管理職研修の実施目的と内容、プログラム例とポイントを解説

管理職研修の実施目的と内容、プログラム例とポイントを解説

現場のプレイヤーをマネージャーや課長などに昇格させたとき、役職を付与しただけですぐ管理職らしい振る舞いをしたり成果を出せたりするわけではありません。

 

管理職としてパフォーマンスできるように支援するには、各々の課題やレベルに応じた管理職研修を実施することが大切です。

 

本記事では、管理職研修の重要性とプログラムに盛り込みたい内容を確認します。
また、多くの企業が抱える管理職教育の課題や外部の研修会社を選ぶポイント、管理職の能力開発に活用できる研修以外の施策も紹介しましょう。

<目次>

管理職研修の重要性とは?

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管理職研修のプログラム設計を考えるうえでは、そもそも、企業の成長や業績アップにおける管理職の重要性を認識しておくことが大切です。

 

管理職は、経営計画や事業方針を現場で形にして業績を生み出す“要”となるポジションです。
また、自チームをまとめることに加えて、組織内で管理職同士が連携することで、組織全体を達成へと導いていくことも可能です。

 

近年は、VUCAや“産業のサービス化”する時代とも言われ、過去のようにトップダウンですべてを意思決定、指示できる状態ではなくなっています。

 

こうした時代だからこそ、現場に近いところで意思決定する管理職の重要性が増していると考えてよいでしょう。

 

そして、管理職は、その前のポジションであるプレイヤーとは、求められる役割・スキルが大きく異なっています。

 

プレイヤー時代には、たとえば、自分の営業力などのテクニカルスキルを使って個人の成果を出すことが主となってきます。

 

一方で、管理職になると、ヒューマンスキルを使ってメンバーを動かし、組織としての成果を出すことが求められるようになります。

 

したがって、プレイヤーから管理職になった直後に行なう新任管理職研修は、管理職の役割と責任、必要なスキルを教えるうえで不可欠なものです。

 

また、管理職の重要性を鑑みると、管理職のマネジメントスキルやマインドを補うための研修も要所要所で必要となるでしょう。

管理職研修に盛り込みたい内容

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管理職研修を実施するうえでは、どのようなテーマを盛り込めば良いかわからないこともあるでしょう。

 

本章では、労働白書の「近年の管理職に不足している能力・資質」なども踏まえながら、管理職研修に盛り込みたい内容を紹介していきます。

 

出典:平成26年度 労働白書

 

プレイヤーと管理職の役割や責任の違い

先述のとおり、プレイヤーと管理職は役割と責任が異なりますので、プレイヤー時代と同じ感覚では、管理職としての役割は担えません。

 

したがって、特に新任管理職を対象とする研修では、プレイヤーと管理職の役割と責任の違いをしっかり教えるとともに、管理職としてのマインドセットをする必要があります。

 

目標設定、役割分担や進捗管理などのテクニカルスキル

管理職になると、組織の目標達成や課題解決に向けて、ヒト・モノ・カネの管理が求められるようになります。

 

したがって、管理職研修では、管理に必要な一通りの技術やフレームワークなども教える必要があるでしょう。

 

たとえば、時間管理やタスク管理、KPIマネジメント、優先順位の意思決定などは、プレイヤー時代よりも高レベルなものが求められるようになります。

 

リーダーシップの発揮方法

管理職研修では、セルフリーダーシップの再確認と組織のメンバーに対してリーダーシップを発揮する方法や理論などを学んでいきます。

 

座学を通じて基礎的な知識はインプットすることももちろん大切ではありますが、同時に、グループワークやワークショップなどの実践的なプログラムを通じて、リーダーシップを身に付けることが大切です。

 

メンバーへの指導力・育成力

管理職には、目標達成に向けてメンバーの潜在能力を最大限に発揮させる、また、人材育成していくことも求められます。

 

メンバーへの指導力や育成力を高めるには、管理職研修を通じて、適切なフィードバックの方法、コーチング、指導をする前提としての信頼構築の方法などを身に付けることが大切です。

 

メンバーのモチベーションを引き出す動機付け

前述のとおり、管理職には、メンバーを動かして組織の成果を出すことが求められます。一方でメンバーは、ITやロボットとは異なる感情を持った生きものです。

 

