人事課題とは?5つの主要テーマと解決策、アフターコロナへの対応も紹介

人事課題とは?5つの主要テーマと解決策、アフターコロナへの対応も紹介

人事課題とは、経営や組織運営上での「人事(HR)」、すなわちメンバーと組織に関して生じる問題の総称です。

本記事では人事課題を総括して、組織で解決すべき5つの人事課題とコロナ禍によって発生しつつある新たな課題、解決するうえでのヒントを紹介します。

<目次>

人事の仕事とは?

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人事課題の具体的な内容に入る前に「人事の仕事」を確認しておきましょう。人事の仕事は多岐にわたりますが、基本的な役割と役割に紐づく具体的な仕事を簡単に紹介します。

  • 人事の役割
  • 人事が抱える具体的な仕事

人事の役割

人事の役割は、ミッション・ビジョン、事業戦略や経営計画の達成に必要な人材を確保し、パフォーマンスできる環境を整えることです。

勤怠管理などの労務を除くと、人事の仕事は大きくは以下の4つです。

 □採用
 □配置
 □評価
 □育成

なお、「対個人」という側面では、上記4つに概ね分類できますが、組織開発やインナーブランディングなど、4つの枠に収めづらい業務の重要性も増しています。

人事が抱える具体的な仕事

まず採用は、事業計画の実行に必要な人員を見積もり、確保するための業務です。

具体的には、採用計画の策定、チャネル選定、母集団形成、会社説明会の実施、面接などの選考、魅力付け、内定承諾の獲得、内定者のフォローなどが具体的な業務です。

採用業務は、具体的な実務に分解すると比較的分かりやすいですが、採用活動の上流は経営計画・事業計画の策定になりますし、下流では受け入れやオンボーディング、また、中長期的には評価制度や待遇面なども関わってきますので、突き詰めていくと非常に広範囲にわたります。

次に採用後の配置、また異動に関して、必要な情報を集めたり下案を作って経営陣などに提出したりするのも人事の仕事であることが多いでしょう。

また、評価では、各部署・ポジションでのパフォーマンス評価、人事評価制度を導入・運用することも重要な業務です。

評価は会社からのメッセージであり、報酬や待遇に直結するため社員にとっても非常に関心が高い分野です。

ただし、本質的には報酬や待遇を改善していくためには、個人と組織の生産性改善が必要です。

配置や評価も踏まえて、生産性の改善、個人と組織の成長に向けて、人材育成の仕組みや制度を整える育成業務も人事の仕事です。

さらに、組織開発の視点から、社員同士の関係性改善や生産性向上のために労働環境の整備を行なったり、ミッションビジョンバリューの浸透を図ったりすることも必要です。

インナーブランディングの視点から見ると、人事部門が社内イベントの企画や社内報などをしているケースもあります。

育成や組織開発の仕事は、採用などと比べて目に見えるアウトプットがなく、定量化も難しい一方で、調整が必要なことも多いなど、人事としては非常に難しい分野です。

ただ、仕事に精神的なやりがいを求める人が増えたり、キャリア自律の概念が普及したりする中で、重要度が増している業務でもあります。

最後に、組織ステージによっては経営戦略などの高所に紐づけて、採用・待遇・評価・育成制度などを連携させて変革していく業務も生じます。いわゆる戦略人事やHRBPなどの領域です。

