デザインプロセスの特徴とメリット、活用できるフレームワークまで解説

更新:2022/07/15

作成:2022/07/08

デザインプロセスの特徴とメリット、活用できるフレームワークまで解説

近年、日本企業が「デザインプロセス」を取り入れるケースが増えています。デザインプロセスとは、デザイン思考のプロセスです。ハーバード大学のハッソ・ブラッドナー教授が、デザイン思考の5つのステップを「デザイン思考の5段階」と名付け、それをデザインプロセスと提唱しました。

 

デザインプロセスという単語から、デザイナーを対象にする概念、またはデザイン分野の専門用語とも思われがちですが、デザインプロセスは、ユーザー視点に立って本質的なニーズや課題を抽出し、イノベーションを創出する思考プロセスです。

 

その特徴に注目して、ビジネス分野で注目されているのです。記事では、デザインプロセスの概要やメリット・デメリットを紹介したうえで、デザインプロセスの実施ステップを解説します。
 

<目次>

デザイン思考とデザインプロセス思考の概要

まずデザインプロセスのもとであるデザイン思考の概略について紹介します。デザイン思考の特徴や注目を集めている背景、また似たキーワードである「アート思考」との違いを解説します。

 

デザイン思考とは?

デザイン思考は、デザイナーがデザインや設計などの業務で利用している思考ステップのことです。衣服や工業製品などのデザインを作り上げる際に用いられる思考法です。そして、デザイン思考の実施ステップを整理したものがデザインプロセスです。

 

デザインという言葉には「外観を整える」といった意味だけではなく、課題を解決するための企画や設計というニュアンスがあります。つまりデザイン思考は、ユーザーの課題を解決して、共感や満足をもたらすためのプロセスを整理したものであるといえます。

 

だからこそ、デザイン思考とデザインプロセスは企業にとってもビジネスに応用することができ、現在では製品・サービスの開発・改善の場などを中心に活用されています。

 

 

デザイン思考とデザインプロセスが注目される背景

デザイン思考はビジネス環境の変化を背景として注目が集まっています。

 

ビジネス環境の変化を表す言葉としてよく用いられるのが「VUCA」です。変動性(Volatility)不確実性(Uncertainty)複雑性(Complexity)曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取ったものです。

 

世界中がネットワークでつながりって瞬時に情報が拡散してトレンドが動く、新たなビジネスモデルや製品もすぐに真似られる、海外の出来事が日本国内のビジネス環境に変化を与えるといった形で、変化スピードや不確実性、複雑性の確かに増えています。

 

従来、新製品の開発現場ではユーザーのニーズやマーケットの調査結果に基づいた仮説の立案と検証による仮説検証型のアプローチが取られてきました。

 

しかし、人口減少をはじめ、IT技術の発展による産業構造の変化、そして、前述のVUCAの進行などによるさまざまな要因によって、これまでの常識であった仮説検証型のビジネスプロセスが通用しなくなってきました。

 

そこで、ユーザーが抱える課題の本質をとらえてイノベーションを創出する手法としてデザインプロセスが脚光を浴びるようになったのです。

 

なお、政府をはじめとする各種機関もデザインプロセスを推進しています。2018年には経済産業省が「DXリポート」の中でDX人材の重要性について「ユーザー起点でデザイン思考を活用」できる人材に言及しており、またIPA(情報処理推進機構)の「DX白書2021」でもデザイン思考が重要と指摘しています。

 

デザイン思考とアート思考の違い

デザイン思考と似た言葉に「アート思考」があります。どちらもアイデアを出すための思考法ですが、デザイン思考とアート思考には明確な違いがあります。

 

デザイン思考はユーザーのニーズを起点としてアイデアを創出し、既存の製品やサービスを進化・発展させる場合に有効な手法です。一方、アート思考はユーザーニーズではなく作り手の独創的で自由な発想を起点として、今まで思いつかなかったようなアイデアを創出する手法です。

 

どちらの思考法もクリエイティブなどの分野から発生しているものですが、デザイン思考は「ユーザー」を中心とした思考法なのに対して、アート思考は「作り手」を中心とした思考法であり、ある意味で対極的なものであるといえます。

 