したがって、論理的に目標設定をして指示するだけでは、メンバーの心は動きません。
メンバーが本気で行動するためには、「動機付け」が大切です。

 

管理職研修では、モチベーションとはそもそも何か、外発的動機付けと内発的動機付けの違いと実践方法などを知ることが大切になるでしょう。

 

新規事業や新規プロジェクトなどの企画・立案力

管理職になると、新規事業や新規プロジェクトなどに関わることも出てきます。

 

こうしたシーンで管理職としての役割を発揮するには、まずは、前述した以下のようなマネジメントスキルの習得から始めることがおすすめです。

  • タスク管理
  • 優先順位の決定
  • KPIマネジメント など

また、特定の職種や上級管理職などであれば、上記に加えて、クリティカルパスのマネジメントやボトルネックの見極め、ビジネスモデルキャンパスやマーケティング、アカウンティングなどの知識が必要になってくる場合もあるでしょう。

中堅中小企業でよくある管理職教育の課題

中堅中小企業の場合、管理職教育におけるさまざまな課題によって、「管理職が思うように育たない」や「教育の効果が得られない」などの問題に直面しがちです。

 

本章では、中堅中小企業に生じがちな5つの代表的な課題を見ていきましょう。

 

体系だって教えられる人がいない

管理職に求められるスキルや資質は、各々が独立しているのではなく、体系的かつ連動して機能するものです。

 

しかし、中堅中小企業の場合、創業期や組織が小さかったころから自学自習して成長してきた幹部も多く、管理職に対して体系的な説明や言語化ができる上層部がそう多くない傾向にあります。

 

身につけるべき能力が多岐にわたる

ビジネスで成果をあげるために必要なスキルを3つに区分けして、階層ごとに必要とされる比率を表したものに「カッツ理論」という概念があります。

 

 
管理職は、カッツ理論のなかで真ん中の「管理者層」に該当します。上記の図を見てのとおり、管理職には、ヒューマンスキルを軸に、コンセプチュアルスキルとテクニカルスキルの一部も求められます。

 

幅広い能力や資質を習得させるには、それなりの時間とコストが必要になります。

 

なお、カッツ理論に興味があれば、以下の記事で詳細を確認ください。

 

対象者が少ない

中堅中小企業の場合、組織規模を踏まえて管理職の人数自体が少なくなります。

 

管理職の入れ替わりもそう多くないため、たとえば、管理職研修の必須対象となる新任管理職も一年に数人しかいないようなことがほとんどでしょう。

 

そうすると、社内での研修実施は難しく、また、社内における管理職教育のノウハウもたまりづらくなります。

 

人によって課題が異なる

管理職には、新任管理職から中堅管理職、そして、経営陣の一歩手前の上級管理職まで幅広いレベルがあります。

 

各々に求められるスキルは、管理する部門やプロジェクト、対象メンバーによっても変わってくるでしょう。

 

大手企業で、管理職が数百人以上いるような形になれば、テーマを細分化しても数十人の対象者が出てきます。

 

一方で、中堅中小企業の場合、各々の管理職のレベルや従事する仕事が異なると、一律のプログラムで対応することが難しくなります。

 

教育を受ける時間的余裕がない

管理職は、組織の成果に対して責任を担うからこそ、常にマネジメントで忙しい日々を過ごしています。また、最近では、プレイングマネージャーも増えています。

 

こうした背景から管理職が日々の業務に忙殺されてしまっていると、「管理職研修を受講する暇などがない」という意見が現場から上がりがちです。

管理職研修を選ぶポイントとお勧めの管理職研修

管理職研修をする際、外部の研修会社を利用するときには、単純な費用ではなく、効果が出るかどうか?を重視すべきです。

 

ポイントとしては、研修の理論が明確な企業を選ぶとよいでしょう。

 

また、講師が一方的に理論などを説明し続けるよりも、学習と実践を繰り返すようなタイムスペース・ラーニングの考え方を取り入れている研修のほうが、学習効果も高まりやすくなります。

 

リーダー・管理職を育てる「JAICリーダーカレッジ」

HRドクターの運営企業である研修会社ジェイックでは、「JAICリーダーカレッジ」という管理職向けの研修を実施しています。

 

「JAICリーダーカレッジ」とは、全世界4,000万部を誇るリーダーシップ書籍の金字塔『7つの習慣』や、日本の主要企業約500社で導入されている「原田メソッド」などのコンテンツを通じて、中堅・中小企業の管理職に“管理職としての責任感”を身に着けさせ、活躍できるリーダーへと成長を促す研修です。

