近年の日本では、少子化の影響によって、若手人口がどんどん減少しています。
大学進学率の上昇にともなって大学生人数は辛うじて横ばいとなっていますが、アルバイトの一角を担っていた高校生人数は激減している状況です。
こうした背景によってアルバイト採用の難易度は上がり、近年は外国人アルバイトを採用することも当たり前となってきています。
ただし、外国人アルバイトを採用して、採用後に活躍・定着してもらうには、いくつかの注意ポイントもあります。
記事では、外国人アルバイト採用の現状と外国人アルバイト採用に有効な募集方法を紹介します。
また、外国人アルバイトの採用時に確認すべきポイントと注意点、外国人アルバイトの受け入れで大切なことも確認しますので、採用時の参考になれば幸いです。
<目次>
外国人アルバイト採用の現状について
まずは、近年の日本における外国人アルバイト採用の現状と、外国人のアルバイトを採用するメリット・デメリットを確認しましょう。
外国人アルバイト採用の必要性
内閣府の報告に記載された以下の図表を見れば、子ども・若者人口、また、総人口に占める割合が、昭和50年以降ほぼ一貫して減少していることが一目瞭然です。
18歳人口で見ると、平成4年には205万人だったものが、平成26年度には118万人と半減に近い状態になっています。
じつは、大学生人数は進学率の上昇によってほぼ横ばいとなっていますが、近年の学生はアルバイトの勤務日数が下がっている傾向もあります。
こうした要因から、日本の若手アルバイトの労働力は大きな減少傾向にあり、外国人アルバイトに頼らざるを得ない状況が生まれています。
コンビニや飲食店などで見かける外国人アルバイトが近年増加しているのは、日常生活を過ごしているなかでも多くの人が感じるところでしょう。
出典:第1部 子ども・若者の現状(内閣府)
出典:第57回学生生活実態調査 概要報告(全国大学生協連)
出典:18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移(内閣府)
外国人アルバイト採用のメリット
外国人アルバイトを採用する最大のメリットは、日本人だけを募集するよりも幅広いエントリーが期待でき、人手不足の解消が可能になる点です。
また、外国人客への対応を行なえる点にも注目したいところです。
外国人の日本語能力や適性にもよりますが、飲食・宿泊・観光業などの場合、インバウンド客への対応が強化できる部分もあるでしょう。
ほかにも、外国人アルバイトの採用には、職場に多様な価値観を取り入れられるような側面もあります。
なお、今後も日本人全体の人口減、若年層の少子化は確実に続きます。
したがって、今のうちに外国人アルバイト、外国人労働者の採用と受け入れノウハウを蓄積しておくことは、非常に有効です。
参照:外国人と企業の労働観調査
外国人アルバイト採用のデメリット
外国人アルバイトの場合、求める日本語レベルがマッチしないことが多々あります。
特に飲食・観光・宿泊などの接客業の場合、求職者の日本語レベルが低ければ、募集職種での採用が難しくなることがあるでしょう。
外国人アルバイトを採用する場合、研修・教育の時間やコストがかかる点にも注意したいところです。
たとえば、外国人の日本語レベルが高くても、価値観・文化が違うことで、戦力になるまでに多くの研修や時間が必要になるケースもあります。
なお、外国人アルバイトの場合、日本人よりも離職しやすい傾向もあります。
株式会社ノーザンライツの調査結果によると、外国人留学生の場合、「日本語や文化・風習を学ぶため」にアルバイトをすることも多くなっています。
仕事への価値観も異なりますし、アルバイトの目的が生活のためではない場合、ミスマッチを感じるとすぐ辞める可能性もあります。
出典:外国人留学生の意識調査~定着に必要な3つのこと~(株式会社ノーザンライツ)
外国人アルバイト採用に有効な募集方法
外国人アルバイトを採用するなら、採用ターゲットに合った募集方法を活用することも大切です。本章では、3つの募集方法の特徴と主なサービスを紹介しましょう。
外国人向け求人サイトへの掲載
求人サイトとは、求人広告を出して応募を待つ募集方法です。たとえば、以下のサイトでは外国人向けのアルバイト求人を取り扱っています。
- A global harmony
- NIPPON仕事.com
- ハローバイトル
- フロムエーナビ
- マッハバイト
- リゾートバイト.com など
なお、外国人向け求人サイトには、大きく分けて以下の2種類があります。
- ①外国人に特化した求人サイト
