データから見るハラスメントの実態
まずはハラスメントに関するデータを見ながら傾向を考察していきます。
①ハラスメントを不安視して部下への発言に躊躇することがあるか?
1つ目は管理職向けに実施した「部下への指導の際にハラスメントになってしまわないか不安で発言を躊躇したことがあるか?」という調査データです。
管理職の8割が「躊躇したことがある」と答えています。
ハラスメントは、近年「◯◯ハラスメント」といった新たなハラスメント種類がメディアで話題になることも多くなりました。メディアで取り上げられているということは、それだけ世の中のハラスメントに対する意識が上がっているということです。
しかし、「何がハラスメントなのか?」を正しく理解できてない人も多いです。その結果、管理職の部下育成や能力開発、関係構築などを難しくなっている現状は明らかにあるでしょう。
②具体的にどんな場面で部下への発言についてハラスメントの不安を感じるのか?
2つ目も、管理職への「具体的にどんな場面で部下への発言についてハラスメントの不安を感じるのか」という調査データです。
1位は「部下の仕事の仕上がりに不満があるとき」です。
仕事の仕上がりに不満があったときは、指導をする必要があります。なぜなら、仕上がりのどこが良くないのか、何が原因かを伝えなければ、事象は再発しますし、部下は成長できません。
この調査データから伺えるのは「絶対に改善を促した方がいい」状況でも、ハラスメントになることを不安に思い、指導を躊躇してしまう管理職がかなりの割合でいるということです。
③ハラスメントが不安で発言を躊躇してしまうことで起こる業務上の影響
3つ目は、「業務遂行上どんな影響が出てくるか」をまとめたデータです。
1位は「部下の育成指導がしづらい」という回答です。
この回答からは、ハラスメントと指導の線引きに自信がないと感じている管理職が一定数いることが伺えます。
実際に、「ハラスメントに対して指摘をされるかも」、と思っている人は少なくありません。
④ハラスメントと指摘されるかもしれないと思ったことがあるか?
この調査結果を見ると、約半数の上司が「もしかしたら部下からハラスメントですと指摘されるかもしれない」と思ったことがあるということです。
次に、どんな時にハラスメントと指摘されるかもしれないと思ったのかを見ていきます。
⑤どんな場面でハラスメントと指摘されるかもしれないと思ったのか?
当然ですが、ほめる時、気づかう時、雑談する時などに、ハラスメントと指摘されるかもしれないと感じる方はあまりいません。叱ったり、注意したりする時、指摘、指示、依頼をする時に感じている方が多いようです。
では具体的にどんな発言をした時にハラスメントだったかも、と思ったのかを見ていきます。
⑥どんな発言をした時に指摘されるかもしれないと思ったのか?
実際に部下から「その発言はハラスメントです」と言われたことがあるかも聞いています。
⑦実際に部下から「ハラスメントです」と言われたことがあるか?
「はい」と回答した方は11.9%です。実際に面と向かって言われたことがある人は決して多くないということです。
では「ハラスメントです」と言われた人は、自身でどのように思うのでしょうか。
⑧「ハラスメントです」と言われた時に思うこと
一番多いのは「自分ではハラスメントだと思わない」という回答です。
このように、自分ではハラスメントだと思わない発言にも関わらず、部下から「ハラスメントです」と指摘され、部下と接するのが怖くなってしまう。その結果、「部下とはなるべく関わらないようにしよう」「必要最低限の業務指示のみにしよう」となってしまう管理職も増えています。
⑨ハラスメントの指摘を恐れて部下と距離を置こうと思うか?
ハラスメントと言われるかもしれないと思う気持ちから、「部下とはなるべく関わらないようにしよう」と考えたことがある管理職が40%もいるというデータです。この数字はどう感じられますか?
最近は、管理職でも「プレイングマネージャー」という方が多いと思います。マネジメントによるハラスメントを恐れて、プレイングの分量を増やしてしまう管理職の方も多いでしょう。
こういった状況では、組織の維持も危うくなっていきます。
マネージャーが部下の育成から逃げ出せば、部下であるプレイヤーが成長しなくなります。部下の生産性や成長スピードを落とすだけでなく、部下に「成長できない環境ならこの会社にいる必要はない」と感じさせてしまうこともあるでしょう。
このようにハラスメントが起きないようにした結果、他の要因とも重なって、いわゆる「ゆるブラック」で成長できない環境だと若手に思われ、優秀層の離職が増えるというケースも最近多くなってきました。
⑩ハラスメントトラブルを回避するために望まれるサポート
管理職に、どんなサポートが欲しいかを聞いてみたところ、「実際に何がハラスメントになって、どこまでがハラスメントにならないかを知っておきたい」というニーズが多くあります。また、研修や教育、相談窓口があるといいという声もありました。
もちろんハラスメントについて勉強することは大事ですが、常にハラスメントか否かを意識してマネジメントを行うことは困難です。たとえ、事例集を整備しても、見ながら相手と話す訳にはいきません。また、相談窓口は、「問題が起こった後に相談する」と考えると、必要なものですが、あまりいい対処法ではないかも知れません。
ハラスメント研修は、基礎として必要なものですが、受けている人たちにとって楽しいものではありません。もっと良い解決方法は何かをこの後で解説していきます。






