ここでは、企業で行われている人材育成の主な方法9つを紹介します。
職種や階層、内容に応じて、職種別や階層別、マンツーマンでの教育やメンター制度、ジョブローテーションなど適した育成方法は変わります。各手法のメリット・デメリットも紹介しますので、人材育成の内容に応じて適切な手法を選択する参考にしてください。
1.Off-JT:Off the Job Training(職場外研修)
Off-JTとは、日常の業務と切り離して複数の社員を集め、集中的に実施する教育研修方法(集合研修)のことを言います。
階層別、職能別、経営幹部候補など、特定の切り口で選抜した社員に実施することが一般的ですが、職種や階層に関わらず実施するビジネススキル研修、テーマ別研修、それぞれのキャリアプランに応じた「キャリア自律研修」などもあります。
Off-JTのメリットは、短期集中で体系的な知識を身に付けられることです。学ぶことに集中できる環境で、均質、体系的な知識を身につけられますので、新しい知識をインプットする手法としては最適です。また、組織の知識・能力レベルの統一や底上げ、共通言語の構築などにも向いています。
また、後述するリフレクションなどの深い振り返りや内観、キャリアプラン研修等も職場から離れて、深く集中するOff-JTの形式で実施することが有効です。
一方、デメリットとしてはインプットした知識が活かされない可能性があることです。また、ロールプレイングなどを取り入れたとしても、職場での実践とは少し距離が空きます。従って、Off-JTを実施する際には、「自分の業務でどう生かすか」「研修後に何を実践するか」等のブリッジングやフォロー設計が大変重要です。
2.OJT:On the Job Training(職場内研修)
OJTとは、実際に職場で業務を実施しながら、上司や先輩がマンツーマンで行う教育訓練のことです。
実際の業務を実践しながら学習・指導していきますので、実践的なスキルを身につけることができることがメリットです。また、基本的にはマンツーマン、多くても1対数人での実施になりますので、相手の理解度やコミュニケーションスタイルに応じて教え方や進捗を調整することも可能です。
一方で、デメリットとしては、育成側が多忙だと十分に教育できません。また、育成側の能力や意欲、育成方法によって教育の質にばらつきが出てしまったり、体系的な知識が習得されなかったりすることもあります。
3.eラーニング
eラーニングはオンラインで講義動画を視聴するなどして学習する手法で、Off-JTの一つですがコロナ禍により急激に普及しました。
メリットとしては、時間や場所を問わず学習できること、また短時間での学習を繰り返すマイクロラーニングが実践しやすいことがあげられます。また、企業で導入する際には受講者の学習の進捗状況を管理できることも特徴です。
一方で、デメリットとしては、モチベーション維持が難しく、受講も個人の意欲任せになってしまうので進捗や効果の個人差が大きくなってしまう事です。また、インプットに特化されており、双方向でのコミュニケーションで理解を深めたり、ロールプレイング等を通じて実践できる状態に近づけたりすることは困難です。
4.自己啓発(Self Development)
自己啓発とは、それぞれの仕事やキャリアに役立てるために個人が自発的に行う学習を指します。組織として取り組む場合には、何らかの自己啓発支援の制度を設けることが多いでしょう。
自己啓発のメリットは、個人の意思で実施するからこそ、スキルアップが早かったり、モチベーションアップにつながりやすかったりすることです。
一方で、意欲的な人が自発的に行う形になりますので組織全体の底上げには繋がりません。また、「組織として学んでほしいもの」と「個人が学びたいと思うもの」がずれることも起こりがちです。また、組織として全面的な費用負担等をしないと、時間的・金銭的な余裕がある人でないと取り組みづらいという事も起こりがちです。
5.メンター制度
メンター制度とは、新入社員や若年層の社員(メンティー)を、知識や経験が豊富な先輩社員(メンター)が支援する制度のことです。メンター制度は一般的にOJTと並行して実施され、他部署の先輩社員がメンターを務める形で精神面のフォローや組織に馴染むことを支援します。
メリットとしては、メンティが精神的に安定した状態で業務に取り組めたり、組織に馴染みやすくなったりすることです。また、メンターにとっても疑似的なマネジメント体験となり、メンターのスキル向上にも繋がります。
一方で、OJTと同様にメンターの意欲やスキルによってメンティの成長度が左右されてしまう点がデメリットやリスクと言えます。
6.ジョブローテーション
ジョブローテーションとは、部門や職種をまたぐ定期異動のことを指しますが、社員の能力開発を目的とした配置転換を行う場合、ジョブローテーションも人材育成の手法ということができるでしょう。
ジョブローテーションでは複数の業務を経験することで、物事を多面的に考える力がつくことです。とくに経営幹部候補等であれば、一部門だけでなく、複数の機能や事業を経験して異なる視点や多角的な視野を持つことは非常に重要です。
また、ジョブローテーションは同一業務を続けることによるマンネリや滞留の発生を防止することにも繋がります。
一方で、ジョブローテーションは一つの分野に特化したスペシャリストの育成には向いていません。社員の志向性等にも合わせて行わないと、モチベーション低下や離職につながるリスクがあります。
7.MBO(目標管理制度)
MBO(目標管理制度)は、経営学者のP.F.ドラッカー氏が提唱した目標管理手法です。
部門やチーム、社員それぞれが目標を設定して、設定目標に対してどれだけの成果をあげたかということが評価対象になります。しっかりとPDCAを回すことで、単なる評価制度等ではなく、人材育成の一環として社員を育てることができます。
MBOをしっかりと動かすことは、
・目標が明確になり、社員の主体性が発揮されやすくなる・自分で目標設定を行うことでモチベーションが向上する
・仕組みとして評価プロセスの透明性が高くなる
といったメリットがあります。
一方で、外的環境によって目標達成が難しくなることがありますし、部門や職種によっても目標の難易度も異なります。そのため、しっかりと運用しないと形だけのMBOとなり、人材育成どころか、平等な評価にも繋がりませんので注意が必要です。
8.リフレクション/振り返り
リフレクション(振り返り)は、仕事での経験や体験を成長へとつなげる手法です。体験を客観的・主観的に振り返って、学びとして概念化することがポイントです。リフレクションには、日報を使って日常内で行えるものから、職場から離れてOff-JTの一環として行われるものまであります。
リフレクションを組織に取り入れると、「体系的な学び⇒職場での実践⇒リフレクション/振り返り」というサイクルが回り、社員の成長が加速します。また、リフレクションはOff-JTやOJTの効果性UP、リーダーや幹部層の育成にも適しています。
デメリットとして、振り返りの視点や問いがずれると、単なる”業務の振り返り”や”自己効力感を落とす自責や反省”になってしまいます。特に、Off-JTで深いリフレクションを実施するためには、指導者の技量が必要となってきます。
9.コーチング
コーチングは、上司が部下の目標達成等を支援する育成手法の一つであり、OJTやマネジメント内で活用される人材育成の手法です。上司の質問や問いかけを通じて、部下自身が「向かうべき方向」「施策」を決めていきます。
コーチングは、自ら考えて答えを導いて決めることで主体性の向上につながる点が大きなメリットです。コーチングは育成される社員の可能性や引き出す効果があり、コーチングされることで実践へのモチベーションも上がります。
一方で、育成者がきちんとしたコーチングスキルを持っている必要がありますので、上司や管理職層に対するコーチングスキルのトレーニングが必要となります。