2年目社員を育成し離職を防ぐ!リーダーが知っておきたい指導術3つのポイント

更新:2023/09/29

作成:2020/08/25

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

2年目社員を育成し離職を防ぐ!リーダーが知っておきたい指導術3つのポイント

近年、2年目社員の研修を実施する企業が増えてきました。市場の変化が激しくなってきた中で、入社3年目までにビジネスの基礎をしっかり身に付けて育成したいという背景があるように思います。また、離職防止という目的もよく伺います。

 

新卒入社から入社後3年間の離職率は景気の変動に応じて上下する部分がありますが、直近20年ほどは「転職が当たり前」という価値観が浸透してきた中で、離職率が上がっている傾向にあり、とくに2年目社員の離職率は明らかに上昇しています。

 

参考)厚生労働省による「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」の調査結果

厚生労働省による「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」の調査結果

「厚生労働省 新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」より抜粋

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html

 

入社2年目というと、入社後1年間を過ごした中で少しずつ仕事も覚え、これから組織の中で1人前になっていって欲しい層です。入社2年目、3年目での離職というのは、会社にとっては「採用費+1・2年目の人件費+育成費用」が損失になり、じつは早期離職以上に組織へのダメージは大きくなります

 

上記の状況も踏まえて、記事では入社2年目の離職が発生する原因と対策、また、2年目社員の育成が3年目以降の成長に不可欠な足掛かりとなる理由、2年目社員の育成ポイント等を解説します。若手社員の育成でお悩みの方は、ぜひご覧ください。

<目次>

2年目社員の離職が起こりがちな3つの理由

じつは入社2年目社員は、いくつかの理由から離職が起こりやすい状況にあります。大きな要因として挙げられるのは以下の3つです。

 

1.「新人」ではなくなる中で感じる孤独感
2.仕事への慣れから生じる「ゆでガエル」現象と会社への不満
3.多くの企業で生じる「教育体系の隙間」

 

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 

 

1.「新人」ではなくなる中で感じる孤独感

新人にとって初めての社会人生活を送る1年目。まだ仕事の右も左も分からないという人が殆どです。どんなことでも新鮮な気持ちと緊張感を持って仕事に取り組むでしょう。また、多くの日本企業では、新入社員に対しては非常に手厚い初期研修があり、部門への配属後も、上司や先輩が「新人だから」と手厚くケアしてくれることが多いでしょう。

 

しかし、2年目になると、新人も失敗が減り、徐々に要領をつかめるようになってきます。こうなると上司や先輩も、1年目ほど気を使って声をかけたり、褒めたり指導したりといったことは減ってきます。とくに、継続的に新卒採用している企業では、「次の新人」が入社してくると、2年目社員にかけられる意識は激減しがちです。

 

しかし、「新人」ではなくなったとはいえ、2年目社員もまだまだ駆け出し段階です。また、フォローやコミュニケーションが手薄になったことに対して、今どきの若手は上司や先輩が思っている以上に敏感です。結果として、勝手に孤独感を感じてモチベーションを落とす2年目社員が少なからず出てきます。

 

 

2.仕事への慣れから生じる「ゆでガエル」現象と会社への不満

当たり前ですが、2年目になると、徐々に仕事に慣れてきます。仕事の段取りも徐々に身に付いてきたり、効率よく仕事を進めるのに必要なスキルを習得したり、新しいことを覚えるのにガムシャラだった1年目に比べて、気持ちにもゆとりが出てきます。しかし、この状態が2年目の「成長の落とし穴」にはまる原因になります。

 

“今どきの若手の特徴”として言われることの1つに、「そこそこできていれば満足」「周りと見比べて見劣りしなければOK」という、“このくらいで、いいや”というメンタリティがあります。仕事の基準が低くなるのは決して本人だけの責任ではないでしょう。しかし、「職場の環境×世代の特徴」によって、悪い意味での慣れ、“ゆでガエル”現象が起こりやすいのも事実です。

 