ただし、デザイン思考とアート思考に優劣があるわけではありません。目的や場面によって使い分けることが重要です。
 

デザイン思考のプロセスのステップ

続いて、デザインプロセスのステップを紹介します。デザインプロセスは5つのステップで成り立っており、この順番で行なうと効果が高まります。

1.共感

デザイン思考はまず共感から始まります。ユーザーの視点に立って物事を見て、ユーザーの心理に共感することでニーズや課題を発見するステージです。ユーザーと同じように感じることが大切です。

 

このプロセスではアンケートやユーザーインタビューが一般的に用いられます。また、BtoCの商品であれば販売店などでユーザーが製品購入を検討する場面に立ち会って、ユーザーを観察することも効果的です。

 

ユーザーの気持ちに立ってどのような感情を抱いており、どのような思考をしているのかを考える必要があります。ユーザーが抱える課題を発見することが、共感プロセスの成功だといえます。

 

2.問題定義

共感によって得られたユーザーのニーズや課題を掘り下げ、ユーザーが本当に解決したいと願っている潜在的な不満を抽出するのが問題定義のプロセスです。

 

問題定義においては、ニーズの背景にある真意について仮説を立てて読み解きます。ユーザーは「自らが抱えている真のニーズ」に気付いていない場合も多くあります。したがって、ユーザーの表面的な課題を深掘り、仮説を立てて、ユーザーが持つ真のニーズを考えます。

 

事例をひとつ紹介します。

 

自動車ユーザーが「ボディカラーのバリエーションを増やしてほしい」という意見を挙げたとします。じつは意見の背景にあるのは「同じ車種のユーザーと違いを出したい」という潜在的な真意かもしれません。

 

ユーザーの本当のニーズを実現するには、カラーバリエーション以外にも外装のオプションやグレードの多様化など別の施策も考えられます。顕在的なニーズから仮説によって潜在的な課題を読み解くのが問題定義プロセスの役割です。

 

3.アイデア

問題定義で立てた仮説から、課題を解決しニーズを実現するためのアイデアを考えていくプロセスです。

 

アイデアのプロセスでは、固定観念や実現可能性にとらわれることなく、自由な発想で意見やアイデアを出すことが重要となります。質より量を重視して、さまざまな角度から多くの発想を引き出しましょう。ここではブレインストーミングなどの手法を用いることが一般的です。

 

アイデア出しによって得られた多数の発想や意見は、分類して整理して、収束させていきます。

 

4.プロトタイプ

出されたアイデアの中から、ユーザーニーズを満たすために有効と考えられる候補について、製品やサービスの試作品である「プロトタイプ」を作るプロセスです。

 

プロトタイプを作ることによってチーム内で認識のズレをすりあわせ、イメージを共有することができます。イメージの共有は問題点や新たな課題への気付きにもつながります。

 

制作にあたっては、時間やコストをかけずに、まずは形にしてみることを重視します。あくまで試作品であり、完璧なクオリティが必要というわけではありません。

 

例えば、Webサービスであれば操作画面のイメージだけ、製品であれば工作場で作れる範囲のもので形にしてみる、などです。

 

プロトタイプは一つである必要はありません。複数パターンのプロトタイプを制作し、比較しながら今後どのような点をブラッシュアップしていくべきであるか考えクオリティを高めていくことも効果的です。

 

5.テスト

制作したプロトタイプをユーザーに試してもらい、検証するプロセスがテストです。

 

共感と問題定義のプロセスで把握したユーザーニーズは正しかったのか、解決策として提示したアイデアの方向性は間違っていなかったのかをテストを通じて判断します。

 

プロトタイプを利用したユーザーからのレビューやフィードバック、使っている様子の観察を通じて、課題が解決されニーズが満たされているか確認しましょう。

 

実際のユーザーに使ってもらうことで、内部で議論するだけでは見えていなかった課題を洗い出すことができます。仮説が正しいことを検証できた場合にも、ブラッシュアップが必要な部分の発見につながるかもしれません。

 

検証の結果、新しい課題が発見された場合には再び共感のプロセスに戻って問題定義、アイデア出し、プロトタイプ制作、テストを繰り返します。

 

デザインプロセスでは、仮説の立案と検証によって製品やサービスの改善を重ねていくプロセスを繰り返しユーザーニーズ実現に向け追求していく姿勢が重要です。
 

デザインプロセスプロセスのメリット

ユーザーの立場に立って課題を発見し解決策を検討するための思考法であるデザインプロセスを組織に導入するメリットを確認します。

 

アイデア提案が習慣化する

デザインプロセスでは、本質的なユーザーのニーズを汲み取り、解決するためのさまざまなアイデアを数多く考えます。

 

