面接官のトレーニング方法とは?役割の理解や意識のすり合わせ、質問手法を解説

面接官のトレーニング方法とは?役割の理解や意識のすり合わせ、質問手法を解説

自社に合う人材を採用するには、会社の魅力をうまく伝えて応募者の資質を見極められる面接官が欠かせません。

 

面接官のスキルをトレーニングで高めて、採用の精度を上げられます。面接官としての基本的な意識から手法まで、訓練方法を押さえて、面接官を育成しましょう。

 

<目次>

面接官のトレーニングで採用課題を解決する

面接官のトレーニングで採用課題を解決する(出典) photo-ac.com

 

『内定辞退が多い』『早期離職が繰り返される』といった人事上の問題は、採用を担う面接官のスキルが不足していることが原因である可能性があります。

 

採用の精度を上げる軸となる要素や面接官を鍛える必要性、研修の選択肢を知ってトレーニングの計画を立てましょう。

 

 

採用のマッチ率を上げるには

企業側と応募者の間に起こる認識や価値観のズレは、『採用のミスマッチ』と呼ばれます。複数回の面接を経て採用したにもかかわらず内定辞退や早期離職があるのは、面接官が『企業と応募者の相性』『応募者の本質』を見誤ったことが原因かもしれません。

 

特に経験の少なかったり、トレーニングを受けていなかったりする面接官は主観に偏りがちで、客観的な評価基準からズレてしまいがちです。採用のマッチング率を上げ自社に適した人材を確保するには、以下の二つがカギとなります。

  • 面接官のスキル向上
  • 評価基準の明確化

 

まず面接官のスキルは『人材を見極める力』と、『自社の魅力を伝える力』に大別されます。スキルが不足していた場合、採用すべきではない人を採用したり、優秀な人材を逃してしまったりする可能性があります。

 

また、魅力付けする力が不十分であれば、せっかく内定を出しても辞退されてしまうことになります。また、評価基準を明確化するためには、採用の準備段階で自社が求める人物像を明確にした上で、『採用ポジションの活躍基準』『必要なスキル』『コンピテンシー』『性格特性』などを細かく定義しておく必要があります。

 

 

面接トレーニングを行う必要性

新米面接官がいる場合や複数の面接官で面接を行う場合は、事前の『面接トレーニング』が欠かせません。トレーニングでは面接官の心構えや役割を理解するところからスタートし、コミュニケーションの練習やロールプレイングなどを経て実際の面接に臨みます。

 

トレーニングを通じて、面接官の間に共通意識が確立されます。無駄な質問や話し合いが減って面接が効率的に進むほか、評価のブレが少なくなり面接の精度が大きく向上するでしょう。内定承諾や入社後の定着に結び付けるスキルもアップし、最終的には内定辞退の減少や離職率の低下につながります。

 

 

外部の力を借りる方法

面接官のトレーニングが必要と分かっていても、研修に割くリソースが足りなかったり、トレーニングのノウハウがなかったりする場合もあるでしょう。

 

社内でトレーニングが難しい場合は、外部セミナーや講師派遣などの研修サービスを活用するのも選択肢です。外部研修を利用すると育成する社員の負担を減らせるだけでなく、自社で行っている面接を客観的に評価してもらえるというメリットもあります。

 

面接官向けの公開セミナーは多くが講義と実践の2本立てで、日程は数時間~半日程度です。面接官としての心構えや注意点・質問技法などを学んだ後に、面接官と応募者の役割に分かれてロールプレイングを行います。

 

一般公開型のセミナーは派遣しやすい反面、業界固有のポイントや専門知識には対応していません。自社の状況や面接官人数にはよりますが、自社向けにアレンジしてもらえる派遣型の研修もオススメです。

 

一方で、外部研修では企業風土や自社が欲する理想の人材像を絡めたトレーニングは少し困難な部分があります。予算に応じて自社内ですべて行うのか、一部を外の力に頼るのか柔軟に判断すると良いでしょう。

 

