新人研修は、採用した新入社員に社会人としての心構え、自社で働くための基本、基礎的な業務スキルを教えるものです。
新人研修は、部門配属後のOJTなどにスムーズに接続し、早期退職をなくす、また、早く戦力化するうえで、非常に重要な位置づけとなります。
一方で、新人研修には、多様な知識を短期間でインプットする必要があります。そのため、内容が詰め込み型になりがちです。
本記事では、研修会社としての知見を踏まえて、新人研修が「つまらなくなる」原因を確認したうえで、「面白い」新人研修がどういうものか、また、新人研修を面白い内容にすることで得られる効果を解説します。
後半では、面白くユニークな新人研修の事例、新人研修を効果的にするコツを紹介しましょう。
<目次>
新人研修が「つまらなくなる」原因とは?
以下3つの原因があると、新人研修がつまらないものになります。
目的やゴールが見えない
目的・ゴールが見えないとは、新人にとって「なぜそれを学ぶのか?」「それを学ぶことで何が得られるのか?」がわからない状態です。
目的・ゴールがわからない研修が続けば、講師の話やプログラムに対して「無意味」「つまらない」などの感情が生まれてしまうでしょう。
「知識詰め込み型」になっている
“知識詰め込み型”とは、講師が一方的に話し続ける座学のイメージです。
冒頭でも記載したとおり、新人研修は、企業が実施する人材育成のなかでも、「短期間に多くの知識をインプットする必要がある」研修の筆頭です。
新人の初期教育では、配属までに教えたいこと・覚えてもらいたいことが多く、知識詰め込み型になりがちなのです。
知識詰め込み型の場合、新人は講師の話を聞き続けるだけになります。その結果、飽きやつまらなさを感じやすくなります。
エンタメ性の欠如
上記のとおり、新人研修は知識を詰め込む必要があり、「楽しかった!」「面白かった!」などの、感情をともなう体験や体感が得られる仕かけがないことも多いです。
「面白い」新人研修とは?
研修の“面白さ”とは、エンターテイメント的な面白さだけではありません。
エンターテイメント的な面白さももちろん大切ですが、「自分にとって役に立つ」「気付きや発見にあふれている」といった面白さも作ることがポイントです。
また、自分が主体的に参加することで生じるアクティブラーニング型の面白さも有効です。本章では、新人に「面白い」と感じてもらえる研修の特徴を解説します。
研修で得られる結果やゴールが明確
新人研修では、教える内容が多いからこそ、“何をどう教えるか”の詳細設計にすぐ入ってしまいがちです。
新人の初期研修における目的・ゴールの設定ではまず、「新人研修を終えて、部門配属されたときにどのような状態になっているか?」というゴール設定を行ないます。
そのうえで、設定したゴール内容を踏まえて、各研修やプログラムの詳細ゴールを設定していきます。
たとえば、新人研修の定番であるビジネスマナー研修であれば、ただ知識を教えるだけでなく、以下の状態をゴールとして目指すことが大切でしょう。
- 社会人の身だしなみや服装の「守」と「自社の基準」を理解して、翌日から実践できるようになる
- 電話対応の基本を理解し、配属後のオフィスで電話をとる・かける・取り次いでいる状態になる など
ゴールをきちんと設定すると、知識詰め込み型の研修になりにくくなります。
また、学ぶ側に「それを学ぶことで、どの仕事にどう役立つか?」を共有することで、新人側も集中して話を聴きやすくなるでしょう。
気付きや発見
自分の知らなかった知識や、自分の知らない自分の可能性・スキルを知ることで「なるほどそうか!」「それは知らなかった!」と思える仕かけがあることも必要です。
気付きや発見から刺激を受けることで、「もっと深く知りたい!」「もっとみんなとディスカッションしてみたい!」などの想いが生まれやすくなります。
新たな知識などをどうやって「気付き」や「発見」としてとらえてもらうかに工夫が必要です。
感情の動きをともなう体験
先述の気付きや発見とも関係することですが、研修内で感情が動く体験があると、受講者は研修に面白さを感じやすくなります。
