2年目社員研修とは?研修の目的やプログラム例、成功のポイントを分かりやすく解説

更新:2024/07/09

作成:2020/08/25

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

2年目社員を育成し離職を防ぐ!リーダーが知っておきたい指導術3つのポイント

2年目社員の定着と活性化を図る上で、2年目社員研修は効果的な方法の1つです。2年目社員は、入社後1年間が経過して仕事もある程度覚え、1人前になっていって欲しい層です。一方で、モチベーション低下や伸び悩み、成長実感が得られない、といった課題も生じがちで、一定の離職も生じます。

 

記事では最初に、2年目育成の概要と2年目社員が抱える課題を確認したうえで、2年目社員研修の効果的なプログラムや育成ポイント等を解説します。若手社員の育成でお悩みの方は、ぜひご覧ください。

 

<目次>

2年目社員育成の必要性

2年目社員は、仕事の右も左も分からない1年目からは大きく成長しています。しかし、仕事で成果を上げるためには、まだ先輩や上司のサポートが必要な時期でもあります。

 

入社何年目であっても成長の機会やきっかけを提供することは、人材育成に欠かせない取り組みですが、ここではとくに「2年目社員の育成」が重要な理由について見ていきます。

 

2年目社員を育成する重要性

2年目社員は仕事の基本こそ分かってきたものの、まだまだ1人前とは言えないレベルです。また、1年目で学んだことを完全に身に付けて実践できていないことも多いでしょう。従って、本来は2年目こそ再度“当たり前基準”の立ち上げをしていく必要があります。しかし、組織においては「1年目社員」の育成が優先され、2年目社員に対してはフォローが後手に回りやすくなってしまいがちな状況があります。

 

2年目のタイミングで、悪い意味での仕事への慣れから生じる「これぐらいでいいでしょ」という意識が固定化してしまい、当たり前レベルが低くなってしまうと、3年目以降の成長に大きな悪影響を及ぼします。また、意識のゆるみは一度定着してしまうと、矯正していくことが困難です。だからこそ2年目で、「1年目で教えた“ビジネスの当たり前”が高い基準で実行される」状態をつくることが非常に重要です。

 

2年目の指導が3年目以降の成長を決める!

2年目社員の育成で教えるべき大事なマインドは、「自ら考え行動して、成果に結び付ける」という意識です。1年目は、「教わったことをきっちり身に付けて実行する」教育が主になりますが、2年目は異なります。未熟とはいえ、「プロフェッショナル」としての自覚を持ち、主体性を発揮して、目の前の仕事に取り組んでいく意識を身に付けてもらうことが大切です。

 

また、必要なスキルとしては、自らの仕事をマネジメントするスキルが求められるのが2年目です。1年目は、仕事の一部分を任されて確実にこなしながら、次の仕事を上司や先輩から指示されて進めることも多かったでしょう。しかし、2年目に入れば、周囲との連携を取りながらも自分の力で仕事を進めていくことが期待されます。いくつかのタスクを並行して進めることも増えるでしょう。

 

従って、「仕事の優先順位付け」や「タスクブレイク」、「時間管理」等の実務的なスキルが求められます。また、仕事を任せられる、1人で進めるといっても、まだまだ十分な実力があるわけではありません。従って、改めて適切な「報連相」によって成果を上げる能力も重要です。

 

 

2年目社員研修の目的

本章では、2年目社員研修の目的を確認します。会社によって、どの目的が重要になるかは異なるでしょう。自社の2年目社員をイメージしながら、ご覧ください。

 

仕事に対する高い意識と責任感を身に付ける

2年目研修を実施する目的のひとつは、仕事に対する高い意識と責任感を身に付けることです。新入社員として基礎を学び、実務に触れた後、次のステップとして求められるのはプロフェッショナリズムです。

 

1年目は、まだまだ“お客様”的なところもあったでしょう。支払う報酬に対して、まだ価値提供も十分ではありません。しかし、2年目に入ってくると、自らがもらっている報酬を自覚して、それに対して十分は価値提供をすることが、顧客に対しても、企業に対しても求められます。ビジネスのプロとして、自己成長と業績向上にコミットする意識も高める必要があります。

 

