近年、就活生のなかで“内定承諾”の位置づけが変わってきたり、新卒学生の就職活動が早期化、また、オンライン化したりしたなかで、内定辞退が増加傾向にあります。こうしたなかで重要性が高まっているプロセスが、内定者面談です。
本記事では、まず、内定者面談の概要と内定者面談で確認すべきことを解説します。解説したうえで、内定者面談を成功させるための3つのコツと、内定者面談でよくある逆質問、オンラインと対面それぞれの内定者面談での準備紹介をします。
<目次>
内定者面談とは?
まずは、内定者面談の概要を確認しましょう。
3種類の内定者面談と目的
ひとくちに「内定者面談」といっても、以下3つの種類と目的があります。
- 1. オファー面談
- ⇒内定通知をして、内定承諾につなげる
- 2. 内定保留している学生との面談
- ⇒不安の解消や動機付けをして内定承諾につなげる
- 3. 承諾後面談
- ⇒承諾後の辞退を防ぐ
今回の記事では、オファー面談としての内定者面談を中心に説明します。
内定者面談と内定者懇親会の違い
内定者懇親会とは、内定者と先輩社員、内定者同士との交流を通して、入社意欲を高めたり、未承諾者の内定承諾につなげたりする目的で行なわれるものです。一般的には、内定承諾者同士の懇親、フォローアップとして実施されます。
したがって、内定者面談=フォロー面談と考えると、内定者面談⇒内定承諾のあとに、内定者フォローの一環として内定者懇親会、承諾後に面談が開催されることになります。
オファー面談は内定後1週間以内が基本
優秀な内定者は、自社と並行して競合でも選考を受けている可能性があります。また、先行の競合への志望度は、自社の志望度より高いかもしれません。競合への志望度が高い場合、たとえば、自社より先に競合の内定が出てしまえば、そちらの承諾をしてしまう可能性もあるでしょう。
自社の評価の高さなどを伝えるうえでも、オファー面談は、最終面接などから間を空けずに行なったほうがよいでしょう。基本的には、内定後1週間以内、スピード感を持って進めるのであれば最終面接から1週間以内に行なうぐらいよいでしょう。
中途採用でも内定者面談は必須
中途人材も、1週間以上待っても内定のオファーが来なければ、「自分は不採用になったかも?」と思い、競合への応募などを再開する可能性もあります。
また、中途採用の場合、内定者面談で給与提示や待遇や働き方の詳細などを伝えて、そこで内定承諾を確認することが多くなります。
また、中途の場合、応募⇒選考⇒入社までの期間が短いことが多いため、新卒とは別な意味で早期に実施することが親切です。
したがって、オファー面談は、どのような対象者であれ、基本的には実施したほうが良い。また、内定後すぐに実施することが望ましいでしょう。
内定者面談で確認すべきことは?
内定者面談で確認すべきことは、内定者の状態によって変わってくる部分もあります。
待遇や仕事内容のすり合わせ(労働条件の通知)
労働基準法第15条では、労働契約を締結する事業主に対して、労働者に以下の労働条件を明示することを義務づけています。
- a. 労働契約の期間
- b. 有期労働契約の更新の基準
- c. 就業場所・従事すべき業務
- d. 始業・終業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に関する事項
- e. 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切・支払時期、昇給に関する事項
- f. 退職(解雇を含む)に関する事項
なお、法律の改正によって、2019年4月から、労働者本人が希望した場合のみ、上記内容の記載された書面(労働条件通知書)をFAX・メール・SNSのメッセージなどで送信できるようになりました。
労働条件の情報に認識の齟齬があった場合、入社後のトラブルになりやすいです。トラブル防止の意味でも、内定者面談できちんと説明することが大切になります。ブラック企業を警戒する求職者も多いなかで、労働条件をきちんと説明することが内定者の安心感にもつながります。
出典:平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります
入社の意思があるか?
