昨今、2人に1人は潜在的に転職を予定しているという時代です。私たちのもとにも、企業から新人の早期退職および意欲低下を防ぐための相談が非常に多く寄せられています。
本レポートではジェイック常務取締役の近藤より「新人の早期退職や意欲低下を防ぐためのOJT設計」というテーマで、様々なデータや事例をもとに具体的な研修施策などを紹介していきます。
*本レポートは2023年4月に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。
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昨今、2人に1人は潜在的に転職を予定しているという時代です。私たちのもとにも、企業から新人の早期退職および意欲低下を防ぐための相談が非常に多く寄せられています。 本レポートではジェイック常務取締役の近藤より<...
<目次>
OJTがうまくいかない原因とは?
OJTを有効に機能させるために、まずはうまくいかないケースは何が要因になっているのかの確認から入っていきたいと思います。OJTがうまくいかない主な要因を3つほど紹介します。
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①経営層&人事と現場のギャップ
1つ目は、経営層・人事と現場に認識のギャップがあるケースです。
よくある話でいくと、これから入社してくる人材が体験する環境や育成トレーニング、そういったものが「経営層や人事の方から入社前に伝えられてたこと」と「実際の現場」が違っている、「採用時に話していたような内容が現場にきちんと浸透していない」といったケースです。こういったギャップが原因でなかなかOJTがうまくいかないというケースはよく聞きます。
②現場任せで指導にばらつき
2つ目は現場任せの指導にしていたところ、ばらつきが出てしまうケースです。
経営層や人事からの管理やフォロー体制、あるいは現場から人事や経営層へのフィードバック体制が未整備で、新人が育成体制や企業に対して疑問を感じてしまう。
このようなことが起こっているとOJTはうまくいきません。
③OJT教育の形骸化
3つ目がOJT教育の形骸化です。OJT教育が名前ばかりになってしまっていて、上司の指示・命令をこなしていればいい。もしくは、入ってきた新人がお手伝いと化してしまって、本人が「都合いいいコマ扱いされている」と感じてしまう。
採用選考では「ウチに入社したらこんなふうなことができる、こんな成長が遂げられる、こういった顧客に対して貢献できる」といったことを聞いて入社したのに、入社してみると「自分自身がそもそも成長できているのかな」「このまま、この会社にいていいのか」と感じさせてしまう。
OJTで教えるのが、本当にただ指示命令をこなしてもらうだけに終始してしまい、上記のような状況になると、時間が経つにつれて上司あるいは組織に対するエンゲージメントが低下していきます。
新人を伸ばす上司と潰す上司の違い
OJT教育は、配属された先の上司やOJT担当がキーマンです。どんな指導者だとOJTがうまくいって、どんな指導者だとOJTはうまくいかないのかを確認していきましょう。
新人を「伸ばす上司」と「潰す上司」の違いです。
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「伸ばす上司」「潰す上司」と書かれてますが、今の自社の指導者やOJT担当者はどちらに近いでしょうか?
