会社の採用面接は、自社に見合う人材を見極めるための重要な機会です。面接官は会社の顔として応募者の素質や能力を評価すると同時に、会社の魅力を伝えなければなりません。応募者の本音を引き出す質問のコツや面接官としての心構えを解説します。
<目次>
- 面接の基本を知ろう
- 面接の目的・役割を理解しよう
- 面接官として必要な意識
- 面接前の準備
- 面接で見るポイント
- 自社に合う応募者を見極められない原因
- 面接で有用な情報を引き出すコツは?
- 一次面接ではどんなことを聞けばよいか
- 一次面接以降の選考フェーズを意識しよう
- 自社で長く活躍する人材を採用するには
- まとめ
面接の基本を知ろう
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面接官になって日が浅い人は、採用のフローに慣れていない場合もあるでしょう。まずは一般的な組織で行われる面接について、基礎的な知識を備えておくとスキルの習得にも役立ちます。
面接の流れ・回数
採用面接では、採用フローに従って面接が行われます。『募集活動』からスタートし、『書類選考』や『筆記試験』を経て、書類選考と筆記試験の合格者が『一次面接』に進む流れが一般的です。
面接形式は選考の段階やその組織が応募者に何を求めるかによって、取り入れる種類が変わってきます。一般的に実施される面接は大きく4つです。
集団面接は複数の応募者を集めて同時に面接を行う形式で、選考序盤の一次面接で実施されるケースが大半です。目的は『応募者の絞り込み』で、合格者のみが二次面接に進めます。
グループディスカッションは特定のテーマを応募者同士で議論するタイプの面接で、応募者の性格や個性・協調性といった資質を評価します。
集団面接と同じく、応募者の絞り込みを目的に選考の序盤、場合によっては書類選考や筆記試験と並行して実施されます。
個人面接は、面接官(1名または複数)と応募者1名によって行われるタイプの面接です。さまざまな角度から掘り下げた質問をし、人材が自社に適しているかを見極めるのが目的です。
個人面接では見極めと同時に魅了付けすることも大切な役割です。自社で内定を出す人材は他社でも内定を獲得することが一般的です。
従って、個人面接を通じて見極めと同時に志望度の向上を図っていきます。なお、面接は1回のみの場合もあれば、二次面接の後に三次面接、四次面接等まで行う場合も一般的です。
一般に応募者が多い、見極めの基準が厳しい企業ほど面接回数は増える傾向があります。
一般に想像する面接とは少し異なり、実際に入社後にしてもらう仕事のロールプレイングをしてもらったり、模擬的に作業や課題に取り組んでもらったりする選考です。
言葉のみでやり取りする面接と異なり、模擬的に仕事をしてもらうことで、面接では見抜けない資質を見極められます。
ただし、応募者にも負荷がかかりますので、ロールプレイングやワークサンプリングを選考に取り入れている企業は限定的です。
面接にかける時間
面接にかける時間は面接形式によって異なります。集団面接は比較的時間が短く、全体では30分~60分、1人あたりの応答時間は5~10分程度です。面接官は限られた時間で、絞り込みの最低基準を満たしているかを判断しなければなりません。
一方、応募者1名で行う個人面接は1人あたり30分~60分が一般的で、集団面接よりも時間が長くなります。面接官はエントリーシートや履歴書の内容、また事前の評価情報等も確認した上で、応募者に質問していきます。
個人面接では応募者からの質問に対応したえり、魅了付けするために情報提供も行うため、きちんと時間内で終わるように時間配分を考えましょう。
評価シートの役割
採用に使う『評価シート(面接評価シート)』とは、面接の評価基準や項目を定めたシートです。シートを使って面接を進めることで、面接官ごとに判断がズレるのを抑え、企業として一貫性のある評価ができるようになります。
評価シートを使わないと、面接官の個人的な感情や主観が入り公平な評価ができない可能性が高まるので注意が必要です。評価シートを作成する際は、会社や部署が求める人物像を明確にした上で評価項目を設定します。