【STEP1】 面接官の役割と意識の理解

【STEP1】 面接官の役割と意識の理解(出典) photo-ac.com

 

面接官に向け最初に行うトレーニングは、面接官としての役割を認識させ、『会社の顔』である自覚を持たせることです。公正な採用選考に反する『NG質問』についても把握しておく必要があります。

 

 

面接官が担う4つの役割

面接官の役割は大きく四つあります。企業や組織の規模によって1人の面接官または複数の面接官で4つの役割を担うことになります。

  • インパクター
  • フォロワー
  • モチベーター
  • クローザー

 

『インパクター』は面接で応募者に、気付きやインパクトを与える存在です。応募者に「この会社で働いてみたい」という魅力を形成させるのが役割で、活躍する優秀社員や役員などが該当することが多いでしょう。

 

『フォロワー』は応募者側に立つ存在です。フォロワーが味方になることで、応募者は不安や恐れを感じずに面接に挑めます。応募者の本音を引き出し、他の面接官に共有するのもフォロワーの重要な役目です。

 

『モチベーター』は応募者の入社意欲を高めさせます。インパクターと似た役割ですが、インパクターが「憧れ」だとすると、モチベーターは「伴走者」というイメージです。自社の魅力を伝えたりやる気を刺激したりして、入社への最終的な動機付けを行うのが役割です。

 

『クローザー』は応募者を見極め、合否を決断する存在です。選考序盤からクローザーは存在しますが、最終的には社長や役員が担うケースが多く、『入社する覚悟』を応募者に確認して内定へとつなげます

 

それぞれの役割を確認しておくことで、自分がこの面接でどんな役割を果たすべきかというポジションを意識して面接に入れるでしょう。

 

 

面接官に必要な意識と態度

面接官は、応募してきた人にとっては会社の顔となる存在です。服装・言葉・行動のすべてが注目されており、面接官の対応によって会社のイメージが決まるといっても過言ではありません。

 

面接は会社が応募者を見極める場であると同時に、応募者が会社を選ぶ機会でもあります。高圧的な態度やだらしない服装、問題発言があると、「こんな会社には入りたくない」と入社意欲が薄れてしまうでしょう。

 

 

面接で注意が必要な質問

採用面接においては、なんでも訊いていいというわけではありません。採用面接はあくまで採用ポジションの仕事を任せられるかを軸として合否を決められるべきです。

 

従って、それ以外の質問をすることは本来の要素以外で採用の合否が決まる就職差別にもつながりかねません。厚生労働省では公正な採用選考の基本として、『採用選考時に配慮すべき事項(就職差別につながる可能性がある注意が必要な質問)』を挙げています。

  • 本籍・出生地・住居に関する情報
  • 家族に関する情報
  • 宗教・思想・人生観
  • 尊敬する人物
  • 愛読書・購読新聞

 

これらの事項は、本人の適性や能力に関係のない質問です。採用基準にするつもりはなくても、採否決定に少なからず影響を与えるため、結果的に『就職差別』につながる可能性があります。

 

採用ではあくまでも、職務に対して適性と能力があるかどうかで評価することが求められます。トレーニングでは面接官がすべきでない質問も周知して、企業のイメージを損なわない言動を心掛けてもらいましょう。
参考:公正な採用選考の基本|厚生労働省

 

【STEP2】 面接の手法に関する知識

【STEP2】 面接の手法に関する知識(出典) photo-ac.com

 

面接官をトレーニングする2つめのステップは、『面接の手法』に関する講義です。限られた時間の中、どのような質問をすれば相手の本質を見極められるのかを学びます。

 

先輩面接官は、これまで培ってきた面接のノウハウをしっかりと共有しましょう。

 

 

質問の仕方

面接は、面接官の質問が重要な役目を果たします。応募者の素を引き出し、本音を見極めることが面接の目的です。ありきたりな質問ではありきたりな回答しか得られず、応募者の本質を見極められません。

 