上司や先輩から見れば、2年目社員はまだまだ実力不足です。「仕事の手順に慣れてきたからこそ、成果を追いかけて、よりどん欲に周囲から吸収して成長して欲しい」と感じるでしょう。しかし、本人が仕事に慣れたつもりで「このくらいで、いいや」という意識になってしまうと、成長も止まってしまいますし、成長実感も得られなくなります。

 

そして、成長実感が得られない“ゆでガエル”状態になってしまったとき、人は満足できない理由を外部に求めがちになります。とくに、昨今はSNS等で“隣の青い芝生”の情報が大量に手に入ります。結果として、「会社の商品・サービスが悪い」「上司の指示が悪い」「権限がないし、提案してもどうせ聞いてくれない」と他責にしがちです。

 

上記のように考えると、自然と会社へのロイヤリティは下がっていき、「モチベーションとロイヤリティが低い ⇒ 成果が上がらない ⇒ さらに会社に不満を募らせる」という悪循環に入り、離職に繋がりやすくなります。

 

3.多くの企業で生じる「教育体系の隙間」

日本企業では入社1年目の新人に対しては、手厚い初期研修が設定されており、周囲の関心も集まりやすくなるでしょう。また、階層別研修を設計している会社では、「入社3年目」を節目としてとらえ、振り返り研修やキャリア研修等を準備していることが一般的です。

 

結果として、教育体系という意味でも、入社2年目はぽっかりと隙間が空き、「現場でのOJT」に任せてしまいやすい状況があります。上司や先輩からの関心が薄くなるところに加えて、仕組みとしてもケアされづらい状況になっているのです。

2年目の指導が3年目以降の成長を決める!

2年目社員は、仕事の右も左も分からない1年目からは大きく成長していますが、仕事で成果を上げるためには上司のサポートが必要な時期です。入社何年目であっても成長の機会やきっかけを提供することは、人材育成に欠かせない取り組みですが、ここではとくに「2年目社員の育成」を見ていきます。

 

 

2年目社員を育成する重要性

他の年次に比べ2年目社員に対しては、どうしてもフォローが後手に回りやすくなってしまいがちです。しかし、2年目社員は仕事の基本こそ分かってきたものの、まだまだ1人前とは言えないレベルです。また、1年目で学んだことを完全に身に付け、高い水準で実践できていないことも多いでしょう。従って、本来は2年目こそ再度“当たり前基準”の立ち上げをしていかないといけないのですが、実態は“隙間”になりがちという状況があります。

 

2年目のタイミングで、仕事への慣れから生じる「これぐらいでいいでしょ」というメンタリティが固定化してしまい、当たり前レベルが低くなってしまうと、3年目以降の成長に大きな悪影響を及ぼしますし、3年目以降に矯正していくことは困難です。2年目に、「1年目で教えた当たり前が、実務において高い基準で実行される」状態をつくることが非常に重要です。

 

2年目で育成すべきマインドと仕事術

2年目社員の育成で新たに教えるべき大事なマインドは、「自ら考え行動して、成果に結び付ける」いう意識です。1年目は、どちらかと言うと「教わったことをきっちり身に付けて実行する」教育が主になると思いますが、2年目は異なります。まだまだ未成熟とはいえ、「プロフェッショナル」としての自覚を持ち、主体性を発揮して、目の前の仕事に取り組んでいく意識を身に付けてもらうことが大切です。

 

また、必要なスキルとしては、自らの仕事をマネジメントする仕事術が求められるのが2年目です。1年目は、仕事の一部分を任されて確実にこなしながら、次の仕事を上司や先輩から指示されて進めるようなことも多かったでしょう。しかし、2年目に入れば、周囲との連携を取りながらも自分の力で仕事を進めていくことが期待されます。職種によってはいくつかの仕事を並行して進めることも増えるでしょう。

 

従って、「仕事の優先順位付け」や「タスクブレイク」、「時間管理」等のスキルが実務的に求められます。また、仕事を任せられる、1人で進めるといっても、まだまだ十分な実力があるわけではありません。従って、「報連相」を駆使して、成果を上げる能力も重要になってきます。

 