人事部門が各部署と連携しながら、点数の比重や合格ライン・NGラインなどを設定します。
面接の目的・役割を理解しよう
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面接には『会社にふさわしい人材の見極め』と、『応募者に自社の魅力を伝える』という大きな目的があります。面接官が果たすべき役割を正しく把握しておくことで、自社の目的に沿った面接につながるでしょう。
自社に合う人材を見極める
面接官の役割は書類等では分からない応募者の人柄、性格特性、能力などを確認して、自社に合う人材を見極めることです。書類選考や筆記試験はクリアしても、人柄や性格が企業文化にマッチしているとは限りません。
また、選考書類に誇張や虚偽がある可能性もゼロではありませんし、成果をあげるプロセスや応募者のコンピテンシー等は見極められません。面接官が対話によって矛盾がないか、自社で活躍できるポテンシャルや能力があるかを判断する必要があるのです。
なお、集団面接やグループディスカッションは多くの場合『振るい分け』が目的なので、個人の価値観や考えを深く掘り下げることは少ないでしょう。逆に、個人面接では具体的な『深掘り質問』によって、応募者の本音や実態を引き出していきます。
入りたい会社だと再認識してもらう
「この会社に入社したい」と企業の魅力を伝えて志望度を高めることも面接の重要な目的です。採用面接というと企業側が応募者を一方的に評価するイメージもありますが、『応募者が企業を評価する機会』でもあるのです。
応募者は『社風はどうか』『やりがいはあるか』など求人広告では分からない情報を面接で確認し、他社と比較します。自社の魅力を伝えて応募者のモチベーションを上げる工夫をしなければ、優秀な人材を他社に奪われる可能性が高いでしょう。
面接官は応募者の『意思決定』をサポートするために、必要な情報を提供する必要があります。相手の資質やスキル・優先する条件をとらえ、伝え方やアピール方法を変えていくのがポイントです。自社の魅力だけでなく、抱えている課題や弱みについても正直に伝えましょう。
ミスマッチによる早期離職を防ぐために大切なことですし、応募者と信頼関係を深め、また、課題解決に貢献する人材を採用することにも役立ちます。
面接官として必要な意識
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面接官としての役目を果たすためには、どのような意識が必要でしょうか?面接官の言動によって、応募者の会社に抱くイメージが大きく変わる可能性もあります。
会社の代表として振る舞う心掛け
面接官は『自分が会社の代表である』という自覚を持ちましょう。応募者に取ってみれば、面接官は単に選考のために問答する相手ではありません。
採用フローにおいて、応募者にとっては、選考内でやり取りする人事、そして、面接官が会社のイメージそのものであり、会社の印象を左右します。面接官の態度や言葉がそのまま会社のイメージとなるので、気を引き締めて面接に臨む必要があります。
実際『面接官の態度が悪かった』『一緒に仕事したいと思えなかった』『将来なりたいイメージではなかった』といった理由で、内定を辞退する応募者も少なくありません。優秀な人材をイメージダウンで逃さないためにも、会社の顔としてふさわしい言動を心掛けましょう。
応募者に興味を持つ姿勢
面接官が「もっと応募者のことを知りたい」という気持ちを持ち、相づちや表情で興味を伝える姿勢も大事です。「〇〇さんに興味があるんです」「いろいろお聞きしていいですか?」と前置きをして面接に入るのもよいでしょう。
相手の話を聞く姿勢を示すことで、応募者から本質的な情報を引き出しやすくなります。また、話をしているときは無表情で話を聞くのではなく、分かりやすく相づちを打ちましょう。とくにオンライン面接の場合には、細かな表情等が伝わりづらいため、少しオーバーリアクションなぐらいで相づち等を返すとちょうど良いでしょう。
