オンライン研修の方法と成功させるやり方・ポイントとは?

オンライン研修の方法と成功させるやり方・ポイントとは?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言等の影響で、「オンライン研修」の普及が急速に進みました。オンライン研修の導入・実施事例も増える中、最適なオンライン研修のやり方を模索されている企業も多いのではないでしょうか?

 

本記事では、オンライン研修の概要と、メリット・デメリット、そしてオンライン研修を成功させるためのポイントを解説します。

<目次>

オンライン研修とは?

まず、オンライン研修の概要と主な種類について解説します。

 

オンライン研修の概要

オンライン研修とは、パソコンやスマートフォンなどの端末を介してオンライン上で実施する研修です。オンライン研修は、会場などへの移動が不要となるため、移動時間が必要ない、離れた拠点に勤務する社員でも参加できるなどのメリットがあります。

 

また、パソコンやスマートフォンなどの端末と通信環境さえあれば、場所を問わずに開催できること、そして会場費や移動費などのコストがかからないこともオンライン研修の大きなメリットです。

 

オンライン研修が注目される背景

オンライン研修が急速に普及した背景には、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の懸念により、大人数で集まって行なう集合研修の実施が難しくなったことです。緊急事態宣言等の発令、そして、2020年4月に発令された緊急事態宣言は新人研修の実施時期とも重なった中で、3密を避けるためオンライン研修が注目を浴びることとなりました。

 

株式会社デジタル・ナレッジが2020年に実施した調査でも、新型コロナウイルスで「社員研修が実施できなくなった」企業が74.7%に上ったと影響の大きさがよく分かります。

 

株式会社デジタル・ナレッジ|オンライン研修実施状況についてのアンケート調査

 

オンライン研修の種類

オンライン研修は、「リアルタイム型(ライブ配信型)」と「録画型(オンデマンド型)」の2種類があります。それぞれを確認しておきましょう。

 

1つ目の「リアルタイム型(ライブ配信型)」は、リアルタイムで講義を配信しながら実施するタイプのオンライン研修です。ライブ配信型の場合、ツールによっては集合研修のように受講者同士のグループディスカッションなど双方向のコミュニケーションが可能です。

 

一方で、リアルタイム型で実施する場合は日時を合わせて開催する必要があるため、好きなタイミングで受講したり、繰り返し復習したりができないデメリットがあります。ライブ配信型のオンライン研修では、WEB会議ツール「Zoom」などが主に利用されています。

 

2つ目の「録画型(オンデマンド型)」は、あらかじめ録画されたコンテンツ(動画など)を視聴して受講するタイプのオンライン研修です。

 

録画型の場合、受講者が好きなタイミングで何度も繰り返し受講できる点がメリットです。一方で、講師への質疑応答や受講者同士のディスカッションといった、双方向のコミュニケーションが図れないというデメリットもあります。

 

そのため、録画型での配信はコンプライアンス研修や情報セキュリティ研修といった知識のインプットが目的の研修でよく使われています。また、リアルタイム型で実施したオンライン研修を録画して、参加できなかったメンバー向けに公開する、自社の教育コンテンツとして蓄積することも増えています。

オンライン研修の実施に必要なツール

オンライン研修を実施する際は、いくつかのツールが必要になります。本章ではオンライン研修に必要なツールを簡単に確認します。

 

ハードウェア

オンライン研修では、パソコンなどの端末、およびWebカメラ、マイクが最小限必要です。これらのうち、受講者側のWebカメラやスピーカーに関しては、パソコンやスマートフォン内蔵の物でも構いません。

 

ただし、グループワーク等を参加するような場合は、マイクはパソコン内蔵のものでは少し使いづらく、イヤホンやインカムなどを利用したほうがよいでしょう。

 

また、講師・運営側は、受講者側よりもしっかりした機材を整える必要があります。オンライン研修は音声品質が重要になるため、講義中にノイズが入ると研修満足度に大きく影響してしまいます。従って、クリアな音声をやり取りできるノイズキャンセラー付きのインカム等がおすすめです。

 

また、ノートパソコンで内蔵のカメラを上からのぞき込むような形になると、画面映りも悪くなり印象としてもあまりよくありません。

 

気心が知れたメンバーで実施する社内研修程度であればそれでも良いですが、きちんとした研修として実施したい場合には、外付けで目線の高さに設置できるWebカメラ、鮮明な画面映りにするための撮影用照明、必要に応じて仮想背景用のグリーンバックを用意することがお勧めです。

 

ソフトウェア

Web会議用のソフトウェアがオンライン研修には必要です。Web会議ツールの機能を利用することで、双方向なコミュニケーションを図ることができます。

 

また、例えば代表的なツールであるZoomでは、一時的に研修の参加メンバーを少人数にグループ分けして、グループディスカッション等ができる「ブレイクアウトルーム」機能を標準で備えています。契約プラン等にもよりますが、ブレイクアウトルームと同様の機能は、他の主要なWeb会議ツールにも備えられています。

