多くの企業が、採用時に適性検査を実施しています。また近年では、適性検査は採用時だけでなく、マネジメントの補助ツールや適正配置の検討材料として使われることも多くなりました。
一方で、適性検査には非常に多くの種類があります。したがって、導入を検討する場合、「どれを選べばいいのだろう?」と悩むこともあるでしょう。当記事では、代表的な適性検査20種類の一覧と比較表とともに、適性検査を選ぶポイントも紹介します。
<目次>
適性検査とは?
適性検査は、採用活動で面接と併せて使われるツールです。日本では面接の補助的な意味合いで使われることが多いですが、きちんと妥当性を検証し、自社基準をつくれば、適性検査は入社後の活躍度を見抜く上で面接と同レベルの精度があります。
また、適性検査は採用だけでなく、人材マネジメントに活用しても効果的です。
適性検査の区分
適性検査は大きくわけて「性格検査」「能力検査」があります。性格検査は「性格特性、動機、価値観」、能力検査は「地頭や知識量、合理的な思考力や集中力など」を調べることが可能です。
適性検査の目的
適性検査は、面接だけで見抜くことが難しい部分を把握することができます。
例えば…
- 求職者の内面/性格特性
- モチベーションの動機
- ストレス耐性やメンタルヘルスのリスク
- 論理性や地頭
などが代表例です。
面接では見抜きにくい部分を検査して、面接での印象や情報と併せて合否に反映することで、選考の見極め精度を高め、ミスマッチを防ぐことができます。
また、性格特性や動機などの情報は、マネジメント等にも大いに生かせるものですし、自社の活躍人材のパターン等を調べることで、じつは人材育成にも活用できます。
代表的な適性検査21種類を一覧で紹介
多くの企業が実施する代表的な適性検査の特徴を紹介していきましょう。
SPI3
40年以上の実績がある適性検査です。年間13,200社もの企業に利用されています。SPI3では、性格検査と基礎能力検査が可能です。わかりやすく実践的な報告書も人気の理由になります。パソコンもしくはマークシートで検査可能です。
GAB
パーソナリティと知的能力(計数・言語)とともに、採用試験で見ておくべきチームワークやバイタリティなどの9特性や、研究開発や営業などの職務特性もチェック可能です。Webもしくはマークシートで検査できます。
Compass
性格と地頭力を判定する検査です。1,000社以上の人事担当者へのヒアリングやアンケート結果を反映しています。採用判定、パーソナリティ、フィードバックという3種類のレポートが用意されているため、採用以外での活用も可能です。
CUBIC
個人の特性や資質について、性格・社会性・意欲・価値観から評価できる適性検査です。大手企業を中心に約5,000社に導入されています。通常バージョンとストレス耐性バージョンがあり、Webもしくは紙での受験が可能です。
不適性検査スカウター
定着しない・頑張らない・成長しない人材の共通傾向「不適性」を調べるというユニークなコンセプトの検査です。不適正傾向だけを調べるため検査内容が絞り込まれており、診断単価も安いのが特徴です。
HCi‐AS
メンタルヘルスチェックに対応し、ストレス耐性の詳細を診断できる検査です。採用採否まで踏み込んだ結論が出るため、採用現場における判断のあと押しに活用できます。面接時のチェックポイントが文章で提示されるところも、大きな魅力です。
MARCO POLO
個人の検査結果を出すだけではなく、組織風土、また採用職種の仕事内容や進め方をモデリングして、心理統計学と科学的分析手法を用いて「組織・仕事への適合度」「活躍可能性」を算出するという非常にユニークな検査です。採用以外に、育成や配置、マネジメントにも活用できます。
B5
組織で働くうえで必要なパーソナリティについて、「普遍的な5つの性格特性」と「成果を阻害する要因」から科学的に分析できる検査です。B5検査を活用すると、組織にネガティブな影響を与える可能性も予測可能です。
DPI
企業で実績を上げるうえで必要な態度能力を測定する適性検査です。態度能力とは、対人関係処理能力+意欲を指します。自社採点方式となる紙のほかに、Webやパソコンでも検査可能です。
Vision