面接は応募者の欠点を見つけて落とす場ではありません。目的は自社にとって有用な人材を採用することです。減点主義ではその人本来の良さを引き出せません。「この人にこんな仕事を任せたらどうだろう」と前向きにイメージしながら、面接を進めることもポイントです。
面接前の準備
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効果的な面接を実施するためには、面接前の事前準備も大切です。面接前に、面接官として済ませておきたい準備を順番に見ていきましょう。
自社の課題から欲しい人材像を明確にする
コミュニケーション力や主体性といった強みは、社会人としてあった方がよいヒューマンスキルとして広く語られています。
しかし採用の基準を考えるとき、『コミュニケーション力』や『主体性』と言った言葉は曖昧すぎます。自社の実情、既存社員のパフォーマンス分析等を通じて、どのような人物が実際に活躍できるのかを具体的に洗い出しましょう。
例えば採用補助としてスケジュール管理を任せられる人材を雇いたいなら、時間に対する厳格さや積極的にサポートできる資質が必要です。
チームとして働くことに対する考え方も、基準に盛り込みたい要素でしょう。評価シートに項目を作れるレベルまで、欲しい人物像を具体化させるのがポイントです。
前述のように『コミュニケーション力』といった曖昧な言葉ではなく、『初対面の相手と短時間で打ち解ける外向性やキャラクター』といった形で、なるべく具体的な表現で記述しましょう。
自社の強み、弱みを説明できるようにする
面接では自社の強みや弱みを、相手に分かりやすく伝える必要があります。そのためには面接官自身が、自社の内情をよく理解していなければなりません。
課題は思いつくが強みや魅力がはっきりしないという場合は、『マインドマップ』を活用して整理するのも有効です。マインドマップは情報の整理やアイデア出しに利用されるツールで、主題を中心に関連する言葉を放射状に展開していくのが特徴です。
マインドマップを使うと全体を俯瞰できるため、強みや魅力が見えてきます。部署や役割が違う社員と、自社の魅力について会話してみるのもよいでしょう。『顧客との距離が近い』『学びが多い』『努力が報われる』など、リアルな声が聞けるかもしれません。
求人の条件を改めて確認する
応募者にとって求人広告の条件と実際の労働条件が異なるのは、印象ダウンや離職にもつながる大きな問題です。面接時や内定時に相違点が発覚すれば、辞退につながる可能性も高いでしょう。
面接官は自社が出している求人条件を事前にしっかりと確認しておきましょう。残業や待遇等に関して求人ではある程度幅を持たせて記載することもよくあります。
その場合に、『通常だとこれぐらいだが、繁忙期にはこういったこともある』といった形で具体的に説明できるようにしておくことで入社前後等のズレが防げます。
また、待遇面、給与や賞与等に関しては制度改定等の影響でズレが生じてしまっている場合には、必ず人事にも確認して訂正等が必要であれば速やかに実施しましょう。応募者に不信感を抱かせないためにも、入念に確認して誠実に対応しましょう。
採用基準を具体的に把握する
面接官は自社に必要な人材を見極め、欲しい人にアプローチするポジションです。どのような質問をすればよいか・何をアピールすればよいかは、採用基準に基づいて考えなければなりません。本番に挑む前に必ず採用基準やその理由を具体的に把握して、適切な質問ができる状態にしておきましょう。
自分が採用基準を作る立場であれば、複数の面接官で認識のズレが起きないような工夫が必要です。具体的な項目に落とし込んで数値化すると、面接官が自社の欲している人材を把握できます。
面接官がしてはいけない質問を確認する
個人面接では相手への理解を深めるための『踏み込んだ質問』が必要となりますが、原則として、聞いていいのは業務に関わりがあることだけです。
本人に責任がない情報や仕事に関係がない要素を理由に差別的な採用が実施されないように、厚生労働省は採用のガイドラインで、以下のような質問を不適切としています。