- ②外国人も応募可能な求人が多い一般の求人サイト
A global harmonyやNIPPON仕事.comは、①に該当しており、アルバイトのほかに正社員やパート、契約社員などの外国人向け求人も取り扱っています。
一方で、①以外、大手の国内向けアルバイト求人サイトでは、検索での絞り込みや、「留学生歓迎求人」「外国人OK求人」などの特集ページで外国人向け求人が表示されるのが一般的です。
外国人アルバイトに強い人材紹介会社の利用
たとえば、「中国語の通訳」や「インバウンド向けに英語での接客業務」のように、アルバイト人材に求める要件が決まっており、多少特殊な要件が生じるようであれば、人材紹介会社を利用するのもおすすめです。
日本における人材紹介会社は、基本的には正社員採用を対象とするサービスです。
しかし、外国人の場合、「外国人アルバイトの人材紹介」や「留学生アルバイトの紹介」などのサービスを実施する人材紹介会社があります。
外国人の派遣などを行なっている企業などが、人材紹介などの総合採用支援サービスを行なうことが多くなっています。
外国人アルバイトの場合、正規雇用の人材紹介のような理論年収の30~35%といった高額の紹介フィーは発生しません。選択肢の一つにするとよいでしょう。
外国人アルバイトの人材紹介を行なっている企業の例
- 株式会社アイエスエイ
- 株式会社ノーザンライツ
- 株式会社アイック保険サービス(ジョブパートナー) など
外国人従業員からの紹介
外国人従業員からの紹介とは、いわゆるリファラル採用のことです。
たとえば、外国人留学生の同級生を紹介してもらう場合、紹介者の留学生アルバイトは、以下の両方をわかっています。
- 自社の仕事内容、待遇 など
- 同級生の性格、仕事へのモチベーション など
リファラル採用であれば、入社後のミスマッチや外国人アルバイトの孤立も起こりにくいでしょう。
日本人アルバイトで「友人や先輩⇒後輩」とつながるように、外国人アルバイトでも同様の流れをつくれるのが理想となります。
外国人アルバイトの採用時に確認するポイントと注意点
外国人アルバイトの採用では、以下のように日本人よりも多くの確認事項や注意点があります。
在留資格・パスポートの確認
外国人アルバイトの採用では、まず、在留資格と本人確認が必要です。
入管法で定められた在留資格は、就労や留学など、日本で行なう活動の種類が特定・許可されるものです。
在留資格に応じて、それぞれが行なえる活動が定められています。
また、出入国管理および難民認定法第19条第2項では、就労や留学などの在留資格で在留する外国人が許可された在留資格に応じた活動以外に、アルバイトなどの収入をともなう事業運営や活動をする場合、資格外活動許可の申請を義務付けています。
なお、以下のような人たちは、「1週間につき28時間以内」であれば、収入をともなう事業を運営する活動または報酬を受ける活動を申請すれば、包括的に資格外活動が許可されるようになります。
- 「留学」の在留資格の外国人
- 「家族滞在」の在留資格の外国人
- 外国人の扶養を受ける配偶者もしくは子、または、それに準ずる者として扶養を受ける者として行なう日常的な活動を指定されて在留する外国人で、「特定活動」の在留資格の外国人
- 継続就職活動または内定後就職までの在留を目的とする「特定活動」の在留資格の外国人
- 「教育」、「技術・人文知識・国際業務」または「技能(スポーツインストラクターに限る)」のうち、地方公共団体などとの雇用契約により活動する外国人
在留資格は、以下の記事でも解説しています。興味がある人は、確認してください。
出典:資格外活動許可申請
出典:資格外活動許可について
出典:資格外活動の許可(入管法第19条)
日本語能力の把握
外国人の場合、日本語能力によって任せられる仕事も変わってきます。
面接では、「この仕事ができそうですか?」などのYes・Noで答えられるクローズクエスチョンのほかに、雑談やアイスブレイクを入れたり、また、エピソードや価値観などを聞くオープンクエスチョンを入れたりするとよいでしょう。
また、業務内容に応じて必要があれば、日本語レベルを見極めるための簡単な筆記テストなどを用意してもよいでしょう。
業務内容、勤務条件のすり合わせ
外国人アルバイトの場合、日本語能力によってできる仕事が変わってきます。
たとえば、日常会話ができるレベルの日本語能力があれば、外国人アルバイトを接客担当にして、インバウンド対応も任せられるかもしれません。
また、外国人アルバイトの面接では、業務内容や勤務条件を丁寧に説明し、納得してもらうことが大切です。
