企業にとってインターンシップ開催の目的とメリットは?成功に向けた基本を解説

企業にとってインターンシップ開催の目的とメリットは?成功に向けた基本を解説

インターンシップを実施することは、企業にとって「早期学生への接触と母集団形成」と「自社への魅力付け」というメリットがあります。知名度や人気で大企業に劣る中小企業やベンチャー企業においても、インターンシップは優秀な学生に接触・採用できるチャンスだといえます。

 

ただし、インターンシップの実施にはコストや工数がかかるほか、内容によっては自社への志望度を低下させてしまう危険もあるので注意が必要です。
記事では、インターンシップを開催する目的とメリットを掘り下げ、インターンシップを成功させるためのポイントを解説します。

<目次>

企業がインターンシップを実施する目的

インターンシップとは、学生が就業体験を行なうための制度です。学生は、大学での専攻や希望するキャリアに関連した企業のインターンシップに参加することで、参加先の企業や職種に対する理解を深めることができます。

 

一方、企業側には「採用活動の一環」という側面があります。インターンシップを通して人材の獲得・育成を目指すとともに、企業風土を理解してもらうことで、採用後のミスマッチの予防にもつながります。

 

教育目的学生のスキル向上や就職観の醸成などを目的に実施。
大学の授業などで行なわれるインターンシップが該当する。
採用目的母集団形成、自社への志望度向上などを目的に実施。
企業が採用活動のなかで実施するインターンシップが該当する。

本来のインターンシップは、学生への教育機会を目的として行なわれるものでしたが、現在においては採用目的のインターンシップが圧倒的に多くなっています。

 

就職協定などにおいても、インターンシップで獲得した情報を採用に連携することの解禁が検討されていますが、実態としてはインターンシップが採用活動に直結していることがほとんどです。

 

ただ、採用目的のインターンシップとはいえ、学生のスキル向上や就職観の醸成などをインターンシッププログラムとして提供することで自社への志望度が上がりますので、程度の差はあれ、教育目的の要素も持っているとはいえるでしょう。

 

特に採用で苦戦を強いられやすい中小企業やベンチャー企業は、インターンシップを実施することで早期から動き出す優秀層にアプローチできたり、質の高い母集団形成が可能になったりするため、インターンシップの活用がおすすめです。

インターンシップ実施で期待できるメリット

たくさんの履歴書のなかから採用するイメージ

 

インターンシップの実施には、大きく「早期学生への接触と母集団形成」「企業の魅力付け」「ミスマッチの解消」といったメリットがあります。

 

早期学生への接触と母集団形成

知名度のある大企業はもちろん、知名度や人気に劣る中小企業でも、インターンシップを実施することで多くの学生に自社を知ってもらうことができます。

 

採用活動が全般的に早期化するなかで薄まっているとはいえ、早期から活動している学生は優秀層も多く、魅力的なインターンシップを開催することで、優秀な学生と接触して、質の高い母集団を形成することが可能となります。

企業の魅力付け

インターンシップでの体験が魅力的なものであれば、学生が自社を志望する可能性や志望度が向上しやすくなります。
また、学生と直接交流する機会ができるため、求人や企業ホームページでは伝えきれない自社の魅力を効果的にアピールすることも可能です。

 

ミスマッチの解消

採用活動において、書類選考や面接だけで学生の特性や適性、ポテンシャルを見極めることはなかなか難しいものです。また学生側も、企業ホームページや求人票の情報だけで、仕事内容や組織風土が自分に合っているのかを判断するのは難しいといえます。

 

インターンシップでは、企業と学生の双方の理解が深まるため、入社後のミスマッチや早期退職といったリスクを低減することが可能です。

 

とくに企業側からすると、グループワークや課題への取り組み姿勢など、通常の筆記試験や面接では判断しにくい要素を見極めることもできるでしょう。

インターンシップ実施のデメリットや留意点

インターンシップは企業にとっても大きなメリットが得られる一方、デメリットや留意点もあります。

 

実施コストと工数

インターンシップを実施するには、プログラムの考案や受け入れ体制の構築、現場で対応する社員の負担など、それなりのコストと工数がかかります。

 

また、インターンシップ中の怪我や事故に備えようと思えば保険・損害賠償の対応が必要になり、給与が発生していない場合は労災にもならないので注意が必要です。

低品質なインターンシップによる志望度低下

プログラム内容が学生のニーズと合っていなかったり、現場の社員の対応が悪かったりと、低品質なインターンシップは逆に学生の志望度を下げてしまう可能性があります。
そして、品質を担保しようと思えば、上述のように一定の工数や資源が必要になってきます。

 

採用期間の長期化

インターンシップは3年生の夏頃に実施することが一般的です。一方で、選考開始は3年の秋~4年生の春となり、内定承諾は4年生の春~夏前、そして、実際の入社は翌年の4月となるわけです。

 

場合によっては学生と2年近く接点を持ち、魅了付けし続けなくてはなりません。インターンシップの開催は優秀層との接点づくりになる一方で、採用期間を長期化させる取り組みでもあります。

インターンシップの種類

インターンシップには大きく3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

 

