同じミスを繰り返す部下への正しい叱り方!ミスの原因やしかり方のNG例も解説

同じミスを繰り返す部下への正しい叱り方!ミスの原因やしかり方のNG例も解説

チームリーダーや管理職の中には、同じミスを繰り返す部下に、ほとほと手を焼いているという人もいるでしょう。同じミスを繰り返す部下の存在は、チームやお客様に迷惑をかけるだけでなく、落胆やいら立ちがチーム内に広がることで、他メンバーのモチベーションを下げる要因にもなります。

 

上司としても、部下を注意したり、具体的な対策を考えたりしていかねばなりません。こうしたネガティブなことに工数を取られるのは、忙しいときには特に負担なものです。加えて、何度も同じミスが起きているとなると、自分の指導方法が間違っているのではないかと不安が生じることもあるかもしれません。

 

本記事では、部下が同じミスを繰り返す原因や、同じミスを繰り返す部下への叱り方と指導のポイントを紹介します。悪循環を招いてしまうダメな叱り方の例もお伝えしますので参考にしてください。

<目次>

部下が同じミスをしてしまう原因

同じミスを繰り返す部下を叱る状況では、単に注意するだけでなく、指導を通じて再発防止を図っていくことが大切です。過去に指摘したのに是正されていないようであれば、本人との面談を通じて原因を把握し、適切な対処をしていくといった必要があります。

 

まずは、同じミスが繰り返される原因を見ていきましょう。

 

ミスがもたらすリスク認識が甘い

チーム内の仕事で起きたミスは、一人ではカバーできないこともあります。本来必要のなかったタスクが増えれば、企業にも損害を与えます。

 

しかし、同じミスを繰り返すというタイプの人は、ミスがもたらす影響に対して、鈍感な傾向が見られます。

正しい実行手順の理解が浅い

作業の流れや手順を深く理解していない場合もあります。先輩からの説明を忘れてしまっており、さらにマニュアルなども熟読せずに、「こんな感じでいいだろう」という思い込みや感覚で仕事をしてしまっているパターンです。

 

明確なゴールやポイントを理解せず仕事をしている

ビジネスにおいて、一つひとつの仕事に対して、「何のために必要なのか?」という目的や「成功させるためには何が大事か?」というポイントを理解したうえで、行動していくことが大切です。

 

例えば、営業職で、既存顧客をケアすることに、将来的な買い替えニーズを拾ったり、顧客の紹介をもらったりするといった目的があるとします。目的を実現させるためには、「お客様と信頼関係を築く」「お客様の利用状況や変化=買い替えのタイミングを探る」ことがポイントになります。

 

これが分かっていればこそ、今すぐの成果にはつながらなくても、まずは顧客訪問に力を入れて、お客様に信頼してもらえるポジションをつくることが大事だと認識して行動できるわけです。

 

しかし、お客様からの信頼という重要ポイントを理解していないと、目先の営業成績を上げることだけに気を取られ、お客様を不快にさせるなどのミスをしてしまう場合があります。

 

同じミスを繰り返す部下は、仕事の目的やポイントの理解が不足しているかもしれません。

焦ったり萎縮したりした状態で仕事している

同じミスを繰り返すのは、上司や周囲に萎縮してしまっていることが原因である可能性もあります。焦りや恐怖を抱えて仕事している状態では、前向きな発想は持てません。

 

「また失敗するのではないだろうか」「上司からまた怒られるのではないだろうか」「頑張っても間に合わなかったらどうしよう」といったネガティブな思考が心の中に広がります。
結果として、業務への集中力やパフォーマンスが低下し、ミスが起こりやすくなるのです。

仕事への注意力が欠けている

仕事への注意力が散漫になっていることも原因の一つです。単に、仕事中の無駄話が多い等の場合は、叱責で済むでしょう。

 

しかし、部下に時間的・精神的余裕がなくなっているときには、上司として適切に支援する必要があります。

 