教育体系に盛り込むべき2年目研修の内容

2年目に身に付けるべき「プロフェッショナル」としてのマインドと仕事術に関しては、前章でご説明したとおりです。ここでは、少し違う視点で、HRドクターを運営するジェイックが実施している2年目研修(入社12~15か月)を参考に、押さえておきたいポイントを3つお伝えします。

 

<1.成長実感の演出と課題認識を持たせる>

入社1年を過ごした中で、「1年間でできるようになったことは何か?」、逆に、「思うようにできていないことは何か?」、それぞれの振り返りをおこないます。まず大事なことは、「1年間でできるようになったこと」の振り返りでは、しっかりと上司等が承認することです。対象人数によっては、OJT担当者や上司等から「こういうところが成長した」といったコメントをもらうのも1つです。これにより、成長実感を与えられるのと同時に、成長に向けた前向きな姿勢を後押しすることができます。そのうえで「思うようにできていないこと」で、“現状では足りない”という健全な危機感をしっかりと持たせることが重要です。

 

<2.壁を乗り越える意識を持たせる>

入社2年目は仕事の範囲が広がる分、思うように成果が上がらなかったり、壁にぶつかったりすることも増えるでしょう。そのときに「これぐらいでいいや」と思わせないためには、“壁にぶつかる”ことを前提にして、自分で主体的に乗り越える意識を持たせることが重要です。具体的には、社内で2年目の目標設定をするとき等に、入社3~4年目の活躍している社員を呼んで、「2~3年目にどんなことで苦労し、どうやって乗り越えたのか?」、体験談を話してもらうと効果的です。先輩社員の体験談を通じて、いま活躍している先輩社員も壁にぶつかっていること、そして、壁を乗り越えるイメージをつかんでもらうことがポイントです。また、先輩社員に話してもらうときには、「先輩社員がどうやって周囲の人の支援・協力を得ていったのか?」を話してもらい、周囲と信頼関係を築き、協力を得る大切さを実感させられると良いでしょう。

 

<3.本音でぶつかり合うことの大切さを実感させる>

近年の若手が持つ傾向として、「周囲と良い雰囲気で楽しく仕事をしていきたい」という欲求があります。とくに“SNSネイティブ”や“ジェネレーションZ”と呼ばれる20代前半層は、周囲と気まずい関係になる、トラブルを起こすよりも、ほどほどの距離感で付き合いたいという思いを強く持っています。しかし、「強い組織」を目指すうえでは、ときに同期や同僚に対しても、相手の成長・組織の成長に貢献するために、忌憚のなく、ある意味で厳しいフィードバックをしあえるようになることが欠かせません。研修内においては、同期内で「相手のために本気でフィードバックする」「フィードバックを受け止める」体験をさせることが有効です。

2年目社員の育成でリーダーが知っておきたい指導術

ここまで、2年目社員の育成課題や2年目の育成で教えたいマインドや仕事の技術を解説しました。2年目社員は1年目とは周囲からの期待や求めることがガラッと変わります。仕事を任せていく中で、目的や進め方を自ら考え行動していって欲しいところです。

 

その中で、「どのようにマネジメントすれば良いか、コミュニケーションを取れば良いか?」、悩んでいる上司や先輩も少なくありません。前章では「教育体系」という視点で2年目社員の育成について解説しましたが、この章では「マネジメント」「現場での育成」という視点で、2年目育成のポイントを3つお伝えします。

 

 

コミュニケーション頻度のマネジメント

前述したように新人2年目は、①新人1年目のような丁寧なケアがなくなり孤独感を感じやすい、②まだまだ未熟な一方で仕事を任せて自分で進めていってもらう必要がある、という時期になります。従って、マネジメントするうえでは、①上司として気にかけていることを伝える、②報連相しやすい環境をつくることが重要です。

 

具体的にどうすればいいかと言うと、一番簡単なやり方はコミュニケーション頻度のマネジメントです。例えば、「1日1回は声をかける」と決めて実行することです。決して、長々と時間をとる必要はありません。例えば、『おつかれさま、仕事順調か?』、『何か私が聞いておいたほうが良かったり、手伝えたりすることはあるか?』、ときには、『最近、仕事は楽しめているか?』等です。

 