主体的な行動ができるようになる

2年目社員にとって、主体的な行動を取れるようになることは、キャリア発展の重要な転換点となります。主体的というのは、単に積極的・能動的ということではありません。きちんと考えて意思決定する、自らの責任で結果を引き受けるということです。

 

ここに課題があれば、2年目研修で自ら考え、判断し、行動する力を養うためのプログラムを設けましょう。主体性という概念をきちんと理解させたうえで、同時に、問題解決能力、効果的なコミュニケーション手法、チーム内での役割認識などの実務的な内容も必要になるかもしれません。こうしたスキルを身につけることで、上司の指示を待つだけでなく、自走できる人材に成長できるでしょう。

 

エンゲージメントの向上

入社から1年が経過し、業務にも慣れてきた時期に、改めて会社の理念や目標を浸透させる、また、自身のキャリアビジョンを考え、成長実感を得られるような機会を提供することで、組織に対する帰属意識や仕事へのエンゲージメントを高めることができます。

 

2年目は仕事に慣れて少し心の余裕ができる時期です。そうすると、「この会社にこのまま居てもいいのか?」「この仕事で自分は成長できているのか?」といったネガティブな疑問も心をよぎります。とくに今の若手はキャリア安全性、キャリア形成に強い興味を持っているからこそ、上記のような疑問が生じやすいのです。エンゲージメントの向上によって、社員は自身の役割に誇りを持ち、また、将来に希望を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

 

業務遂行能力の向上

1年目は基礎的なビジネススキルや商品・サービス、業務の知識を習得していく時期です。2年目に入ると、自走できるように前述したようなセルフマネジメント能力、さらに業務遂行能力をしっかり磨いていく必要があります。

 

従って、2年目研修では、業界や職種に関する専門知識やスキルの習得、テクノロジーやツールの活用法、効率的な業務プロセス習得などもポイントとなります。また、プロジェクト管理やタイムマネジメント等のセルフマネジメントの能力を磨くことで、複数の業務を並行して効果的に進められるようになるでしょう。

 

コミュニケーションスキルの強化

コミュニケーション能力は、チーム内での協働、上司や部下とのやり取り、顧客対応など、あらゆる場面で必要とされるものです。職種や業務内容によって、ロジカルコミュニケーションが重要であったり、初対面での信頼形成の重要性が高かったり、人の心を動かすコミュニケーションが成果をあげるために必要で合ったりするでしょう。

 

コミュニケ―ンンスキルに関する研修プログラムは、報告・連絡・相談、傾聴、非言語コミュニケーションの理解、ラポール形成やヒアリングの技術、プレゼンテーション能力など、多岐にわたります。特に顧客業務であれば、リーダーシップを発揮するためのコミュニケーションや、顧客や取引先との商談能力など、実践的なスキルがポイントになるでしょう。

 

 

2年目社員育成における課題

じつは入社2年目社員は、いくつかの理由から離職が起こりやすい状況にあります。大きな要因として挙げられるのは以下の3つです。

 

1.「新人」ではなくなる中で感じる孤独感
2.仕事への慣れから生じる「ゆでガエル」現象と会社への不満
3.多くの企業で生じる「教育体系の隙間」

 

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 

1.「新人」ではなくなる中で感じる孤独感

新人にとって初めての社会人生活を送る1年目。まだ仕事の右も左も分からないという人が殆どです。どんなことでも新鮮な気持ちと緊張感を持って仕事に取り組むでしょう。また、多くの日本企業では、新入社員に対しては非常に手厚い初期研修があり、部門への配属後も、上司や先輩が「新人だから」と手厚くケアしてくれることが多いでしょう。

 

しかし、2年目になると、新人も失敗が減り、徐々に要領をつかめるようになってきます。こうなると上司や先輩も、1年目ほど気を使って声をかけたり、褒めたり指導したりといったことは減ってきます。とくに、継続的に新卒採用している企業では、「次の新人」が入社してくると、2年目社員にかけられる意識は激減しがちです。

 

しかし、「新人」ではなくなったとはいえ、2年目社員もまだまだ駆け出し段階です。また、フォローやコミュニケーションが手薄になったことに対して、今どきの若手は上司や先輩が思っている以上に敏感です。結果として、勝手に孤独感を感じてモチベーションを落とす2年目社員が少なからず出てきます。