このように人事の仕事が非常に多岐にわたります。

大規模企業であれば、採用、人材開発、労務などで役割分担しますが、中小企業やスタートアップであれば、1人の人事担当がすべて行なう場合も珍しくありません。

人事部が抱える組織課題

上述した人事の役割や業務と少し紐づけながら、人事に生じる組織課題を見ていきましょう。役割にも少し対応して組織課題は大きく5つに分類できます。

  • 採用に関する組織課題
  • 育成に関する組織課題
  • 人事評価に関する組織課題
  • 労働環境に関する組織課題
  • その他の組織課題

採用に関する組織課題

はじめに、分かりやすいのが採用に関する組織課題です。知識労働社会となった現代、優秀人材とそうではない人材の生産性ギャップは非常に大きなものとなっています。

さらに、少子化に伴って生産年齢人口の減少が進むなかで、離職を防止して必要な人材を確保し続ける難易度は上昇しているといえるでしょう。

転職が一般的になった昨今、中途採用に対する受け入れ環境の見直し(オンボーディング)も大事です。

厚生労働省『令和2年転職者実態調査の概況(個4.今後の希望等について)』によると、労働者の5人に1人(21%)が「機会があれば転職したい」と考えています。

特に中途採用は取り組み方によって差がつく分野になってきています。ダイレクトリクルーティングやキャリアSNSなど、さまざまな手法が広がったことで転職潜在層へのリーチもしやすくなりました。

短期的、従来型の施策だけでなく、中長期的な視点で新しい施策に取り組んでいくことが必要となるでしょう。

後述しますが、自社が転職潜在層にリーチしやすくなったということは、逆に自社からの流出も大いにありえます。

このように流動性が高い現代では、社員のエンゲージメント向上もあらためて求められています。

育成に関する組織課題

人材育成は、業績目標の達成や中長期的な成長、生産性向上のために必ず取り組まなければならない重要課題です。

適材適所への配置やジョブローテーション等を含めた職場での学び(OJTやリフレクションの習慣化)、同時に、職場から離れたOff-JTでの学びを大きな視点で組み合わせていくことが求められます。

Off-JTに関しては、環境・役割や責任の大きな変化がある新入社員や新任管理職などが最優先となりますが、各階層、職種、部門で成果を上げるための育成という視点で研修設計を考えていく必要があります。

また、コンプライアンスやハラスメント予防などのテーマもありますし、組織開発の視点から階層や職種を横断したミッション、ビジョン、バリューや共通言語の浸透、キャリアプラン研修なども大切です。

人材育成は、人格とスキル、2つのバランスが非常に大切です。特にリーダーシップやマネジメントは人格と紐づくもので、スキルだけで実践できるものではありません。

したがって、若手のうちから人格面も醸成することが必要です。

また、職場での学びを考える際には、管理職層のコーチングやフィードバックなどの”人材育成スキル”、コルブの経験学習モデルに代表される”リフレクションのスキル”などもポイントです。

育成は個の成長にフォーカスした考え方ですが、同時に個が集まった組織の開発・成長という視点も大切です。

前述のとおり、エンゲージメント向上も人材育成での大きなテーマになっており、チームビルディングやインナーブランディングなどを通じて、働きがいある職場をつくることが求められています。

なお、エンゲージメント等を考えるうえでは、もちろん育成だけでなく評価や待遇なども重要です。

人事評価に関する組織課題

人事評価はメンバーにとって待遇に直結する大きな関心事です。業績などの成果や目標達成への努力が正当に評価されることは、モチベーション向上や退職を防ぐことにもつながります。

評価制度の運用を見直して、問題がないように整備・ブラッシュアップし続けることが必要です。

例えば、評価者によって評価基準が異なったり恣意的だったりすると、不公平感から業務意欲の低下を招きかねません。

評価制度が適正に運営されているかを人事部が主体となってチェックし、統一した基準で人事評価を行うことが必要です。

なお、人事評価制度やマネジメントを通じて、メンバーに「自分の待遇を向上させるにはどうすればいいか?」といった生産性向上などの視点を持ってもらうことも大切です。

最近では同一労働同一賃金の流れがあるなかで、有期雇用労働者と正規雇用者の待遇差是正、職種の専門分化が進んだ中でのジョブ型雇用の検討も人事課題となっています。

また、場合によってはITエンジニア等をはじめとする希少職種を確保するための賃金体系、テレワークが広がる中での評価制度の見直しなども対応すべき課題となってくるでしょう。

労働環境に関する組織課題

労働環境も人事課題の一つといえます。

日本では、この10年ほどで働き方改革や自殺事件を契機とした残業時間や勤怠管理、また、パワハラ防止法などを通じたハラスメントに対する社会的な価値観や意識は急激に変化しました。