余裕がなくなると、どうしても頭に情報が入らなくなり、仕事への注意力も低下します。結果的に、ミスも多くなってしまうのです。例えば、「残業続きで疲れている」「身体や心に不調や病気を抱えている」「仕事やプライベートで悩みがある」といった状態が該当します。

 

特に普段と変わった状態は見られないものの、ほかの人と比べてミスや不注意が目立つ部下の場合には、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の可能性も疑ってみるべきかもしれません。
ADHDは発達障害の一種です。先天的な脳の機能障害と考えられており、本人の努力で治せるものではありません。

 

任せる仕事を変えるなど、組織としての対応が必要かもしれません。

同じミスを繰り返す部下への正しい叱り方と指導のポイント

部下を注意する上司

 

注意してもミスが減らない場合には、指導方法を見直してみることも大切です。部下に同じミスを繰り返させないようにするための叱り方と指導のポイントを紹介します。

 

指導できる状態かを確認する

先述のとおり、同じミスを繰り返すときには、部下に余裕がないのかもしれません。
場合によっては、プライベートでの大きなトラブルやストレス、キャパオーバー、病気などの理由で調子が悪く、そもそも仕事に集中できる状態ではない可能性も考えられます。

 

仕事に集中できる状態にない部下を叱責しても、本人をますます追い込んでしまうだけです。部下が本調子でないときには、「本人の行動改善」ではないところに解決策を求めることが有効な場合もあります。

 

例えば、「当面はダブルチェックの体制にする」「業務負荷を軽減する」「担当業務を変更する」など、業務側からのアプローチを検討しましょう。

感情を表に出さず理性的に叱る

上司も人間ですので、何度も同じミスをする部下に、いら立ちの感情が湧き上がるのは自然なことです。ただし、だからといって怒りをあらわにしたり、声を荒らげたりすると、部下は怯えてしまい、叱られている内容に集中できなくなります。

 

また、恐怖心から部下に上司への苦手意識が生じた場合には溝が深まり、今後の指導やフィードバックにも支障が生じてしまうでしょう。

 

同じミスを繰り返す部下に、いら立ちをぶつけてしまいやすい人は、「アンガーマネジメント」を習得してみることをおススメします。
怒りの感情は、6秒でピークに達したあと、時間の経過とともに少しずつ落ち着くとされています。

 

アンガーマネジメントを学んで、いら立ちのコントロールポイントを知っておくと、職場でも冷静に振舞えるでしょう。

叱る際は短い時間でポイントのみを伝える

同じミスを繰り返す部下に対して、上司として言いたいことはたくさんあるでしょう。
しかし、長い時間をかけてダラダラと叱り続けると、叱られている側も疲れてしまい、肝心のポイントが伝わりにくくなってしまいます。

 

そして、長時間の叱責もまた、部下の心に大きなダメージを与え、上司への苦手意識を持つ要因となり得ます。部下の行動を改善したいのであれば、指摘は短時間かつ簡潔に伝えるのがコツです。

ミスの再発防止策を考えさせて実行を合意する

部下が謝罪と反省だけに終始して、再発防止策に考えが及ばないようでは、叱った意味がありません。大事なのは、ミスを繰り返さないための行動変容を促すことです。

 

その際に大事なことは、部下自身にも考えさせることです。上司が一方的に再発防止策を提示してしまうと、部下は問題と対策を自分ごと化しづらくなり、実行レベルが低下しがちです。

 

まずは、「どうすればミスをしなくなると思う?」という問いを投げて、部下自身に振り返りをさせながら、対策を考えていきましょう。

 

対策を決める際は、「上司から見ても再発防止につながる対策といえるか」「“意識する”といった抽象的な内容ではなく、具体的な施策に落とし込めているか」という点が重要です。

 

例えば、以下のような細かな行動にブレイクダウンしてチェックリストにしておくと、どのような部下でも同じように実行できる可能性が高まります。

  • 指差し確認をする
  • やり方に迷ったら、上司や先輩に必ず相談する
  • 時間が足りなくなったら、仕事の優先順位を見直す

指導したあとに内容を復唱させる

指導後に部下に指示を復唱させることには、「部下が内容をきちんと理解できているか確認できる」「部下に指示内容を正しく記憶させられる」という2つのメリットがあります。

