多くの会社において、e-mailは主要なコミュニケーション手段のひとつです。電話とは違った便利さがあるe-mailは、「文字として残る」ことが大きな特徴です。だからこそ、ビジネスメールのマナーや書き方は、新入社員に新人研修でしっかり教える必要がある項目のひとつです。記事では、新入社員に教えたいビジネスメールのマナーと書き方の基本を解説します。
<目次>
新入社員に教えたい!ビジネスメール書き方の基本
ビジネスメールは、「件名」「宛先」「挨拶・書き出し」「本文」「結び」「署名」の大きく6つの要素で構成されます。子供のころから、SNSで短文とスタンプのやり取りに慣れ親しんでいる新入社員にとって、じつはビジネスメールの作成はかなりハードルが高いものです。しっかりと型を教えて、最初は型通りに書いてもらうことが無難です。以下、各要素の基本を解説します。
件名
ビジネスメールの「件名」は、メールを受信した相手が確認・対応の緊急度や重要度を判断する材料となります。従って、一目で用件が分かるように書くことが大切です。例えば、「プロジェクトや案件名 ⇒ 今回の要件や依頼事項」といった形にすると分かりやすいでしょう。
仕事の中ではさまざまなメールが飛び交うことになります。あとから件名で検索することも多くありますので、その点でも検索しやすいプロジェクトや案件名などを分かりやすく入れておくことがポイントです。気を使いすぎて、長々とした分かりにくい件名にならないように注意しましょう。
例)
分かりやすい件名 : 「○○社の提案 ⇒ スケジュール確認のお願い」
分かりにくい件名 : 「○○様、先日ご案内した件について追加情報をお送りします」
宛先
ビジネスメール本文の最初には、宛名を入れるのがマナーです。宛名をどう記載するかは、相手が「社内の人」か「社外の人か」によって異なります。
社外の人にメールをするときには、上記のように「会社名、部署名、氏名」の順に記載します。相手が役職者であれば「役職」を部署名の後ろに書くようにしましょう。社名と部署名、役職と氏名の間など、区切りの良いところで改行すると見やすいでしょう。
社内の人にメールをするときは、当然「会社名」は不要です。社員数が多く、またかしこまったメールであれば、きっちりと「部署名、役職、氏名」等をきっちりと入れることもありますが、一般的に「姓+さん」や「部署名 姓+さん」、「氏名+役職」で記載することが多いでしょう。
挨拶と書き出し
宛名の後は、挨拶と自身の所属、氏名を記載するのが一般的です。ビジネスメールのあいさつ文は、定型文で、
いつもお世話になっております。○○社(自社名)の□□(自分の氏名)です
という表現をすれば基本的に問題ありません。慣れてきたら状況に応じて書き換えるとよりスマートです。
例)初めてメールを送る :「初めてご連絡させていただきます」
久しぶりに連絡する :「大変ご無沙汰しております」
訪問後にお礼メールを送る :「先ほどはお時間をいただき、ありがとうございました。」
本文
ビジネスメールの本文は、だらだらと長く書かず、簡潔に分かりやすく書くことが基本です。相手がパッと理解できるよう、伝えるべき内容に絞って記載しましょう。メールを送った用件の主旨や結論を最初に書いて、そのあとに詳細や補足事項を記載するという「結論ファースト」が良いでしょう。
メールを書き慣れないうちは、5W2H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように・いくらで)を意識して書くと、日時や場所などの重要事項が過不足なく伝わりやすくなります。また、場合によっては、箇条書きも上手く使うと良いでしょう。
読みやすくするためには、
- 20~30文字程度を目安に改行を入れる
- 3~5行程度を固まりとして、固まりの間には空白行を入れる
と良いでしょう。最近では、ビジネスメールもスマートフォンで読む割合が増えています。以前よりも少し短めの文字数で改行することがおススメです。
結び
本文で伝えるべき内容を書き終えたら、最後に結びの言葉で締めくくります。ビジネスメールでは挨拶と同様、結びの言葉にも定型文があります。通常は「何卒よろしくお願いいたします」「今後ともよろしくお願い申し上げます」等です。
相手に確認や検討を依頼する内容のメールであれば、「ご確認の程よろしくお願いいたします」「ご検討の程よろしくお願いいたします」などで結ぶと良いでしょう。
署名
ビジネスメールの最後には署名が入ります。署名には以下のような情報を記載する事が一般的です。
- 会社名
- 部署名、役職
- 氏名
- 住所
