ポジティブフィードバックとは?行なうメリットや実施方法、ポイントを解説

2021/03/01

仕事中の雑談風景

フィードバックを行なうとき、やり方によっては相手のモチベーションが下がってしまいます。そこで、フィードバックをうまく行なうための考え方として注目されているのが、ポジティブフィードバックです。

記事では、ポジティブフィードバックの特徴やメリット、やり方、効果的に実施するうえでのポイントを詳しく解説します。

<目次>

ポジティブフィードバックとは?

業務の指示をする上司

ポジティブフィードバックとは、メンバー等の仕事上の行動や発言から高く評価できる点を見出し、前向きな言葉を使って相手にフィードバックする方法です。

具体的には、以下のような声かけがポジティブフィードバックのイメージです。

 

  • 納品まで粘り強く頑張った
  • 先月よりもうまくなっている
  • 先ほどの提案は○○の部分にとても説得力があった

など

 

 

ポジティブフィードバックの考え方と本質的な目的

ポジティブフィードバックは「褒める」ことに似ています。「褒める」という行為は意外と誤解されがちで、多くの管理職が「過去の行動を承認するために行なうもの」と勘違いしています。

 

たしかに、褒めるという行為は、過去の行動に対するものです。しかし、褒める目的は「相手の好ましい言動を強化・習慣化する」という未来志向のものです。ポジティブフィードバックの目的もまったく同じです。

 

人は誰しも承認欲求を持っています。ポジティブフィードバックで良い行動を褒めることで、相手の承認欲求が刺激され、習慣化という好循環が生まれます。また、ポジティブフィードバックや褒める行為には、習慣化以外にも後述するさまざまな効果やメリットがあります。

 

 

ポジティブフィードバックが生まれた背景

フィードバックはもともと、制御系システムの専門用語でした。しかし次第に、メンバーのプロセスや働き方に対して評価やコメントを返すことが、人材育成に非常に効果的だと注目され、この数十年で人材開発やマネジメントの領域においても、一般的に使われるようになりました。

 

フィードバックは、相手のパフォーマンスや能力向上のために行なわれるものです。したがって、フィードバックの効果を高めるために、以下のような原則やノウハウがあります。

 

  • 相手の成長に貢献するために実施する
  • 相手が受け止めやすい形でフィードバックする(表現や内容の絞り込みなど)
  • ポジティブなものとネガティブなものは3:1以上の比率にする

など

 

しかし、ビジネスの現場で行なわれているフィードバックの多くが、不足点ばかりを指摘して、相手のモチベーションを下げてしまうようなものが多いという実情があります。

 

そのため、近年ではフィードバックによって生じる負の問題を解消するために、あえて良い内容のフィードバックに振り切ったのがポジティブフィードバックという考え方です。

 

なお、正しいフィードバックのポイントを詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

ポジティブフィードバックで得られる効果とメリット

ポジティブフィードバックを行なうと、以下の効果が生まれます。

 

 

メンバーの成長が加速する

前述したとおり、ポジティブフィードバックは、「部下の良い行動を強化し、習慣化させる」ことが目的です。繰り返して欲しい姿勢や言動に着目してしっかりと承認を伝えることで、メンバーは「何をしたら良いのか」が明確になり、好ましい言動が加速されます。

 

もちろん、修正点や成長課題に対するフィードバックも、基準を意識させるうえでは有効ですが、メンバーのモチベーションを高めて行動を習慣化させるうえでは、ポジティブフィードバックがより効果的です。

 

 

モチベーションが高まる

ポジティブフィードバックの大きなメリットは、メンバーのモチベーションを高めることです。課題に対するフィードバックは、内容が正しいとしてもメンバーのモチベーションが高まるものではありません。だからこそ、 “褒める”と“叱る”を3:1以上のバランスにするといった原則があるわけです。

 

マネジメントの世界では、“人は承認に向かって生きる”ともいいます。ポジティブフィードバックによって、承認されることでメンバーのモチベーションは高まり、仕事全体のパフォーマンスにも好影響を及ぼします。

 

 

自己効力感が高まる

自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは、「自分が何かを達成できる」という認識や自信、信頼感がある状態です。自己効力感が低い場合、以下のような問題が起こりやすくなります。

 

  • 新しい挑戦ができない
  • 失敗を過剰に恐れてしまう
  • 努力を継続できない

など

 

