第4の習慣「Win-Winを考える」を実践し、人間関係でリーダーシップを発揮するポイント

第4の習慣「Win-Winを考える」を実践し、人間関係でリーダーシップを発揮するポイント

「Win-Winを考える」というのはよく聞く台詞ですが、じつはスティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣』から生まれた言葉です。『7つの習慣』は全世界で4000万部、日本国内でも240万部を売り上げる世界屈指のビジネス書です(数字は2021年現在)。

 

『7つの習慣』に紹介される習慣7つはお互いにつながっており、第1~第3の習慣を実践することで個人の信頼性を高めて自立する、第4~第6の習慣を実践することでお互いが協力し合い相乗効果を発揮できるようになる、そして、第7の習慣で自分を高め続けるという構成になっています。

 

第4の習慣「Win-Winを考える」は、相乗効果を発揮できる人間関係を作るための入り口です。ビジネスでも人生でも、良好な人間関係をつくることは欠かせません。記事では、第4の習慣「Win-Winを考える」について、Win-Winの概要、人間関係のパラダイム、Win-Winを実践する土台となる3つのポイントを解説します。
 

ちなみに、7つの習慣の内容や効果については以下の記事で要約していますので、まだ読んでいないという方は参考にしていただければと思います。

<目次>

第4の習慣「Win-Winを考える」とは?

“Win-Win”はビジネスシーンでもよく耳にする言葉です。本章では、“Win-Win”とは何か?、“Win-Win”を理解するうえで役立つ6つの人間関係の捉え方、第4の習慣「Win-Winを考える」が意味することを解説します。

 

Win-Winとは?

「7つの習慣®」におけるWinとは「自分が望むもの」という意味です。したがって、英語そのままの意味である“勝利”であることもありますが、実現したい結果、満足いく成果といったもの、また、時には満足感や達成感、充実感といった感情的なものもWinの形です。

 

そして、Win-Winとは「お互いにWinを実現する」、つまりお互いに満足できる結果を手にしている状態を指します。そうなると、例えば“スポーツの勝敗”や“値引き交渉”など、「お互いにWinである状態は実現できないこともある」と考える人もいるかもしれません。たしかにそのとおりです。Win-Winはすべての場面で実現できるものではありません。

 

しかし、長期的・継続的に良い人間関係を築くためにはWin-Winを実現することが重要であり、相手のWinを知ろうとして、Win-Winを実現しようとする姿勢や考え方が重要です。だからこそ、第4の習慣はWin-Winを実現する、ではなく、Win-Winを考える、と表現されているのです。

 

以下では、Win-Winの関係構築に不可欠な「自立」とWin-Winの理解を深めるために役立つ人間関係の6つのパラダイムを説明します。

 

Win-Winの関係を築くためには個々が自立している必要がある

冒頭でも紹介したとおり、『7つの習慣』で紹介されている習慣はバラバラの習慣ではなく、つながりがあります。

 

繰り返しになりますが、第1~第3の習慣を実践することで個人の信頼性を高めて自立する、第4~第6の習慣を実践することでお互いが協力し合い相乗効果を発揮できるようになる、そして、第7の習慣で自分を高め続けるという構成です。

 

各習慣を本当に実践していくためには、手前の習慣が実践できている必要があります。つまり、相乗効果の発揮を目指す第4~第6の習慣を実践するためには、第1~第3の習慣を実践して自立している必要があります。

 

土台となる人格がなく自立していない状態で、他者とWin-Winの関係を築こうとしたらどうなるでしょうか。自立していない人は、責任感や主体的な判断がなく、価値観も明確になっていません。

 

この状態で周囲と信頼関係を築くことは困難です。まず、しっかりした人格の土台を備え自立できて初めて、私たちはWin-Winの人間関係を実現することができます。

 

人間関係の6つのパラダイム(捉え方・価値観)

コヴィー博士は、Win-Winとはテクニックやスキルではなく、人間関係への哲学であると言います。私たちは生きるうえでは、周囲の人とさまざまな関係を持っています。コヴィー博士によると私たちの人間関係は以下6つのパラダイム(捉え方・価値観)のいずれかで成り立っているといいます。

