管理者研修で管理職に求められる能力を徹底的に伸ばす!

管理者研修で管理職に求められる能力を徹底的に伸ばす!

これから管理者・管理職として昇進する人や、すでに管理者として働いている人を対象として社員研修を実施する場合、どのような内容を盛り込むべきなのでしょうか。

 

管理者・管理職の働き方は、プレイヤーとしての働き方とは異なる点が多く、求められるマインドやスキルが変わります。プレイヤーから管理職への変化を生み出すための新任管理者研修、また、管理者としての現状を自覚させて1つ上のステージへ脱皮させていくための中堅管理者向けの研修、幹部候補に求められるスキルを身に付けていくための準備となる上級管理者研修、それぞれで重きを置くポイントも変わってきます。

 

本記事では、管理者・管理職の仕事に求められるスキルと、管理者研修に盛り込むべき内容を解説していきます。なお、企業によって、管理者や管理職、チームリーダー、マネージャー、部課長などさまざまな表現がありますが、本記事では「管理者・管理職」として表現していきます。

 

<目次>

管理者・管理職研修を行う目的と必要性

管理者・管理職は組織を動かしていく要となる存在です。経営上の意思決定、戦略や方針の決定を行うのが経営陣だとすれば、日々の仕事や業績をマネジメントしながら、戦略や方針を実行していくのが管理者・管理職です。

 

また、組織という側面でみても、現場メンバーのモチベーションを左右し、人を通じた生産性や離職率を左右するのは“1つ1つの職場(チームや拠点などの仕事する単位)の長”である管理者・管理職だ、というギャラップ社のデータもあります。従って、強い管理者・管理職の存在こそ、企業の意思決定を実行して業績に繋げていく、また社員の力を引き出して生産性を高めるポイントとなります。

 

管理者・管理職の仕事では、経営上の課題や目的を自分事として捉える姿勢が求められますし、また、チームメンバーをマネジメントして成果を上げていく必要が出てきます。

 

とくに、プレイヤーとしての「自分の力で成果を出す」スキルと、管理者・管理職としての「他人の力を使って組織で成果を出す」スキルは、求められるものがまったく異なります。この力は、プレイヤーとして働く経験だけではなかなか身につきません。

 

どれだけ優秀なプレイヤーであったとしても、優秀な管理者・管理職になれるとは限らない所以です。従って、新たに管理者・管理職となる場合には、プレイヤーとしての意識を切り替えて、管理者・管理職特有の意識やスキルを身につける必要が出てきます。

 

新たな意識やスキルを身につけることができず、もしくは不十分なまま管理者・管理職になってしまうと、プレイヤー時代の意識や感覚で仕事してしまうことになります。そうすると、1人で仕事を抱え込んだり、自分の成功体験をメンバーに押し付けたりして、メンバーをまとめあげることができません。結果的に組織全体のパフォーマンスを低下させてしまいます。

 

管理者・管理職は、組織の中では年次と実績がありますし、職位として一定ランク以上の存在です。従って、プレイヤー時代と比べるとフィードバックを得られる機会が圧倒的に減ってしまい、成長が滞留するリスクも付きまといます。従って、管理者としての現状をフィードバックして、1つ上のステージへ脱皮させるための仕掛けも必要です。

 

更には、管理者・管理職は「幹部候補」であり、職位をあげていく中で「決められた戦略や方針の実行」するスキルだけでなく「商品やマーケティング、営業戦略を考える」スキルも求められます。従って上級管理職、幹部候補に向けては新たなスキルやフレームワークを学ぶ機会も必要となってきます。

 

こうした点を踏まえて、管理者としての適性を高めていくための管理者・管理職研修が行われます。なお、本記事では新任管理者に向けた研修を中心に紹介していきますので、ご了承ください。

 

管理者・管理職研修で盛り込むべき内容

管理者・管理職研修の実施

 

管理者・管理職研修に盛り込むべき内容は、具体的には何があるのでしょうか。以下で詳しい研修内容を確認してみましょう。

 

 

プレイヤーと管理者・管理職の違い

新任の管理者・管理職にまず理解してもらう必要があることは、プレイヤーと管理職では役割が違い、必要となるスキルも違うという点です。違いを理解することで、プレイヤー時代の成功体験だけに囚われることなく、管理職としての意識やスキルを円滑に身につけていくことが可能となります。

 

プレイヤーの役割は、「自分の力で成果にあげること」です。もちろん周囲や上流工程、下流工程を担ってくれる製造や企画部門、事務部門とのコミュニケーションは必要となりますが、基本的には自分の実務能力で成果をあげることが可能です。

 