 

オンライン研修で使われるWeb会議ツールは、Zoom以外にMicrosoft Teams、Ciscoが提供するWebex、また、Google meetなどがあります。

 

なお、さまざまなツールを使って研修を実施してきた経験を踏まえると、ブレイクアウトルームの使い勝手や一画面で一覧できる受講者人数など、2022年時点ではZoomが最もオンライン研修での使い勝手は良いと感じます。

 

なお、オンライン研修サービスは下記の記事でわかりやすく比較されていますので、よろしければご参考ください。

オンライン研修サービス6社徹底比較

 

オンライン研修のメリットとデメリット

オンライン研修には、集合型研修には無いメリットがある反面、デメリットもあります。
本章では、オンライン研修のメリットとデメリットをそれぞれ確認しておきます。社員研修等を考える上で、何をオンライン化して何を対面で残すか、オンライン研修の不足点をどう補う必要があるか等を考える参考にしてください。

 

メリット①場所を問わずに受講できる

メリットの1つ目は、インターネットに接続できる環境と機器があれば、場所を問わずに受講できることです。全国に支店が散らばっている企業でありがちな研修機会のバラツキといった問題も無くなります。また、移動時間も生じないため日程を調整しやすい点もメリットです。

 

メリット②コストの削減

一か所に集まって行なう集合研修の場合、研修実施費用のほかに、交通費や宿泊費、会場費といったコストが発生します。オンライン研修を実施することで、これまで集合研修にかかっていたコストを大幅に削減することができます。

 

メリット③録画の容易さ

対面研修を撮影して録画しようと思うと、投影画面を撮影するカメラと動き回る講師を撮影するカメラの2台が必要、音声をクリアに録ろうと思うとピンマイクなどの機材も必要、撮影したデータをPCに落として編集する手間が生じるなど、機材や手間がかかります。

 

しかし、オンライン研修であれば、殆どのWeb会議ツールに録画機能があり、共有している投影資料と講師の画面をボタン一つで動画化することができます。動画を蓄積して社内に公開することで、自社独自の教育コンテンツを簡易に整備することができます。

 

デメリット①受講者の様子を把握しづらい

集合型研修の場合、講師が受講者の様子を見ながら、伝え方や進行ペースを柔軟に調整しながら進めることができます。しかしオンライン研修では、カメラで写っている範囲しか見ることができないため、受講者の様子を詳細には把握しづらいデメリットがあります。

 

受講者の目線や表情によって納得度や理解度を探る、興味度や集中度に応じて進行ペースや内容をアレンジするといった一種のインタラクティブな講義進行が難しくなります。

 

デメリット②実習やトレーニングには不向き

オンライン研修ではツールの機能を活用することで、少人数のグループディスカッションや、チャット等の双方向性のあるやり取りを実現することが可能です。ただし、可能なのはあくまでカメラに映る範囲と音声によるコミュニケーションまでです。

 

したがって、立ち居振る舞いや身体を使ったジェスチャーなどが必要になる実習やトレーニングには不向きです。もちろん何か機械に触ったり、現場で動きながら実施したりするような実習も現時点では実施できません。

オンライン研修を成功させるやり方とポイント

オンライン研修を効果的に実施するポイントは、対面研修のノウハウと共通する部分も多々あります。一方で、オンライン特有のポイントもあります。本章では、主にオンライン特有のポイントにフォーカスして、オンライン研修を成功させるためのポイントを紹介します。

 

①事前の準備・確認

オンライン研修を円滑に進行するためには、事前の準備・確認が重要です。講師・運営側は研修実施前に、ツールや通信環境、マイクやWebカメラなどの動作を確認するようにしましょう。本番と同じ流れでリハーサルをしておくと安心です。また、テキストやワークシートがある場合は、PDFなどで受講者に事前配布しておくとよいでしょう。

 

対面研修であれば、講師も受講者も同じ空間にいますので、何かのトラブルがあっても講師の機転次第でさまざまな対応が可能です。たとえば、プロジェクターが壊れていても、ホワイトボードを使うことで研修を進行することも可能でしょう。

 

しかし、オンラインの場合、通信を介して研修を実施しますので、トラブルが対応した際のリカバリーに限界があります。その意味でも、事前に準備・確認して、トラブルが起きないようにする工夫が必要です。

 

②受講者への操作レクチャー

受講者の中には「オンライン研修は初めて」という人もいるでしょう。まず、トラブルが生じないようにするためには、研修で使うツールの確認、事前アクセスなどを徹底することです。参加者が普段からWeb会議ツールを使っていない場合は、とくに丁寧に対応が必要です。

 

また、Web会議ツール自体には問題なくアクセスできたとしても、ツールの操作方法などに不慣れなまま研修が始まってしまうと、進行についていけなくなる恐れも出てきます。