企業と学生、双方の意識ミスマッチを防ぐ適性検査です。双方向型のシステムとなっているため、Visionを使うことで企業側の経営理念などに合った人材かという判定を実施できます。
data
企業で実績を上げるうえで求められる知的能力と態度能力を総合的に診断できる検査です。新卒・中途の採用のほかに、適正配置や管理者登用、人材育成にも活用できます。年代や学歴によって、3種類の検査が用意されています。
CAB
エンジニア職の適性をチェックする検査です。SEとプログラマーの職務適性のほかに、採用時に見ておくべきチームワークやバイタリティなどの9特性も予測可能です。Web版では、英語での受験にも対応しています。
TAP
性格検査と能力問題を軸にする総合タイプのほかに、さまざまなオプションが用意されています。性格検査では、職務バイタリティや行動的側面、対人的側面を測定可能です。オプションで、事務適性や情報処理能力もチェックできます。
G9
将来的に遭遇するストレスへの対処力や耐性を予見する検査です。G9を使うことで大きな離職原因であるストレスに強い人材を見極められます。同社のA8(コンピテンシー適性検査)やC3(考察力検査)と組み合わせることも可能です。
TG‐WEB
知的能力を数理と言語の両面から測定することで、ハイパフォーマーの要件を持った人材を選別可能です。受験者の個人票のほかに順位表の出力が可能という特徴があります。
TAL
脳科学と20年におよぶ現場の知見から、受験者が持つ潜在的人間力を測定します。TALを実施することで責任感や向上心、積極性、コンプライアンス傾向なども分析可能です。36問の選択式問題のほかに、図形アイコンを使った検査もあります。
IMAGES
総合適性テストです。パーソナリティ・英語・言語・計数理解を測定できます。パーソナリティについては、6つの尺度パターンのほかに文章でも報告可能です。
3Eテスト
35分で知的能力と価値観、性格を測定できる検査です。面接で深掘りしにくいキャリアに対する価値観も把握できます。結果報告書は定量的かつわかりやすい内容です。スマートフォン受験にも対応しています。
Dict
言語・社会科学系、時事・常識系、数論理・自然科学系の3領域について能力測定できる一般教養試験です。新卒・中途の採用試験のほかに、社内登用や昇進昇格試験などでも活用できます。有料オプションで自社のオリジナル問題も追加可能です。
内田クレペリン
年間70万人が受験する適性検査です。一桁の足し算を繰り返すなかで、受験者の性格や行動特性、能力などを測定できます。
GPS-Business
基礎能力やパーソナリティに加え問題解決に必要な3つの思考力を測定しています。
音声・動画問題を使った実践的な測定が可能で、面接官用と受検者フィードバックに適した2種類の結果帳票があります。
適性検査の比較一覧
20種類の適性検査を比較すると、以下のようになります。
特徴 | 性格・パーソナリティ検査 | 能力検査 | 組織との適合性 | 価格 | |
SPI3 | ・40年以上の実績 ・圧倒的なデータ量と受験者数 | ◯ | ◯ | × | ・初期導入費用:無料 ・受検料:(テストセンター):1名あたり5,500円 ・受検料(インハウスCBT・Webテスティング): 4,000円/1名 ・受検料(ペーパーテスティング): 5,000円/1名 |
GAB | ・総合適性テスト ・パーソナリティ、英語、言語、計数理解を測定可能
| ◯ | ◯ | × | ・問題冊子:600円/1冊 ・採点処理価格:3,500円/1名 |
Compass | ・1,000社以上の人事担当者へのヒアリングやアンケート結果を反映 ・採用判定、パーソナリティ、フィードバックという3種類のレポートを用意 | ◯ | ◯ | × | ・通常プラン:年間基本料金0円、検査料金2,000円/1名 (半額プランや定額プランなどもあり) |
CUBIC | ・大手企業を中心に約5,000社の導入実績あり ・個人の特性を性格、意欲、社会性、価値観から評価可能 | ◯ | ◯ | × | ・通常バージョン: 1,500~1,800円/1名 ・ストレス耐性バージョン:2,000~2,300円/1名 (定額プランや従量プラン、テストのソフトウェア提供などもある) |
