応酬話法は、営業などでのお客様との対話をスムーズに進め、契約や成約に結びつけやすくするためのトーク術です。
ここでは、応酬話法の重要性と6つの具体例、お客様と接する営業担当者などに身につけてもらうためのトレーニング方法をご紹介します。
<目次>
応酬話法とは
応酬話法とは、お客様からの質問、もしくは否定や拒絶を示すお客様に対して、適切に切り返し、抵抗感を和らげるための話法です。
営業訪問や商談など、契約や成約につなげていくことに役立つトーク術として知られています。
営業ではさまざまなタイプのお客様と接しますが、肯定的に受け止めてもらえるときも、残念ながらそうでないときも、お客様の反応には一定のパターンがあります。
どのような質問を受けるかについても同じです。
応酬話法は、よくあるお客様からの言葉のパターンに対し、対話を前向きに進めていく効果のある返答のパターンなのです。
応酬話法の重要性
「ものは言いよう」と言いますが、営業担当がどのように返答するかでお客様の心理は変動します。プラスに作用することもあれば、マイナスになってしまうこともあるでしょう。
もともと、営業の直接的なアプローチは抵抗を感じさせる傾向があり、マイナススタートのケースが多いです。
飛び込み営業などでは、営業とわかった途端に、門前払いということも少なくありません。応酬話法でプラスに転換できるかどうかが、その先の対話の進行を左右する可能性もあります。
営業では、応酬話法が使えるか否かも、成績に大きな影響を与える要素なのです。
応酬話法をマスターすることは、担当者の営業力を上げ、売上を創出していくための重要な対策といえます。
応酬話法の6つの例を紹介
では、応酬話法の具体的なパターンの例をご紹介します。
- 肯定法
- Yes/But話法
- ブーメラン法
- 質問話法
- 例話法
- 聞き流し法
肯定法
肯定法は、お客様の言葉を否定せず受け止める話法です。ネガティブな言葉に対しても、「そうですよね。〇〇ですよね。」と言われたことを繰り返します。バックトラッキングとも言います。
お客様には「きちんと聞いてもらえている」と感じられるため、信頼を得やすく、あとに続く話も聞いてもらいやすくなります。
「であれば…」や「では」で続けると、お客様の意見を尊重する姿勢を崩さずに伝えることができるでしょう。
Yes/But話法
Yes/But話法は上記の肯定法の発展バーションです。まずは、「そうですよね。〇〇ですよね。」と返し、その後に逆説を伝えます。
「そうですよね。〇〇ですよね。でも、~ならどうでしょう?」など、はじめの肯定をクッションにすることで、抵抗が和らぐのです。
この逆説が営業として伝えたい部分ですが、それをはじめに伝えてしまうと、「否定された」という感情が喚起されて、その後に話を続ける意欲を失せさせてしまうでしょう。
ブーメラン話法
ブーメラン話法とは、お客様がマイナスな発言をした場合に、「だからこそ~なんです。」と切り返し、興味を持たせたり、断る理由を無くしたりする方法です。
その後に「なぜかというと~」と続けることで、なぜ重要なのかをより強く伝えることができます。
商品を購入する際などは、誰しもマイナスな点を考えてしまいます。その思考を、プラスに持っていく効果があります。
質問話法
営業では、「〇〇させてください。」「〇〇を聞かせてください。」などのフレーズをよく使います。このような場合に、質問でお客様に意思決定を促す方法です。
押し付け感が弱まり、抵抗感も薄れさせる効果があります。
「〇〇させていただいてもよろしいでしょうか?」「〇〇についてお伺いしてもよろしいですか?」と質問形にして、YESかNOかを打診するのです。
「〇〇をおすすめします」ではなくあえて選択肢を挙げ、お客様に選んでもらうのも効果的でしょう。
例話法
例話法とは、たとえ話を盛り込んで説明する話法です。同業他社や同じような状況のお客様の好事例や成功事例を入れることで、よりクリアにイメージしてもらえるようになります。
実際に効果のあった事例を出すことで自社や、自社の商品・サービスに対する信頼度も高めることにつながるのです。
契約上の守秘義務に触れないことに考慮しつつ、前年比や○%アップ/削減など、具体的な数値を示せるのが理想です。
聞き流し法
お客様の否定的な言葉や拒絶があっても、同じ重みで受け止めず、文字通り聞き流して、「ところで…」などと話を切り替えていく話法です。
そのまま受け止めて何か返答しようとすると、言い訳がましくなったり、否定感に拍車をかけるだけになったりしそうなときに使えます。
ただし、「話が通じない」「聞いてもらえていない」「一方的」と受け止められる可能性も秘めているため、多用は禁物です。
応酬話法のトレーニング方法とコツ
では、営業担当者などに応酬話法を身につけさせるには、どのようなトレーニングの方法が有効なのでしょうか。重要なことは、頭で理解するだけでは本番で発揮することは難しい、ということです。
できるだけ多くの実践的なトレーニングを取り入れ、体感で応酬話法のスキルを浸透させましょう。
話の流れのマニュアルを作成する
まずは、お客様との対話のパターンの種類を知ってもらうことが先決です。一連のマニュアルがあると、営業メンバーも理解を深めやすくなります。
よくあるパターンには、もちろん一般的なものも含まれますが、企業ごと、もしくは、扱っている商品・サービスごとに微妙な違いがあるものです。
営業チームで独自に作り上げ、活用していくことがポイントになってきます。
ロールプレイングでの実践
営業スキルの向上に向けた研修の手段の一つに、ロールプレイングがあります。応酬話法は、お客様と対話する場面を想定してのロールプレイングでの練習も効果があります。
シミュレーションの範囲に留まるように思えますが、目や耳を刺激し、口を動かし、頭の中のイメージとすり合わせながら進めるロールプレイングは、本番でも思い出しやすいのです。
自分の練習だけでなく、他のメンバーの練習さえ役立ちます。ロールプレイング研修では、マニュアルにプラスした補足事項を伝えられるのもメリットです。
部下や後輩の商談に同行してチェック
部下の応酬話法のレベルがどれくらいに達しているかは、本番の訪問や商談に立ち会ってみると分かります。
逆の言い方をすれば、マニュアルのみ、ロールプレイングでの実践トレーニングのみでは、実際の力量を測ることはできないでしょう。
本番でどれくらいの対話レベルに達しているかが、営業成績にも反映されてくるでしょう。
本人は、その場の対話に集中しているため、客観的な振り返りが難しいことも多いです。
ときには上司や先輩が同行して、ブラッシュアップのための改善ポイントを見定める機会も確保してみてはいかがでしょうか。
おわりに
営業担当者が応酬話法を駆使できるようになると、営業活動でのお客様とのコミュニケーションも、さらにスムーズに進んでいくはずです。
営業メンバー全員の応酬話法のレベルを上げることは、会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。
本番も含めて、応酬話法は実践トレーニングの場数がものをいいます。実際には、マニュアルの暗記のような小手先の話術ではうまくいきません。
お客様からの信頼と確かな業績を手に入れるために、できるだけ多くの機会を提供していきましょう。