複数人いらっしゃる場合は、例えば若いOJT担当と年配のOJT担当で比較してみてもいいかもしれません。
あまりOJTがうまく進められない方は、以下のようなケースが多くみられます。
まず「指導」が自分がこれまでに教わったやり方を踏襲しているケースです。
また、「自分で考えさせて覚えていくような指導の仕方をされたから、同じように考えさせる教育方針にしている」と言いつつ、実態としては何もしないで結構放置気味になってしまうといったこともあります。
他にも「褒めているだけじゃなかなかうまくできるようにならないから、時には厳しいことも言いますよ」というような方もいらっしゃいます。
もちろんこれ自体は間違っていません。しかし、厳しいことを言うときのインパクトがものすごく強くて、褒めるときのインパクトが弱めだと、このギャップが新人にはすごくダメージになってきてしまいます。
指導者の方に悪気がない場合も多くあります。「自分が教わったやり方を踏襲してやっているし、何も教えていないわけではなく考えさせてるんだ」と認識していたり、ときには「厳しいことも言わなきゃいけないよね」と心を鬼にして言ってるケースは結構あります。
繰り返しますが、指導している方に悪気はないことは多いです。しかし、こういったことがずっと職場の中で続いてしまうと、やはりブラック企業として見られてしまいますし、新人は育たず退職してしまいます。
最近では、「ブラック企業」だけではなく、「ゆるブラック」という新しいレッテルも登場しています。
「ブラック企業」と「ゆるブラック企業」の違い
いまの時代、「圧が強い」指導は目立ちますので、そういう指導を続けていると新人から見ると「ブラック企業」だと思われてしまいます。
しかし、気をつけなければということで、ブラック企業認定を恐れて高いレベルの指導、あるいは高いレベルの要求をしないでいると、今度は新人たちから「うちの会社はゆるブラックだ」と言われる危険があります。
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「ゆるブラック」とは、「和気あいあいしてるし、離職率も低いけど、何かこのまま仕事してたらスキルアップできなさそう・・・」という印象を与えてしまう職場です。
同じ会社で一生過ごすことは端から考えていない今どきの新人からすると、「ゆるブラック」は非常に不安を与えます。とくに意識の高い優秀層ほど、ゆるブラックを嫌って、成長できそうな企業へと転職してしまう傾向があります。
OJT担当者からすると「もうどうしたらいいの・・・」という感じです。
高いレベルの要求をしようと張り切った時、「潰す上司」のやり方しか知らないと、ブラック企業化してしまいます。しかし、もう諦めて要求しないでおこうと思うと、ゆるブラック認定されてしまいます。
そういった意味ではこれから入社してくる若手の傾向も押さえておかないと、どのレベルで要求していいのかが分かりません。ここからは、これから入ってくる若手の傾向を見ていきたいと思います。
ゆとり~Z世代の特徴
①2人に1人は転職予定、無理ない成長と働き方の自由度を求める
今の時代、2人に1人は転職予定です。無理のない成長と働き方の自由度を求めてます。
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「自分の人生をこの会社に任せています。ちゃんと面倒見てくれなかったら辞めますね。ただ、そこまで無理はしたくないのでよろしくお願いします」という感じです。
なので、ゆるブラック企業のようにすると「任せても成長させてくれないじゃん」となってしまいますし、あまり強く要求してしまうと、精神的なストレスや苦しい思いをしてまでは成長したくないと思われてしまいます。
②他人からの評価が気になり、失敗したくない意識が強い
意識としては、他人からの評価が気になり、失敗したくないという傾向が強いです。
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一方で、現場でOJT担当してる方々は、「仕事は失敗から学んでいくものだから、とにかくやってみよう」という考え方を持っている方が多いです。これも決して間違っていません。
しかし、その実体験から指導をしてしまうと、新人側は「育成を放棄してる。教えてもらえずに失敗したらどうしてくれるんだ。」と感じるわけです。
また、ある意味で打たれ弱い。失敗したらもう周りに顔向けできない、もう辞めるしかないみたいな感じに繋がってしまうという傾向もあります。
③理想の育成方法は、納得感のある説明や褒めて指導されること
ではどのように彼らを指導育成していけばいいのかを解説していきます。彼らが求めている理想の育成方法は、「納得感のある説明をしてくれ、褒めて指導されること」です。
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叱られたとしても、理由を明確にしてきちんと叱られるのはOKです。ただ、理不尽だったり根性論だったりで叱られるのはちょっと困るという感じです。
④コミュニケーションに課題や不安を感じている人も多い
また、ゆとり~Z世代の特徴として、自分自身のコミュニケーションに課題や不安を感じている人も多い傾向があります。
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コミュニケーションに不安があるからこそ、その場で「こういうふうにされたら嫌です」ということは言えません。さらに、質問することも難しいのです。大人とのコミュニケーションにハードルを感じる人が多い傾向です。
これはもちろんコロナ禍の影響もありますし、生まれ育ってきた環境にも大きな原因があります。たとえば、コミュニケーションをチャットやSNSでとることが多いので、敬語にもあまり自信がありません。
そうすると「こんなこと言ったらできない奴だと思われるんじゃないか…」と思って、なかなか会話をするのが難しくなってしまったりします。
彼らには「目上とのコミュニケーションは怖くないよ」と教えて、また、こちら側からコミュニケーションをしっかり取りに行くというのが重要になってきます。
指導者側の心の声
ここまで新人の傾向を見てきましたが、逆にOJT担当者側は今どんなことを感じているのかを見ていきます。
- 言いたいことはあるけど、パワハラか?