不適性検査スカウター | ・不適性検査 ・定着しない、成長しない、頑張らない人に共通する傾向を予測可能 | ◯ | ◯ | × | ・資質検査:800円 ・精神分析:500円 ・定着検査:500円 |
HCi-AS | ・ストレス耐性の詳細を診断可能 ・検査時間10分、診断結果提出15分(最短での処理時) | ◯ | × | × | ・基本料金(導入時):50,000円 ・1名~30名まで: 4,000円/1名 ・31名~100名まで:3,500円/1名 ・100名超の場合: 3,000円/1名 ※能力検査はHCi-abとして提供 |
MARCO POLO | ・自社基準(モデル)を設定可能 ・自社モデルと個人の検査結果を照らし合わせて活躍可能性を算出 | ◯ | ◯ | 〇 | ・年間システム利用料:12万円~ ・特性アセスメント:3,000円/名 ・地頭系基礎能力テスト:3,000円/名 |
B5 | ・パーソナリティを「普遍的な5つの性格特性」と「成果を阻害する要因」から科学的に分析 | ◯ | × | 〇 | ・非公開 ・能力検査も同ブランド内で考察力検査C3、判断推理力検査i9、一般常識検査P3、事務処理能力検査J3などを提供 |
DPI | ・態度能力(対人関係処理能力+意欲)の測定検査 | ◯ | ◯ | 〇 | ・紙受検(自社採点方式):900円/名 ・Web受検:2,500円/名 ・パソコン受検:2,500円/名 |
Vision | ・企業と学生のミスマッチを防ぐ検査 | 〇 | × | × | ・非公開 ・精緻なコンピテンシー検査A8や能力検査などを同ブランドで提供しています |
DATA | ・知的能力と態度能力の総合診断が可能 ・適正配置や管理者登用、人材育成にも活用可能 | ◯ | ◯ | × | ・3,500円/1名~ |
CAB | ・エンジニア職の適性を測定 ・チームワークやバイタリティなどの9特性も予測可能 | ◯ | 〇 | × | ・問題冊子価格:600円 ・採点処理価格:3,500円 |
TAP | ・性格検査と能力問題を軸にする総合タイプのほかに、さまざまなオプションや種類がある | ◯ | ◯ | × | ・総合タイプ(Web受験版):1,320円/1名 ・総合タイプ(マークシート版):1,485円/1名 (性格タイプ、短縮タイプ、オプション検査などもある) |
G9 | ・将来的に遭遇するストレスへの対処力や耐性を予見 | 〇 | × | × | ・非公開 ・能力検査は考察力検査C3、判断推理力検査i9など、企業との適合度はビジョンマッチングツールVisionを同ブランド内で提供しています。 |
TG-WEB | ・数多くの求職者のなかから、自社にふさわしい人材を見極め | ◯ | ◯ | 〇 | ・非公開 ・カスタマイズにより、自社のハイパフォーマー要件などを評価項目に反映できます |
TAL | ・脳科学と20年におよぶ現場の知見を生かした検査 ・潜在的人間力を測定 | ◯ | × | × | ・初期費用:10,000円(税別) ・検査分析料金:3,500円/1名(税別) |
IMAGES | ・総合適性テスト ・パーソナリティ、英語、言語、計数理解を測定可能 | ◯ | ◯ | × | ・問題冊子価格:600円 ・採点処理価格:3,500円 |
3Eテスト | ・35分で知的能力と価値観、性格を測定できる | ◯ | ◯ | × | ・Webパックプラン(1年間):70,000円(20件) ・Web従量プラン(1ヵ月):基本料金15,000円/月、採点料3,200円/件 ・マークシート(2年間):70,000円(1セット20部) (グローバル版もあり) |
Dict | ・一般教養試験 ・自社のオリジナル問題を追加できる有料オプションあり | × | ◯ | × | ・基本料・登録料:なし ・分析料金:1,100円/1名(税別) (ボリュームディスカウントあり) ・同じブランド内で性格検査VERACなども提供しています |
内田クレペリン | ・年間70万人が受験 ・医療の診断や学校現場での教育指導などでも利用 | ◯ | 〇 | × | ・検査用紙(10枚1セット):1,100円(税込み) |
