
くり返しになりますが、エビングハウスの忘却曲線でよく誤解されるのは、エビングハウスの忘却実験は「無意味な情報」を記憶させたものであり、実際に実務ではここまで忘れるわけではない点です。
したがって、人材育成や教育研修を考える際に、忘却曲線のパーセンテージを、そのまま研修内容などの忘却率に当てはめられるわけではありません。
ただし、人材育成をするときには、「人は忘れる。特に、たった一日でも一気に忘れてしまう傾向にある」ということを前提に研修設計等を進める必要がありますし、下記の発見は育成設計に反映できるものです。
<人材育成に反映できるエビングハウスの発見>
- 意味あるものや重要なものは忘れにくく、無意味だと感じるものはすぐに忘れる
- 学習に時間をかけると覚えられる情報量が増え、復習を重ねることで忘れにくくなる
- 一度にたくさんではなく、時間をかけて少しずつ覚えたほうが効率的である
学習ピラミッドを意識した研修設計
人材育成と「忘れやすさ」を考えるうえで、エビングハウスの忘却曲線と並んで、学習ピラミッドの概念が有名です。学習ピラミッドは、アメリカの国立訓練研究所がどのような学習方法が頭に残りやすいかを分類し、ピラミッド型にまとめたものです。

<学習の効果性>
- 講義(Lecture):5%
- 読書(Reading):10%
- 視聴覚(Audiovisual):20%
- 実演(Demonstration):30%
- ディスカッション(Discussion Group):50%
- 練習(Practice Doing):75%
- 他者に教える(Teaching Others):90%
学習ピラミッドを見ると、講義や動画視聴といった受け身の学習方法では研修内容の定着率が上がりにくいことがわかります。そのため、忘れにくい研修を目指すうえでは、学んだ内容を他の人に教えたり、グループディスカッションを取り入れたりといったように、能動的で体験型のカリキュラムにすることがおススメです。
学習ピラミッドは、以下のページでも解説しています。気になる方は、確認してみてください。
習慣化による定着促進
人間の意識的な実行には、限界があります。したがって、研修で学んだことを、無意識の領域で実行できるようにすると最も効果的です。そのために必要となるのが、習慣化です。
一般的には、新しい行動を21日間繰り返すと習慣化の入り口に立つ。そして、3ヵ月の実行で定着するといわれています。
内容によっても期間が変わってくる部分はありますが、研修内で実践行動を決めるときには「1回だけやること」ではなく、できれば「毎日やること」を設定して習慣化を目指すと定着はより有効です。
フォロー研修の効果的な実施方法
エビングハウスの忘却曲線が示すように、人間の脳の構造上、学習内容を忘れていくのは仕方がないことです。したがって、研修で教えた内容の定着率を高めるためには、研修が終わってから一定期間経ったあと、同じメンバーを再度集めてフォロー研修を組み込むことが有効です。
フォロー研修の目的と内容は、対象者や開催時期によっても変わってきますが、以下を参考にして実施することがお勧めです。
研修の2週間後:
それぞれの参加者が、研修で学んだことをどのように実践したか、どんな成果や反応が得られたか、どんな課題や問題があったかを実践報告会で発表します。聞き手は他の人がどのように実践したか、どんな気づきがあったかを聞くことが学びと復習になります。また、発表者にもフィードバックやアドバイスを与えましょう。早期に実践発表会を実施することで、復習になると共に、実践のモチベーションを高めることができます。
研修の1ヵ月~3ヵ月後:
実践によって生まれた成果や成功・失敗を振り返りましょう。実践によってどのような変化や成果があったかのかを、数値や事実に基づいて検証します。そして、検証した結果をもとに、実践の継続や改善、新たな挑戦などの計画を立てるとよいでしょう。実践の成果が明確になると共に、当初に学んだ内容を思い出し、次の実践精度向上へとつながります。
研修の半年後:
実践の全体的な振り返りを行い、半年間で得られた成果や学び、課題や反省、感想などを共有します。研修で学んだことを定着させるために、今後も継続して行うべきことや、さらに学びたいことなどを明確にします。このことを通じて、研修の意義を確認し、次のステージに進む準備が整うでしょう。
研修の1年後以降:
定期的に研修内容を思い出させるために必要なステップです。研修で学んだことを忘れないように、メールやSNSなどで研修の要点やポイントをリマインドします。また、研修で学んだことを活かしている事例や成功事例を紹介します。このようにすることで、研修の効果を持続させることができます。また、受講者がある程度の人数になってくると、活用や成功事例を共有し横展開することが更なる成果へと繋がります。また、学んだ内容の共通言語化などにも役立つでしょう。