メンバーの自己効力感が高まり、小さな挑戦や努力が習慣化すると、組織は活性化するでしょう。また、自己効力感が高まってくると、ポジティブフィードバックだけでなく、必要な成長課題の指摘などを行なっても「自分は成長できる、課題を克服できる」と前向きに受け止められる可能性も高まります。

 

ポジティブフィードバックが自己効力感の向上に役立つのは、できたことのフィードバックだけではありません。ポジティブフィードバックは、メンバーのできたところに着目しますので、必然的に強みを活かすことにつながります。じつは「自分の強みを活かす」実感も、自己効力感の向上には非常に役立つのです。

 

 

上司とメンバーの関係が良くなる

ポジティブフィードバックはできたことに着目しますので、上司からメンバーへの承認のメッセージとなります。承認されている、きちんと見守られているという安心感は、上司とメンバーの間に、円滑なコミュニケーションや報連相をしやすい良好な関係をもたらします。

 

 

管理職がメンバーの強みや成長に注目するようになる

ポジティブフィードバックをするためには、相手の良いところ、できたところを探すことが必要です。つまり、ポジティブフィードバックを導入すると、上司はメンバーの仕事するプロセスや取り組み方を、これまで以上にしっかりと見るようになります。

 

上司がメンバーの強みや成長に注目するようになると、仕事の適切な配分や能力に応じた業務の割り当て、適材適所の人材配置なども可能になるでしょう。

 

ポジティブフィードバックのやり方

ポジティブフィードバックは、基本的に以下の流れで行ないます。

 

 

1.ポジティブな評価対象となる言動・行動を明確に伝える

ポジティブフィードバックをメンバーの成長やモチベーション向上につなげるには、“どこが良い言動や姿勢だったのか?”を明確に伝えることが大切です。

 

例えば、「このプロジェクトで、◯◯さんはとても頑張りました!」では、何が良かったのかが曖昧です。フィードバックを受けた側は、フィードバック内容を自己成長に活かしづらいでしょう。

 

一方で、「このプロジェクトで、◯◯さんはいつも会議で積極的に発言するリーダーシップを発揮しました。また、皆に納期をリマインドして納期管理をしてくれました。

 

こういった行動により、プロジェクトが活性化して進捗がスムーズになり、リーダーの私もすごく助けられました!」と伝えれば、部下は自分の長所を具体的に把握することができ、フィードバック内容を今後の行動につなげられます。

 

なお、ある程度繰り返されている行動(習慣)は、節目のタイミングでフィードバックすることも有効な方法です。ただし、実際に言動が行なわれた時点から時間が経ちすぎてしまうと、相手も忘れてしまっていることもあります。そのため、ポジティブフィードバックは可能な限り、実際の言動が行なわれた直後に伝えることが原則です。

 

 

2.相手の行動・言動から生まれた結果を伝える

ポジティブフィードバックを行なう際には、「相手の言動によって何が生まれたのか」をセットで伝えると効果的です。「あなたのAという行動(言動)によって、Bという結果が出た」ということです。

 

上記の事例でいえば、「プロジェクトを活性化して進捗をスムーズにしてくれました。」という部分が結果に当たります。結果は業績や定量的な指標である必要はありません。相手の言動がもたらした影響や、定性的な成果でも大丈夫です。

 

上記の流れでポジティブフィードバックを行なうと、部下は自分が高評価された行動によって、「どのような貢献ができたか?」「どんな影響を及ぼせたのか?」を具体的にイメージできます。結果や貢献を具体的にイメージできると、自己効力感の向上にもつながりやすくなります。

 

 

3.今後に求めることを伝える

部下が自分の言動と結果を自覚できたら、以下のいずれかで、未来に向けたフォローと期待を伝えると効果的です。

 

  • 強みの追求             ⇒さらなる大きな結果への期待
  • 現状の維持             ⇒いまの理想的な状態の維持
  • 変化                          ⇒今回の成果を踏まえての成長テーマ提示

 

どれを選ぶかは、対象となるメンバーの現状や能力、育成プランなどによって変わります。ポジティブフィードバックを行なう上司が、メンバーの成長や成果への道筋を考えて、明確に進むべき道を示すことが大切です。

 

ポジティブフィードバックを効果的に行なうためのポイント

仕事の相談をする社員

ポジティブフィードバックの効果を高めるには、次のポイントを知っておくとよいでしょう。

 

 