- 電話番号、FAX番号、社用の携帯番号
- メールアドレス
- ホームページURL
多くの場合、会社で署名のテンプレートが用意されていますので、上司や先輩に確認して自分用にカスタマイズしましょう。
新入社員に教えたい!メールの位置づけとマナー
ビジネスメールは、電話と違って相手の場所やタイミングを問わず、自分の都合でメッセージを送信することができます。また、ファイルを添付したり、一度に大勢に送信して一気に情報共有したり出来る便利なツールです。一方で、「文字に残る」ことが大きな特徴ですし、誤送信や添付ミスのリスクもあります。ここでは、新入社員に教えておきたいビジネスメールのマナーについて確認します。
新入社員が知っておきたいメールのマナー①:敬語とニュアンスの齟齬への注意
メールの大きな特徴は「文字に残る」事です。文字に残るという事は「言った/言わない」等のトラブルが回避できる反面、送ったメールが相手のメールボックスに形として残り続けます。また、顔を合わせての会話と異なり文字だけでのコミュニケーションになりますし、一度送ったら相手の反応を見てその場で修正や補足することは出来ません。
従って、口頭でのコミュニケーション以上に、ビジネスメールでは言葉遣いや言葉のニュアンスに注意する必要があります。言葉遣いという点では、もちろん正しい敬語も大切です。ただし、過度に敬語に気を使いすぎると、却ってうまくニュアンスを伝えられないこともあります。「丁寧語」を基本として、ニュアンスにズレや誤解が生じないようにしっかりと見なおすことを心がけましょう。
新入社員が知っておきたいメールのマナー②:CCとBCC
メールを送る場合、「送り先(TO)」以外にも、「CC」と「BCC」での送信が可能です。ビジネスメールで「CC」や「BCC」の設定や返信を間違えると、メールの相手に失礼に当たるだけでなく、個人情報の漏洩等につながってしまう可能性もあります。「CC」の使い方および「BCC」との違いを確認しておきましょう。
「CC」は、「カーボンコピー(Carbon Copy)」の略称です。「TO」で指定した相手と同じ内容のメールを、「CC」に入れた宛先に同じタイミングで送ることができます。CCでの送信は、「メインの送信先はTOの○○さんですが、共有・報告として□□さんにもお送りしますので、確認お願いします」という意味になります。
TOで送った相手からも、誰にCCで送られているかは見えますので、CCで送ることは「この内容は□□さんにも共有・報告しながら進めていますよ」という意味にもなります。
「BCC」は「ブラインド・カーボンコピー(Blind Carbon Copy)」の頭文字をとった言葉です。CCと同じように、TOに送ったメールが同じ内容、同じタイミングで、BCCの人にも送られます。ただし、CCと異なり、TOやCCの相手からは、BCCに指定されている人は見えません。また、BCCで送られている人同士も、誰に送られているかは分かりません。
従って、TOやCCの人に知られずに報告・共有したい、また、お互いに関係ない数人に一斉にメッセージを送信する等の少し特殊なケースで使われるのがBCCです。あまり頻繁に使われることはありませんが、例えば、「物品の見積もり依頼を数社の仕入れ先に一斉に送る」といった場合に使ったりするイメージです。
新入社員が知っておきたいメールのマナー③:「返信」「全員に返信」「転送」
ビジネスメールでは、「返信」「全員に返信」「転送」をうまく使い分けることも重要です。
まず返信ですが、ビジネスメールに返信するときには、「全員に返信」を使うことが基本です。「全員に返信」を使うことで、先ほど説明した「CC」の人も含めて返信することができます。先方が「CC」を使って送ってきたということは、送ってきた内容に関して、「CC」の人たちと情報共有しながら進めたいということです。とくに事情がない場合には、「全員に返信」で返すようにしましょう。
「返信」と「全員に返信」は、メールを送ってきた相手への返事であるのに対して、「転送」はメールを送ってきた相手とは別の人にメールを共有するやり方です。例えば、取引先から見たメールを上司に転送して対応を相談する、といった場合に使います。
転送すると、基本的に件名の頭に「Fw:」という文字が自動で付与されます。Forward(転送する)の略で、転送されたメールであることが一目で分かるようになりますので、特別な事情がない限り、そのまま送信しましょう。また、混乱を避けるためメール本文も基本的には手を加えず、メール本文の一番頭に「なぜ転送したか」を簡潔に記載して送りましょう。
