下に紹介するものとなります。

 

会社に言わない悩み

 

まず「どんなことを相談したいですか?」という質問をすると、この3つのカテゴリーに分けられます。当然ですが、仕事や職場に関する相談・悩みがトップ。そして、驚かれるかもしれませんが「心と体の健康を相談したい」という方が35%もいます。

 

最近、企業からも「メンタル不調やストレスフルな状態の方が増えている」というご相談が多いですが、それを裏付けるようなデータです。

 

最後に、プライベートのテーマが14.5%という形になります。

 

もったいない退職-横線グラフ

 

次により細分化した相談テーマを見ていきましょう。

 

細分化した相談テーマの1位は「今後どうキャリアを築いていくのか」です。

 

今の新卒世代は、彼ら彼女らが小学校の時に「キャリア教育」がスタートしています。昭和世代は学生時代に「キャリア」について学んだり考えたりする機会はあまりなく、また「新卒で入社した会社でずっと勤めて、昇格・昇進するのが標準的なキャリア形成だ」という感覚を持っていた方も多いと思います。

 

しかし、いまの若手世代は高校や大学時代からずっとキャリア教育を受けてきています。そして、「同じ会社にずっといる可能性もあるが、転職を繰り返しながらキャリア形成はしていくものだ」「副業やフリーランス、退職して学びなおすといったキャリアもある」と考えていますので、新人の時点から「キャリア形成」ということに、アンテナが立っています。

 

だからこそ、入社してまだ半年程度でも「どうキャリアを築いていくかを相談したい」という声が多いわけです。

 

そして、2位:仕事内容への不安・不満、3位:職場の人間関係と相談テーマは続きます。このあたりは定番のテーマです。

 

ただ、4位:生活習慣を見直したい、5位:不安や憂鬱な気持ちに対処したい、6位:自分の性格や考え方を変えたい、7位:感情・気持ちの変化をコントロールしたいといったテーマが続くのは意外に感じる方も多いでしょう。

 

これらを見ると、現場配属された中で、自分の力が通用せずに自信を失ったり、その中で気持ちの変動が起こっていたりすることが想像できます。

 

本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
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