- 本籍地
- 家族の職業や収入
- 住居や自宅までの道のり
- 宗教・思想・支持政党
- 尊敬する人物
- 愛読書
- 男女雇用機会均等法に抵触する質問
本籍地や家族の収入・住んでいる場所は、本人の能力や努力と関係がありません。厚生労働省は選考を、適性やスキルで判断すべきとしています。宗教や政治に関わる思想も、入社後の活躍と関係のない要素です。
尊敬する人や愛読書は価値観を見るために聞いてしまいがちですが、思想による差別につながりかねない質問されているので注意してください。
もちろん、男女雇用機会均等法に抵触する質問も、面接官が聞いてはいけない事項です。女性に対して「結婚の予定は?」「子どもを持っても仕事は続けますか?」などと聞くと、性別を理由に男性と同じ機会を与えない意図ととられる可能性があります。
応募者にマイナスイメージを抱かせないためにも、選考に関わりのない質問は避けましょう。
面接で見るポイント
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新卒採用と中途採用では、面接で見るポイントや採用基準が異なります。社会経験のない新卒者では『仕事への意欲や姿勢』『ポテンシャル』、経験やスキルのある中途採用者は『能力』『成果の再現可能性』が重要視されます。
新卒採用の場合
新卒者は社会人としての経験や知識が不足しているため、中長期での『育成』が前提です。当然、現時点での業務のスキルや応用力よりも、『チャレンジ精神』『協調性』『誠実さ』といった入社後に変わりづらい性格特性が主な評価ポイントになるでしょう。
スキルや知識は実務の中で自然と積み上がっていきますが、価値観や性格は容易には変えられません。
例えば、チャレンジ精神が旺盛な人は、困難なプロジェクトに対して意欲的に取り組むため、将来的に大きな成長が見込めます。未知の物事に興味を抱き、その背景にある現象や理由を知ろうとする『探求心』も、会社全体の利益や成長につながる要素です。
入社後に任せる仕事によって上記のような要素がどれぐらい重要かは変わってきます。自社で活躍するためにどんな能力、性格特性、価値観等が必要か、そのうち入社後に変わりづらい要素は何か、面接でどのように見極めるのかということを考えて選考基準に落とし込むことが大切です。
中途採用の場合
中途採用では新卒採用と異なり、応募者の経歴やスキル、現時点の能力が重視されます。主に『現場で即戦力として活躍できるか』『過去に出してきた成果は自社で再現性があるか』といった点が、採用で重きを置いてみられます。
面接ではスキルや経験に関する質問を具体的に行い、程度を正確に見極めることが肝要です。これまでの実績も採用の可否を左右する材料となるでしょう。
なお、中途採用でも若手採用の場合には、以下の『社会人基礎力』のようなポータブルスキルを選考基準に据えることも一つです。
- 前に踏み出す力
- 考え抜く力
- チームで働く力
社会人基礎力、経済産業省が定めたもので社会人として仕事をしていく上で必要な能力として、3つの大きな能力分野と12の能力要素から構成されます。自社の求める人物像と照らし合わせ、採用基準に反映させると良いでしょう。
また、中途採用の場合、カルチャーフィットの視点も大切です。社会人として経験を持っている中途人材は、前職等で培われた仕事や職場への価値観、仕事のスタイルを持っています。能力が優秀な人でも、自社の価値観やスタイルと合わないと早期離職に至る可能性が高まりますし、職場を混乱させる可能性もあります。
面接では、能力やスキルと同時に、自社のカルチャー:風土や価値観、仕事の仕方に合うかという視点でも確認しておきましょう。
自社に合う応募者を見極められない原因
面接は組織を作る重要なステップであり、面接官の技量が採用の成果を決めるといっても過言ではありません。一方で、面接で自社にマッチする人材を見極められず、不適切な人材を採用してしまうケースも多々あります。適切な人材を見極められない理由には、何があるのでしょうか?
