LMS(学習管理システム)とは?利用のメリットや注意点・主要機能・おすすめLMSを紹介

LMS(学習管理システム)とは?利用のメリットや注意点・主要機能・おすすめLMSを紹介

2020年、コロナ禍の中でオンライン研修が急激に浸透したことを受けて、多くの企業でLMSと呼ばれるシステムが導入されています。LMSはオンラインでのe-ラーニングを管理したり、オンライン研修をより効果的におこなえるようにしたりするための学習管理システムを指します。当初は、コロナ禍における緊急事態宣言に端を発して、やむを得ず導入されたオンライン研修でした。

 

しかし、世の中で一斉に実施され、研究が進んだことで、コストや移動時間の削減効果、反転学習やフォローアップをおこないやすいこと、研修効果を高めるためのマイクロラーニングを実施しやすいこと等が改めて注目されています。結果として、アフターコロナにおいて、オンライン研修は一定のシェアを持って継続される、また対面研修と組み合わせた新たな形で確立される見込みです。

 

その中で、オンライン研修を効果的にするために欠かせないのがLMS(学習管理システム)です。記事では、LMSとは何か、どのような目的で導入され、どのような機能があるのか、導入した場合にどのようなメリットがあるのかと共に、主要なLMSを解説します。オンライン研修に取り組むことをお考えでしたら、ぜひご一読ください。

<目次>

LMS(学習管理システム)とは何か?

LMSは、主にe-ラーニングやオンライン研修で用いられるシステムです。オンライン研修における、動画の管理、視聴状況、レポートの提出、受講管理等の煩雑な研修運営を一元管理すると同時に、研修効果を高めることができます。この章では、LMSの概要やLMSを導入するメリットを解説します。

 

 

LMSとは?

LMSは、Learning Management System(学習管理システム)の略称で、e-ラーニングやオンライン研修を実施する際のプラットフォーム(基盤となるシステム)です。

 

パソコンやスマートフォン等を使って学習がおこなわれるe-ラーニングでは、LMSを使用することで、動画と理解度テストやレポートを組み合わせたり、いくつかの動画を組み合わせて、1つの研修プログラムを作ったりすることができます。また、管理者側で教材管理や受講者の進捗状況、提出物の確認等もできます。

 

受講者も、動画のあとに理解度テストが入ったり、掲示板等でQ&Aをおこなったり、プログラムの一覧を見たり、自分の学習履歴を管理できたりするため、効率よく受講することができます。

 

 

e-ラーニングとオンライン研修

e-ラーニングとオンライン研修の概要を改めて確認しておきましょう。

 

本記事でいう「e-ラーニング」とは、「あらかじめ準備された動画や教材で組み立てられた研修コンテンツを、受講者がパソコンやスマートフォンを使って好きなときに受講できる研修」のことを指します。

 

これに対して、記事内での「オンライン研修」は、「インターネットで同時接続してインタラクティブ(双方向性)な環境を作り、対面形式での研修と同じような研修を実施する形式」を指しています。

 

これまで、LMSはe-ラーニングとセットで使用されてきました。e-ラーニングはコンテンツを準備すれば、受講者が時間や場所の制約を受けず学べるというメリットがある一方で、研修の効果性を生み出すことが難しい側面もあり、限定的な利用に留まってきました。

 

しかし、コロナ禍の中で、双方向型のオンライン研修が急速に普及したことで、オンラインでも十分な研修効果を生み出すことが理解されました。その結果、アフターコロナでは、社員育成は、e-ラーニングとオンライン研修と対面研修の3つを組み合わせて運用することが主流になると考えられています。その中で、LMSは研修効果を高めるために欠かせないツールとして、注目が集まっています。

LMSの目的と主要機能

LMSを導入する目的

LMSはどんな目的で導入されるのでしょうか、また、LMSにはどんな機能があるのでしょうか。前章でも簡単に紹介しましたが、より詳しくLMSの導入目的や主な機能を紹介します。

 

 

LMSの導入目的

LMSの導入目的は、効果的かつ効率的な学習環境を整備・提供して、研修効果を高めることにあります。

 

e-ラーニングとオンライン研修が普及する中で、

 

  • e-ラーニングで動画だけを提供すると、受講者の進捗状況が分からない
  • 理解度テストやレポート等を組み合わせて研修効果を高めたい
  • オンライン研修は「Webへの接続が終わる」と一気に現実に引き戻されてしまう
  • アフターフォローを強化したい
  • コンテンツ数が増えてくると、動画の管理が煩雑…
  • 上記をe-mailやフォルダ、アンケートフォーム等ばらばらのツールでやると非効率

 

といった課題が生じます。

 

LMSを導入すれば、1つのプラットフォーム上で上記の実施や把握・管理ができます。LMSは受講者により効果的に学べる学習環境を提供し、社員育成のマネジメントを楽にするシステムです。