具体的には、ロールプレイングや勝敗や順位のあるミニゲーム、座学などにおいてもクイズなどを通じて感情を動かす仕かけを盛り込むことが有効です。
たとえば、座学で「ある理論」の説明が必要と仮定します。その際に、たとえば冒頭のアイスブレイクで「この理論を導入して、営業部門の売上が驚くほどアップしたんですよ。どのくらい上がったと思いますか?」と質問をして、受講者に考えてもらいます。
そして、何人かに指名をして答えてもらったあとに、「実は、前年比で売上が5倍になったんですよ!」と回答を出し、受講者の感情を動かします。
座学の場合、グループワークなどの実践系と比べて飽きやすい傾向があります。ですが、上記のようにクイズやワークなどを取り入れると、ワクワクした気持ちで話を聞いてもらいやすくなるでしょう。
新人に積極的に参加してもらうには、研修の詳細設計でこうした感情の動きを加えるための仕かけを盛り込むことが有効になります。
新人研修を面白い内容にする効果
新人研修を面白い内容にすると、以下の効果・メリットが得られます。
参加するモチベーションアップ
「つまらない研修」より「面白い研修」のほうが、受講者のモチベーションが向上するのは当然のことです。
また、先ほど触れたとおり、新人研修の場合、配属までに教えることが多すぎて“知識詰め込み型”の座学が増えやすい傾向があります。
しかし、それでも、先述のような工夫で面白い内容にすることで、座学にもポジティブな気持ちで集中してもらいやすくなるでしょう。
研修内容の定着率アップ
体験や体感型、感情をともなうプログラムのほうが、「見る、聞く、書く」を繰り返す知識詰め込み型よりも知識や記憶の定着性が高いです。
以下のラーニングピラミッドは、授業の形式別の学習定着率を示した有名な図になります。
ラーニングピラミッドにおける学習の定着率は、あくまで特定の実験におけるものです。そのため、現実の研修にそのまま反映できるものではありません。
ただ、ピラミッドの下側にあるような「グループ討論」「自ら体験する」「他者に教える」といった形式を盛り込むことで、感情の動きも生じやすくなりますし、学習の定着率も高まります。
ロールプレイング、グループワーク、体験、他者が教える形をうまく研修内に取り入れていきましょう。
面白くユニークな研修の事例
それなりに時間的余裕があるなかで、エンターテイメント性が高く面白い研修を実施するのも一つの方法です。たとえば、以下のようなユニークな研修は、実際に実施されているものです。
何がポイントか、自社ならどのようなことができるか考えながらご覧ください。
幼稚園研修
サービス業で実施されることが多い研修です。幼稚園研修では、幼稚園に数日間通い、保父・保母として園児や保護者と関わります。
そうすることで、以下のようなコミュニケーション能力が身に付きやすくなる研修です。
- 相手の目線で話す・伝えるスキル
- 相手の話に耳を傾けるスキル
- 初対面での関係構築スキル
- トラブル時に焦らず報連相をするスキル など
たとえば、サービス業に欠かせない顧客との関係構築も、幼稚園研修で実際に体験してから座学に入ることで「なぜ関係構築が大切なのか?」といった話もイメージ・理解しやすくなります。
ライオンキング研修
顧客満足を生み出す手法やサービス精神を学ぶうえで役立つ研修です。
ライオンキング研修では、まず、座学でライオンキングの内容や顧客満足につながるポイントのレクチャーを受けます。
そのうえで、劇場でミュージカル「ライオンキング」を鑑賞することで、感情の動きをともなう体験から、事前レクチャーの内容を定着させやすくなるというものです。
たとえば、東京ディズニーリゾートのホスピタリティなども「知識としての学び」+「一流の実践を見る」という組み合わせをつくることで、面白い新人研修カリキュラムにできるでしょう。
ウォーキング研修
国際自動車株式会社というタクシー会社が実施する研修です。
2016年のウォーキング研修では、赤坂~東京~帝国劇場~皇居外苑~銀座4丁目~日本橋~……という全行程35kmを、新入社員全員が12時間かけて歩きました。
