本章では、最近よく見られる指導が難しいとされる5つのタイプの新人とタイプ別の教育ポイントを紹介します。
タイプ① 受け身・指示待ちで積極性が感じられない新人
積極性が感じられない新人に、「積極的、主体的に仕事をしないとダメだ」と指導したところで基本的に変わりません。しかし、現場では上司が「積極性を出せ!」と指導してしまっているケースも多く、その指導が更に新人の積極性を奪っていることもあります。
このタイプに上司やOJT担当者の指導は「価値観の押し付け」にしか聞こえず、逆に反発を生む結果となります。「心理的リアクタンス」という言葉をご存じでしょうか。仮に提案自体が自分にとって良いものだったとしても「他人から言われると無意識的に反発したくなる」という心理を指す用語です。
子供の頃、親に「勉強しなさい!」と言われると、「今やろうと思っていたのに、やる気なくなった…」という気持ちが心理的リアクタンスです。最近の若者は価値観の多様性が認められた世界で育ってきたこともあり、とくに「価値観の押し付け」に対しては、心理的リアクタンスが働きやすくなっています。
では、どうすればよいでしょうか。ポイントは2つあります。1つは、積極性がない理由をなくす、もしくは減らすように働きかけること。もう1つは、承認して自信を持たせることです。
積極性がない理由はいろいろあります。最近の新人には真面目なタイプが多く、積極性がまったくないことはかなり稀です。そもそも仕事するうえで責任が生じていることは分かっていますので、やるべきことは最低限やるというタイプが多いです。
しかし、「最低限やる」だけで終わってしまうので、上司や先輩からすると物足りなさを感じるのです。大事なことは、ゴールや期待、意味を伝えることです。
まず、そもそも上司が指示する時に明確に目的やゴールを示さずに、作業内容だけを伝えていることもあります。きちんと達成してほしい仕事のゴールや水準をしっかり伝えることが大切です。
また、例えば「商品知識を増やしてほしい」とか「仕事の流れを覚えてほしい」など、なぜそうしてほしいかという点を相手への期待と絡めて伝えましょう。相手への期待は、身に付けるとどうなるかという相手にとっての意味やメリットとともに伝えると更に効果的です。
そして、もう1つ、承認して自信を持たせることもポイントです。そのためには、承認を行える状況を作ることが重要になります。例えば、何か仕事に関する発言をさせる、あるいは新人でもできる仕事をやらせることで、承認の機会は作りだせます。
承認することで新人の自信につながります。そこで「そのペースでやっていこう」とか「今のやり方でいけば成長するよ」などと声掛けすることで、自然と積極的に取り組める環境を作ってあげられるのです。こうすることで、最初は見られなかった積極性が徐々に見られるようになってきます。
タイプ② やる気抜群!でも、すぐに空回りする新人
タイプ②はタイプ①とは逆で、積極性があり、何でもとにかくやってみようとするタイプです。意欲はあるのですが、やりすぎてしまったり、やる必要がないことまでやってしまったりして空回りしてしまいます。
積極性はありますので、フットワークは軽くすぐに行動しようとしますが、その分、理解すること、確認することが苦手です。このタイプに「ちゃんと理解するように」とか「確認しながら行動しろ」と言っても苦手ですので、なかなか身に付きません。
タイプ②の教育で大事になってくるのは上司の「指示の出し方」です。ポイントは3つあり、1つ目は「指示は1つに絞る」、2つ目は「端的に伝える」、3つ目は「確認すべきポイントを明示する」です。
やる気抜群だけど空回りするタイプに多くのことを伝えると混乱します。従って、指示は1つ、多くても2つだけにします。また、このタイプは指示する時点であまり細々と情報を伝えず、できるだけ端的に伝えてください。
あまり多くの情報を入れて指示すると、空回りして、下手したら最初からやり直しなんていうことにもなりかねません。指示する内容を絞って端的に伝える、そして、「こうなったら必ず確認するように」と注意すべき点を明確に指示します。こうすることで、空回りは防げます。
タイプ③ 基本的にネガティブ思考。すぐに悪いほうに考える新人
自分に自信がないタイプの新人は、物事をネガティブに考える傾向があります。このタイプは、「こうなったら嫌だな」「でも、こうなるかも知れないな」と自分に防衛線を張っているケースが多いです。ネガティブに考えることで、上手くいかなかった時に自分がショックを受けないようにしているのです。
ネガティブなタイプは、「自分がネガティブである」ことを自覚しているケースが多いです。ですから、ネガティブに思考することをまず承認してあげましょう。ネガティブなことはダメでなわけではなく、「最悪のケースを想定する」という思考はいい面も多々あります。
相手のタイプや思考を認めてあげるアプローチを行いながら、「その状況に陥らないように、事前に対策するにはどうしたらいいか」「上手くいかないケースにどれだけのリスクがあるか」「上手くいかないケースを避けて成功するためにどうすれば良いか」と、もう一歩踏み込んで考える癖をつけさせましょう。新人の考えを否定することなく成長させることがポイントです。
タイプ④ 反発しないが、何を考えているのか分からない新人
最近多いのがタイプ④の新人です。反発することはありませんが、自分の意見もあまり言わず、「何を考えているか」がよく分からないタイプです。相手に合わせて教育しようにも、相手のことが分からないので、どうしたらいいのか迷います。
シンプルな対応ですが、発言しないタイプの新人には、「発言の機会を持たせる」ことが大事です。今までの3つのタイプとは違うアプローチで、相手に対してある程度の強制力を持って発言の機会を作ります。
もちろん発言させる時には、できるだけ答えやすい環境を作ってあげることが大事です。例えば、相手が言ったことを否定しない、発言したことを承認してあげるなど、発言することに肯定的になれる状況を作ります。発言しないタイプの新人は、様子を見ているだけです。「発言しても大丈夫なんだ」と思ったら、発言するようになっていきます。まずは発言する環境を作りましょう。
タイプ⑤ とにかく認めてほしい!承認欲求が強い新人
最後は、承認欲求が強いタイプです。昨今「承認欲求が強い新人が多い」と言われますが、なぜ今の若い人に承認欲求の強い人が多いのかご存じでしょうか。
「失われた20年」という言葉がありますが、景気があまり良くない中で思春期を過ごしたことで、今の若手は「欲しいものがあっても言ってはいけない」「贅沢をしてはダメ」「将来は明るくない」といった価値観を持っている傾向が強いです。その結果、「物欲はないけれども、せめて自分のことを認めてほしい」「今を楽しく過ごしたい」と思う人が増えているのです。
承認欲求が強いタイプを教育するには、シンプルに承認してあげることです。ただし、承認の対象を「全体結果」にすると承認が難しくなります。承認の対象を「全体結果」だけでなく、「部分結果」「進歩・成長」「プロセス」「気づき」「意欲や意思」といったところに広げていきましょう。
例えば、何か指摘する必要がある時は、どうしたらよいのでしょう。結論から言うと、これも承認のタイミングです。どうするかというと、上司や先輩が指摘したら新人は何かに気づくはずです。その時が承認のチャンスで、「よく気づいたね」とか「気づいたならこれからは大丈夫だね」と、肯定的に承認してあげるのです。承認の対象を広げることで、新人の承認欲求を満たしつつ、教育もしっかり行き届くようになります。
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