 

 

LMSの主要機能

LMSの主要機能を、受講者側の視点と管理者側の視点で見ると、以下のようなものがあります。

 

(受講者側の機能)
  • 履修コース一覧の確認
  • 履修登録
  • 動画講義の閲覧
  • 講師への質問
  • 講師や他受講者とのチャットや掲示板
  • 理解度や確認テストの受講
  • レポートの提出
  • レポートへのフィードバック閲覧
  • アンケートの回答

 

(管理者側の機能)
  • 履修コースの作成、管理
  • 教材や動画の作成・管理
  • 受講者登録
  • 受講者毎の履修コース登録
  • 受講者の進捗状況、動画の閲覧状況管理
  • 受講者へのメッセージ配信
  • 受講者のテストやレポート管理
  • 受講者へのフィードバック
  • チャットや掲示板等を通じた質問への回答やアフターフォロー

効果的なe-ラーニングやオンライン研修に不可欠なLMSの導入メリット

効果的なe-ラーニングやオンライン研修を継続的におこなうためにはLMSの導入が不可欠です。とくにe-ラーニングは、単体でそのまま導入するとコンテンツを提供して終わりになってしまいがちですが、LMSを導入して、適切な管理をおこなったり、理解度テストと組み合わせたりすることで、学習・教育の品質をアップさせることができます。

 

また、オンライン研修も単発の実施であれば、とくにLMSを利用しなくても煩雑にはなりません。しかし、事前学習の動画と組み合わせる、研修内で確認テストをおこなう、1週間後にアフターフォローの動画を配信して掲示板でサポートする、といったことにより、研修効果を高めることができます。これらをおこなうのに、便利なのでLMSです。

 

以下、簡単に受講者側と管理者側、それぞれが得られるLMS導入のメリットを解説します。

 

 

受講者のメリット

受講者側が得られる最大のメリットは、「LMSにログインすれば、自分が受けられる/受けるべきe-ラーニング、テストやレポート等が一目で分かる」ということです。これにより、

 

  • 学習効果のUP
  • モチベーション維持
  • 現状スキルの把握
  • スキル習得までの道のり把握

 

等がもたらされます。

 

 

管理者側のメリット

管理者側が得られる最大のメリットは、「研修の効果性を高めながら、手間を減らせる」ということです。具体的には、

 

  • クラウド型であれば、安価に高性能なシステムを使える
  • 1か所で研修コンテンツの管理や受講者管理がおこなえる
  • 受講状況を一元管理できる
  • 受講者へのフォローアップを自動化できる
  • 理解度テストやレポート、掲示板を気軽に組み合わせられる

 

等です。

 

LMSの導入により、受講者は質の高い研修を受けることができ、管理者は管理業務を手軽におこなえるようになるのです。

LMSの傾向と事例

LMSの事例

LMSは大きく分けて3つの提供形式に分類することができます。この章では、3つの提供形式と具体例を簡単に紹介します。

 

 

研修コンテンツとLMSが一緒になったe-ラーニングサービス

1つ目のタイプは、コンテンツとプラットフォームが一体化して提供されるものです。つまり、「LMSが組み込まれたe-ラーニングサービスを購入する」というイメージです。

 

研修コンテンツは、たとえば、集合研修やセミナーを動画として撮影したコンテンツや項目別のスキルアップ研修をまとめたコンテンツまでさまざまです。「使い放題」で提供されるものもあれば、研修会社等が「若手の営業研修」といった特化したテーマで提供しているものもあります。

 

前者の代表的なサービスは「Schoo」です。Schooと契約すると、利用者はさまざまなコンテンツを自由に受講できるようになることに加え、過去の学習状況を管理することもできます。

 

法人プランでは、法人内の社員にアカウントを発行して、管理者は各アカウントの利用状況や受講状況等を確認することもできます。このタイプのLMSは、LMSというよりは、「e-ラーニングサービス」であり、自社で作成した学習コンテンツを公開することはできません。

 

 

既存コンテンツを使える+オリジナルコンテンツを作れるLMS

2つ目のタイプは、既存のコンテンツとオリジナルコンテンツの両方が利用できるタイプです。いわば、1つ目の「e-ラーニングサービス」に加えて、自社オリジナルのコンテンツも社員向けに提供できる、自社オリジナルで研修プログラムを設計できるといったものです。

 

1つ目の「使い放題」型のタイプと比べると、コンテンツ数は少なくなりますが、知識インプット型のコンテンツは既存コンテンツを使う、営業研修等は自社の商品サービスを踏まえてオリジナルで使う、既存の営業研修プログラムを使いながら不足する部分だけオリジナルで作って1つの研修コースにする等、柔軟な使い方が可能です。2つ目のタイプの代表的なサービスは「AirCourse:エアコース」です。

 