ポジティブフィードバックに役立つ3つの褒め方スキル

ポジティブフィードバックをする際には、以下3つのノウハウを知っておくと効果的です。

 

・肯定形で伝える

人間の脳には、「否定的な言葉を理解できない」という特徴があります。例えば、「決して納期に遅れない点が○○さんの良いところだね!」とフィードバックをした場合、否定語の「ない」という部分は脳には理解されないとされます。

 

したがって、ポジティブフィードバックをする際には、必ず肯定系で伝えることを意識しましょう。上記でいえば「いつも納期に間に合わせてくれるのが○○さんの良いところだね!」という伝え方です。

 

肯定的の表現を使うことで、「何をすると良いか」が脳に記憶されやすくなり、習慣化してもらいやすくなります。

 

・I

Iメッセージとは、主語を私(I)にすることで、自分の気持ちや感情を主観的に伝える手法です。

 

前ブロックで紹介した例では、最後の「リーダーとして私もすごく助けられました!」という表現がIメッセージです。

 

Iメッセージを使うと、気持ちをしっかりと伝えやすくなり、相手の感情を動かしやすくなります。「習慣化して欲しい言動や姿勢を具体的に伝える」表現と「承認の気持ちを伝える」Iメッセージをうまく組み合わせると、ポジティブフィードバックがより効果的になります。

 

・過程(プロセス)を褒める

仕事の最終的な結果は能力やタイミング、環境も大きく影響するため、メンバー自身の努力だけでは如何ともしがたい部分があります。逆にいえば、結果が出たからといって、「メンバーが非常に良い動きをしたか?」といえばそうではない場合もあります。

 

さらに、結果は上記のように運や外部要因に左右されるため、結果自体は再現性がありません。もちろん結果を出したメンバーを褒めることは大切ですが、「第3四半期での目標達成はすばらしい成果だな!次も頼むよ!」と褒めても、メンバーの成長や好ましい言動の習慣化にはつながりづらいということです。

 

したがって、ポジティブフィードバックにより、メンバーの良い言動を習慣化して成長を促すためには、成果よりもプロセスを褒めることを意識しましょう。

 

前述の例でいえば、「第3四半期での目標達成はすばらしい成果だな!毎日のように顧客リストを見返して、ご無沙汰している顧客が出ないように小まめに連絡していた結果だね!」と伝えたほうが行動の習慣化と結果の再現性につながります。

 

 

フィードバックを行なう上司が知っておくべき基本的な知識

フィードバックを行なう上司として、「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」は知っておくとよいでしょう。

 

ピグマリオン効果とは、「人は良い期待をされるとそれに応えようとする」というものです。また、ゴーレム効果は、「悪いことを予想した場合、予想したとおりにネガティブな成果や成長をしてしまう」という、ピグマリオン効果とは真逆の効果です。

 

冒頭で記載したとおり、フィードバックは必ずしもポジティブなものだけをするわけではありません。ただ、相手の能力不足や未熟な点ばかりをフィードバックしていると、相手はモチベーションが上がらないだけではなく、ゴーレム効果を発揮させてしまう恐れがあることを知っておきましょう。

 

ポジティブフィードバックは、上司自身がメンバーの良いところや強みに着目します。そのため、相手の成長に直接的に役立つだけでなく、ピグマリオン効果につながることもあります。上司が持つ「相手への見方」は無意識に伝わり、相手を成長させることにも、成長を妨げることにもつながることを意識しておきましょう。

まとめ

ポジティブフィードバックは、相手のパフォーマンスやモチベーションを向上させるために、“習慣化してほしい良い言動”に焦点を絞ってフィードバックするものです。ポジティブフィードバックは、良い言動の習慣化だけでなく、モチベーションや自己効力感の向上などにもつながり、人材育成に高い効果を発揮します。

 

ポジティブフィードバックを効果的に行うためには、以下3点をセットにして伝えることがポイントです。

 

  • 相手の具体的な言動
  • 言動がもたらした影響や結果
  • 今後への期待

 

また、ポジティブフィードバックを行なううえでは、「肯定系で褒める」「Iメッセージで褒める」「プロセスを褒める」といったノウハウを知っておくと、より効果的に実施することができるでしょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

1974年生まれ 鹿児島県種子島出身。1997年筑波大学第一学群社会学類を卒業。新卒でハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。専門分野は新人と若手育成、モチベーション・エンゲージメント改善、女性活躍等

【著書、登壇セミナー】
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