心理的安全性を高めるリーダーシップとは?管理職が徹底したい心構えとは?

心理的安全性を高めるリーダーリップ?管理職が徹底したい心構えとは?

Googleが重視する概念として注目されている心理的安全性。心理的安全性は、チームの効果性を高め、組織の生産性を向上させる重要な要素です。

 

職場における心理的安全性は環境による影響も大きく、個人の意識や心がけ以上に、管理職がリーダーシップを発揮して職場の心理的安全性を確保できるかどうかが重要です。

 

本記事では、組織の管理職や経営者に向けて、心理的安全性を高めるためにリーダーが徹底したい心構えを解説します。

<目次>

心理的安全性を決定付けるのはリーダーシップ

会議で話すビジネスパーソン

 

職場の心理的安全性を決定付けるのは、チームや組織を率いる人間のリーダーシップです。なぜそういえるのか、詳しく解説します。

 

心理的安全性とは?

心理的安全性とは、エイミー・エドモンドソンという組織行動学の権威でハーバード大学の教授が提唱した概念です。Googleの大規模調査「プロジェクト・アリストテレス」の結論として「チームの生産性を決定付ける重要な要素」と発表されたことで、広く関心を持たれるようになりました。

心理的安全性は、チームの成果を上げるうえで最も重要な要素です。心理的安全性は、単なる仲の良さなどではありません。チーム内で、「チャレンジングな発言をリスクなくできる安心感」がメンバー間に共有されている状態を心理的安全性と呼びます。

 

組織内でのチャレンジジングな発言とは、周囲と異なる意見の提示、自分の失敗や能力不足を開示すること、初歩的だったり間違ったりするかもしれない質問や意見などです。

 

また、リスクとは、「馬鹿にされるかもしれない」「相手がイヤな思いをするかもしれない」「人間関係が壊れるかもしれない」といった心理的な不安や発言へのためらいを指します。

 

つまり、心理的安全性が高いチームでは、チーム内のコミュニケーションが前向きな方向で活性化していき、より良い解決策やイノベーションの創出、助け合いによる実行力の強化などが起きやすくなります。

職場の心理的安全性をつくるのは管理職

心理的安全性をつくるうえで、各メンバーの心がけや意識は大事ですが、現場の長であるリーダーが与える影響は非常に大きいといえます。チームや職場などの環境や空気感は、決定権を持ったり会議などを進行したりするリーダーのスタンスに大きく左右されます。

 

例えば、若手のメンバーがお互いに何でも言い合える環境を望んでも、リーダーに自由な発言を受け入れる姿勢がなければ実現は難しいでしょう。心理的安全性の高いチームや組織をつくるには、リーダーや管理職のリーダーシップが肝心です。リーダーシップに問題があると、チームに心理的安全性は生まれません。

 

管理職に昇進して自動的にリーダーの立場になれたとしても、誰もがすぐに優れたリーダーシップを発揮できるとは限りません。

 

リーダーシップには先天的な資質もありますが、人材教育による底上げが可能です。職場の心理的安全性をつくるための要素を洗い出し、リーダー層の教育に反映させることで、成果を出せるチームを確実に生み出していけます。

 

Googleでも、「心理的安全性を高めるためにマネージャーにできること」として、対象者に以下の資料を配布しています。

心理的安全性を作り出すためのリーダーとしての大切な心構え

ビジネスグループ

 

心理的安全性を確保するために、リーダーや管理職が意識したい5つの心構えを紹介します。

 

成果や貢献への執着

心理的安全性は、単なる「仲良しクラブ」ではありません。ここでの「仲良しクラブ」とは、仲良くあることが目的化してしまい、チームの輪を乱すリスクを恐れる状態です。

 

表面的な仲の良さを重視するため、リーダー自身、仕事に対する要求基準が甘く、それぞれのメンバーも成果に対してある意味で無責任です。

 

チームビルディングしていく過程で「仲の良さ」=相互理解や信頼関係を生み出すことは非常に大切です。しかし、リーダーが積極的にチームで達成すべき目標や貢献、目指すビジョンを示していかないと、雰囲気重視の単なる「仲良しクラブ」で終わってしまいます。

 

貢献度が高いチームにするには、リーダー自身が成果をコミットする姿勢と強い意志を見せることが非常に重要です。チームとして何を成し遂げるか、成し遂げる目標にどんな価値があるかを言葉と行動で示し、チームの共通ゴールを創り出すのです。

 

また、リーダーの立場から目標達成を全力で支援し、成果創出への本気度を示しましょう。小さくても良いので成功体験を積み重ねていくことで、メンバー間に自信と結束力が生まれ、仕事への責任感も養われるでしょう。

メンバーへの誠実な興味・関心と経緯

メンバー個人を尊重し、敬意を持つことも心理的安全性を生み出すためにリーダーとして必須の心構えです。メンバー一人ひとりに興味を持ち、相手の価値観を理解することを心がけましょう。

 

ビジネス上ではどうしても相手の能力やスキルに関心が行きがちですが、能力やスキルへの関心だけでは自分の仕事へのメリットばかり追求していると思われ、信頼関係は深まりません。リーダーに自分のパーソナルな部分を気にかけてもらっているという事実が、メンバーの基本的な安心感、自己肯定感を育みます。

 

相互理解を深めるには、リーダー自身の自己開示も必要です。年齢が離れている、性別が異なるといった場合、特にメンバーからリーダーのプライベートには踏み込みにくいものです。

 

自身のことも積極的に開示しながら、相手の家族構成や趣味、プライベートで最も関心を持っていることなど、軽めの話題から切り出してみましょう。

 