 

そこで、研修冒頭で15分程度レクチャーの時間を設けると、不慣れな参加者も安心して受講できます。レクチャーでは、音声映像のオンオフのルール、チャットやリアクションの説明のほか、アイスブレイクを兼ねてブレイクアウトルームで自己紹介をさせるなど、ツールを一通り体験してもらうことをお勧めします。

 

③万が一の事態に備えたサポート担当者

準備を念入りにしても、通信状況の不具合や配布した資料が開けない…といったトラブルが生じる可能性もゼロではありません。対面研修では一部の受講者でトラブルが起きても講師が臨機応変に対応しやすいですが、オンライン研修の場合、講師がトラブル対応するとその間は進行が完全にストップしてしまいます。

 

そこで、講師以外でツールや研修運営に慣れている人にサポート担当者として待機してもらうことをお勧めします。万が一の事態が生じても、サポート担当者が対処することで、講師も受講者も安心して研修に集中できるようになります。

 

④タイムスケジュールと進行の工夫

オンライン研修で長時間画面に向かっていると、目や肩に疲れが溜まり集中力が落ちてしまいます。終日研修等であれば、対面での実施よりも時間を短めにするなど、プログラム全体を圧縮する工夫が必要です。

 

タイムスケジュールをコンパクトにまとめるには、事前にテキストを配布する、各自セルフワークを行なったうえで研修に参加してもらう等が効果的です。そして、時間を短くして資料を事前配布したりする分、オンライン研修中はグループワークやディスカッションに時間を割くことで濃い時間にしましょう。

 

また、全体の時間を短くすると同時に適度に休憩を入れたタイムスケジュールにすることも大切です。対面であれば90分程度ノンストップで進行することも可能ですが、オンライン研修であれば45~60分に1回の休憩が目安です。

 

⑤顔出しでの参加

オンライン研修は、音声とチャットのみでも参加できますが、原則「顔出しでの受講」が望ましいでしょう。顔出しにすることで、講師側が受講者の様子を把握しやすくなりますし、参加者の緊張感と集中力も高まります。グループワークでも相手の顔が映っていることで、コミュニケーションが活発になります。

 

顔出しでの参加をアナウンスする際、「部屋の様子をカメラに映したくない」という人もいるかもしれません。その場合は、バーチャル背景を設定すれば対応できるので、受講者に事前にレクチャーしておくとよいでしょう。

 

⑥研修後のフォローとフィードバック

オンライン研修では、講師が受講者一人ひとりの様子を把握しづらい部分があります。そのため、実施後に理解度テストやアンケートの提出、後日改めてのフィードバック、などの研修後のフォローやフィードバックのアクションを実施すると効果的です。

 

またアンケートを通じて集めた受講者の声も重要です。今後の研修のブラッシュアップの重要なヒントとして、受講者の声を活用していきましょう。

 

⑦反転学習の導入

反転学習を取り入れることも、研修効果を高めるポイントの1つです。反転学習とは、タイムスケジュールの工夫で紹介したように、事前にテキストや動画などを共有して、基本知識やセルフワークをしてもらったうえで研修に参加してもらうやり方です。

 

事前学習による知識のインプットがあれば、研修内でディスカッションやグループワークなどのインタラクティブなことに、より多くの時間を割くことができます。双方向性のある内容を盛り込むことがより重要になるオンライン研修は反転学習の導入が大切です。

 

⑧双方向性のある講義

オンライン研修が講師による一方通行のレクチャーになると、一気に参加者の集中力が落ちます。前述の反転学習等を使って、全体としては講師による一方的なレクチャーが短時間になるように工夫が必要です。

 

ただし、反転学習をきちんと実施するためには、事前学習の資料をきちんと学んできた参加者と目を通していない参加者が混じらないことが大切であり、事前に学習管理をする必要があります。現実的には、そのような管理をする余裕がない等もあり、ある程度レクチャーで時間を割くことも多々あります。

 

その場合、受講者の集中力を維持するためには、10~15分に1回程度は講義に双方向性を盛り込むことがお勧めです。双方向性の例としては、質問する、誰かを指名して答えてもらう、受講者にジェスチャーで反応してもらう、少人数のブレイクアウトルームで意見交換する、チャットでコメントを一斉に流してもらうなどです。

まとめ

本記事では、オンライン研修の概要や必要となるツール、またオンライン研修を成功させるためのポイントを解説しました。

 

オンライン研修はデメリットや限界もありますが、うまく活用することで人材育成に関するコストを下げ、学ぶ機会を充実させることができます。
研修効果を高めるためには、事前準備や運営の工夫、タイムスケジュールの組み方、反転学習の導入、インタラクティブ性を強くした進行など、いくつかポイントがあります。

 

記事で紹介したノウハウも参考にして、効果的なオンライン研修の実施に繋げてください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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