 

「学び、職場で実践して、振り返る」を繰り返す継続学習によって、管理職の行動変容と成長が実現するプログラムになっています。

研修以外にも実施したい!管理職の能力開発・教育のための施策

管理職に求められるスキルや資質を向上させるには、研修以外に以下の工夫や施策を取り入れていくこともおすすめです。

 

360度評価による成長への刺激

管理職になるとプレイヤー時代と比べて、周囲からフィードバックをもらえる機会が格段に減ります。フィードバックは自分の現状を知り、健全な成長への刺激となるものです。

 

そこで、管理職に有効なのが360度評価によるフィードバックです。360度評価の結果を見ることで、自分の現状の問題や周囲に与えている印象などを客観視できるようになります。

 

360度評価を通じて、自分の成長課題や強みなどを認識すると、管理職研修の受講などに対する前向きな意識や危機感、成長意欲も生まれやすくなるでしょう。

 

スキルマップや人事制度による成長目標の設定

人が成長するには、明確なビジョンや目標が必要です。したがって、管理職の教育においても、上司とともに成長目標を設定し、目標達成に向けた実施計画を立てることが重要となります。

 

明確な目標や計画を立てて実施という流れを取り入れると、手当り次第に教育を受けるよりも、早く確実に理想とされる管理職のスキルや資質が身につきやすくなりますし、本人の自学自習も促進されるでしょう。

 

上司からのフィードバック

管理職になると、「メンバーをうまくコントロールできない」「チームとしての成果がなかなかでない」などのプレイヤー時代にはない悩みや焦りが出てくるものです。

 

一方で、管理職は日々フィードバックをする側に回ることが多くなり、上述の通り、プレイヤー時代よりも上司からフィードバックをもらう機会が減りがちになります。

 

したがって、管理職の上司は、1on1でのフィードバックなどを通して、管理職のモチベーションを維持・向上させる、また、成長促進につながる関わりを取ることが大切です。

 

リフレクション(経験学習)

管理職に求められる指導力やリーダーシップなどは、ある程度の理論を学んだあとは、現場でメンバーと関わるなかで身につけていくことが大切です。

 

ある研修会社の調査では、管理職としての成長体験の7割は現場で生み出されるといったデータもあります。

 

現場での体験が大切なことは言うまでもありませんが、体験や経験をきちんと学びに変えるプロセスがないと成長スピードは遅くなります。

 

そこで体験や経験を学びに変える「コルブの経験学習モデル」を取り入れるとよいでしょう。

<コルブの経験学習モデル>
  • 1.経験
  • 2.省察
  • 3.概念化
  • 4.試行

 

古典からの学び

マネジメント・リーダーシップとコミュニケーションは昔からあるテーマであり、王道と呼ばれる古典が何冊もあります。

 

たとえば、ピーター・ドラッカーの『経営者の条件』、スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』、デール・カーネギーの『人を動かす』などです。

 

管理職の成長を促すうえで、こうした古典からの自学自習や読書会も有効です。

まとめ

管理職は、経営戦略や事業方針を形にして業績を生み出す“要”のポジションです。

 

また、そこで求められる役割や責任は、自分が動いて成果をあげるプレイヤー時代とは異なるものになります。

 

だからこそ、新任管理職はもちろん、管理職それぞれが成長して次のステージに進めるように管理職研修を通じて支援することが大切です。

 

管理職研修のプログラム設計をする場合、以下のような内容を盛り込み、管理職本人に不足しているスキルや資質を補うことが必要です。

  • プレイヤーと管理職の役割や責任の違い
  • 目標設定、役割分担や進捗管理などのテクニカルスキル
  • リーダーシップの発揮方法
  • メンバーへの指導力・育成力
  • メンバーのモチベーションを引き出す動機付け

しかし、中堅中小企業における管理職向け教育は、体系だって教えられる人が社内にいない、そもそも対象となる新任管理職が少ないので社内では研修を実施できないといった問題が起こりがちです。

 

その場合は外部の研修会社の利用を考えるとよいでしょう。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでも、中堅中小の管理職を対象として「JAICリーダーカレッジ」などを提供していますので、ご興味あれば資料をダウンロードしてください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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