ウォーキング研修で得られる大きな効果は、チームで励まし合いながら一つの目的を達成することで、新人同士の絆が強くなることです。
また、各観光スポットなどで経営層や先輩社員から励ましの言葉をもらったり接点を持ったりすることで、エンゲージメントが高まりやすくなります。
ウォーキングの位置づけや立ち寄るスポットは、自社の事業内容に応じたアレンジが可能でしょう。
ペーパータワー
ペーパータワーは、20~30枚の紙を使って「自立したタワーをどれだけ高く作れるか?」を競うゲームです。
ペーパータワーには、チームが目標達成するうえで必要となるコミュニケーションや合意形成、意思決定などを学べる魅力があります。
こうした特徴から、チームビルディング研修でも実施されることが多いプログラムです。
ペーパータワーを完成させる過程で、計画⇒実行⇒改善⇒行動を繰り返せば、PDCAの重要性なども体感できるでしょう。
面白いだけではダメ!新人研修を効果的にするコツ
新人研修の効果を最大化するには、面白さのほかに以下のポイントを大切にする必要があります。
研修によって得たい成果を明確にする
「面白い研修の実施」や「つまらない研修からの脱却」に引っ張られすぎると、研修本来の目的からズレやすくなります。
新人を飽きさせない仕組みはとても大切ですが、研修のゴールを明確にして、効果性を高める工夫をしていくことが重要です。「面白さ」は、あくまで研修効果を高めるための手段です。
「体験」と「学び」を区分する
ラーニングピラミッドが示すとおり、研修の定着率を高めるうえで、たしかに体験や経験は大切です。
ただし、たとえば、知識や理論、フレームワークの説明といった「学び」をおろそかにすると、新人は理解不足のまま「体験」に入ることになってしまいます。
“知識詰め込み型”はたしかにつまらない研修になりがちですが、座学が悪で体験が善というわけではありません。
そのため、体験や実践のプログラムの前に知識をインプットすることも有効となります。また、体験や実践したあとに、その体験を学びへと変えるプロセスを入れることも非常におすすめです。
たとえば、グループワークをやったあとに、「うまくいったチーム」と「うまくいかなかったチーム」の進行、自分たちの進行などを振り返りながら、ファシリテーションの技法を学ぶ、といったイメージです。
研修後のフォローアップも欠かさない
新人研修を通じて、受講者の行動変容につなげていくには、研修後に実践や振り返りができる仕組みをつくる、また、フォローアップ研修を設計することも大切です。
たとえば、新人研修などである程度の期間があるようであれば、特に身に付けさせたいスキルや知識に関しては、朝礼や夕礼なども使いながら、実践して身に付けさせる仕組みをつくりましょう。
また、研修後の数ヵ月後にフォローアップ研修を行なえば、初期研修の受けっぱなしで内容を忘れてしまうなどの問題も起こりにくくなります。
そして、また、フォローアップ研修で次の実践課題を設定すれば、継続的な実践や行動変容もしやすくなるでしょう。
まとめ
新人研修は、現場でのOJTに入る前に多くのことを教え、身に付けさせる必要があるため、「知識詰め込み型」のつまらないものになりがちです。
そこで、新人研修を「面白いもの」にするには、以下のポイントを大切にしながらプログラム設計をする必要があります。
- 研修で得られる結果やゴールが明確
- 気付きや発見
- 感情の動きをともなう体験
ただし、研修の面白さは、あくまで効果性を高めるための手段です。したがって、特にゲームや体験などを取り入れる際には、下記のようなポイントをしっかりと押さえていくことが大切になります。
- 研修によって得たい成果を明確にする
- 「体験」と「学び」を区分する
- 研修後のフォローアップも欠かさない
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、アクティブラーニングやフォローアップ研修などが組み込まれた新人研修を提供しています。
ジェイックの研修に興味がある人は、以下の資料もダウンロードしてください。
関連サービス資料を
ダウンロードする

...
関連サービス資料を
ダウンロードする

...