結果として、以前には曖昧に許容されていたレベルのものも問題視されるようになりましたし、ハラスメントが起きればSNSによって一瞬で拡散されて企業ブランドに傷がつく環境になっています。

リスク管理としても、メンバーの働きがいのある労働環境を整備するためにも時代に合わせた勤怠管理やハラスメントへの対応は必須といえます。

ハラスメントではパワハラ、セクハラだけでなく、さまざまな種類のハラスメントが取り上げられるようになっています。

また、ハラスメントが問題となる背景には、年代による感覚の違いも大きな要因です。このような点を把握したうえで、人事部が主体となってハラスメントの予防方法を早めに構築する必要があります。

勤怠管理に関しては、基本となるのは時間外労働の月45時間・年間360時間といった原則をしっかりと押さえて運用することです。

サービス残業やメンタル疾患発症などの問題を防ぐためにも残業や休日出勤の時間外労働をきちんと管理して抑制する取り組みが必要です。

労働環境に関しては、高年齢雇用安定法の改正により、企業は社員が70歳まで働ける環境の整備義務なども求められています。

さらに、障碍者雇用も企業の社員規模によって一定人数雇用する義務があります。こうした問題も労働環境に関する組織課題といえるかも知れません。

その他の組織課題

これまで紹介したさまざまな課題が解決できない理由のひとつに人事部の人手不足があります。ここまで記載した通り、人事が対応すべき組織課題は非常に多岐にわたります。

一方で、たとえば、中小企業などでは人事担当は1名のみ、また、人事と総務を兼任といった場合もあり、人材採用や育成に充分なリソースを割けなくなっていることもあるでしょう。

「人事業務の効率化や体制を整えて、組織にとって必要・重要な組織課題に対応できる状態をつくる」ことも、多くの企業における課題となっています。

コロナ禍により発生した新たな組織課題

2020年からのコロナ禍によって、場合によっては対応が必要な課題も新たに生じています。よくあるものが以下の2点です。

  • リモートワークでの人事評価や勤怠管理への対応
  • コミュニケーションの“タコツボ化”やエンゲージメントの低下

テレワークでの人事評価や勤怠管理への対応

コロナ禍によって急激に浸透したのがリモートワークです。リモートワークでは出社勤務と違って勤務態度を視認できません。

知らぬ間に過重労働になっていたりストレスを溜め込んでしまったりして、心身に不調をきたすリスクもあります。

リモートワーク下において、どのようにメンバーの状況や仕事ぶりを把握するかという仕組みやコミュニケーションを促す仕掛けが大切になっています。

また、テレワーク下では、上司はメンバーが具体的に何をしているか勤務態度等を把握しづらく、人事評価におけるプロセス評価や情意評価が難しくなっています。

評価制度の運用部分を見直す必要がある場合もあるでしょう。

コミュニケーションの“タコツボ化”やエンゲージメントの低下

リモートワークは社員にとって出勤退勤の移動時間がなくなる、企業にとって通勤交通費やオフィススペースの賃料を減らせるなど、大きなメリットがあります。

一方で、マイクロソフトがリモートワーク下での組織内コミュニケーションを分析したところ「自チームや業務で関係する人とのコミュニケーション量は減らないが、それ以外の人とのコミュニケーションが減るという“タコツボ化”が起こる」という結果が得られています。