相互理解が深まれば、各メンバーにより最適な仕事や役割をアサインできます。仕事上のコミュニケーションも円滑になるはずです。

リーダーによるチャレンジングな発言

前述のとおり、職場に心理的安全性がある状態とは、誰もがチャレンジングな意見を気兼ねなく述べられる環境を指します。「こんなことを言って馬鹿にされるのではないか」「邪見にされたり、仕返しされたりするのではないか」という不安がなく、各メンバーが自発的に発言できる空気があります。

 

気兼ねなく発言できる空気をつくるには、リーダー自身が失敗を恐れず行動したり、能力や知識不足を開示したり、ときには初歩的や的外れかもしれない質問をすることも大事です。

 

例えば、リーダーが「自分はDXの分野にあまり詳しくないから教えてくれないか」と皆の前で若いメンバーに尋ねたとしましょう。

 

リーダーが自分の無知や失敗などを素直に開示する姿勢を見せることで、無知・無能だと思われることに不安があった各メンバーも、自分も知らないことや不明点を素直に聞いても良いのだと思えるようになります。

メンバーの意見や提案を引き出すファシリテーション

リーダーがチャレンジングな発言をすることは大事ですが、リーダーだけが発言・提案する空気になってしまうことは問題です。リーダー自身は会議で話し合って合意したと思っていても、実際には最も権力を持つリーダーに対して、誰も異論を唱えられなかっただけかもしれません。

 

心理的安全性を生み出す、また、仕事に多面性を持たせてチームシナジーを生み出すには各メンバーから意見や提案を引き出すことが非常に大切です。リーダーや管理職は、議論やミーティングの際にはファシリテーターとなることを意識しましょう。

 

ビジネスシーンのファシリテーターとは、会議の進行役です。ただし、単に議題に沿って会議を進行するのではなく、参加者からさまざまな意見やアイデアを引き出して場を活性化させ、ゴールに向けてまとめていく役割を担います。

 

リーダーがファシリテーターとして、メンバーに対して自分の意見を述べる機会を提供することで、参加したメンバーは「発言して良い」「自分の意見が期待されている」という実感を得られるでしょう。

 

また、メンバーの意見や提案を決定に反映していくことで、メンバーに意思決定に関わったという満足感や納得感を生み出し、さらなる主体性を引き出します。こうした満足感や納得感は、決定事項を実行するフェーズにおいてもポジティブに働くでしょう。

相違を貴ぶ姿勢

リーダーとして、「否定しない、異論も受け入れる」という姿勢を徹底することも大事です。現実のビジネスシーンにおいては、会議などでリーダーが一切発言せずにファシリテートに徹することは現実的ではありません。

 

リーダーも意見を述べますし、場合によってはリーダーが意思決定することになります。その時に、大事なのは、自分と異なる意見を尊重したり理解しようとしたりする姿勢を見せることです。

 

たとえメンバーからの意見や提案が未熟なものであったり間違っていたりしても、正面から否定することはやめましょう。全員の前で否定されたメンバーは、次回からは黙ってしまうかもしれません。

 

心理的安全性を高めるには、自分と異なる意見を受け入れる「他者受容」が大事です。相乗効果とは、「違い」から生み出されるものです。チーム内のディスカッションを活性化させるには、違いを尊重する姿勢が大切です。

 

違いを尊重する姿勢が、職位や経験に関係なく「自分の視点に価値がある」と思わせ、本音を言える空気感を生み出します。

チームの主役はメンバーである

心理的安全性の高い組織をつくるうえで、リーダーや管理職のリーダーシップは非常に重要です。ただし、心理的安全性を作るリーダーシップは「安心な場をつくる」ためのものであり、あくまで場の主役はメンバーです。リーダーが主役になろうとしてはいけません。

 

リーダーシップの種類でいうと、「サーバント型リーダーシップ」を意識するとよいでしょう。サーバント型では、リーダーは、各メンバーに一方的に命令したり、評価だけ行なったりするのではなく、各人の能力発揮を支援します。

 

サーバントリーダーシップがうまく機能すると、メンバーが上司からの指示を受けて義務感で動くのではなく、自主性や主体性を発揮して行動します。

メンバーの個性や特性は、チーム力を最大化する源です。個々の能力が存分に生かされることで、多様性が生まれて立場を超えたディスカッションが活発になります。

 

異なる視点や価値観、背景を持ったメンバーが率直に意見交換することで、斬新なアイデアが創出されたり、ブレークスルーを実現できたりして、結果として組織全体の生産性も向上していきます。

 

すべての場面でサーバント型リーダーシップが適切というわけではありませんが、心理的安全性の確保という観点では非常に有効です。

まとめ

心理的安全性を高めるには、リーダーや管理職のリーダーシップが不可欠です。リーダーや管理職は、以下の5つの姿勢を徹底し、各メンバーが何でも気兼ねなく発言できる環境をつくっていくことが大事です。

・成果や貢献への執着
・メンバーへの誠実な興味・関心と経緯
・リーダーによるチャレンジな発言
・メンバーの意見や提案を引き出すファシリテーション
・相違を貴ぶ姿勢

心理的安全性を確保するためには、リーダーはサーバント型リーダーシップを意識すると効果的です。主役はあくまでメンバーであり、リーダーや管理職はメンバーが能力を存分に発揮できる土台・環境を整えてあげる立ち位置です。

 

心理的安全性はチームの効果性を高め、組織の生産性向上を実現するうえでの重要なカギです。本記事や以下資料などを参考に、職場の心理的安全性を確保していきましょう。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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