eラーニングを導入して活用することで、今まで人材育成に費やしてきた時間や金銭的なコストを効率化できます。eラーニングは時間や場所を問わずに低コストで学ぶ機会を提供できます。メリットやデメリットを把握したうえで、既存の人材育成とうまく組み合わせていくことが大切です。
記事ではeラーニングを導入するメリット・デメリット、効果的な運用施策を紹介します。
<目次>
- eラーニングとは?
- eラーニングの導入
- 企業がeラーニングを導入する5つのメリット
- eラーニングのデメリット
- eラーニングの限界とデメリットをカバーする施策は?
- eラーニングのメリット・デメリットをしっかり把握
eラーニングとは?
eラーニング(イーラーニング/e-Learning)は、情報システムを用いて行なう学習方法、もしくはそのシステム自体を指す言葉です。情報システムというとわかりづらく感じるかもしれませんが、パソコンやタブレット、スマートフォンを使って、動画やアプリ等を通じて学ぶやり方です。
eラーニングを本格的に実施する際には、コンテンツや学習管理をするのにLMS(LearningManagementSystem)と呼ばれる学習管理システムを導入することも多く、本記事でもeラーニングの概要と併せて紹介します。
eラーニングの導入
組織にeラーニングを導入する際に必要となるシステム、また、導入方法を紹介します。
eラーニング導入に必要なもの
eラーニングを本格的に実施する場合は教材コンテンツと学習管理システム(LMS)の組み合わせになることが多くなっています。ただ、学習管理システム(LMS)はeラーニング実施にかならずしも必須ではありません。
教材コンテンツは、〇Xや数字で回答するテスト問題形式のもの、PowerPoint教材、授業・講義を収録した動画教材、リアルタイムで授業・講義を配信するLIVE授業、学習アプリなどさまざまな種類があります。
複雑なシステムを使わなくても、ZOOMで社員向けにウェビナー形式で勉強会をライブ配信する、勉強会の動画を共有フォルダにアップして欠席した人や新たに入社する人も見れるようにする、ということも立派なeラーニングです。
学習管理システム(LMS)は、名前の通り、eラーニングの学習管理を行うためのシステムです。教材の登録や対象者の受講管理といった機能を持っており、個人毎に発行されたアカウントでID/PWDでログインして学習していきます。
LMSを使うことで、受講者の閲覧履歴を管理できたり、動画と組み合わせて理解度テストを実施したり、いくつかの動画を組み合わせた“営業部の新入社員向け”コースを作れるといったイメージです。
eラーニングを導入する方法
eラーニングを導入する方法はいくつかの種類がありますが、教材コンテンツ(社員が受講する動画など)の視点から考えてみるとイメージしやすいでしょう。
教材コンテンツの視点でみると、
- ①外部のコンテンツを使う
- ②すべて自社で作成する
- ③外部コンテンツを使いながら自社でも作成する
という3つのやり方があります。
すべて外部のコンテンツを使うのは、外部のeラーニングサービスを使う形です。例えばSchooなどがeラーニングサービスの大手です。また、HRドクターを運営する研修会社であるジェイックでも、厳選したコンテンツを扱う”ハビスク”というeラーニングを提供しています。
外部のeラーニングサービスで、コンテンツとシステムを全てまかなう場合には、どのようなコンテンツが欲しいのか?LMSは必要か?といった視点で選ぶとよいでしょう。
自社で動画等を準備する場合は、LMSを入れる必要があるか?が導入時の大きな選択ポイントになります。LMSを入れないようであれば極端には共有フォルダなどに教材コンテンツだけをアップするだけでも良いですし、vimeoなどの動画管理サービスを使うのもひとつです。
また、LMSが必要であればLMSだけが提供されているサービスもあります。たとえば、UMUやクラストリームなどは、LMSだけが提供されています。
最後の「外部コンテンツを使いながら自社でも作成する」は、1つ目と2つ目が混合された形です。この場合は、コンテンツとLMSがセットで提供され、かつLMSの上に自社独自の教材コンテンツもアップロードできるようなサービスを導入するのがよいでしょう。例としては、AirCourceなどが挙げられます。
企業がeラーニングを導入する5つのメリット
eラーニングは、従来の集合研修と比べて、さまざまなメリットがありますので確認しておきましょう。
- ●学習機会を増やせる
- ●時間的コストを削減できる
- ●金銭的コストを削減できる
- ●研修の内容を均質化できる
- ●学習進捗を簡単に管理できる
学習機会を増やせる
eラーニングはライブ配信する場合を除いて、基本的に受講者の好きなタイミングで学ぶことができます。好きなタイミングで受講できるため、時間的な制約がなく、学習機会を増やすことが可能です。
また、後述するようなコストの制限がなくなるため、企業としてもより多くの学ぶ機会を提供できるようになるのもメリットです。外部サービスであれば、教材コンテンツは数百・数千タイトル用意されているようなサービスもあります。
日頃の業務でもっと知っておきたいなと思ったとき、メンバーにこれを学ばせたいと思ったときに、最適な教材コンテンツをすぐに活用でき、結果として、社員をスピーディーにレベルアップさせることができるでしょう。
時間的コストを削減できる
従来の研修では、次のような時間的コストが発生していました。
- 研修の準備
- 会場の設営・予約
- 施設・会場までの移動
- 研修資料の準備・印刷
- 講師との打ち合わせ
