内定者研修の内容は目的に応じて決める!対面&オンラインの設計ポイント

内定者研修の内容は目的に応じて決める!対面&オンラインの設計ポイント

新卒採用において、内定者研修を行なっている企業はかなりの割合となります。内定者研修はさまざまな目的で実施されており、研修効果を最大限に高めるためには、研修の目的とゴールを明確にすることが大切です。

 

新型コロナウイルスの影響を受けて内定者研修がオンライン化していることも踏まえつつ、記事では、内定者研修の目的、目的に応じた内容とプログラム設計の基本を解説します。内定者研修をどうしようか?と考えている方は、ぜひご覧ください。

<目次>

内定者研修の目的と設定のポイント

内定者研修を行なう目的は会社によって異なります。当然、内定者研修のプログラムも、実施目的に応じて変わります。従って、内定者研修の設計を考えるうえでは、目的の設定が一番重要です。目的とゴールが明確でないと、どうしても研修プログラムが中途半端なものになりがちです。

 

現実的には複数の目的がある場合もありますが、目的の優先順位は必ず決めましょう。そのうえで、どのプログラムは何の目的とゴールで実施するかを明確にすることが大切です。オンラインや教材提供等も含めて、目的に応じていくつかの研修を組み合わせることも良い方法です。

 

内定者研修を行なう目的は、大きくは「辞退防止」と「入社後の戦力化促進」という2つに大別されます。ここでは2つの目的を、さらに2つずつに分類して、合計4つの目的を紹介します。

 

 

辞退防止① 内定者フォロー(内定辞退防止)

内定者研修を実施する目的としてまず挙げられるのが、内定承諾後の辞退防止です。日本の新卒採用市場(大卒)は、じつは過去30年間で見ると、少子化の影響を受けずに来ました。

 

確かに少子化は進んでいますが、それ以上のペースで大学進学率が上昇してきたのです。その結果、大卒人数というのは過去30年間で見ると増加(直近10年はほぼ横ばい)しています。

 

しかし、このトレンドが22卒採用から変わります。大学進学率の上昇が頭打ちになる結果、少子化の影響が一気に出始めます。つまり、中長期的には景気の動向に関わらず、新卒採用は売り手市場へと向かっていきます。

 

売り手市場ということは、学生にとって内定獲得のハードルが下がり、複数内定がより増えるということです。この数年、内定承諾後の辞退も増えており、今後より加速することが予想されます。従って、内定承諾者のエンゲージメントを高め、内定辞退を防ぐことは、内定者研修における重要な目的です。

 

この数年間で、“承諾後の辞退”が発生しているようであれば、承諾後のコミュニケーション頻度や発信内容と併せて内定者研修の内容等を見直すことも有効でしょう。

 

 

辞退防止② 同期との交流による安心感

多くの内定者は、入社を控えて「どのような仲間と一緒に働くのだろう?」「これから企業に馴染んでいけるのだろうか?」といった不安を感じています。内定者研修を通じて、入社前に同期と交流する機会が設けることで、上記のような不安を軽減することも内定者研修の目的です。

 

入社前の不安を取り除くことで、入社後、よりスムーズに組織へと馴染みやすくなりますし、同期はもちろん、先輩や上司と交流する機会もあれば、不安軽減にさらに効果的です。

 

ただし、同期との交流は、「社風との不一致を感じた」「周りのレベルが低い」等、内定辞退に繋がる場合もあります。必ずしも“交流=辞退防止”にはなりません。内定者の構成やタイプに応じて、判断が必要です。

 

 

戦力化促進① 社会人としての基礎スキル習得

入社後の戦力化促進に向けて行なわれる内定者研修の一つが「スキル習得」を目的とするものです。このタイプの研修は、教材提供や資格勉強等を通じて、オンライン・遠隔で行なわれることが多くなります。ITエンジニアやMR等、入社後に知識習得が必要な業界や職種で行なわれている割合が高いです。

 