自由な発想から意見やアイデアを出し、それを考察したうえでプロトタイプを制作します。したがって、デザイン思考に慣れてくると、「考える」「やってみる」「提案する」というスタンスが強化されます。

 

また、いきなり最終版を完成させるわけではなく、プロトタイプの作成とユーザーテストを通じて検証・修正を繰り返していく点も特徴です。「完成品を作らないといけない」というプレッシャーや「失敗したらどうしよう」という恐怖心が薄れ、アイデアを提案する習慣が身に付きます。

 

多様な意見を受容できるようになる

アイデアのプロセスでは、ブレインストーミングなどを通じてチームメンバーから数多く意見やアイデアを出し、それらの良いところを組み合わせてプロトタイプを作っていきます。

 

異なる意見やアイデアを受け入れて組み合わせていく経験をしていくと、多様な意見を受容する習慣が身に着きます。

 

近年、ダイバーシティーが注目されるように、知識社会においてはさまざまな面で多様性を尊重し、イノベーションを生み出すことが大切です。多様な意見を受容するスタンスが社内に広がることは企業にとって好ましい影響を与えます。

イノベーションの創出が期待できる

上述した「アイデアや意見を気軽に提案する」「試しにやってみる」「さまざまな視点からアイデアを出す」「多様な意見を受容する」などは、いずれもイノベーションにつながります。

 

生産性の向上やユーザーニーズを突き詰めていくことが求められている現代のビジネスにおいて、イノベーションを創出できる風土を作ることは大きな競争力となるでしょう。
 

デザインプロセスプロセスで活用できるフレームワーク

最後にデザインプロセスを活用する際に役立つフレームワークを紹介します。

 

共感マップ

共感マップはユーザーの言動や感情、価値観などを分析するために用いられるフレームワークです。「見えているもの」「聞いていること」「考え、感じていること」「発言と行動」「感じているリスクやストレス」「欲しいもの、望んでいること」の6つの視点からユーザーのことを考えます。

 

共感マップを作成する際には、6つの要素を書き出して図にまとめ整理します。なるべく正確にとらえ、思考を膨らませるためには、複数名で意見を交わしながら作業することが効果的です。

 

共感マップは、共感プロセスにおいて有効なフレームワークであり、ユーザーの本質を理解する、チームメンバーの思考をすり合わせるなどのメリットをもたらします。

 

マインドマップ

マインドマップは考えていることを脳内の思考に近い形として描き、記憶の整理や発想の促進につなげる思考の表現方法です。中心に置かれたキーワードから連想されるキーワードをつないでいき、連想やアイデアを広げていきます。

 

マインドマップの活用によって思考の全体像を把握できるとともに、キーワードのつながりからアイデアを創出していくことができます。

 

マインドマップは、アイデアのプロセスで活用できます。マインドマップを活用することで、自由な発想に基づくアイデアを生み出すやすくなるでしょう。

 

ビジネスモデルキャンパス

アイデアをビジネスに反映する際に用いると効果的なフレームワークが、ビジネスモデルキャンパスです。ビジネスモデルキャンパスはビジネスモデルを可視化するフレームワークです。ビジネスモデルに必要な9つの要素を図に落として整理します。

 

9つの要素は「顧客セグメント」「提供価値」「チャネル」「顧客との関係性」「収益の流れ」「キーとなるリソース」「キーとなるアクティビティ」「キーとなるパートナー」「コスト構造」です。

 

プロトタイプをビジネスモデルキャンパスに落とし込むことで、実際にビジネスとして成立するかを効率良く考えられるでしょう。
 

まとめ

デザインプロセスはデザイナーやクリエイターだけでなく、企業やビジネスパーソンにとっても有効な思考法です。ユーザーが持つ本質的なニーズや課題をとらえて、プロトタイプの作成とテストを繰り返しながら検証・改善していくプロセスは、製品・サービスの改善や創造に役立ちます。

 

また、デザインプロセスを組織に導入すると、アイデア提案の習慣化やイノベーション創出などのメリットも見込めます。このような効果もあり、デザインプロセスはGoogleやAppleで取り入れられ、国内企業で導入する例も増えています。

 

デザインプロセスを導入するうえでは、慣れない思考法を身に着け、思考力を向上させるための外部研修も効果的です。HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、各種階層やテーマに応じたオーダーメイド研修を提供していますので、ご興味あればお問い合わせください。
 

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