以下の質問に対する反応(保留 または 承諾)によって、すり合わせのあとの面談の方向性が変わってきます。
・「入社していただけますか?」
・「内定承諾していただけますか?」
もちろん、状況がわからないなかで内定を出して上記の質問をぶつけるのではなく、最終面接などの段階である程度状況を把握したうえで、確認の質問とすることが大切になります。
【内定保留の場合】
すぐに内定承諾しない、一方で内定辞退もしないということは、何らかの理由があるわけです。理由がある場合は、オファー面談、また、面談後の内定者面談で何が魅力(すぐ辞退しない理由)で、何がボトルネックか?(すぐ承諾しない理由)を確認します。そして、いつまでにどう意思決定するかをすり合わせましょう。
「いつまでに意思決定してもらわないと内定を取り消す」といった高圧的な態度はNGです。相手が納得して意思決定できるようにすり合わせるというイメージが良いでしょう。ただし、企業側にも「もう一人内定者候補がいる」といった場合もあるでしょう。内定者候補がいる場合は、企業側の事情もオープンにして、「いつまでに決めてもらえないか」といったことをすり合わせましょう。
【内定承諾者の場合】
記事の本題とは違いますが、内定承諾者との内定者面談の場合には、質問対応などをしながら内定辞退の可能性を探ることになります。以下のような状態の場合、現時点では承諾しているものの、内定辞退のリスクがあるでしょう。
- 内定承諾書類の提出期限がはっきりしない
- 質問が少ない
- 明確な理由がなく内定式や内定者研修への出欠がはっきりしない など
入社にあたって不安はないか?
内定辞退を防ぎ、内定承諾から入社につなげるには、入社に向けて生じている不安や迷いを解消していくことが大切になります。とくに待遇や働き方などに関しては、内定者側から聞きづらい部分もありますので、丁寧に説明しましょう。
内定者面談を成功させる4つのコツ
内定者面談から内定承諾につなげるには、以下4つのポイントを大切にするとよいでしょう。
内定者の緊張をほぐすような雰囲気をつくる
内定を保留するボトルネックや、承諾者の志望度の低さなどの「本音」を聞きだすには、リラックスできる雰囲気をつくることも大切です。特に、社会人経験がない新卒の場合、緊張すると、「じつは他社と迷っている…」といった本音を言い出しにくい傾向があります。
したがって、リラックスできる雰囲気づくりに加えて、「本音を言ってもらったほうがお互いに良い結果になる」ということを、過去の事例なども交えながら伝えていくことも大切になります。
内定者からの質問を想定しておく
オファー面談では、すべての内定者から良い答え(承諾)がもらえるとは限りません。
また、面談の場の流れでとりあえず内定を承諾したものの、「入社に向けて不安はありませんか?」という質問に対して、本音が出てくることもあります。
内定者を内定承諾から入社につなげるには、人事担当者がこうした不安を解除していくことが大切になります。不安を抱えた内定者を安心させるには、上記のような質問に即答できるように、ある程度の質問を想定、準備しておくと良いでしょう。
曖昧な回答をしない
質問の想定とも関連することですが、内定者からの質問に対して人事担当者が曖昧、適当に答えた場合、内定者の不安は大きくなります。
とくに待遇や評価制度、制度面など、きちんとした「正解」がある質問に対して、適当な回答をすることはトラブルの原因になります。きちんと参照できるように準備しておく。また、面談の場で分からないものは「後ほど回答する」などで対応しましょう。
また、人によって異なるものや絶対的な答えがないものは、「私の私見ですが……」と前置きして伝えるとよいでしょう。
内定者面談後もフォローする
内定者面談がスムーズに進んで内定承諾となった場合、また、内定保留となった場合、いずれも面談後のフォローが大切になります。
たとえば、面談で決めた「いつまでに内定承諾書を提出してもらう」「○○社と比較して、いつまでに返事をもらう」といったことをリマインドとしてメッセージしましょう。
また、以下のようなメッセージをすぐに送るなどのフォローをすると、求職者の心に響きやすいでしょう。
- 「採用選考で関わるなかで感じた○○さんのこういうところがスゴく良いと思いますし、うちの会社にも合っていると思います。一緒に働けるのを楽しみにしています」などの期待
