新卒採用市場では、インターンシップと採用活動を直結させた早期採用がもはや当たり前になっています。
こうしたなかで、インターンシップを自社の母集団形成や魅力付けにつなげていくには、競合と差別化されたプログラムを取り入れることが必要です。
記事では、まず、インターンシップを実施する目的と代表的なプログラム例を紹介します。やってはいけないインターンシップの注意点も解説しますので参考にしてください。
<目次>
そもそもインターンシップ実施の目的とは?
インターンシップはもともと、社会的には「学生の就業体験」を意味するものでした。
ただし現実的には、企業が採用媒体経由で実施するインターンシップの目的は、学生との早期接触による母集団形成と自社への志望度向上(魅力付け)です。
そのため、インターンシップを実施する場合、母集団形成や魅了付けの目的を達成するためにも、学生の興味関心、ニーズを満たすプログラムをつくることが重要です。
5項目を軸にプログラムを決める
インターンシップのプログラム内容を決めるときには、以下の5軸をもとに考えていきます。
- 開催時期
- 期間
- 形式
- 対象
- 具体的な内容
なお、プログラムを決めるときには、ターゲットの明確化と、自社の魅力とターゲットの接点を考えることがまず大切です。
インターンシップの代表的なプログラム例7選
インターンシップの内容は、一般的に、いくつかのプログラムを組み合わせて設計することが多いです。この章では、代表的なプログラムの例とポイントを紹介します。
講義・レクチャー
以下のような内容を、人事担当者や経営陣、現場のリーダー、既存社員が、講義・レクチャーしていきます。
- 自社の事業紹介
- 仕事内容を理解したりワークをしたりするための前提知識
- マーケティングの基礎知識
- 自社のビジネスモデル
- 接客業における基本的なマナー
- 事業を考える視点
- システム設計の基本
仕事内容を伝えるときには、講義と併せて、実店舗や工場内などを見学するストアツアーや動画などを見せたりすることも効果的です。
また、人事だけでなく、現場社員等が登壇することもおススメです。
仕事体験
仕事体験の目的は、実際に簡単な仕事をやってもらうことで、自社で働くイメージを具体化させることです。仕事体験には、以下のようにさまざまな種類があります。
- 仕事観察型:営業社員などに密着同行し、仕事内容の観察をする
- 業務補助型:通常の“アルバイト”では体験できない業務に携わる
- 事業参加型:進行中のプロジェクトに参加し、メンバーの一員として企画・運営に携わる など
業務補助型や事業参加型の場合、学生が補助・参加した仕事にどういう意味があり、その仕事をすることで得られるゴールや成果まで伝えると、入社後のイメージの具体化ややり甲斐も感じやすくなります。
- 人気ゲーム〇〇のUIデザインを体験
- 金属部品の加工作業を体験(大きなイベントで使われる音響機器の部品)
なお、仕事体験をプログラムに取り入れる場合は、インターンシップ後のトラブルを防ぐために、以下の点に留意する必要があります。
- 学生が労働者にあたるかどうかの判断
- 不慮の事故やケガに備えたインターンシップ保険の加入
- 機密情報の取り扱い
- 問題発生時の対応手順 など
参考:インターンシップ・職場体験ハンドブック(東京商工会議所)
ロールプレイング
前述した仕事体験はとても有意義なものですが、受け入れ人数に限界があります。
また、労務やリスク管理的な視点からも手間がかかる、現場で何が起こるかわからないなどの懸念点もあるでしょう。
業務によっては、安全上の観点や、個人情報や機密情報の漏えいを防ぐために、実際のプロジェクトや作業現場には学生を入れられないこともあるはずです。
そのため、実際のインターンシップでは、既存社員と学生もしくは、学生同士のチームで以下のようなロールプレイング(疑似体験)を行ない、自社の仕事のイメージをつかんでもらう取り組みが多く行なわれています。
- ゲームのUIデザインを設計してもらう
- 既存社員を顧客に見立てて、営業や接客のロールプレイングを行なう
- 顧客の課題をヒアリングしてシステムの要件設計につなげる
ロールプレイングを自社の魅了付けにつなげるには、疑似体験した内容が自社の仕事にどう役立つかの説明、成長を感じさせるポジティブなフィードバックなどのフォローが重要です。
グループワーク
ロールプレイではなく、以下のようなグループワークを通して、自社の仕事内容や業界に関する理解を深めてもらうのも、よくあるパターンです。
- 新しい商業施設に、どのようなお店があると地域活性化につながるかを考える
- SNSでシェアされるクリスマス限定商品を考える
- 新商品やサービスのターゲットユーザーや宣伝方法を考える など
ロールプレイングやグループワークは、仕事の面白さを体験してもらうと同時に、業界研究や企業の理解につながるメリットがあります。
また、企業側としても、学生の主体性や発想力、リーダーシップ力などを見極める機会となるでしょう。
ビジネスゲーム
グループワークなどを、ビジネスゲームという形で、よりツール等も使って、仕事のイメージをつかんでもらうやり方もあります。
たとえば、家電量販チェーンの株式会社コジマでは、インターンシップで「店舗経営シミュレーションゲーム」を実施しています。