GPS-Business | ・音声/動画問題を使った実践的な測定が可能 | 〇 | 〇 | × | ・初期導入費用:無料 ・受検料:1名あたり4,500円 |
※検査内容と価格などは2021年11月9日時点のホームページ情報を参照して作成しています。各検査の詳細は表内サービス名をクリックした先にある各社の公式ホームページでご確認ください。
※HRドクター運営する株式会社ジェイックでは、HCi-ASおよびMARCO POLOの代理店をしております。10年以上に渡る採用支援の経験を踏まえて、適性検査のアドバイスも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
採用時の適性検査を選ぶポイント
採用時の適性検査は、自社で活躍する人材を見抜く、同時に採用すべきでない人を見極める採用精度を高めるために大事なものです。
採用時の適性検査では実施人数が多くなりやすいため、導入時の検討材料として検査単価を重視する傾向があります。費用を抑えることももちろん重要です。
しかし自社に合った適性検査を実施するためには、費用と同時に以下の流れを押さえて比較検討をすることが大切になります。
採用基準を明確化する
ただ漠然と「優秀な人材が欲しい」と思っている状態では、適性検査を導入する効果性は高まりません。
自社の採用活動に適性検査を取り入れるなら、まずは過去に採用した優秀人材や現職のハイパフォーマーの特徴を分析し、
- 「何をもって優秀とするのか?」
- 「こういう人材はエンゲージメントが低い(離職しやすい)」
- 「どういう因子が活躍する原動力になるか?」
といった傾向を見つけて、具体的な採用基準を明確にすることが大切です。
採用基準と判定手法を紐付ける
採用基準が決まったら、自社で活躍するうえで必要な各項目をどのような選考で確認していくかの紐付けを行なっていきましょう。
具体的には、以下のようなイメージになります。
- 書類選考で見極めること:保有資格、過去の成果と経験 など
- 面接で見極めること:成果の再現性、ロジカルコミュニケーション力、ストレスが生じた場合の対処の仕方 など
- 適性検査で見極めること:地頭レベル、達成動機の強さ、社風と価値観の一致度 など
適性検査の妥当性検証を実施する
妥当性検証とは、「適性検査の結果が入社後のパフォーマンス予測をするうえで本当にあてになるのか?」を確認することです。もちろん検査会社でも実施されていますが、大事なことは「自社において予測的妥当性があるか(検査の結果が入社後のパフォーマンス予測に使えるか)」です。
導入前の妥当性検証は、既存のメンバー最低7~10人をサンプルとして実際に適性検査を受検してもらいます。サンプルには、ハイパフォーマー(高評価者)とローパフォーマー(低評価者)の両方を含めることが大切です。
両方を含めることで「適性検査でハイパフォーマーとローパフォーマーの違いを識別できるか?」「ハイ同士・ロー同士に共通点があるか?」などを確認できます。
また、性格やコミュニケーションを知っている既存社員の検査結果を確認することで、「検査結果がこうだと、こういう言動や思考になりやすい」と検査結果を具体的な人物像としてイメージすることが可能になります。
なお、適性検査の導入後も、3年程度を周期として採用した若手社員の「採用時の検査結果」と「現在の評価とパフォーマンス」を照らし合わせて、採用基準を微修正したり、採用検査の妥当性が担保されていることを確認したりすることが大切になります。
まとめ:適性検査を活用して優秀人材の採用やマネジメントの精度UPを!
適性検査は、優秀人材の採用や次世代リーダー選びといった人材マネジメントの精度を高めるうえで有効です。記事では、採用時の適性検査にフォーカスして、20種類の代表的な適性検査を紹介し、また採用検査を選ぶポイントを解説しました。
適性検査は、以下の手順で選んでいきましょう。
- 1.採用基準を明確化する
- 2.採用基準と判定手法を紐付ける
- 3.適性検査の妥当性検証を確認する
適性検査について詳しい情報が知りたい方は、以下の資料もぜひ参考にしてみてください。