
そもそも、怒りという感情が何なのかを知らなければ、怒りのマネジメント(アンガーマネジメント)はできません。この章では、アンガーマネジメントの具体的なスキルやテクニックを紹介する前に、怒りという感情を、もう少し詳しく掘り下げて解説します。
怒りの正体を知る
アンガーマネジメントの第一歩は、「自分はなぜ怒るのか?」という感情の正体を知ることです。そして、「怒り」の感情の正体を知るとは、自分自身の価値観を知る作業でもあります。
たとえば、小さなことでもイライラしてメンバーを怒ってしまう上司Aがいたとします。上司Aは、もともと優秀なプレイヤーでした。そのため、上司Aには、怒りにつながる以下のような価値観があります。
- 1.K社へのヒアリングはもっと細かく丁寧にすべき
- 2.L作業は時間をかけず迅速に終わらせるべき
- 3.Mくんは報連相の頻度を上げるべき など
1~3に共通するのは「~すべき」という価値観です。
上司Aの怒りの感情は、メンバーが自分の「べき(価値観)」に反した行動をとったときに生じます。一方で、チームメンバーの能力や価値観は十人十色であり、優秀な人材であっても上司Aの「べき」に完全に合わせることはできません。
だからこそ、そこに上司Aが思う「あるべき姿」と「現実」にギャップが生じて、怒りを生み出すのです。
そのため、上司Aがチームメンバーを頻繁に怒ってしまう問題を防ぐには、「~すべき」と考えてしまう範囲を減らし、メンバーを受け入れられる器を大きくすることが大切です。理性で器を拡げるためには、まずは自分の「~すべき」という価値観を認識することが大切になります。
怒りの原因である一次感情を適切に処理する
「怒り」は自分の「~べき」という価値観に反する行為に対して生じるものであると解説しました。本章では、別の視点、怒りは「二次感情」であるという視点から怒りについて解説します。
怒りが二次感情であるとは、怒りの手前に、何らかの一次感情があるということです。一次感情とは、たとえば、以下のような感情を指します。
- 悲しみ
- 寂しさ
- 苦しみ
- 虚しさ
- 恐怖
- 不安
- 後悔
- 心配
- 疲れ など
心のなかに、ネガティブな気持ちが溜まるコップがあるとしましょう。たとえば、上司から何度も叱責されていた場合には“悲しみ”や“悔しさ”、プロジェクトから外されるかもしれないという状況があれば“不安”などの一次感情がコップのなかに溜まっていきます。
コップにたくさんの一次感情が溜まっているとは、つまり、感情的なストレスが溜まっている状態です。そして、一次感情がコップの容量を上回って溢れそうになったとき、二次感情の怒りが引き起こされます。
逆にいえば、コップに入った一次感情を適切に解消していくことができれば、コップはこぼれず、怒りの衝動が生じることは少なくなります。一次感情があふれる問題を解消していくためには、以下のようなやり方があります。
- 一次感情と原因を紙に書き出してみる
- 一次感情を生じさせる人や場面から距離をおく
- 「そういう言われ方をされると悲しい」「こういう不安があります」など、一次感情を適切に表現する