- 「○○社と迷っていることを正直に伝えてくれた○○さんの誠実さはとても素晴らしいものだと思っています。○○さんと一緒に働きたいと思っていますが、一緒に働く以上に○○さんにとって悔いがない選択をできるように支援したいと思っています。なにか質問や要望があれば何でも気軽に相談してください」 など
また、メッセージ送信後もタイミングを決めてフォローすることが大切です。
内定者面談でよくある逆質問
内定者面談では、内定をもらった安心感や入社が現実的になることから、選考では聞けなかった細かな質問が出てくる可能性も高いです。したがって、担当者は、以下のような逆質問に対しては答えられるように準備が必要です。
配属先や業務内容
決まっている場合は、部署と主な仕事内容を伝えます。面談に上司・先輩社員に加わってもらえば、より具体的な話も可能になるでしょう。一方で配属先などが決まっていない場合は、決まる時期といくつかの候補を伝えるようにしましょう。
伝え方のポイントは、なるべく詳しい情報を伝えて、不安を緩和してあげることです。ただし、入社後にギャップが生じないように、あまりに楽観的な答えだけを伝えないよう注意が必要です。
賃金や評価制度
人事評価の内容・役職手当・資格手当など、賃金が増える要素を紹介します。「入社3年目のリーダーAさんは、役職手当と資格手当込みで〇万円」などの具体例を出すと、イメージしやすくなります。
また、人事評価を高めるには上司と決めた目標の達成が必要といった、具体的情報を伝えてもよいでしょう。
働くうえで、待遇や評価制度はやはり重要な情報です。きちんと制度が決まっているものは相手にもイメージが湧くように、また、誤解が生じないようにきちんと制度の資料などを見せながら伝えることが大切です。適当に答えないよう注意してください。
また、賃金に関しても、配属先などと同様に楽観的なことばかり伝えると、ギャップになります。注意しましょう。
福利厚生
社会保険を中心とする法定福利厚生は確認したうえで、自社独自の福利厚生を紹介して、志望度を高めてもらうことも大切です。
単に制度だけを伝えてもイメージが湧きにくいため、利用事例なども伝えると有効になります。
内定者面談の準備と進め方
内定者面談の準備と進め方は、対面とオンラインのどちらで実施するかで若干変わってきます。
対面で実施する場合
内定者面談では、人事担当者が答えづらい質問や、不安要素の解除なども求められます。したがって、内定者面談の担当者は、内定者の志望度などに応じて誰にするかを決めるとよいでしょう。
また、中途採用などで、求職者の承諾が見えている場合には、内定者面談後に配属後の上司などに入ってもらい面談をするのも有効です。
対面の場合は、面談までに以下の書類も用意しておきましょう。
- 内定通知書
- 内定承諾書
- 労働条件通知書
また、質問に応じて、人事評価制度の資料などを見せられるようにしておくことも大切です。
オンラインで行なう場合
以下のような場合、オンラインでの内定者面談も有効です。
- 内定者に負担をかけたくない(遠方在住、研究などで多忙)
- なるべく早く内定者面談を実施したい
ただし、オンライン面談の場合、どうしても微妙なニュアンスや表情の変化をつかみにくくなります。したがって、オファー面談としての内定者面談をする場合、よほどの事情がない限りは、対面で実施するほうがおすすめです。
また、オンライン面談の場合、対面と異なり、求職者と握手するといったボディーランゲージなども入れにくいですし、こちらの感情も若干伝えづらくなります。
したがって、オンラインで内定者面談を行なう場合は、対面実施のとき以上に、面談後のフォローアップが大切になります。
まとめ
内定者面談には、以下3つの種類と目的があります。
- オファー面談(内定通知をして、内定承諾につなげる)
- 内定保留している学生との面談
- 承諾後面談(承諾後の辞退を防ぐ)
本記事では、オファー面談を中心に内定者面談を解説しました。
オファー面談は、最終面接後(内定後)なるべく早めに行なうことが大切です。また、新卒学生だけでなく中途人材にも、内定者面談(オファー面談)は必須になります。
オファー面談としての内定者面談で確認すべきことは、大きく分けて以下の3つです。
- 待遇や仕事内容のすり合わせ(労働条件の通知)
- 入社の意思があるか?
- 入社にあたって不安はないか?
内定者面談を成功させるには、以下4つのポイントを大切にしましょう。
- 内定者の緊張をほぐすような雰囲気をつくる
- 内定者からの質問を想定しておく
- 曖昧な回答をしない
- 内定者面談後もフォローする