 

指導を終えた段階では、部下は指示内容を「なんとなく理解した状態」に過ぎません。しっかりと復唱させることで理解のズレが生じにくくなります。上司の話を聞くことが苦手な部下には、指導の前に「最後に復唱してもらうから、しっかり話を聞いてね」と伝えておくのもおススメです。

さらに悪循環に陥る、やってはいけない叱り方

叱責する上司と不快そうな部下

 

間違った叱り方をしてしまうと、部下の行動改善につながらないどころか、緊張や萎縮から視野が狭くなり、さらにひどいミスが起きる恐れもあります。上司として避けるべきなのは、次のような叱り方です。

 

大勢の前で叱る

オフィスなど、大勢のメンバーが見ている前で叱った場合、「人前で吊るし上げられた」などの恥ずかしさや屈辱感から、部下の心には大きな傷がつきます。自分に傷を負わせた上司に対し、恨みや怒りの感情を持つようになる人もいるでしょう。

 

パワハラと捉えられれば、人権室などに相談されてしまうかもしれません。
いずれにしても、上司との信頼関係は壊れてしまい、今後の指導を受け入れるのが難しくなるのは目に見えています。

 

何度も同じミスを繰り返すような部下であっても、相手の気持ちやプライドは尊重すべきです。大勢の前で叱り飛ばしたい気持ちがあってもぐっとこらえて、会議室に呼んで二人きりで話すなど、配慮のある叱り方をすることが大切です。

抽象的なフレーズを用いて叱る

抽象的かつ漠然とした指摘や叱り方では、改善して欲しいポイントが明確になりません。部下としても、叱られていることはわかっても、具体的にどのように改善していいのかわからず、困ってしまうでしょう。

 

例えば、以下のような抽象的な指示では、上司が期待していることと部下の取る行動にズレが生じやすくなります。

  • ちゃんとやってくれないと困るよ!
  • もっと急がないとダメだよ!
  • どうしてそういうやり方なの?
  • その仕事はどうにかならないの?

上記の抽象的な指示を具体的に直すと、以下のようになります。同じミスを繰り返す部下は理解力が低い場合もあります。部下への指示は、できるだけ明確にして伝えましょう。

  • 必ずお客様に確認してから発注して欲しい
  • 15時までに手配する必要がある
  • どうしてパーツAよりBを先に取り付けるの?
  • ミスしない、ミスをチェックできる業務フローに改善できない?

逃げ場を与えずに叱る

上司は、つい理詰めにして相手を追い込んでしまう場合もあるものです。しかし、相手に逃げ場を与えず、ミスを延々と責め立てた場合には、部下本人に非があったとしても、部下と上司の信頼関係は壊れてしまいます。

 

また、同じミスを繰り返すという問題の中には、体調不良や慢性的な疲労、就労環境へのストレスといった、部下本人ではどうにもならない原因が隠れている可能性もあります。

 

場合によっては、意図的に相手の面子やプライドに配慮した「逃げ場」を残すことも必要です。

まとめ

部下が同じミスを繰り返す場合には、本人の認識不足、目的意識のなさ、注意力の低下、焦りや萎縮など、さまざまな原因が考えられます。

 

同じミスを繰り返さないためには、指導と対策が必要ですが、まずは部下が指導を受け入れられる状態にあるかをよく確認しましょう。そして、「理性的かつ端的に叱る」「部下自身に再発防止策を考えさせて実行を支援する」「指導後に内容を復唱させる」といったポイントを意識して指導すると効果的です。

 

一方で、「大勢の前で怒鳴る」「抽象的な指示を与える」「逃げ場を与えない」といった叱り方をした場合には、部下との信頼関係が崩れ、さらなる悪循環に陥る可能性もあります。

 

同じミスを繰り返す部下に強い怒りを覚えて感情的になってしまう場合は、アンガーマネジメントを取り入れることもおススメです。

 

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著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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