近年では、ECサイトやWebマーケティングの普及によって、消費者行動が大きく変わってきています。
こうしたなかで、営業担当者の役割や取り扱いサービスなどにも大きな変化が生じるようになりました。
今のような時代に、営業担当者が安定的に成果を出し続けるには、営業研修を通じて高い営業力、特に提案営業やソリューション営業の力を身につける必要があります。
記事では、まず、営業研修の目的と必要性、営業で陥りやすい失敗例を確認します。確認したうえで、営業研修を提供する研修会社の知見も踏まえて、営業研修の具体例と成功ポイントを解説します。
<目次>
営業研修の目的と必要性
営業研修の目的は、営業メンバーのパフォーマンスを向上させて、企業の業績アップにつなげることです。
営業の仕事は、顧客接点の最前線であることから、企業の業績向上や成長に欠かせない要素になります。
ただし、近年では、顧客自らインターネットを使って情報収集を行なうことが一般的になるなかで、営業の難易度も上がるようになりました。
たとえば、単なる御用聞きはECに吸収され、一般的なサービス説明はインターネット上でのやり取りと資料送付が当たり前になっています。
やりとりのなかで、生身の営業に求められることは、顧客の課題を顕在化したり、サービスの利用イメージを顧客に合わせて説明したりする提案営業やソリューション営業に変わっています。
こうした時代に、各メンバーが営業活動を行ない、組織から落とし込まれた目標を達成し続けるには、それぞれの課題に応じた営業研修を受講しスキルアップにつなげる必要があります。
営業で陥りやすい失敗例
営業メンバーがなかなか成約につなげられない場合、以下のような課題を抱えている傾向があります。
知識不足・準備不足
以下のような知識不足や準備不足の状態で営業活動をした場合、お客様を落胆させることで信頼関係の構築や信頼を得た先の商談に支障が出やすくなります。
- 自社の商品・サービスの知識を表面的にしかインプットしていない
- 顧客情報や法人情報のインプットをしていない
- 自社製品には詳しいが、競合や業界全体のことには無関心である
- 新製品のパンフレットやノベルティなどを持ち歩いていない など
自分本位な営業
営業活動は、お客様本位で進めていくことが基本です。
特に最近は、一般的な情報であれば、インターネット上の情報収集で十分になっている時代だからこそ、いまのお客様は「自分のための」提案や説明を求めています。
以下のような自分本位の営業をした場合、お客様のなかにネガティブな印象が生まれることで、信頼関係の構築も難しくなるでしょう。
- お客様の話をしっかりと聴かず、商品の説明ばかりをしてしまう
- お客様のニーズよりも、自社の都合を優先しがちである など
顧客ニーズの決めつけ
顧客ニーズの決めつけは、自分本位な営業とも関係することです。
たとえば、営業担当に商品購入の相談をするお客様には、以下のように多彩なニーズがあります。
- 最新機能までは要らないから、なるべく安くてコスパが良いものを購入したい……
- お年寄りも使うので、簡単に使えるものが良い……
- スピードよりも質重視でお願いしたい…… など
一方で、営業担当に「旧モデルより新製品のほうが絶対に良いに決まっている」や「このぐらいの機能ならお年寄りでも絶対に使える」などの強い思い込みがあると、先述の顧客ニーズを無視することになります。
無視した結果、お客様のなかに不信感が生まれてしまうでしょう。
営業研修の具体例
今から営業研修を実施していく場合、どのようなプログラムを取り入れれば良いかわからないこともあるでしょう。本章では、営業研修で実施されることの多いプログラム例をいくつか紹介します。
ビジネスマナー研修
お客様との信頼関係を構築し、自分の話に耳を傾けてもらえるようになるためには、以下のビジネスマナーができていることが大前提になります。
- あいさつ
- 身だしなみ
- 名刺交換
- 電話応対
- ビジネスメールの書き方
- コミュニケーションツールの使い方 など
近年では、ビジネスカジュアルの考え方が普及し、また、オンライン商談なども一般化したなかで、ビジネスマナーも昔ほど厳格ではなくなっていることも多いです。
ビジネスマナーは新人研修などのなかでカバーされるものですが、営業担当者は、異なる世代や階層と接するからこそ、基本的なビジネスマナーの「型」をしっかりと身につけておく必要があります。
営業フレームワーク研修
営業活動を受注につなげやすくするには、まず、営業フレームワークの研修を通じて、自社の営業活動における全体像(セールスステップ)を教える必要があります。
営業フレームワークは、以下の3つが一般的でしょう。
- 《1.営業活動全体のプロセス(広義の営業活動)》
- ・リード(見込み客)獲得 ⇒ 商談創出 ⇒ 案件化 ⇒ 受注 ⇒ 利用 ⇒ リピート
- 《2.商談のプロセス(狭義の営業活動)》
- ・アイスブレイク ⇒ ヒアリング ⇒ 提案 ⇒ テストクロージング ⇒ クロージング
- 《3.商談のフレームワーク(顧客の購買心理)》
- ・不信解除 ⇒ 不要解除 ⇒ 不適解除 ⇒ 普及解除
営業フレームワークの研修をすることで、全メンバーが同じ流れで営業活動を実施できるようになります。
営業のマネジメントなどをするうえでも、共通言語を持ってコミュニケーションができる効果は大きなものです。
関連サービス資料を
ダウンロードする