ゲームは、それぞれの学生が店舗のオーナーになり、「経営する店舗を地域No.1にする」というミッションを追いかけるというものです。
具体的には、経営者の視点で、以下のような思考や判断を繰り返していきます。
- 市場調査で地域のニーズを把握する
- 商品を仕入れる
- 社員教育を通じてサービスレベルを上げる など
参考:<業界研究にピッタリ!>店舗経営シミュレーションゲーム!(コジマ)
なお、ビジネスゲームは学生の緊張を解くことができますし、少し小さめなスケールであれば職場体験の合間に行なうアイスブレイクとしても活用できます。
既存社員との交流会
既存社員との交流会も、インターンシップの定番施策です。学生からすると、既存社員の顔が見えて質疑応答もできることで、企業のイメージが湧きやすくなります。
なお、インターンシップに参加する学生は、さまざまな企業と比較検討中であり、まだ、選考応募することを決めていない段階です。
交流会で「ここはダメそう……」と幻滅させないためにも、交流会に参加させるメンバーの人選には注意する必要があります。
中長期の就業型
ここまで紹介したインターンシップの内容は、そのほとんどが1dayもしくは、数日程度で実施されるものです。
一方で近年では、ベンチャー企業などを中心に、低年次(大学1~2年生)を対象とした中長期の就業型インターンシップも行なわれています。
参加学生に長期的に実務を経験してもらうと、以下のメリットが得られるでしょう。
- ミスマッチが確実に減少する
- 見極めができる
- 入社後に即戦力となる
なお、中長期のインターンシップ中、学生はアルバイトができなくなります。そのため、中長期的の場合、有償での実施がほとんどです。
また学生にとっても、ガクチカになる、アルバイトの代わりになる、といった意味合いもあるため、中長期的なインターンシップには一定のニーズがあります。
こんなインターンシップはダメ!
インターンシップを実施するからには、採用活動の成功につなげなければなりません。一方で、以下のようなインターンシップでは、母集団形成や魅了付けが失敗しやすくなります。
単純作業や雑用に従事させる
繁忙期の労働力確保のようにインターン生を利用するのは、明らかに不適切です。
単純作業や雑用で以下のようにネガティブな想いが生まれると、インターンシップの本来の目的である母集団形成や魅了付けが難しくなります。
- 想像と現実はまったく違った
- こき使われた気がする
- この企業は自分に不向きだ など
また、インターンシップ中の雑用があまりにも酷かった場合、SNSに投稿・拡散されて、自社のブランドイメージが低下する可能性もあるでしょう。
ゴールや訴求点が明確でない
上述したようなプログラム内容を組み合わせれば、とりあえずインターンシップを開催することはできます。
しかし、そもそもインターンシップの目的やゴール、訴求点が不明確だった場合、母集団形成や志望度アップなどの成果につながりにくいでしょう。
インターンシップを実施するときには、自社の目的・ゴール、また、何を伝えることで志望度アップにつなげるかを、以下のようにきちんと設計する必要があります。
- 自社の製品が多くのファンから愛される理由(職人のこだわり)を知ってもらう
- ロールプレイングを通じて、“難しさ”と同時に、“やりがい”を感じてもらう
- 交流会やビジネスゲームを通して、自社のアットホームな雰囲気を実感してもらう など
学生のニーズを満たしていない
1dayなどの一般的なインターンシップの参加目的は、「仕事理解」と「業種理解」の2つです。
一方で、企業目線のみで学生のニーズを無視したプログラム内容にした場合、満足度が下がり、目的も達成できなくなります。
繰り返しになりますが、インターンシップを実施するときには、「学生ニーズ」×「自社の魅力」が交わる点からプログラムを考えることが大切です。
なお、学生ニーズということに振り切って考えると、「就活の役に立つ」ということもひとつのポイントです。その点でプログラムを考えてみてもおもしろいでしょう。
まとめ
企業が実施するインターンシップには、以下2つの目的があります。
- 学生との早期接触による母集団形成
- 自社への志望度向上(魅了付け)
インターンシップのプログラム内容は、採用ターゲットの設定、また、ターゲットニーズと自社の魅力の交点を考えたうえで、以下の5軸で考えるのがおすすめです。
- 開催時期
- 期間
- 形式
- 対象
- 具体的な内容
ただし、以下のようなプログラム内容の場合、参加者を満足させられないどころか、最悪のケースではSNSなどで投稿されて炎上することもありえます。
- 学生のニーズを満たしていないプログラム
- 単純作業・雑用に従事させるプログラム
- きちんと設計されていないプログラム など
インターンシップの失敗を防ぎ、自社の母集団形成や魅了付けにつなげるには、以下のような代表的なプログラムを組み合わせてインターンシップを企画するとよいでしょう。
- 講義/レクチャー
- 仕事体験
- ロールプレイング
- グループワーク
- ビジネスゲーム
- 既存社員との交流会
ベンチャーやスタートアップ等であれば、低年次の学生を対象とした中長期の就業型プログラムなども、選択肢の一つになるでしょう。