 

 

2.仕事への慣れから生じる「ゆでガエル」現象と会社への不満

当たり前ですが、2年目になると、徐々に仕事に慣れてきます。仕事の段取りも徐々に身に付いてきたり、効率よく仕事を進めるのに必要なスキルを習得したり、新しいことを覚えるのにガムシャラだった1年目に比べて、気持ちにもゆとりが出てきます。しかし、この状態が2年目の「成長の落とし穴」にはまる原因になります。

 

“今どきの若手の特徴”として言われることの1つに、「そこそこできていれば満足」「周りと見比べて見劣りしなければOK」という、“このくらいで、いいや”というメンタリティがあります。仕事の基準が低くなるのは決して本人だけの責任ではないでしょう。しかし、「職場の環境×世代の特徴」によって、悪い意味での慣れ、“ゆでガエル”現象が起こりやすいのも事実です。

 

上司や先輩から見れば、2年目社員はまだまだ実力不足です。「仕事の手順に慣れてきたからこそ、成果を追いかけて、よりどん欲に周囲から吸収して成長して欲しい」と感じるでしょう。しかし、本人が仕事に慣れたつもりで「このくらいで、いいや」という意識になってしまうと、成長も止まってしまいますし、成長実感も得られなくなります。

 

そして、成長実感が得られない“ゆでガエル”状態になってしまったとき、人は満足できない理由を外部に求めがちになります。とくに、昨今はSNS等で“隣の青い芝生”の情報が大量に手に入ります。結果として、「会社の商品・サービスが悪い」「上司の指示が悪い」「権限がないし、提案してもどうせ聞いてくれない」と他責にしがちです。

 

上記のように考えると、自然と会社へのロイヤリティは下がっていき、「モチベーションとロイヤリティが低い ⇒ 成果が上がらない ⇒ さらに会社に不満を募らせる」という悪循環に入り、離職に繋がりやすくなります。

 

3.多くの企業で生じる「教育体系の隙間」

日本企業では入社1年目の新人に対しては、手厚い初期研修が設定されており、周囲の関心も集まりやすくなるでしょう。また、階層別研修を設計している会社では、「入社3年目」を節目としてとらえ、振り返り研修やキャリア研修等を準備していることが一般的です。

 

結果として、教育体系という意味でも、入社2年目はぽっかりと隙間が空き、「現場でのOJT」に任せてしまいやすい状況があります。上司や先輩からの関心が薄くなるところに加えて、仕組みとしてもケアされづらい状況になっているのです。

 

 

2年目社員研修のプログラム例

2年目社員研修で実施されるプログラムの例を紹介します。

 

自己分析ワークショップ

自己分析ワークショップは、自身の強みや弱み、価値観、興味・関心などを深く理解することを目的に実施します。プログラムでは、参加者は自己理解を深めるための様々なツールや手法を学びます。例えば、性格診断テストや価値観カードを使用して、自分の特性を客観的に見つめ直したり、グループディスカッションを通じて他者からのフィードバックを受けたりすることで、新たな気づきを得ます。

 

このような自己分析は、キャリアの方向性を明確にして自分に最適なキャリアプランを立てるための基盤となります。また、ワークショップでの自己理解と他者開示は、他者とのコミュニケーションや相互理解、チームワークの向上にもつながります。

 

キャリア自律ワークショップ/キャリア研修

キャリア自律ワークショップは、社員が自らのキャリアを主体的に設計・管理する能力を養成するプログラムです。ワークショップでは、キャリア自律の概念、キャリアビジョンの構築、スキルアップの方法など、長期的な視点で自己成長を図るための具体的な戦略を学びます。

 

いまの若手は終身雇用が完全に崩壊した中で入社し、自分の力でキャリア形成する必要性を感じていますし、転職によるキャリア形成を当たり前だと思っています。だからこそ、会社側で積極的にキャリア支援を実施し、また、社内でのキャリア選択肢を示すことが大切です。ここを怠ると、キャリア不安からの離職やモチベーションダウンにつながります。囲い込もうとするのではない形で、組織内でのキャリア成長を促進し、社員のエンゲージメントやモチベーション向上を図りましょう。