- 自分の仕事だって忙しい、それで嫌われたらたまったもんじゃない。
- 一番良いのは、仕事ぶりを見て、感じ取ってもらえれば、問題にならない。
- 分からないことがあるんだったら、聞いて来ればよいのに。
- そもそも、自分は教わった覚えないし。
- やり方が、わからないんだよな。
仕事ぶりを見てもらって、感じ取ってもらえれば一番いいけれど、それではダメなわけです。多くのOJT指導者は新人とコミュニケーションとって育成していきたいけど、そのやり方がわからない。
その結果として、しばらくすると困ってしまい、「一旦は指示したことをこなしてくれればいいや・・・」となってしまいがちです。
そうすると新人側は指示されたことをこなしてるだけですので、成長実感が湧きません。結果的に意欲をなくし、離職などに向かってしまいます。
従って、今の時代、若手を迎える部署の指導者が新人とどうやって接していくかは非常に大事になってきます。現場はもちろん、人事や経営層の人たちと一緒に考えていくことが重要です。
そこで本記事、最大のテーマとなるOJT設計のコツを確認していきたいと思います。
OJT設計の3つのコツ
OJT設計のコツは、以下の3点です。
- ①OJT計画を経営層&人事&現場で共に立案する(継続的な教育を意識)
- ②OJTの目的を明確にする
- ③指導者側が場当たり的にならないよう育成する
①OJT計画を経営層&人事&現場で共に立案する
まずは、OJTの計画を経営層、人事現場でともに立案することです。
短期間での育成ではなく継続的な教育を意識して設計をしていくことを、両者でしっかりとコミットしておくのが大事です。
②OJTの目的を明確にする
また、OJTの目的を明確にすることも大事です。
意外と、OJTの目的が経営層人事と現場とでずれているケースがあります。経営層や人事は、「彼らが単独で、ある一定レベルの仕事をこなせるようになって欲しい」と思いがちです。現場も最初はそう思っているのですが、どこかでずれが出てきます。
そして、目的を明確にして計画が作られたら、次はPDCAサイクルを現場と経営層、人事で回していくことが大事です。
また、こちらが想定していた通りの吸収力や行動パターンの若手が入ってくるとは限りませんので、状況を見ながら、計画をチューニングしていくことも必要になってきます。
③OJT指導者側が場当たり的にならないように育成する
OJT指導者側が場当たり的にならないように育成していくということも大事です。
教えている側は場当たり的ではないと思っていますが、新人からすると「OJTで教わってない」「丁寧に説明してもらったことがない」と思われているケースも多くあります。
実際には一度説明していたとしても、人は一度では覚えきれないものです。また、教えてもらった記憶自体がどこかにいってしまうこともよくあります。従って、学習の定着状況を実ながら繰り返し育成するということを計画しておかないいけません。
また、OJT指導者側の育成はどんなことをすれば良いのかとなると、主体性とマインドを作っていくことが大事かなと思います。
主体性があるOJT指導者は、「うまく伝わっていないな・・・」「前に教えたのにな・・・」と感じた時、ぐっと止まって「自分の教え方に問題があったかな」と理性的に捉えられる、そういったマインド育成が大事です。
また、振り返りの能力、あるいは褒める、説明する、伝える力、ここを高めておかないとOJTはうまくいきません。
特徴のところで紹介した通り、新人の方々はコミュニケーションに不安を感じている人も多くいます。
上司が「遠慮なく聞いてね」「いつでも答えるよ」と伝えても、彼らは何も聞いてきません。だからこそ、褒める、伝えるという力を高めてあげる必要があります。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。