【人間関係の6つのパラダイム(捉え方・価値観)】
(1)Win-Lose
相手を打ち負かして自分のWinを得ようとする考え方。
(2)Lose-Win
相手との諍いや関係悪化を恐れるあまり、妥協したり相手に勝ちを譲ったりしようとする考え方
(3)Lose-Lose
相手がWinを得るのは何としても阻止したい、そのためには自分の損失もいとわないとする考え方
(4)Win
自分のWinをひたすら追求する考え方です。Win-Loseと違って相手の勝ち負けは重要ではありません。
(5)Win-Win
自分も相手も、お互いが満足できる結果を目指そうとする考え方
(6)Win-Win or No Deal
Win-Winが困難なときは、お互い合意のうえで「取引しない」という選択する考え方

 

Win-Winのパラダイムだけが、長期的な好ましい人間関係を実現する

コヴィー博士は、前章で説明した人間関係の6つのパラダイムのうち、長期的に好ましい人間関係を実現できるのはWin-Winだけであると言います。

 

コヴィー博士は、自分か相手、どちらが勝つか負けるかで物事をとらえる「二者択一」の考え方に警鐘を鳴らします。Win-Loseのパラダイムは相手を負かして自分の勝利を手に入れようとしますので、瞬間のWinは得られても、長期的に良い人間関係を築くことはできません。

 

逆にLose-Winのパラダイムでは、自分は一向に利益を得られず、感情的なしこりや禍根を将来に残したり、いつか我慢を爆発させたりすることになります。

 

私たちは往々にして、勝ち負けなど「二者択一」で物事を考えがちです。しかし、Winを得るためにはどちらかの犠牲が必要だと考えている限り、Win-Winの人間関係を構築することはできません。

 

人生を勝ち負けや競争ではなく、お互いが協力する場ととらえるのが、Win-Winの価値観です。Win-Winの本質は、どちらかが犠牲になってWinを得るというのではなく、「全員が満足できる方法がある」という考え方にあります。

 

もちろん、コヴィー博士はルールにのっとった健全な競争、例えば、“プロスポーツで勝敗を決める”ことを否定しているわけではありません。そのうえで、長期的に良好な人間関係を築くためにはWin-Winの価値観を持つことが必要である、と言っています。

 

お互い合意できないときの選択肢「Win-Win or No Deal」

Win-Winを目指すことは大切ですが、人間関係や交渉のなかで常にWin-Winを実現できるわけではありません。お互いWinを目指しても、双方にメリットのある解決策が見つからない場合もあるでしょう。そのときに知っておきたいのが、「Win-Win or No Deal」という価値観です。

 

「Win-Win or No Deal」とは、意見の違いを認めたうえで「合意しない」という選択をする価値観です。No Dealは、決して妥協ではありません。

 

お互いWinを期待できない場合は、勝手に相手に期待して幻滅したり、Win-LoseやLose-Winの価値観に戻ってしまったりするのではなく、意見や考え方の違いを認めたうえできっぱりと取引をしないという選択をすることが未来につながるのです。

Win-Winの土台となる3つの人格

Win-Winの人間関係を構築するためには、土台となる「人格」が私たちに備わっていなくてはなりません。Win-Winを実践するポイントであり、土台となる3つの「人格」をお伝えします。

 

誠実

誠実とは、自分の価値観を明確にして、価値観にしたがった生き方をすることです。「価値観がはっきりしない人」は、ケースバイケースや自分の有利不利で判断を変えがちです。周囲から見れば裏表のある人間だと見えることもあるでしょう。

 

誠実には、自分自身との約束を守るという意味もあります。自分との約束を守れない人は、人との約束を守ることはできません。誠実な人は、自分の内面の価値観と行動が一致しており、自分との約束を守ることを大切にしています。誠実さは、Win-Winの前提となる他者との信頼関係を支える大黒柱です。

 

