「日誌」の本質と日誌を使って目標達成する書き方のポイント

更新:2023/07/28

作成:2021/11/11

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

原田メソッド「日誌」の本質と日誌を使って目標達成する書き方のポイント

 

はじめに

原田メソッドは、元中学教師である原田隆史氏が20年にわたる教師生活のなかで確立した「優れた人格・人間力を土台に目標達成できる人を育てる」人材育成手法です。公立中学の陸上部を7年間で13回の日本一を達成させる偉業を支えた原田メソッドは「成功は技術である」という考えで設計された再現性のある目標達成手法です。

 

原田メソッドの再現性を実現する特徴の1つが、「3大ツール」と呼ばれる成功を実現するツール群です。本記事では、3大ツールの1つである「日誌」について、日誌の概要、目標達成するための日誌の書き方を紹介します。

 

原田メソッドについては以下の記事でまとめているので参考にしてください。

<目次>

日誌 ~目的・目標達成のためのセルフコーチングツール~

原田メソッドの提唱者、原田隆史氏は「成功の最小単位は1日」と言います。原田メソッドでは、目標達成に必要な時間の最小単位を「1日」ととらえて、1日単位でPDCAを回します。ここで、日々の振り返りを効果的にするのが「日誌」です。本章では「日誌」が成功に結び付く理由と、日誌を使ったセルフコーチングの概要を解説します。

 

日誌が成功に結び付く理由

原田氏は原田メソッドを開発するに際して、オリンピックの金メダリストや企業経営者、発明家といった古今東西の成功者と呼ばれる人たちを徹底的に研究しました。調査の結果、成功者たちには「日誌を書いていた」という共通点があることがわかりました。なぜ日誌を書くことが成功につながるのでしょうか。

 

日誌を書くことが成功に結び付く理由は、人間の「脳」が関係しています。近年の研究で、「1日の行動予定をスケジュールすることで脳を最大限に活用できる」ということが明らかになっています。したがって、1日のスケジュールを事前に整理することは脳を効果的に活用する方法といえます。

 

また「考えたことを文字に書く」ことも、脳の力を効果的に発揮する方法の一つです。書くことは自分の思考や感覚を言葉として整理する行為です。特に、手で書くことは脳を刺激する効果もあります。「書く」ことは「思考の整理と強化」に直結するのです。

 

古今東西の成功者たちは日誌を書くことを通じて、反復可能で再現性のある成功への習慣を身に付けていました。原田メソッドの「日誌」は、成功者たちの「日誌を書く」習慣を身に付けるとともに、脳の特徴を活用できるように工夫を盛り込んだツールです。

 

日誌を使ってセルフコーチングをすることで、目標達成できる自分を育てる

人材育成のやり方には大きく「ティーチング」と「コーチング」の2通りがあります。ティーチングは教える側が主体となって情報やスキルなどを伝授するやり方で、コーチングは相手の自主性を尊重しながら成長を促すやり方です。

 

コーチングは気付きや内省を深める効果的な手法として、近年多くの企業で人材育成や組織マネジメントに活用されています。原田メソッドの日誌を書くことは、じつはコーチングで質問を受けて内省することと同じ効果があります。日誌の項目設定が工夫されていることで、日誌を書くことで自然と脳内で内省が行なわれ、気付きが生み出されます。

 

日誌を書く過程で自分自身の思考や言動を振り返ることで、さまざまな改善点や気付きが生まれます。日誌はいわば目標達成に向けて自分を育てるセルフコーチングツールとなっているのです。

日誌を使って目標達成するためのポイント

本章では、原田メソッドの日誌項目を順番に解説するとともに、目標達成につながる日誌の書き方、ポイントを紹介します。

 

1.タイムスケジュール(前日記入)

どんな人にも等しく与えられているのが1日24時間という時間です。時間の使い方を前もって決めている人と行き当たりばったりの人とでは、行動の質にも生まれる成果にも、大きな差が生じます。

 

日誌では、タイムスケジュールの項目は前日の時点で作成します。前日に明日のスケジュールをシミュレーションして言葉に落とし込むのです。朝を迎えた時点で、すでにその日の行動をシミュレートし終わっていることで、心には余裕が生まれ、集中した状態で仕事に取り組むことができます。

 

2.今日必ずやること(前日記入)

タイムスケジュールを書き終えたら、タイムスケジュールの内容も踏まえて明日必ずやる3~5個の事柄を書き込みます。「何をやるか」と同時に「何を達成するか」「どのような結果を出すか」を書き込むことがポイントです。行動だけでなく成果を併せて書き込むことで、脳内に成果を出すイメージができあがります。

 

3.今日のひとこと(前日記入)

タイムスケジュールが記入できたら、予定を眺めて明日の行動イメージトレーニングをします。仕事の情景が頭に浮かんだら、「今日のひとこと」という項目に明日の意気込みや決心を言葉にして記入します。