初めはぎこちないかも知れませんが、続けていくうちに徐々に関係性ができ、2年目社員からの相談等も増えてきます。とりわけ、テレワークや在宅勤務を取り入れている会社では、どうしても「気軽な声かけ」が減りがちです。とくに若手から上司への声かけはしにくくなりますので、上司側でコミュニケーション量をマネジメントすることがポイントです。

 

 

1年目に教えた”常識”の総仕上げ

多くの会社で入社3年目というと、「1人前になり、そろそろ後輩の指導も任せていこうか」というタイミングになります。1人前として自立して、さらに成長する3年目をつくるために、2年目の指導で重要なことは、1年目に教えた「常識」や「当たり前」を高いレベルで身に付けさせることです。

 

従って2年目の指導をするうえでは、「常識や当たり前の実践」にフォーカスして、褒めたり叱ったりすることが有効です。例えば、ミスや失敗に対して叱るときには、ミスや失敗という結果そのものや実力不足にフォーカスするのではなく、報連相の不足等が原因であれば、「当たり前を実践しなかったプロセス」にフォーカスして叱ることがおすすめです。

 

同様に褒めるうえでも、成果や挑戦心等を褒めることはもちろんですが、過程における「忙しい中で、仕事の優先順位付けをきちんとしてきたから成果を上げられた」「タスクブレイクをきちっとやって相談してきてくれたからこそ、抜け漏れを起こさずにプロジェクトを順調に進行できた」等、身に付けて欲しい仕事のプロセスや進め方を褒めることをぜひ意識してください。

 

 

ちょっとした試練による“やりがい”の演出

今どきの新人や若手は失敗することを恐れる人が多いため、「経験する前に学ぶ」学習スタイルを好みます。結果として、基本的には、上司や先輩が丁寧に教えながら仕事を進める育成スタイルが有効です。ただ、その中でもマンネリ感が生じやすい2年目には、ときに「実力からすると少し難しい仕事」を任せて挑戦させる経験が有効です。

 

少しだけ身の丈を超えた仕事への挑戦は「壁や試練にぶち当たり、乗り越えることで殻を破る経験に繋がります。殻を破った経験は、仕事のやりがいを感じたり、成長実感に繋がったりするものです。そして、仕事のやりがいや成長実感こそが、次の挑戦への動機となるのです。

 

ただ、試練というのは、どの社員にも予定調和的に来るものではありません。ですから、上司や指導者は若手社員に対して、「適切な挑戦・試練を、適切な時期に経験させて、乗り越えさせる」、いわば、「一皮むける経験」を演出することが必要となります。

 

なお、一皮むける経験をさせるためには、本人のモチベーションが高いタイミングでやらせることが大切です。また、上司・育成する側には、困難を乗り越えようとする若手を心強く見守る度量と覚悟が求められますが、単なる「放置・放任」になってしまっては、一皮むけるどころから潰してしまうことにもなりかねません。

 

従って、適切なタイミングを見計らい、試練による“やりがい”を演出するうえでも、1つ目にお伝えした“コミュニケーション頻度のマネジメント“が大切になります。

まとめ

日本のポテンシャル採用の仕組み上、入社2年目というのは、手厚い研修が提供される入社1年目と、1人前になることが期待されて振り返りのキャリア研修等が入る入社3年目の狭間で、育成の仕組み上も上司や先輩のケアも抜け漏れがちです。

 

上記を踏まえて、直近30数年間の「新卒入社後 3年間の離職率」を見てみると、入社2年目の離職率がこの20年ほど、明らかに高くなってきたことが分かります。離職を防止するうえでも、3年目の独り立ちを確実なものにするためにも、入社2年目の育成はじつは欠かせないものなのです。

 

入社2年目の育成は、「プロフェッショナルとしての責任を持って、自ら考え行動して成果を上げるマインド」「仕事が任せていくうえで必要なタスクブレイクや時間管理等の仕事術」を教えることが重要です。記事では、教育体系や研修の中で何が2年目育成のポイントになるか、そして、日常のマネジメントにおいて何が重要かをお伝えしました。記事の内容が、2年目社員の定着と3年目以降の活躍に役立てば幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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