初めてマインドフルネス瞑想を行なう場合、「科学的根拠はあるのだろうか?」という疑問が生じることもあるかもしれません。結論からいうと、マインドフルネス瞑想に関する研究の成果として、瞑想によって脳の変化やストレス・精神疾患への効果が認められた事例が存在します。
この章では、マインドフルネス瞑想による脳の変化と、ストレスや精神疾患への効果について解説します。
脳の変化に対する科学的根拠
マインドフルネス瞑想と脳の変化に関する研究は、さまざまな視点で行なわれています。ここでは、各分野の研究でわかっていることの一部を紹介していきましょう。
脳における一部分の肥大化・縮小
ある研究では、マインドフルネス瞑想によって、学習や記憶などに関わる脳の灰白質に増加が認められました。同時に、怒りの感情が生まれやすい扁桃部分は、マインドフルネス瞑想によって萎縮することがわかっています。
参考:マインドフルネスを生活にいかそう(北里大学健康管理センター学生相談室)
参考:マインドフルネスは現代人の心を救えるか(早稲田大学・熊野宏昭研究室)
マインドフルネス瞑想によるACCへの影響
前頭葉の後ろにある前帯状皮質(ACC)が影響を受けることも、注目されています。ACCとは、注意と行動の対象を決める自己制御力に関わる部位です。ACCに支障がある場合、攻撃性に歯止めがきかなくなったり、思考の柔軟性に欠けたりする傾向があります。
マインドフルネス瞑想を行なうと、ACCが活発になるとともに、自己制御力のテストでも優れた成績が示されています。こうしたテスト結果から、マインドフルネス瞑想には、より最適な意思決定を下す能力の向上が期待できるとされています。
参考:実行機能とマインドフルネス(田中圭介・杉浦義典)
マインドフルネス瞑想による海馬の変化
先述の肥大化・縮小と関係する結果ですが、マインドフルネス瞑想に関する研究では、海馬の灰白質も増加することも認められています。
海馬とは、ストレスに関わる部位です。うつ病などストレス関係の疾患がある場合、海馬の萎縮が見られやすくなります。海馬はストレスから回復する力(レジリエンス)にも関わる部位であることから、マインドフルネス瞑想によるレジリエンス能力の向上も期待されています。
参考:マインドフルネスは現代人の心を救えるか(早稲田大学・熊野宏昭研究室)
ストレスや精神疾患に関する科学的根拠
最新の研究では、マインドフルネス瞑想は不安や抑うつの減少に有用であるとされ、認知行動療法などと同程度に役立つ可能性があることがわかっています。たとえば、うつ病の人の場合、悲観的な考えを現実としてとらえてしまう傾向があります。また、不安症の場合は、物事を大げさに考えすぎて落ち込むといった症状がみられます。
マインドフルネスには、自分の考えを肥大化させるのではなく、現実をありのままにとらえることを重視する特徴があります。そのため、マインドフルネス瞑想を繰り返すと、うつ病や不安症の人にありがちな症状の改善が期待できるとされています。
なお、日本の精神科医のなかにも、>マインドフルネスと同じ概念の治療法を実践している人が多く存在しています。また、PTSDの治療法として用いられている長時間の暴露療法と比較したところ、マインドフルネス瞑想でもPTSD症状の軽減が見られたことで、長時間の暴露療法と同等に有用だと考えられるようになりました。
プログラムとしてマインドフルネスを行なう、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)なども確立されており、低減法を実施することで、慢性疼痛やうつ病の再発予防に効果が見られることもわかっています。
参考:マインドフルネスを生活にいかそう(北里大学健康管理センター学生相談室)
参考:マインドフルネスは現代人の心を救えるか(早稲田大学・熊野宏昭研究室)
参考:実行機能とマインドフルネス(田中圭介・杉浦義典)