...
ヒアリング研修
高いヒアリング力は、お客様との関係構築や相手のニーズに合った提案の土台になるものです。ヒアリング力は、傾聴力と質問力ともいいかえられます。
ヒアリング研修では、まず、“傾聴”に関する以下の内容を教えたうえで、会話の割合を「3:7」にすることや、ミラーリング・オウム返し、相手の世界や感情を確認する……などの方法をトレーニングしていくとよいでしょう。
- 「聞く」と「聴く」の違い
- 傾聴における3つの種類
- 営業活動におけるヒアリングの重要性 など
プレゼンテーション研修
お客様に自社製品・サービスの魅力を理解してもらい、成約などの意思決定につなげるには、プレゼンテーションスキルを高めることも大切です。
プレゼンテーションの研修では、ゴールの明確化や基本設計の重要性などを教えたうえで、実践のなかで「人を動かす方法」を身につけていくとよいでしょう。
関連サービス資料を
ダウンロードする

...
商材勉強会
いまの時代は、メーカー公式サイトやレビューサイトなどに、自社製品やサービスの情報が普通に掲載されているため、インターネットにアクセスできるお客様は、こうした情報を入手済みであることも多いでしょう。
そのため、お客様の心を動かす説明・提案をするには、以下のような勉強会を通じて自社の商材を深く知ることも大切になります。
- 多様な顧客事例
- 使うことでえられる具体的な効果や事例
- 自社製品の活用術
- デザイナーや開発担当者などから開発ストーリーを教えてもらう など
事例勉強会
事例勉強会とは、いわゆるケーススタディのことです。以下のような事例に対して「どう対応するか?」をみんなで研究することで、提案内容のアイデア創出や、メンタル強化が可能になります。
- 新製品に買い替えするかを迷っているお客様
- 競合Aの製品に関心を持っているお客様
- 自社製品に関心を持ってはいるが、寡黙でラポール形成が難しいお客様 など
ロールプレイング大会
ロールプレイング大会は、「お客様役」と「営業役」に分かれて営業活動の疑似体験をしながら、ラポール形成の方法やセールストークなどを身につけるというものです。
疑似体験を見ている上司やほかのメンバーからコメントをもらうことで、自分も知らなかった癖や商談がうまくいかない理由などが見えてくることもあります。
営業研修を効果的にするために、ロールプレイングは不可欠です。
営業研修を成功させるポイント
営業研修を通じてそれぞれのスキルを向上させ、成約率アップなどの成果につなげるには、以下ポイントを大切にしながら研修を進める必要があります。
課題を特定する
繰り返しますが、営業研修で高めるべきスキルは、人によって大きく異なります。そのため、営業研修を導入する場合、まず以下のような個人の課題を特定することが大切になります。
- 顧客ニーズのヒアリングが苦手だ……
- ラポール形成までは得意だが、商談のフィニッシュまで到達できない……
- 商材が多すぎて覚えられない…… など
また、ときには営業同行などを行ない、現場で起きていることを知ることも非常に大切でしょう。
現場に即した研修内容や事例
営業は、さまざまな職種のなかでも、特に「明確な業績」を追いかけている仕事です。だからこそ研修内容に関しても、自分の仕事にすぐ活かせることを求める傾向が強くあります。
したがって、営業研修の内容や事例は、自社の営業現場ですぐ使えるものにアレンジすることが大切です。
特に外部の研修会社に依頼する場合、自社の業界や営業スタイル、商談の特徴などを踏まえた事例やプログラムにしてもらうことが必須です。
ロールプレイングの実施
営業経験がない新人や若手の営業スキルを高めるには、ロールプレイングを繰り返し行なうことが有効です。
また、新たな商品説明や切り返しのトークなどを身につけるうえでは、知識としてインプットするだけでなく、実際に口に出して現場で使えるようにすることが大切となります。
以上のことから考えても、営業研修を効果的なものにするためには、ロールプレイングの実施が不可欠でしょう。
研修外でも、たとえば、入社1~3年ぐらいまでの新人や若手には、朝の時間帯などを使って週1回のロールプレイング研修を実施してもよいでしょう。