 

LMSのプラットフォームが提供されるもの

3つ目に紹介するのは、LMSのプラットフォーム単体で提供されるものです。これが、一番「システム」というイメージに近いでしょう。

 

プラットフォーム単体で提供されるタイプのLMSは、研修プログラム等のコンテンツは提供されない代わりに、プラットフォームとしての使いやすさに機能を集中させています。自社でコンテンツを作ったり、運営することを前提にして、チャット機能や掲示板、プログラム設計や動画作成等の機能を持っているものもあります。

 

『自社で色々と工夫して、効果性の高い研修プログラムを作りこみたい!』という企業に向いているタイプで、代表的なサービスとしては「UMU」があります。

代表的なLMSを一挙に紹介

最後に、代表的なLMSを6つ紹介します。LMSの機能や特徴を比較しながらチェックしてみてください。決して「機能が豊富なほうがいいサービス!」というわけではありません。自社でどのような使い方をするのかイメージしながら、どんな機能が必要か、既存コンテンツがあったほうがいいか等で検討してください。

 

 

1.UMU

UMUはプラットフォーム単体で提供されるタイプのLMSです。非常に多機能であり、動画配信だけでなく、Zoom等と組み合わせて、ウェビナーや双方向型のオンライン研修等を組み合わせることも可能です。

 

また、ウェビナーや双方向型のオンライン研修等を組み合わせて、1つの研修コースを作成することも可能です。マイクロラーニングやAIによる学習サポート、PPTを使った動画コンテンツの作成機能まであり、効果的なe-ラーニングやオンライン研修を実施するための仕組みが整っています。

 

UMUをプラットフォームとして利用して、自社の研修プログラムを提供している教育研修会社もいくつかあります。

 

 

2. AirCourse:エアコース

株式会社KIYOラーニングのAirCourseは、豊富な動画研修コンテンツが使え,かつ、自社独自の動画研修プログラムも作成できるハイブリッド型のLMSです。

 

主に動画配信に特化しており、ウェビナーや双方向型の研修等と組み合わせることは難しいですが、その分、受講者側のマルチデバイスに対応、また、管理者側の操作性もシンプルで使い勝手の良さが人気です。

 

 

3. Generalist®/LM

東芝が運営するGeneralistは定額制の料金プラン体系で運営されています。もともと東芝がグループ10万人へのe-ラーニング提供をすることを念頭に開発されたシステムであり、大規模利用にも対応できます。個別開発、SaaS、ASPまで、3つの契約形態があり、LMSのタイプとしては、既存コンテンツとオリジナルコンテンツの両方を利用することが可能です。

 

 

4.Coursebase:コースベース

Coursebaseは、企業研修に特化したLMSです。プラットフォームとして提供され、アンケート調査やコースビルダー機能、コースライブラリ等、複雑な操作なく、直感的に使えるUIで研修プログラムを設計することができます。

 

LMSのシステム単体で提供されるサービスですが、「コンテンツ・マーケットプレイス」というオプションサービスを持ち、外部のパートナー企業(研修会社)が作成した研修プログラムを、システム上で個別に追加購入することが可能です。

 

 

5.Schoo

Schooは国内最大級のe-ラーニングサービスです。前章で少しご紹介した通り、研修コンテンツとプラットフォームが一体化して、e-ラーニングサービスとして提供されるタイプです。

 

コンテンツ数が非常に豊富で、テレビ番組を視聴するように手軽にコンテンツを見られることが特徴です。国内最大級の動画研修サービスということもあり、4,500本もの学習プログラムが利用できます。

 

 

6.Careership

Careershipは、主に大手企業に導入されているLMSであり、国内の上場企業売上トップ100社のうち、47%がCareershiopを導入しています。複雑な組織構造においても、部門や役職に応じて受けるべき研修プログラムを設定したり、柔軟な権限設定が可能だったり、多言語対応したりしています。

 

プラットフォームとしての機能提供だけではなく、教材コンテンツの提供もおこなっており、300以上もの教材が提供されています。

まとめ

LMSを導入することにより、従来のe-ラーニングでは困難だった受講者のモチベーション維持や受講状況の管理が容易にできるようになります。また、オンライン研修やウェビナーとの組み合わせで、研修の効果性を上げることにも大きな効果を発揮します。

 

LMSは、プラットフォーム単体で提供されるもの、組み込まれた研修コンテンツの提供とプラットフォーム利用(独自コンテンツの作成)をセットにしているもの、e-ラーニングサービスとしてオリジナルコンテンツは作れないもの、と大きく3つのパターンで提供されています。

 

また、動画研修だけを念頭に作られているもの、ウェビナーや双方向型のオンライン研修との組み合わせを念頭に置いているものという違いもあります。紹介したLMS導入のメリットや特徴を踏まえ、自社に最適なLMSを導入してください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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