特に回答への『深掘り質問』は、トレーニングで必ず身に付けておきたいテクニックです。YES・NOで終わる質問ではなく『なぜ』『どのように』を繰り返し、回答に付随する背景や原因・理由を掘り下げます。

 

他にも応募者の過去の行動事実を聞き出す方法や、好感度を与える質問の方法もレクチャーします。面接の傾向を自己採点し、問題点や課題を見つけるプロセスも欠かせません。

 

 

面接時間を効率的に使う工夫

企業や面接形式によっても異なりますが、個別面接の時間は30~40分程度が目安です。序盤に『アイスブレイク』、中ごろに『魅力付け』、最後に『応募者からの質疑応答』を加えれば、全体で50~60分になります。

 

意味のない質問を繰り返したり雑談ばかりをしていたりすれば、時間はあっという間に終わってしまいます。経験の浅い面接官だと、『時間をかけているのに本質が見極められない』という状況に陥るケースがあります

 

トレーニングでは質問の優先順位や時間配分の仕方をレクチャーし、面接の効率を上げましょう。面接内容は、以下のように三つのパートに分けて確認するのがおススメです。

  • 面接前半:応募者の能力・価値観の確認
  • 面接中盤:条件・キャリアイメージの合致
  • 面接後半:入社意欲の確認

 

【STEP3】 複数の面接官を集めたトレーニング

【STEP3】 複数の面接官を集めたトレーニング(出典) photo-ac.com

 

面接の基礎である心構えや具体的な進め方を教えた後は、複数の面接官を集めて意識のすり合わせを行います。また、ロールプレイング等の実践的なトレーニングも取り入れて、本番に備えましょう。

 

 

面接官同士の意識のすり合わせ

意識のすり合わせは、面接官間でのズレをなくすために行います。まずは求める人材像を明確にした上で、人材選考における『MUST(必要)条件』と『WANT(十分)条件』について確認しましょう。

 

続いて、面接シートやマニュアルも踏まえながら、条件を見定めるための質問項目や評価基準・注意点をすり合わせます。すり合わせを行うことで、面接官の経験値やスキルに左右されることなく正しい評価を下せるようになります。評価のバラつきも少なくなり、採用業務が効率化されるでしょう。

 

 

魅力付けができるよう自社を分析する

面接官の役割には、応募者に対して自社をアピールする『魅力付け』も挙げられます。内定辞退が続いている場合は、「この会社で働いてみたい!」と思わせる何かが足りなかったといえます。従って、面接官のトレーニングでは、自社の魅力や強みを整理した上で、分かりやすく説明する練習も大切です。

 

ワークを通じて洗い出しや整理を実施したうえで、次のようなアウトプットを研修に取り入れると良いでしょう。

  • 業界での自社の位置付けや強みを話す
  • 自社で働くことのメリットや魅力を実体験に基づいて話す
  • 自社の理念やビジョンに共感した上で相手に語る

 

自社の魅力が思い浮かばない面接官には、『理念』『仕事・事業』『人・文化』『待遇』といった項目に分ける提案をしてみます。グループで具体的なエピソードを出し合うのも、これまで気付かなかった魅力の発見に効果的な方法です。

 

 

模擬面接とフィードバックの実施

面接官を育てるトレーニングの最後は、『模擬面接』です。面接官と応募者の役割を決め、2人1組もしくは評価者を含めた3人1組で10分ほどのロールプレイングを行います。

 

終了後は聞き役となった面接官がフィードバックをし、良かった点や改善点を挙げます。音声を録音して振り返りを行うと、より多くの気付きが得られるでしょう。

 

まとめ

面接官には応募者を見極める力と、自社を魅力的に伝える力の両方が必要です。面接官が未熟だと、応募者の入社意志を下げてしまったり優秀な人材を逃してしまったりと、会社にとってマイナスの結果をもたらすでしょう。

 

自社でトレーニングを行う場合は、意識付けから入り『講義』と『実践』をバランスよく取り入れるのがポイントです。より多くの気付きを与えるために、フィードバックにも力を入れましょう。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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