成熟

成熟とは、「相手の考え方や感情に配慮しながら、自分の気持ちや信念を伝えること」をいいます。コミュニケーション技法で、アサーションといったりもします。相手の考え方や感情に配慮するためには「思いやり」が、自分の主張や見解をハッキリ相手に伝えるには「勇気」が必要です。

優しさだけでWin-Winの結果に到達することはできない。勇気も必要だ。相手の身になって考えるだけでなく、自信を持って自分の考えを述べなくてはならないのだ。思いやりを持ち、相手の気持ちを敏感に察することも大事だが、勇敢であることも求められるのである。勇気と思いやりのバランスをとることが本当の意味での成熟であり、Win-Winの前提条件なのである。

スティーブン・R・コヴィー 「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」

コヴィー博士の言葉にあるように、勇気と思いやり、どちらかだけでは、Win-Winにたどり着くことはできません。Win-Winには優しさだけでなく、勇気も求められるのです。

 

<勇気と思いやりのバランスによってもたらさせる人間関係>

勇気と思いやりのバランスによってもたらさせる人間関係

 

思いやりがあっても勇気が足りない人は相手に配慮するあまり、自分の意見や主張をきちんと伝えられず、「Lose-Win」の人間関係に陥りがちです。

 

一方で、勇気が十分でも思いやりにかけていれば、自分の主張を通すことを優先し、相手の気持ちや立場を慮ることができず、「Win-Lose」や「Win」の人間関係を作りがちです。そして、自分を大切にせず、相手にも思いやらない価値観、これは「Lose-Lose」への人間関係へつながります。

 

私たちは心の底ではWin-Winの人間関係を望んでいることが多いはずです。しかし、自分の人間関係を実際に振り返ってみると、勇気と思いやりのどちらかに偏った人間関係であることも多いでしょう。Win-Winを実現するためには、勇気と思いやりを高いレベルでバランス良く備える必要があるのです。

 

豊かさマインド

Win-Winを実践するには「全員がWinを得るだけの資源はたっぷりある」とする「豊かさマインド」の考え方が不可欠です。

 

しかし、私たちは往々にして、豊かさマインドとは真逆の欠乏マインドに陥りがちです。欠乏マインドとは、「誰かが利益を得ると、その分自分の取り分が減ってしまう」という、いわゆる「ゼロサム(一方のプラスが他方のマイナスになる)」の考え方です。

 

欠乏マインドのある人は、他者の成功を心の底から喜ぶことができません。口では「おめでとう」と言いながらも「自分の取り分が減った」と心の底では嫉妬や悔しさが渦巻いています。「他人の成功(Win)は自分の失敗(Lose)である」と欠乏マインドのパラダイムで考えている限り、自分と相手、双方の成功を目指すWin-Winにたどり着くことはできません。

 

豊かさマインドは、内面の人格や心の安定があって初めて生まれるものです。豊かさマインドが備わることによって、私たちは他者の人間性や個性の違いを受け入れ、お互いのWin-Winに向かって歩み寄ることができるようになります。

まとめ

記事では、第4の習慣「Win-Winを考える」をテーマに、Win-Winとは何か、人間関係の6つのパラダイム、Win-Winの土台となる3つの人格をお伝えしました。

 

私たちは周囲の人とWin-Winの人間関係になることを願っています。しかし、同時に私たちは“物事を勝ち負けでとらえてしまう”二者択一や、“相手が何かを手に入れれば自分の取り分が減る”欠乏マインドの考え方に陥ってしまいがちであることも事実です。

 

また、Win-Winだけが長期的に良好な人間関係を築く術ですが、一方で、すべての場面でWin-Winを実現できるわけではありません。そのなかでも「誠実」「成熟」「豊かさマインド」という3つの人格を身に付け、Win-Winを考える姿勢、Win-Winを実現できるという価値観を持つことが大切です。記事がWin-Winの人間関係を実践するヒントになれば幸いです。

 

株式会社ジェイックでは、7つの習慣を習得する研修を実施しています。フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と正式契約しており、認定資格を取得した講師が研修を行います。ご興味のある方はぜひ以下のページよりお問い合わせください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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