また、ベテランのセールストークや傾聴力を見せるために、営業メンバー全員で四半期に一度のロールプレイング大会などを実施するのもおすすめです。
共通言語の構築
営業の仕事において、接する顧客は千差万別です。だからこそ、現場で営業のマネジメントをしたり、営業の指導をしたりするうえで共通言語の存在が大切です。
共通言語の構築では、新人からベテランまで誰もが理解できるものをつくり、浸透させることがポイントです。
共通言語があると、上司からメンバーへのフィードバックや日報作成などにおいて、以下のように簡潔な表現で認識を共有しやすくなります。
- 上司からメンバーへの質問:「4つの不」はどこまで解除できているの?
- メンバーの日報内容:「ラポール形成」まではできたので、次は、顧客ニーズを拾い上げていきます など
特に商談のフレームワーク、見込管理の要素などについて、共通言語を構築することが重要です。
実践行動への落とし込みとフォロー
営業研修で学んだ内容は、客先やテレアポなどの現場で実践できてこそ、“身についた”ということになります。研修内容を身につけ、営業活動の成果につなげてもらうためには、研修内と研修後で以下2つのフォローアップをすることが大切でしょう。
- 1.「自分の営業活動にどう落とし込めそうか?」を確認する(関連付け)
- 2.次回の研修で「研修内容をどのように実践したか?」を発表してもらう(宿題)
上記のように次回までの宿題や発表があると、研修で学んだ内容の実践率も高くなります。
また、たとえば、習ったことを営業活動で実践しても、実践による成果や失敗について何も考えなければ、本当の意味で“身についた”の状態には至りません。
営業研修の内容を確実に身につけていくには、振り返りの習慣が大切になります。
経験から振り返りを通じて学び・成長につなげる以下のステップを、「コルブの経験学習モデル」と呼びます。
経験から学ぶ4つのステップ(コルブの経験学習モデル)
- 1.経験:実際にやってみる
- 2.省察:経験したことを振り返り、気づきを整理する
- 3.概念化:気づきから学びをえる
- 4.試行:概念化したことを、次の経験で試してみる
たとえば、営業研修で、ヒアリング方法やラポール形成の重要性などを学んだメンバーがいたと仮定します。
今のメンバーが成長するまでのステップをコルブの経験学習モデルに当てはめると、以下のようになります。
- 1.経験:研修で習ったヒアリング方法を使い、お客様の悩みや問題に耳を傾けた
- 2.省察:「話を聴いてくれてありがとう!」と感謝され、距離感が一気に近くなった
- 3.概念化:相手の話にちゃんと耳を傾けると、信頼関係の構築がしやすくなるようだ
- 4.試行:来週も「聴くことメイン」で営業活動を行なおう
振り返りは、日誌・日報や定期的な1on1などの方法で仕組み化していくことが大切となります。
まとめ
近年では、ECやインターネットが発達したからこそ、営業に求められるスキルは高まりつつあります。
今の状況を踏まえて、企業側では、営業研修などを通じて、提案営業やソリューション営業を実践できるようにする必要が生じています。
営業研修によって、以下のようなスキルを身につけると、自分本位の営業や顧客ニーズの決めつけ、知識不足などの失敗も起こりにくくなるでしょう。
- ビジネスマナー
- 営業フレームワーク
- ヒアリング力
- プレゼンテーション力
- 商材知識 など
営業研修を成功させるには、以下のポイントを大切にすることが有効です。
- 課題の特定
- 現場に即した研修内容や事例
- ロールプレイングの実施
- 共通言語の構築
- 実践行動への落とし込みとフォロー
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、グローバル企業でも導入されている営業フレームワークに基づく提案営業研修、また、プレゼンテーション力を向上させるオンライン研修を提供しています。営業研修は1名からの派遣も可能になっています。
効果性の高い営業研修に興味がある方は、以下のページをチェックしてみてください。
関連サービス資料を
ダウンロードする

...
関連サービス資料を
ダウンロードする

...
関連サービス資料を
ダウンロードする

...