eラーニングは従来の研修と異なり、すべてインターネットで完結するため、移動等の時間コストを大幅に削減することができます。また、自社で作成する場合も教材コンテンツを1回準備すれば、保存して使い回せるので、2回目以降は講師との打ち合わせなど研修の準備工数が減少します。
金銭的コストを削減できる
時間的コストと併せて、金銭的なコストを大きく削減できることもメリットです。eラーニングであれば、従来の対面研修で発生していた次のようなコストを削減できます。
- 施設費・会場費
- 施設・会場までの旅費交通費
- 研修資料の印刷費
- 講師の外注費
とくに全国規模の企業などで集合研修をする場合に、研修の講師費用よりも旅費交通費などが大きな費用となることも珍しくありません。旅費交通費や会場費をカットできるのは、eラーニングの大きなメリットです。
研修の内容を均質化できる
従来の研修では、講師によって研修の質が異なってしまうことがありました。大規模に研修を実施する場合は、講師も複数にしないと、研修を実施しきれないという状況が起きてしまいます。
そうなると、どうしても講師によって研修の質、研修効果に優劣が生じてしまうのです。また、同じプログラムを実施したとしても、講師によって微妙にニュアンスが変わってしまうことも問題となっていました。
しかし、eラーニングでは、最も高品質の講師で一度コンテンツを作れば、誰もがトップレベルの研修をいつでも受けられるようになります。
学習進捗を簡単に管理できる
eラーニングはオンライン上で進行するからこそ、LMSを入れると学習進捗が容易に管理できます。前述の通り、誰がどの動画をどこまで見たか、どのコースを修了しているか、理解度テストに合格したかなどが一元管理できます。
また、アンケートの集計や理解度テストの採点なども自動化できるため、実施や集計の負担が軽減されることになります。
eラーニングのデメリット
eラーニングは上述の通り、さまざまなメリットもありますが、オンライン上での実施だからこそ限界もあります。デメリット・限界をきちんと把握して、従来型の人材育成とうまく組み合わせることが大切です。
- 質疑応答が難しい
- 実技の学習ができない
- モチベーションによって習得具合が左右される
質疑応答が難しい
eラーニングは対面方式の研修と違って一方通行になるため、質疑応答などを通じて理解を深めることが難しいというデメリットがあります。
ライブ配信などリアルタイム形式であれば、チャット等も使いながら、その場で質疑対応することが可能ですが、一般的にeラーニングの大半は動画であり、質疑応答することは難しくなります。結果として、理解度にばらつきが生じたり、理解できていないままになってしまったりすることもあり得ます。
実技の学習ができない
eラーニングは動画での配信であり、かつ遠隔での実施となるため、実技をともなう学習はできません。VRを用いることで実技部分を多少カバーすることもできますが、VRゴーグルが必要だったりカバーできる範囲にも限界があったりします。調理や機械操作、対面での接客など、リアルでの実技・実践部分はeラーニングでカバーすることができない領域です。
受講者のモチベーションで進捗等が左右される
eラーニングは、パソコンやスマートフォンを使って自分で研修を進めていくことになるため、受講者のモチベーションで進捗等が左右されます。時間の縛りがないからこそ便利である一方、各受講者が自分できちんとモチベーションを高め、学習時間を確保しないと学習が進みません。
LMSを使ったり提出物を設けたりしてある程度のカバーが可能ですが、時間と空間をロックして強制的に学習環境を作れる対面研修と比べると限界がある部分です。
eラーニングの限界とデメリットをカバーする施策は?
eラーニングの限界やデメリットをカバーするためには、下記のような施策があります。
□ | ゲーミフィケーションを導入する |
---|---|
□ | メンターやチューターを置く |
□ | ブレンディッド・ラーニングを実施する |
ゲーミフィケーションを導入する
ゲーミフィケーションとはゲーム性(人を夢中にさせる要素)をゲーム以外に応用するやり方です。eラーニングとも相性はよく、学習進度や成績をランキング形式にしたりポイントを与えたりすることなどがよくあるゲーミフィケーションの手法です。
メンターやチューターを置く
精神面で学習を支えるメンターや学習の助言を行なうチューターを置くことで、モチベーションの維持が期待できます。質問コミュニティや有人のチャットサポート、AIチャットボットなどの体制を整えておけば、質疑応答ができないというeラーニングのデメリットの解消も可能です。
また、何人かで動画を見たり、人事が動画を見ながらワークの進行やサポートを実施したりといった方法も考えられます。定期的にオンラインや対面で集まって、eラーニングの確認や質疑といった形式も有効です。
ブレンディッド・ラーニングを実施する
ブレンディッド・ラーニングとは、複数の異なる形態を組み合わせて実施する学習のことです。例えば、eラーニングで知識をインプットしたうえで対面での実技実習を行なう、といったイメージです。複数の形態を上手く組み合わせて使うことで、実技実習の所要時間を減らせるなど、人材育成の効率を向上させられます。
eラーニングのメリット・デメリットをしっかり把握
コロナ禍でテレワークやオンライン会議が普及した中で、改めて人材育成におけるeラーニングの可能性に注目が集まっています。eラーニングはコスト面や学習機会の提供という部分で大きなメリットがあります。
一方で、遠隔、また大半を動画形式で提供するからこその限界やデメリットもありますので、従来型の育成方法とうまく組み合わせて、eラーニングのメリットをうまく生かすことが大切です。
メリットやデメリット・限界を把握して、自社に適切な形で導入することで、人材育成の生産性向上やメンバーのレベル・スキルアップにつなげましょう。