デザイン思考とデザインプロセス思考の概要
まずデザインプロセスのもとであるデザイン思考の概略について紹介します。デザイン思考の特徴や注目を集めている背景、また似たキーワードである「アート思考」との違いを解説します。
デザイン思考とは?
デザイン思考は、デザイナーがデザインや設計などの業務で利用している思考ステップのことです。衣服や工業製品などのデザインを作り上げる際に用いられる思考法です。そして、デザイン思考の実施ステップを整理したものがデザインプロセスです。
デザインという言葉には「外観を整える」といった意味だけではなく、課題を解決するための企画や設計というニュアンスがあります。つまりデザイン思考は、ユーザーの課題を解決して、共感や満足をもたらすためのプロセスを整理したものであるといえます。
だからこそ、デザイン思考とデザインプロセスは企業にとってもビジネスに応用することができ、現在では製品・サービスの開発・改善の場などを中心に活用されています。
デザイン思考とデザインプロセスが注目される背景
デザイン思考はビジネス環境の変化を背景として注目が集まっています。
ビジネス環境の変化を表す言葉としてよく用いられるのが「VUCA」です。変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取ったものです。
世界中がネットワークでつながって瞬時に情報が拡散してトレンドが動く、新たなビジネスモデルや製品もすぐに真似られる、海外の出来事が日本国内のビジネス環境に変化を与えるといった形で、変化スピードや不確実性、複雑性が確かに増えています。
従来、新製品の開発現場ではユーザーのニーズやマーケットの調査結果に基づいた仮説の立案と検証による仮説検証型のアプローチが取られてきました。
しかし、人口減少をはじめ、IT技術の発展による産業構造の変化、そして、前述のVUCAの進行などによるさまざまな要因によって、これまでの常識であった仮説検証型のビジネスプロセスが通用しなくなってきました。
そこで、ユーザーが抱える課題の本質をとらえてイノベーションを創出する手法としてデザインプロセスが脚光を浴びるようになったのです。
なお、政府をはじめとする各種機関もデザインプロセスを推進しています。2018年には経済産業省が「DXリポート」の中でDX人材の重要性について「ユーザー起点でデザイン思考を活用」できる人材に言及しており、またIPA(情報処理推進機構)の「DX白書2021」でもデザイン思考が重要と指摘しています。
デザイン思考とアート思考の違い
デザイン思考と似た言葉に「アート思考」があります。どちらもアイデアを出すための思考法ですが、デザイン思考とアート思考には明確な違いがあります。
デザイン思考はユーザーのニーズを起点としてアイデアを創出し、既存の製品やサービスを進化・発展させる場合に有効な手法です。一方、アート思考はユーザーニーズではなく作り手の独創的で自由な発想を起点として、今まで思いつかなかったようなアイデアを創出する手法です。
どちらの思考法もクリエイティブなどの分野から発生しているものですが、デザイン思考は「ユーザー」を中心とした思考法なのに対して、アート思考は「作り手」を中心とした思考法であり、ある意味で対極的なものであるといえます。
ただし、デザイン思考とアート思考に優劣があるわけではありません。目的や場面によって使い分けることが重要です。