短期インターンシップ

大学3年生を主対象にしたインターンシップで、半日から1日の1dayインターンシップが代表的です。
短期インターンシップは、短期的な母集団形成がおもな目的で、応募の先着順に参加が決定するもの、選考基準を満たした学生のみ参加できるもの、誰でも参加できるものなどがあります。

 

最近では、手軽な0.5日~1日のインターンシップで母集団形成して、その後に選抜型で2~3日間のインターンシップを実施して、しっかりと魅了付けするような形も増えています。

短期インターンシップのプログラム例
  • 企業の事業紹介、セミナー
  • グループディスカッション
  • 既存社員との交流会
  • 職場見学
  • 業務体験、ロールプレイング
  • 新規事業、サービス案の創出 など

長期インターンシップ

おもに低年時(大学1~2年生)の学生を対象にしたインターンシップです。自社で育成・戦力化しながら採用につなげることを目的としており、ベンチャー企業やスタートアップ、特定の職種などで実施されることが多くなっています。

 

長期インターンシップは、長期にわたって実務を経験してもらうことで入社後のミスマッチが確実に減少するほか、即戦力人材としてすぐに活躍してもらうことが可能です。

 

プログラムの内容はそれぞれの企業によって異なりますが、実際の業務とかけ離れたプログラムでは入社後のイメージが湧かず、採用につながりにくい傾向があるため、基本的には新卒社員に任せるのと同等の仕事を与え、経験を積んでもらいます。

 

ただし、参加するのは知識や経験がほぼない学生ですので、業務設計や育成体制、フォローは必須です。学生側からしてもインターンシップ参加中はアルバイトなどもできなくなりますので、最近では有償で実施されていることがほとんどです。

オンラインインターンシップ

コロナ禍を契機にオンラインでインターンシップを実施する企業も増えています。オンラインインターンシップは、開催のコストが抑えられ、学生も参加しやすい、エリアを問わずに集客できるといったメリットがあります。

 

メリットがある一方で、対面よりも細かなプログラム設計と高いクオリティにしないと、インパクトが薄れるため、対面より運営の難易度は高いともいえます。
とはいえ、時代のニーズに合っていますので、うまく設計できれば母集団形成・魅力付けに大きな効果を発揮できます。

インターンシップ実施時の注意点

人差し指を掲げる女性

 

インターンシップを成功させるためには、質の高いプログラムを設計するとともに、学生が安心して参加できる環境づくりが不可欠です。

 

目的と対象の明確化

インターンシップの目的は母集団形成・魅力付けであり、企業としては「採用につなげたい」という目的があります。

 

したがって、学生にとって価値あるプログラムや体験を提供するだけでなく、インターンシップを通して自社への志望度を上げてもらうことが重要です。まずは新卒の採用基準・ターゲット要件と同じ要領で、集めたい学生のイメージを明確にしましょう。

プログラムの設計

インターンシップの効果を高めるには、目的に沿ったプログラム設計を行なう必要があります。

 

手っ取り早く母集団形成したいのであれば、企業紹介・事業紹介セミナーといった短期インターンシップが適しているでしょう。一方、工数とコストがかかっても優秀な学生を見極めたいのであれば、実際の業務を経験させる長期インターンシップが最適です。

 

以下はインターンシップでよく取り入れられているプログラム形式になります。

  • グループディスカッション
  • ロールプレイング
  • ビジネスゲーム
  • 就業型
  • 講義・レクチャー

目的や対象人数に応じて、インターンシップの内容を設計しましょう。

賃金や法令関係の確認

インターンシップを実施するうえでは、必要に応じて賃金の支払いや雇用契約など、各種法令も確認が必要です。

 

インターンシップには無給と有給のものがあります。短期の1dayインターンシップなどの場合、企業と学生との間に使用従属関係はなく、インターン生は労働者に該当しないため、インターン生を無給にしても問題はありません。

 

一方、長期インターンシップで実際に業務を任せている場合は、使用従属関係があると判断され、労働関係の法令が適用される可能性があります。労働関係の法令が適用される場合は、インターン生に対して最低賃金以上の給与の支払いが必要です。

まとめ

インターンシップの実施は、企業にとって母集団形成や自社への魅力付け、採用ミスマッチの解消といったメリットがあります。

 

従来のインターンシップは学生に教育機会を与える目的で行なわれることが一般的でしたが、現在は採用と教育の両方を兼ねた目的で行なわれるケースが圧倒的に多くなっています。

 

インターンシップを成功させるためには、学生のターゲットや開催目的を明確化して、目的に沿った質の高いプログラムを用意することがとても重要です。

 

また、最近ではオンラインのニーズが高まっているため、オンラインインターンシップの検討もおすすめです。魅力的なインターンシップを開催して、優秀な学生にアプローチしましょう。

著者情報

稲本 太郎

株式会社ジェイック|シニアマネージャー

稲本 太郎

新卒で入社してから一貫して、新卒・中途の採用コンサルティング、キャリアカウンセリング、マネジメントを経験。計15年以上に渡って、採用支援の第一線で活躍している、社内でも有数の経験豊富な現役採用コンサルタントでありながら、自社採用の面接官も兼任。新人賞、トップセールス賞、MVT、社長賞、特別賞、ベストプラクティス最多ノミネートなど数々の受賞実績有り。

著書、登壇セミナー

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