しかし、管理者・管理職の役割は「人を動かして組織の成果をあげること」です。例えば、3~4人ぐらいの営業チームであれば、営業のチームリーダーがずば抜けた成果をあげることで、チームの目標を達成することができるでしょう。プレイヤーとしての能力は管理者・管理職の役割を果たすうえで、基盤や自信になってくれることは言うまでもありません。

 

しかし、チームが5人~10人と大きくなってくれば、リーダー1人の実績で目標を達成することはできません。また、拠点型の事業であれば、拠点長の下に営業、営業事務、配送…など複数の職種が配置されることもあります。こうなってくると、リーダーは自分が分からない仕事、したことがない仕事をマネジメントすることになります。

 

「営業職」と「営業マネージャー」を例にあげて、プレイヤーと管理者・管理職に求められるスキルの違いを解説します。

 

プレイヤーである「営業職」に必要な主要スキル
  • 「商談を成功させる」スキル
  • 「顧客と信頼関係を作る」スキル
  • 「売上目標から逆算して行動計画を組む」スキル

 

管理者・管理職である「営業マネージャー」に必要な主要スキル
  • 「部下と信頼関係を作り、意欲高く動いてもらう」スキル
  • 「チーム方針を決めて部下を巻き込む」スキル
  • 「チームの営業計画やメンバーの教育計画を作って進捗させる」スキル

 

若干強引な部分もありますが、プレイヤーである「営業職」の場合、商談スキルや顧客との関係構築など自分の仕事を進めるための実務能力に重きを置かれますが、管理者・管理職の場合、人を動かすための能力が必要となってくることが分かると思います。

 

職位が上がっていくに従って果たすべき役割が変わり、求められるスキルが変わっていくことの解説は「カッツ理論」が有名です。もともとは同じ管理職の中でも、「新任」⇒「中堅」⇒「上級」と役割が変わる中で求められるスキルが変わることを表したものですが、プレイヤーから管理者・管理職への変化についても分かりやすく説明できます。

 

カッツ理論では、仕事で求められる能力を「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」という3つに分けて、新任管理職ではテクニカルスキルの必要性が高く、中堅・上級と移っていくに従って、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの必要性が増していくとしています。

 

スキルの名前内容
テクニカルスキル「特定の業務をこなすためのスキル」

 

A>営業の場合:成果をあげていくためのアポイント力、アイスブレイク、ヒアリング、企業やサービス案内、見積書の作成、売上目標からの逆算した計画作成など…

 

B>営業マネージャーの場合:営業計画の作成、タスクブレイク、進捗管理やPDCA、営業施策の立案、教育計画の作成など…

ヒューマンスキル「他者との関係性を作るためのスキル」

 

A>営業の場合:顧客との信頼関係を作る、他部門や上流下流工程との調整など…

 

B>営業マネージャーの場合:メンバーとの信頼関係を作り維持し続ける、チームビルディング、レビュー、コーチングやファシリテーション

コンセプチュアルスキル「抽象的な概念やビジョンを扱うスキル」

 

A>営業の場合:一般的にはあまり必要とされない

 

B>営業マネージャーの場合:ビジョンでメンバーを鼓舞する、企業のミッションやビジョン・バリューを浸透させる、ビジネスの全体像を掴み営業計画に反映する、クリティカルシンキング

 

 

階層ごとで必要スキルは変わる!それによって研修内容も変わる

カッツ理論は、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3区分でビジネスに求められる能力を整理したものであり、また、職位・職階に応じて求められる能力の比重が変化することを説明したものです。

 

紹介したように、プレイヤーから管理者・管理職となるタイミングで必要とされるスキルが大きく変わってきます。

 

また、同じ管理者・管理職の中でも上級管理者になるほどコンセプチュアルスキルの必要性が増していきます。ただし、昇進したらテクニカルスキルが不要になるわけではありません。管理者・管理職には管理者・管理職のテクニカルスキル、経営陣には経営陣のテクニカルスキルが必要だからです。

 

管理者・管理職の研修を考えるうえでは、このカッツ理論を1つの土台として研修内容を考えてみると分かりやすいでしょう。各社ごとに管理職の内容も変わってきますが、例えば以下が1つの基本形です。

 

職位研修テーマ
新任管理者研修【プレイヤーから管理者・管理職への役割転換(トランスフォーメーション)】

 

大前提として、プレイヤーと管理者・管理職で異なる役割を理解する。企業にもよるが、プレイヤー時代にある程度管理職としてのテクニカルスキルが培われているようであれば、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに重きを置いて研修を設計する

ミドル管理者研修【現状へのフィードバック】

 

現状の課題に応じて「不足するスキルを学ぶ研修」と「現状の自覚、マンネリ感の打破を行う研修」に大別できる。前者はテクニカルスキル面ではロジカルシンキング、ヒューマンスキル面ではコミュニケーション研修やコーチングなどが多い。後者は、360度評価を用いた振り返りなどが有効

上級管理者研修【次ステージで必要なテクニカルスキルのインプット】

 

大別すると、「幹部候補として、次ステージで必要になるマーケティング、事業戦略、アカウンティングなど、経営陣として必要なテクニカルスキルを学ぶ」「ドラッカーや他社事例などを学びつつ、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルをもう一段磨く」ものが多い

 

上記のように、管理者としての経験・キャリアが異なれば必要スキルが変化し、研修に盛り込む内容も変わります。

 

管理者・管理職研修は社内で実施するか?研修会社を選ぶか?