基礎スキルの習得を課題とすることは、

  • 入社後の戦力化に役立つ
  • 課題の進捗や提出状況を通じて、入社意欲や辞退リスクを測れる
  • 課題進捗に関するやり取りがコミュニケーションの機会となる
  • 採用選考だけでは分からない内定者の能力レベルが見える
  • “この会社でやっていけるか”という内定者の不安軽減に繋がる
  • 成長実感を与えることで、辞退防止に繋がる
  • 承諾時の「熱が高い状態」から入社までの流れを作ることで、辞退防止に繋がる

といった効果があります。

 

“内定者に負荷をかけると嫌われるのではないか”といった感覚から実施されていないことも多いですが、志望度の高い内定者を集められているようであれば、非常に有効です。

 

 

戦力化促進② 学生から社会人への意識切り替え

これから入社する学生にとって、社会人としての基礎スキルを習得するのと同じくらい、意識の変革も重要です。「学生気分」を脱却し、社会人としての意識を持ってもらうことによって、入社後の教育担当の負担も軽減されます。

 

「自分はなぜこの企業に採用されたのか?」「何を期待されているのか?」「企業にとって必要な人材とはどのような人材か?」といったことを考えてもらい、社会人としてのマインドセットを持ってもらうのも、内定者研修の目的の一つです。このタイプの内定者研修は、入社が近づく2~3月ごろに行なわれることが多くなります。

内定者研修の実施方法

ノートパソコンを片手にこちらを見つめている女性

内定者研修の実施方法は、対面研修、オンライン研修、教材の3つに大きく分類できます。それぞれの方法に関して、メリットとデメリット、成功のポイント等を解説します。

 

 

対面研修

対面型の内定者研修は、企業のオフィスで、あるいは外部会場を借りて実施する最も一般的な研修スタイルです。

 

対面研修のメリットは、

  • 相手の表情や目線等を、よりしっかりと確認することができる
  • 人間関係を作りやすい
  • 体感型のコンテンツを実施しやすい

ことです。

 

 

一方で、コロナ禍以降、対面型研修の実施が難しくなっている現状もあります。これからは、対面研修でしかできないコンテンツは対面で行ない、オンライン研修を通じて接触頻度を維持するようなハイブリッド型の研修設計が主流となるでしょう。

 

 

オンライン研修

ZOOMやWebEx等のツールを活用して、双方向型で研修を実施するのがオンラインでの内定者研修です。オンライン研修には、移動時間が発生しませんので、内定者、とくに遠方に住む内定者も参加しやすいというメリットがあります。オンライン研修は、双方向の対話型で行ない、対面研修と同じようにグループワークも可能ですし、同期との交流の可能です。

 

また、対面では手を挙げて質問するのをためらってしまう人も多いですが、オンラインならチャットで気軽に質問でき、疑問解消しやすい、双方向型になりやすいといった特徴もあります。

 

一方で、どうしても“情報のやり取り”になりがちで、人間的な繋がりを作ることは難しい、同じように体感型や感情を動かすようなワークは実施しにくいといったデメリットもあります。

 

また、参加者がパソコンなのかスマートフォンなのかによって、実施できるワークや参加のスピード感(チャットやQ&A等の利用しやすさ)が変わってきます。研修の設計と実施には慣れやコツも必要です。

 

入社後の新人研修での事例になりますが、下記の記事でオンライン研修の設計ポイントを解説していますので、ご興味あればご覧ください。

 

 

教材

内定者研修の実施方法として、ウェビナーやLIVE配信、eラーニングや教材を活用するやり方もあります。ウェビナーやLIVE配信、動画を使えば、内定者にメッセージを届けることは容易です。

 

長いものを作る必要はなく、例えば、週1回3~5分程度の動画を、人事や面接官だった人、経営者から配信したら、接触頻度の向上に効果的です。

 

また、基礎的なスキル習得や資格取得に関しては、自社で作成しなくも、品質の高いコンテンツがいくらでもあります。eラーニングサービスと契約したり、教材を送付したりする等の手段で実施できるでしょう。

 

