まずは、間違った叱り方の具体例と理由を紹介していきましょう。
大声や乱暴な言葉で叱る
大声や暴言で叱るのは、本来の「叱る」ではなく、自分の感情をぶつけているだけの「怒る」です。脅しや威嚇と同じであり、部下に恐怖心を与え萎縮させてしまいます。
大声や乱暴な言葉で怒鳴るようなことを続けていれば、信頼関係が壊れ、本音で話してもらえなくなるでしょう。場合によっては、パワハラととらえられることもあります。
大勢の前で叱る
たくさんの人がいる前で叱るというのは、職場だけでなく学校などでも行なわれていることがあります。人前で叱ることは、相手の心を傷つけるだけでなく、「人前で吊し上げられた」などの恥ずかしい想いから反発心や恨みを生むことにもつながります。
もちろん反発心や恨みが生じれば、本来の目的である「修正すべき言動の矯正」は達成されません。
他人と比較して叱る
「〇〇さんはできているのに君は……」のように、他人と比べて相対評価で叱ることは避けたほうがよいでしょう。比べる叱り方をしていると、人前で叱られる場合と同様に、相手は恥をかかされた感覚になり、叱った内容を受け入れにくくなります。
人格や価値観を叱る
叱る目的は相手の成長であり、好ましくない言動の修正とも言い換えられます。よって、叱るときには、あくまでも「行為」にフォーカスすることが大切です。相手の人格や価値観を否定するような叱り方は、相手の自己肯定感や尊厳を傷つけますし、明確なハラスメントでもあります。
抽象的な内容で叱る
抽象的かつ漠然とした指摘や叱り方もNGです。人によって基準が異なり、何を指しているのかよくわからない抽象的な叱責をしていると、部下は自分の判断で動けなくなり、指示待ち人間になってしまいます。叱る内容に具体性がなければ、叱られた側は何が問題かを認識できず、行為を修正できません。
否定ばかりして叱る
どのような相手であっても、叱るべき問題や悪いところとともに、褒められる良いところもあるはずです。ダメなところだけを並べて否定ばかりをしていると、相手の自己効力感や自己肯定感が失われてしまいます。したがって、「褒める」と「叱る」を適切な頻度で実施することも、大切なポイントになります。
決めつけて叱る
部下の考えや言い分を聞かず、一方的に決めつける叱り方もよくありません。上司は、ときに現場の状況を知らなかったり、誤認識していたりする場合もあります。上司が「自分は正しい」という前提で決めつけた叱り方を続けていると、信頼関係が崩れたり、部下が自ら考えて行動する主体性が育まれなくなったりするでしょう。
個人の成功体験や考えを押し付けて叱る
叱るときに以下のような成功体験を語るのは、自分と部下を比較して叱ることと同じです。
- 「自分の新人時代はこうだったのに、一方であなたは……」
- 「自分はこの方法で営業トップになったから、あなただって……」
これは先ほどの「他人と比べる」にも通じる部分です。相対的な比較で叱った場合、相手は納得感をもって受け入れづらくなります。さらに上記のような叱り方は単に他人と比べられる以上に、上司の自慢話を聞いているような感覚であり、相手にとっては不快です。
自分と比べるなら、成功体験などではなく、むしろ同じような失敗体験を開示することで、相手は叱責を受け入れやすくなるでしょう。
長時間にわたって叱る
30分や1時間と長く叱り続けても、効果が得られにくいことがわかっています。得られにくい理由は、叱られている側が次第に疲れてきて、何を改善すればいいのかわからなくなるからです。
また、長時間叱り続けていると、叱っている側の怒りが増幅する「怒りのエスカレーション」という現象が起こります。怒りのエスカレーションが生じた場合、本来叱っていた問題とは異なる過去の指摘などを始めてしまったり、「叱る」ではなく感情的な「怒る」になってしまったりする可能性が高まります。
叱るときは、要点をさっと叱って短時間で終わりにしましょう。