 

プロフェッショナル人材育成プログラム

プロフェッショナル人材育成プログラムは、ビジネスのプロフェッショナルとしてのマインドセットや責任感をしっかりと刷り込み、同時に、どのような行動をしていくべきかを自分ごとに落とし込んでいくプログラムです。いまの若手は、自己肯定感や自己効力感が低いといった特性もあります。主体性を発揮してもらう上では、「責任感」の圧力だけでなく、強みなどにフォーカスして「自己肯定感/効力感」を高めるアプローチも大切になります。

 

セルフマネジメント力向上プログラム

セルフマネジメント力向上プログラムは、自己管理能力を高めることを目的に行います。目標設定と意味づけ、優先順位、タスク管理、タイムマネジメントの自己管理スキルを改めてしっかりと定着させましょう。また、マインドフルナスなどのストレス管理に関するプログラムが有効な場合もあるでしょう。また、目標達成のためのアクションプランの立て方を実践的に学ばせることも大切です。

 

こうしたプログラムは、自分自身をより効果的に管理し、生産性や効果性を向上させるための基盤となります。セルフマネジメント力の向上は、専門性を発揮するために不可欠な土台です。

 

ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーションは、2年目社員の対人スキルやプレゼンテーション能力を強化し、ビジネスにおける効果的なコミュニケーションの実現するための研修プログラムです。

 

他者との協力関係を築き、自信を持って意見を発信できるようになることが重要です。2年目は、業務の幅が広がる時期であり、研修を通じて社内外のステークホルダーと効果的にコミュニケーションを取る能力の向上が大切です。

 
職種や課題に応じて、プログラムはアサーティブコミュニケーション、コミュニケーションスタイルの理解、ラポール形成、プレゼンテーション技術、ヒアリングの使い分け、また、フィードバックの受け方・伝え方など様々です。

 



 

タイムマネジメント

タイムマネジメントとは、限られた時間を有効に活用するための能力です。研修では、優先順位の付け方、時間の使い方に関する考え方を学んだうえで、自分の業務や時間の使い方を棚卸しします。また、スケジュールの立て方や、突発的な業務にどう対応するかといった実践的なテクニック、To-Doリストの活用やデリゲーション(業務の委任)の技術などを学びます。

 

時間は誰もが平等に与えられた資源です。また、残業管理が求められる、ワークライフバランスを重視する人も増えた中で、効率的・効果的な時間の使い方を身に付け、業務の質と生産性を向上させることが大切です。特に2年目の社員にとって、業務の幅や量が増える中での時間管理能力の向上は、業務成果に直結する重要な要素です。

 

 

ロジカルシンキング

ロジカルシンキングは、目標設定や計画立案、問題解決などの基盤となる大切な能力です。研修プログラムでは、論理的思考の基本原則から実践的な応用まで、体系的に学習を進めます。MECEの考え方、ロジックツリー、ロジカルコミュニケーションなどを身に付けることは、ビジネスで成果を上げるうえで非常に重要です。ケースを用いた演習を通じて、論理的アプローチの実際の業務シーンへの適用方法を学ぶ場合もあるでしょう。

 

 

2年目社員研修を成功させるポイント

本章では、2年目社員研修を成功させるポイントについて解説します。

 

1.成長実感の演出と課題認識を持たせる

入社1年を過ごした中で、「1年間でできるようになったことは何か?」、逆に、「思うようにできていないことは何か?」、それぞれの振り返りをおこないます。まず大事なことは、「1年間でできるようになったこと」の振り返りでは、しっかりと上司等が承認することです。対象人数によっては、OJT担当者や上司等から「こういうところが成長した」といったコメントをもらうのも1つです。

 

これにより、成長実感を与えられるのと同時に、成長に向けた前向きな姿勢を後押しすることができます。そのうえで「思うようにできていないこと」で、“現状では足りない”という健全な危機感をしっかりと持たせることが重要です。

 

2.壁を乗り越える意識を持たせる

入社2年目は仕事の範囲が広がる分、思うように成果が上がらなかったり、壁にぶつかったりすることも増えるでしょう。そのときに「これぐらいでいいや」と思わせないためには、“壁にぶつかる”ことを前提にして、自分で主体的に乗り越える意識を持たせることが重要です。