教材型の内定者研修は、一方的なコミュニケーションになってしまいがちという欠点がありますが、内定者側が自分の都合がいいタイミングで閲覧・進捗できますので、スキル習得やメッセージを届けるうえでは効果的です。目的に応じて、対面・オンラインと組み合わせて使うことがポイントです。

内定者研修を設計する3ステップ

内定者研修のプログラムは、以下の3ステップで設計します。

 

 

1. 目的とゴールを決める

まずは、研修実施の目的と、「受講者が最終的にどうなってほしいか」というゴールを設定します。前述した「内定者研修の目的と設定のポイント」の章も参考にしてください。

 

一つのプログラムで複数の目的、ゴールを達成しようとすると、中途半端になりがちです。自社の内定者の志望度、状況を想定しながら、目的ごとにプログラムを設計していくと良いでしょう。

 

 

2. 研修テーマと実施方法を決める

目的とゴールが設定できたら、達成するためにはどのような研修内容が最適かを考えて、大枠で研修プログラムと実施方法を決めていきます。

 

前述の通り、オンライン、対面、教材はそれぞれメリット・デメリットがあります。辞退防止や戦力化促進といった大枠の目的、そこから決まったゴールに応じて、効果的な方法を選びましょう。

 

今後は、コロナ禍を経て、「対面だけ」「オンラインだけ」といった方法ではなく、複数の方法を組み合わせたハイブリッド型の研修がニューノーマルとなっていくでしょう。これまでの慣習にとらわれず、柔軟な考え方で実施方法を検討してください。

 

 

3. 研修の詳細を決める

研修の大枠と実施方法が決まったら、研修プログラムの詳細を設計していきます。研修プログラムの大枠と詳細を決めていくうえでは、次章「目的に応じた内定者研修の実施内容」も参考にしてください。

目的に応じた内定者研修の実施内容

机を囲んで資料を見ながら打合せしている様子

最後に内定者研修の具体的な実施内容を、目的に応じていくつかご紹介します。

 

 

辞退防止
  • 翌年度の採用プロジェクトへの関与
  • 自社のミッションやビジョン、魅力の理解
  • 先輩社員との座談会や質問会
  • 経営層からのメッセージ
  • 同期とのグループワーク、交流

 

辞退防止は、「魅力の再認識(内定承諾した理由)」と「接触頻度」を増やすことがポイントです。また、最終的には個別対応が基本となりますので、内定者の辞退リスクを把握できるような仕掛けを埋め込んでおくことも有効です。

 

 

戦力化促進
  • パソコン操作
  • 敬語や文書作成スキル
  • 報連相等の対人スキル
  • プレゼン力等の伝えるスキル
  • 各業界で必要な知識
  • 資格取得(秘書検定、MOS、業務に必要な資格)
  • 社会人としてのマインドセット
  • 「企業に必要とされる人材とは?」を考える
  • 「なぜ働くのか?」を考える
  • 新入社員に求められることを知る

まとめ

内定者研修は、大別すると「内定承諾後の辞退防止」と「入社後の戦力化促進」という2つの目的で実施されます。

 

研修プログラムを設計する際には、どういった目的で内定者研修を行なうのか、最終的には受講者にどうなってほしいのかを明確にして、目的・ゴールに応じた内容や実施方法を決めていきましょう。

 

コロナ禍の影響もあり、ビジネスのあらゆる場面でオンライン化が加速しています。オンライン研修は、移動時間や会場コストが発生しないメリットがあります。

 

対面研修、オンライン研修、教材という実施方法には、それぞれメリット、デメリットがあります。目的とゴールに応じて、実施方法を組み合わせていくことがおすすめです。

著者情報

稲本 太郎

株式会社ジェイック|シニアマネージャー

稲本 太郎

新卒で入社してから一貫して、新卒・中途の採用コンサルティング、キャリアカウンセリング、マネジメントを経験。計15年以上に渡って、採用支援の第一線で活躍している、社内でも有数の経験豊富な現役採用コンサルタントでありながら、自社採用の面接官も兼任。新人賞、トップセールス賞、MVT、社長賞、特別賞、ベストプラクティス最多ノミネートなど数々の受賞実績有り。

著書、登壇セミナー

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