新入社員が知っておきたいメールのマナー④:添付ファイル
ビジネスメールを活用するポイントのひとつが添付ファイルです。ファイルを添付することで、文字だけではなく、プレゼン資料や図表など、様々な情報を相手に共有することが出来ます。
ファイルを添付してメールを送信するときには、添付ファイルの容量に注意しましょう。この数十年で通信環境は一気に改善されてきましたので、数メガバイトのファイルであれば殆どの人が問題なく受け取れるようになっていますが、5~10メガバイトを超えるようなファイルは添付で送ることは避ける、もしくは相手に受け取れるか確認してから送付したほうが良いでしょう。
とくにビジネスメールの場合、社内ネットワークの設定によっては相手が大容量の添付ファイルを受け取れない設定になっていることもあります。また、最近ではセキュリティの観点でも、添付ファイルではなくファイル転送サービスを使ってファイル送付する企業も増えています。自社の社内ルールやツールがあるか確認しましょう。
なお、メールで添付ファイルを送る際には、容量と共に気を付けたいのは、
- 添付ファイルの間違い
- 添付漏れ
です。必ず送信前にダブルチェックして、ミスや漏れが生じないように心がけましょう。
新入社員が知っておきたいメールのマナー⑤:誤送信の防止
最近ではメールの宛先を入力する時、殆どの場合、宛先の一部や氏名を入力すると、アドレス帳や過去に送ったメールアドレスから自動で候補を表示してくれるようになっています。非常に便利な機能ですが、誤送信が起こる原因にもなり得ます。
メールは文字として相手の手元に残ることが大きな特徴です。相手に届いてしまえば、送信を取り消すことも出来ません。宛先を誤ると、社外秘や機密の情報を漏らしてしまったり、個人情報の漏洩などに繋がったりするケースがあります。メールの誤送信を100%防ぐことは難しいですが、添付ファイルと同様に「送信前に必ず宛先をダブルチェックする」ことを習慣化して誤送信を起こさないように心がけましょう。
ビジネスメールとビジネスチャット、SNS
ここまででお話ししたように、e-mailはビジネスシーンで欠かせないコミュニケーションツールです。しかし、近年では、ビジネスチャットやSNSといったツールの活用も進んでいます。ビジネスメールに代わって、ビジネスチャットやSNSが普及してきた背景には、より手軽にコミュニケーションが取れたり、情報共有を素早くできたりする点があります。
ビジネスチャットやSNSはビジネスメールの簡易版に近いイメージです。ビジネスメールの宛先やあいさつ文、結びや署名は割愛され、短文で用件をポンポンやりとりしたり、スタンプ等も使えたりすることから、やり取りのテンポが早く効率的です。一方で、プライベートでの利用とは異なりますので、取引先や目上であれば基本は丁寧文を使うなど、一定の節度は保って利用しましょう。
また、ビジネスチャットやSNSの感覚でビジネスメールを書いてしまうと、受け取る相手によっては、「失礼」「礼儀知らず」と思われてしまうこともあります。相手や状況に応じて、どこまで簡略化していいか、どこまで丁寧に記載したほうがいいか等を使い分けることを意識しましょう。
おわりに
現代において、ビジネスメールが仕事に欠かせないツールになっている方は多いかと思います。当然、新入社員もビジネスメールを使うことが不可欠です。ただ、デジタルネイティブと言われる新入社員ですが、SNSやチャットツールに慣れ親しんでいる結果、ビジネスメールは逆にハードルが高いものとなっています。従って、ビジネスメールのマナーや基本は新人研修等でしっかりと教える必要があります。
件名、宛先、あいさつ文、本文、結び、署名という基本構成や、文字でのやり取りだからこそニュアンスに誤解が生じないようにする注意、TO・CC・BCCの使い分け、返信・全員に返信・転送の使い分け、添付ファイルや誤送信の防止等は「ビジネスメールのマナーと基本」として教えておきたい内容です。
また、最近ではビジネスチャットやSNSも普及してきました。便利なツールですが、プライベートでの利用とは異なります。また、ビジネスチャットとビジネスメールの使い方を混同するとトラブルの原因にもなります。自社や取引先のツール状況に応じて、このあたりも指導することが必要です。
ビジネスメールは、業務に欠かせないコミュニケーションツールです。一方で、文字として形に残るからこそ注意も必要です。「いまの若手はメールぐらいは日常的に使いこなしているはずだから、特段教える必要はないだろう」と考えず、ビジネスメールの基本をきちんと指導し、会社のイメージアップを図っていただければ幸いです。