 

具体的には、社内で2年目の目標設定をするとき等に、入社3~4年目の活躍している社員を呼んで、「2~3年目にどんなことで苦労し、どうやって乗り越えたのか?」、体験談を話してもらうと効果的です。先輩社員の体験談を通じて、いま活躍している先輩社員も壁にぶつかっていること、そして、壁を乗り越えるイメージをつかんでもらうことがポイントです。また、先輩社員に話してもらうときには、「先輩社員がどうやって周囲の人の支援・協力を得ていったのか?」を話してもらい、周囲と信頼関係を築き、協力を得る大切さを実感させられると良いでしょう。

 

3.本音でぶつかり合う大切さを実感させる

近年の若手が持つ傾向として、「周囲と良い雰囲気で楽しく仕事をしていきたい」という欲求があります。とくに“SNSネイティブ”や“ジェネレーションZ”と呼ばれる20代前半層は、周囲と気まずい関係になる、トラブルを起こすよりも、ほどほどの距離感で付き合いたいという思いを強く持っています。

 

しかし、「強い組織」を目指すうえでは、ときに同期や同僚に対しても、相手の成長・組織の成長に貢献するために、忌憚のなく、ある意味で厳しいフィードバックをしあえるようになることが欠かせません。研修内においては、同期内で「相手のために本気でフィードバックする」「フィードバックを受け止める」体験をさせることが有効です。

 

4.プロフェッショナルとしての自覚を持たせる

2年目研修では、ビジネスのプロフェッショナルとしての自覚を持たせることが重要です。繰り返しになりますが、1年目はある程度「上司や先輩の指示に従って実務を前に進める」ことが求められました。しかし、2年目に入ってくると、「自分で仕事を組み立てて成果を出す」ことが求められるようになります。自由度が増す、裁量が増える、成果を求められるといった状況になる中で、自責で考えて、主体性を発揮する姿勢を持たせることが、以降の成長につながります。

 

5.中長期的な目標設定と実践計画の作成

2年目研修を実施する上では、数年スパンでのキャリア形成といったことにも関連付けて目標設定などをさせるとよいでしょう。中期的な目標を設定することで、社員は成長意欲や方向性を見失わずに進むことができます。そのためにはまず、自身のキャリアビジョンを描かせ、学びを紐づけていきましょう。

 

なお、20代前半におけるキャリア形成の時間軸は、30代や40代の人が思うよりもかなり短めです。中期的な目標といっても10年、20年となると、遠すぎて曖昧になる、実感がわきませんので、3年→1年→半年ぐらいの時間軸が適切でしょう。

 

2年目社員の育成でリーダーが知っておきたい指導術

ここまで、2年目社員の育成課題や2年目の育成で教えたいマインドや仕事の技術を解説しました。2年目社員は1年目とは周囲からの期待や求めることがガラッと変わります。仕事を任せていく中で、目的や進め方を自ら考え行動していって欲しいところです。

 

その中で、「どのようにマネジメントすれば良いか、コミュニケーションを取れば良いか?」、悩んでいる上司や先輩も少なくありません。前章では「教育体系」という視点で2年目社員の育成について解説しましたが、この章では「マネジメント」「現場での育成」という視点で、2年目育成のポイントを3つお伝えします。

 

コミュニケーション頻度のマネジメント

前述したように新人2年目は、①新人1年目のような丁寧なケアがなくなり孤独感を感じやすい、②まだまだ未熟な一方で仕事を任せて自分で進めていってもらう必要がある、という時期になります。従って、マネジメントするうえでは、①上司として気にかけていることを伝える、②報連相しやすい環境をつくることが重要です。

 

具体的にどうすればいいかと言うと、一番簡単なやり方はコミュニケーション頻度のマネジメントです。例えば、「1日1回は声をかける」と決めて実行することです。決して、長々と時間をとる必要はありません。例えば、『おつかれさま、仕事順調か?』、『何か私が聞いておいたほうが良かったり、手伝えたりすることはあるか?』、ときには、『最近、仕事は楽しめているか?』等です。