組織やコミュニケーションのタコツボ化は、偶発的なイノベーションを阻害したり組織へのエンゲージメントを低下させたりする部分があります。

特にSNS等で社外との距離が近くなり、かつ転職が一般化している現在、エンゲージメント低下は社員の流出につながります。

リモートワーク下におけるエンゲージメント強化やインナーブランディング、求心力の強化は新たに対応が必要な組織課題といえるでしょう。

人事課題を解決する5つのヒント

ホワイトボードを使って説明をるすビジネスパーソン
今まで紹介してきた人事課題を解決するためのヒントを5つ紹介します。

  • 制度の運用・見直し
  • ITツールの導入
  • 社内アンケートの実施
  • 人材育成とコミュニケーション
  • 人事コンサルタントへ依頼

制度の運用・見直し

人事の問題は対応に平等性、透明性が要求されるからこそ、制度改定や運用・継続改善を通じて改善することも大切です。

制度は作っていきなり完璧に機能するわけではありません。たとえば、評価制度などもいきなり自社にフィットした完璧な仕組みができることはありません。

運用を通じて細かな部分を継続的に改善することが大切です。

従って、人事課題は、制度や仕組みの運用を通じて改善する、また、制度や仕組みの運用が目的化しないように注意することが大切です。

上述したリモートワークにおけるコミュニケーションのタコツボ化なども、意識への働きかけだけでなく、さまざまな制度や仕組みを通じて改善するようなアプローチが大切です。

ITツールの導入

最近では多くの企業がITツールを導入して人事業務の効率化を図っています。業務を効率化できれば人的リソースを重要な組織課題への取り組みに充てられるようになります。

勤怠や労務管理、人事評価、タレントマネジメント、採用管理などは、HR-techを組み込んだクラウドサービスが多数出ています。

また、テレワーク下でのコミュニケーションなどに関しても、バーチャルオフィスやビジネスチャット、ピアボーナスなどのITツールを使うことで解決できる部分もあるでしょう。

なお、ITツールを導入すれば組織課題が解決するわけではありません。導入したITツールをきちんと運用する、ツールを使い倒す、ツールの費用対効果を検証する姿勢が大切です。

社内アンケートの実施

人事課題の状況を把握する上では、社内アンケートを実施して「自社に今どのような課題があるのか?」を洗い出して、深堀りを行なうことも有効です。

給与や待遇面、勤務方法や人間関係、ハラスメントや業務負荷など、今抱えている課題事態を洗い出すことが大切です。

定期的な組織調査やパルスサーベイなどの実施も、組織の“健康診断”としておすすめです。

ただ、大事なのはITツールと同じで調査して問題が解決するわけではないという点です。むしろ、調査だけで終わると、不満や課題を浮き彫りにしただけになってしまうこともあります。

結果をきちんと分析、議論して解決に向けて取り組みましょう。

人材育成とコミュニケーション

人事課題は、その字のとおり人に関する問題です。前述の通り、人事には透明性や公平性が大事であり、人事課題は制度や仕組みによる解決・改善を図ることが非常に大事です。

ただ、人に関するものだからこそ、制度の対象になる人、仕組みを運用するの理解や成長は非常に重要です。

人間関係などは仕組みだけで改善できるものではありません。人間性やリーダーシップ、多様性、セルフマネジメントなどに関する人材育成が必須なのです。

さらに、コミュニケーションの場を作る、機会を作るといった取り組みも有効といえます。

人事コンサルタントへ依頼

組織の問題は組織のなかにいると当事者としての思惑、感情なども入ってきて、客観的に見えないこともあります。

また、前述してきたように組織に生じる人事課題は多岐にわたり、すべてに対して精通することは簡単ではありません。

人事コンサルタントは人事に関する専門知識を持つ専門家です。

各分野の人事コンサルタントに依頼することで客観的な意見や他社事例などに基づく解決ができ、また将来的に予想される課題の事前対処などができることもあるでしょう。

人事課題を洗い出して解決に取り組もう

組織における人事課題は簡単に解決できるものではありませんし、尽きるものでもありません。

しかし、組織課題を放置しておくと、メンバーのモチベーション低下を招いたり、人材の流出につながったり、また、トラブスの発生につながったりする恐れもあります。

本記事で紹介した5つの課題を自社と照らし合わせて、「自社における人事課題が何か?」をしっかりと整理して優先順位をつけることが大切です。

人事制度を見直したり人事コンサルタントに依頼したりして、ひとつひとつ課題解決に向けて動いていきましょう。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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