 

タイムスケジュールと同じように「前日」に翌日をしっかりシミュレーションすることがポイントです。そのうえで成果をあげるために大事な心構え、モチベーションを高める一言を設定することで、自分のやる気スイッチが入ります。

 

4.タイムスケジュール実績(当日記入)

原田メソッドの日誌では、前日に作成したタイムスケジュール予定に対する実績を書き込んでいきます。タイムスケジュールに関してきちんと振り返ることで、自分の見積もりが誤っていた部分、うまくいった部分、飛び込みの仕事が入ってきた部分などを確認して、タイムスケジュールの精度を高めていくことが大切です。

 

5.今日の良かったことや気付いたこと(当日記入)

「今日の良かったことと気付いたこと」の項目には、一日を振り返り、うまくいったことを記入します。記入する目的は、成功体験を実感してセルフイメージを高めること、そして、自分のうまく行なったパターンを把握し、成功の習慣を作ることです。

 

「今日の良かったことや気付いたこと」は、さらに「自己効力感(仕事効力感)」「自己肯定感(自尊感情)」という2つの項目に分かれます。

 

自己効力感の項目では、どんなに小さなことでもかまいませんので、その日うまくいったこと、成果があがったこと、そして、そこで感じるポジティブな感情を振り返ります。「自分はうまくできている」「この分野ならうまくやれそうだ」などの感情を「仕事効力感」といいます。仕事効力感が上がると、仕事への自信や意欲もいっそう高まります。

 

2つ目の自己肯定感は、「沈んだ表情の同僚を元気付けた」「通勤電車の中でお年寄りに席を譲った」など、人間的成長につながったと思える行動や体験(自尊感情)を記入します。自尊感情は、自分を肯定的に受け入れる気持ちです。仕事をしていれば、気分が落ち込むこともあります。日誌を通じて、自尊感情を高めることでネガティブな気分や感情が尾を引くことが減り、気持ちの切り替えもしやすくなります。

 

6.今日をもう一度やり直せるなら(当日記入)

日常のなかで、うまくいかないこと、失敗も多々あります。しかし、失敗をきちんと振り返れる人は多くいません。失敗したときの姿勢や向き合い方が、成功者とそうでない人を分けると言っても過言ではありません。

 

「今日をもう一度やり直せるなら(制限がないとしたら)」という項目は失敗を振り返るための項目ですが、質問の仕方に最大の特徴があります。「今日失敗したこと・反省すること」という項目ですと、頭の中には「失敗したこと・反省すること」が思い浮かびますが、思い浮かんだところまでで思考が終了してしまいます。また、自己効力感も落ちてしまう結果となります。

 

しかし、「今日をもう一度やり直せるなら(制限がないとしたら)」という問いかけは、脳に「どうしたら成功するだろう?」「どうすればよりうまくいくだろう?」ということを考えさせます。自然と失敗と向き合うだけでなく、改善のヒントを発見して行動パターンを変えて目標達成に近づくことを実現します。脳内で「成功イメージ」を持つことで、自己効力感が下がることもありません。

 

「今日の良かったことや気付いたこと」といった項目と同様に、一つひとつの質問がこのように工夫されている点が日誌が持つ特徴であり、日誌を書くことがセルフコーチングになる理由です。

 

7.ゴール達成に向けてヒントになった言葉や出来事・成長の記録(当日記入)

目標達成と関連付けて、ヒントになった言葉や出来事、思い浮かんだアイデアなどを記入する項目です。普段、何気なく目にしているものでも、目的・目標を意識してアンテナを立てることで、気付きの感度がグンと上がります。そして、気付きを文字にして日誌に残すことで、学びが明確になる、どのように生かせるかを考える、行動につながるといった効果があります。

まとめ

記事では、原田メソッド3大ツールの「日誌」をテーマに、日誌が成功につながる理由と、目標達成するための日誌の書き方を紹介しました。

 

日誌は、「日々の思考と自己分析の積み重ねが目標達成につながる」という古今東西の成功者、ハイパフォーマーの習慣から生まれました。原田隆史氏の有名な言葉に「成功の最小単位は1日」があります。日誌を通じて、成功の最小単位である「毎日」をセルフマネジメントすることは、一歩一歩確実に成功に到達するための近道です。

 

目的・目標達成には、能力面・精神面の向上が不可欠です。原田メソッドの日誌には、タイムマネジメント力、仕事の質や精度UP、モチベーション維持、セルフイメージ強化、PDCAサイクルといった目標達成に必要な要素を高める工夫とノウハウがぎっしり詰まっており、記事の中でも詳しく説明しました。

 

記事を参考に、成功の習慣や日々の成長のヒントに少しでもつなげていただければうれしく思います。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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