外国人に関わらず、労働基準法第15条第1項では、労働者を採用するときに、労働条件の明示をすることを定められており、契約期間や賃金などは労働条件通知書という書面で示すことになっています。
ただ、外国人採用の場合は、書面で渡すだけでなく、口頭でも丁寧に説明することが大切です。
出典:労働基準法の基礎知識
就労時間制限
資格外活動許可のアルバイトは、1週間で28時間以内という就労時間制限がありますので、シフトなどを考える際には注意が必要です。
出典:資格外活動許可について
外国人アルバイトの受け入れで大切なこと
デメリットのところで触れたとおり、外国人のアルバイトには、日本人よりも離職しやすい傾向があります。
したがって、外国人アルバイトを受け入れるときには、定着・活躍しやすくなるように、以下のような配慮をする必要があるでしょう。
丁寧な説明と配慮が重要
繰り返しますが、外国人の場合、就労時間制限のようなルールや在留資格の手続き等があります。
また、仕事の価値観や文化も違うため、労働条件通知書の内容なども丁寧な説明が必要です。
後々のトラブルや早期離職を防ぐためにも、理解できない・受け入れられないところは、話し合いで調整や納得してもらうようにします。
また、日本人にはない特殊な条件での受け入れや配慮をする場合は、ほかのスタッフに共有し、メンバー全員の相互理解を進めることが大切でしょう。
研修受講や丁寧なレクチャー
外国人の場合、たとえば、自国で飲食業のアルバイト経験があっても、日本とは道具の使い方や給仕の仕方などがまったく異なる可能性が高いでしょう。
したがって、最初は、研修などを受講してもらったり、丁寧なOJTを実施したりして、日本や自社の仕事の基本をしっかり覚えてもらうことが必要となります。
OJTでは、「4段階職業指導法」を意識すると、仕事も身につきやすくなるでしょう。
これは誰もが無意識にやっている指導ですが、意識してきちんと順を追って実施するとより効果的になります。
- Step1:Show(やって見せる)
- Step2:Tell(説明する)
- Step3:Do(やらせてみる)
- Step4:Check(フィードバックする)
また、入社初期は、定期的な1on1などを通じて「困っていること」「どうしても習得できないこと」などの声も丁寧に拾い、対処することがポイントです。
専任トレーナー(指導役)による一定期間の指導
外国人アルバイトに限りませんが、長期就労を前提に入社したアルバイトが早期離職する原因は「仕事中の放置」と「リアリティショック(理想と現実のギャップ)」が多い傾向があります。
また、外国人アルバイトの場合、日本人以上に先輩に話しかけづらい・質問できないなどの理由で孤立する可能性もあるでしょう。
こうした問題を防ぐためにも、入社からしばらくの間は、専任のトレーナー、指導役をつけて一緒にシフトに入れるなどの対応も有効となります。
専任の指導役をつければ、外国人アルバイトも放置されづらくなります。
なお、場合によっては、指導役と本人の相性が合わないこともありえます。
したがって、指導役を決めたからといって全部を任せてしまうのではなく、1on1などは社員や別の人が実施して状況を把握する、精神面のケアをするなどの工夫をするとよいでしょう。
まとめ
近年の日本では、若者人口の急激な減少に加えて、大学生のアルバイト勤務日数が下がったこともあり、外国人アルバイトに頼らざるを得ない状況が生まれています。
外国人アルバイトの採用は人手不足を解消したり、インバウンド対応したりするうえで有効ですが、以下のようなデメリットが生じることもあります。
- 募集職種と日本語レベルがマッチしないことがある
- 研修・教育の時間やコストがかかる
- 日本人より離職しやすい
外国人アルバイトに有効な募集方法は、大きく以下3つです。
- 外国人向け求人サイトへの掲載
- 外国人アルバイトに強い人材紹介会社の利用
- 外国人従業員からの紹介
また、外国人アルバイトを採用する場合、以下のポイント確認が必要となります。
- 在留督格・パスポートの確認
- 日本語能力の把握
- 業務内容、勤務条件のすり合わせ
- 就労時間制限
アルバイト面接の質問や、採用側の注意点などが知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
なお、今後の日本では、少子化の影響が大卒にもおよび、新卒採用などもどんどん難易度が増していきます。
今のうちに外国人採用、受け入れのノウハウを磨いておくことがおすすめです。