 

初めはぎこちないかも知れませんが、続けていくうちに徐々に関係性ができ、2年目社員からの相談等も増えてきます。とりわけ、テレワークや在宅勤務を取り入れている会社では、どうしても「気軽な声かけ」が減りがちです。とくに若手から上司への声かけはしにくくなりますので、上司側でコミュニケーション量をマネジメントすることがポイントです。

 

1年目に教えた”常識”の総仕上げ

多くの会社で入社3年目というと、「1人前になり、そろそろ後輩の指導も任せていこうか」というタイミングになります。1人前として自立して、さらに成長する3年目をつくるために、2年目の指導で重要なことは、1年目に教えた「常識」や「当たり前」を高いレベルで身に付けさせることです。

 

従って2年目の指導をするうえでは、「常識や当たり前の実践」にフォーカスして、褒めたり叱ったりすることが有効です。例えば、ミスや失敗に対して叱るときには、ミスや失敗という結果そのものや実力不足にフォーカスするのではなく、報連相の不足等が原因であれば、「当たり前を実践しなかったプロセス」にフォーカスして叱ることがおすすめです。

 

同様に褒めるうえでも、成果や挑戦心等を褒めることはもちろんですが、過程における「忙しい中で、仕事の優先順位付けをきちんとしてきたから成果を上げられた」「タスクブレイクをきちっとやって相談してきてくれたからこそ、抜け漏れを起こさずにプロジェクトを順調に進行できた」等、身に付けて欲しい仕事のプロセスや進め方を褒めることをぜひ意識してください。

 

ちょっとした試練による“やりがい”の演出

今どきの新人や若手は失敗することを恐れる人が多いため、「経験する前に学ぶ」学習スタイルを好みます。結果として、基本的には、上司や先輩が丁寧に教えながら仕事を進める育成スタイルが有効です。ただ、その中でもマンネリ感が生じやすい2年目には、ときに「実力からすると少し難しい仕事」を任せて挑戦させる経験が有効です。

 

少しだけ身の丈を超えた仕事への挑戦は「壁や試練にぶち当たり、乗り越えることで殻を破る経験に繋がります。殻を破った経験は、仕事のやりがいを感じたり、成長実感に繋がったりするものです。そして、仕事のやりがいや成長実感こそが、次の挑戦への動機となるのです。

 

ただ、試練というのは、どの社員にも予定調和的に来るものではありません。ですから、上司や指導者は若手社員に対して、「適切な挑戦・試練を、適切な時期に経験させて、乗り越えさせる」、いわば、「一皮むける経験」を演出することが必要となります。

 

なお、一皮むける経験をさせるためには、本人のモチベーションが高いタイミングでやらせることが大切です。また、上司・育成する側には、困難を乗り越えようとする若手を心強く見守る度量と覚悟が求められますが、単なる「放置・放任」になってしまっては、一皮むけるどころから潰してしまうことにもなりかねません。

 

従って、適切なタイミングを見計らい、試練による“やりがい”を演出するうえでも、1つ目にお伝えした“コミュニケーション頻度のマネジメント“が大切になります。

 

 

まとめ

日本のポテンシャル採用の仕組み上、入社2年目というのは、手厚い研修が提供される入社1年目と、1人前になることが期待されて振り返りのキャリア研修等が入る入社3年目の狭間で、育成の仕組み上も上司や先輩のケアも抜け漏れがちです。

 

上記を踏まえて、直近30数年間の「新卒入社後 3年間の離職率」を見てみると、入社2年目の離職率がこの20年ほど、明らかに高くなってきたことが分かります。離職を防止するうえでも、3年目の独り立ちを確実なものにするためにも、入社2年目の育成はじつは欠かせないものなのです。

 

入社2年目の育成は、「プロフェッショナルとしての責任を持って、自ら考え行動して成果を上げるマインド」「仕事が任せていくうえで必要なタスクブレイクや時間管理等の仕事術」を教えることが重要です。記事では、教育体系や研修の中で何が2年目育成のポイントになるか、そして、日常のマネジメントにおいて何が重要かをお伝えしました。記事の内容が、2年目社員の定着と3年目以降の活躍に役立てば幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
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