管理者・管理職研修を行う場合、社内で実施するやり方、研修会社を使うやり方の2つのやり方があります。

 

中堅中小企業は、そもそも管理者・管理職の人数が少ないため、研修会社を使う企業の比率が多くなります。対象人数が少ないと社内での研修が難しいことに加えて、必要なスキルから逆算して管理者・管理職の研修を設計するノウハウがないことも多いでしょう。管理者・管理職研修の対象となるメンバーは、プレイヤーとして実績を上げてきた層であり、社内で人事等が講師を務めることが難しくなるという背景もあります。

 

企業規模が大きくなってくると、“社内大学”といった形で自社流の管理者・管理職育成のプログラムを持つことが増えてきます。この場合には、基本的に社内で管理者・管理職研修を行いながら、中堅や上級管理者に関しては、「刺激」や「他流試合」を生み出すために外部の公開研修を利用するといった企業も見受けられます。

 

「管理者・管理職研修」で研修会社を選ぶポイント

管理者・管理職研修を研修会社に外部委託する

 

管理者・管理職研修を研修会社に外部委託する場合には、以下の点をチェックすると良いでしょう。

 

 

「管理者・管理職研修」における実績、研修ポイントを理解しているか?

管理職研修は、プレイヤー層のスキル研修とはまったく違い、トランスフォーメーションを実現するための研修です。管理職として必要な知識を座学で教えるようなプログラムではあまり効果は上がりません。

 

また、社内でプレイヤーとして実績を残している層が参加するからこそ、プレイヤーとしての実績を尊重しつつも、しっかりと「刺激」を与えられる研修プログラムや講師が必要です。

 

 

「職場での実践」が組み込まれているか?

管理職の成長には「現場での経験」が重要です。管理職の責任は「組織で成果をあげる」ことであり、責任をまっとうするため、現場で成功・失敗を繰り返しながら成長します。従って、「研修で学んだことをどう職場で実践し、実践からどう学ぶか?」がしっかり組み込まれた研修であることが望ましいでしょう。

 

 

「4:2:4の法則」に則った研修プログラム

研修の効果を高めるためには「研修プログラムの質が高い」ことだけでは不十分です。研修プログラムの質以上に「研修前:前向きに参加する姿勢づくり」と「研修後:学んだことの実践」が重要です。

 

「4:2:4の法則」では、「研修の効果には研修前の意識付けが4割、研修プログラムが2割、研修後のフォローが4割の影響を与える」と言っています。実践から学ぶことが多い管理者・管理職研修は、とくに前後が重要です。

 

「研修前」に参加者の参加意欲を高めるような仕掛けがあるか、また「研修後」に研修内容を共有してくれたり、現場へのブリッジングを行ったり、職場での実践を促したりする仕組みがあるかが、研修会社を選ぶチェックポイントになります。

 

研修前や研修後は、自社での実施も必要なります。面倒に思うかもしれませんが、『派遣していただければ大丈夫です!』という会社よりも、『お手間ですが御社でこれとこれをお願いします』という研修会社のほうが信頼をおけますし、研修効果も期待できるでしょう。

 

まとめ

管理者・管理職研修を行う目的は、

 

・管理職特有の意識を身につける

・仕事で求められるスキルの向上を目指す

 

ことにあります。研修で扱うテーマは、

 

・新任管理者なら「プレイヤーからのトランスフォーメーション(意識変革、必要なスキル習得)」・中堅管理者なら「不足するスキルの補填」or「現状へのフィードバック」

・上級管理者なら「次ステージで必要となるテクニカルスキルの習得」or「ヒューマンスキル等の底上げ」

 

といったものが代表的です。

 

自社での実施が難しい場合は、管理者・管理職の研修は外部に委託することも有効です。外部に委託する際には、管理者・管理職研修のポイントを理解しているか、職場で実践する仕組みがあるか、「4:2:4の法則」に則ったプログラムかなどを確認しましょう。

 

また、以下の記事で解説しているマネジメントスキルの解説と向上手法も管理職育成に役立ちますので、ぜひご確認ください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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