主観や直観で選んでしまう
『人の印象は最初の数秒で決まる』といわれるように、面接でも視覚からの第一印象が結果に大きく影響することがあります。応募者の人間性やスキルを知ろうと思っても、第一印象が邪魔をして正しい判断ができなくなるケースも少なくありません。
結果的に『自社に合った人材』ではなく、単に『印象の良い人』を採用してしまうのです。もちろん、接客や営業の仕事等において、第一印象は大切です。
しかし、第一印象がいいかといって自社で成果をあげられるとは限りません。面接官は主観に左右されずに客観的な事実を徹底的に集め、総合的に採用基準を満たすかどうかで評価しましょう。
学歴や経歴・特定のスキルに影響されすぎる
学歴や経歴といった特定のスキルが優れていると、目立ちやすい部分に引きずられて他評価も上がってしまう可能性があります。例えば上位大学を卒業していた場合、自社の人材として望ましくない欠点に意識が向かなくなってしまうといった特徴的な部分に影響を受け、全体の評価が歪んでしまう現象を『ハロー効果』といいます。
面接ではハロー効果が起こりやすいため、評価基準をしっかり把握して準拠しなければなりません。面接官は「バイアスがかかっているかもしれない」と、自らを疑ってみることも必要です。
型にはまった質問しかしない
型にはまった質問ばかりになってしまうと、応募者の資質を見抜くことができません。とくに志望動機や将来の希望、長所・短所といった質問はありきたりで、応募者があらかじめ回答を用意しているケースが大半です。
面接の目的の一つは、履歴書や職務経歴書からは見えにくい特徴を見抜いて評価することです。とくに資質や価値観・思考特性・知的能力は、企業と個人のマッチングを考える上では大切なポイントです。表面的な質問を繰り返すだけでは、肝心な部分は見えてこないでしょう。
面接での質問をある程度の「型」にしておくことは、構造化といって面接の精度を高める効果があります。ただ、「型」が表面的になってしまうと判断を誤ります。型に沿って抜け漏れ等で出ないように、印象や主観に左右されないようにすることは大切です。
しかし、限られた時間の中で正しい判断をするためには、面接官は応募者の回答を踏まえてもう一段踏み込んだ質問をする力、『質問力』や『インタビュー力』を磨く必要があります。
面接で有用な情報を引き出すコツは?
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応募者から本音や有用な情報が引き出せるかどうかは、面接官の質問力や対応力にかかっています。応募者のパフォーマンスを上げるために、適度な『アイスブレイク』も取り入れましょう。
アイスブレイクは素を引き出すためにも必須
『アイスブレイク』とは初対面の人同士が集まる商談や会議において、緊張感を緩和させるために用いる手法です。不安や緊張を『氷(アイス)』にたとえ、『硬い氷を壊す』という意味です。面接時は本題に入る前に、数分間のアイスブレイクを設けましょう。
頭を使わずに答えられるような質問をして、リラックスした雰囲気を作ります。面接におけるアイスブレイクの目的は、主に応募者本来の能力や本音を引き出すことです。数分間の雑談によって緊張が和らぎ、本来のパフォーマンスが発揮しやすくなるでしょう。
アイスブレイクには突然質問を始めて、事務的な印象を持たれるのを防止する効果もあります。
一問一答にはせず、会話をする
面接時は一問一答ではなく、応募者と『会話』をするイメージを持ちましょう。YESやNOで終わる答えから得られる情報は少なく、応募者の本音が引き出せません。
一問一答は機械的になりがちで、応募者に「自分のことを理解してくれているのだろうか?」という不安感を与える要素にもなります。
面接官が身に付けておきたい質問スキルの一つが、『掘り下げ質問』です。「どうして興味を持ったのか」「そう考えるのはなぜか」といったように、相手の回答に付随するプロセスや背景を具体的に聞いていきます。
効果的な掘り下げ質問を行うには、事前に応募者の『人物像』をよく理解しなければなりません。面接官として相手に興味を持ち、より深く心理や行動を掘り下げられるように情報を集めましょう。
応募者からの質問の時間を取る
面接では一方的に質問をして終わりではなく、応募者からの質問(逆質問)を受け付ける時間も確保しましょう。一通り話をした後に、「何か質問はありますか?」と聞くのが一般的です。質問の有無や内容は、基本的に合否には影響はしません。
しかし「部署にはどんなキャリアの社員がいますか?」「ご縁があったときに期待する活躍は?」といった質問は、意欲や向上心の表れととらえられます。
今後の戦略やビジョン達成への取り組みについても、質問する応募者が少なくありません。面接官は応募者の質問にしっかり答えられるよう、自社について把握しておく必要があります。
一次面接ではどんなことを聞けばよいか
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一次面接の主な目的は『応募者の絞り込み』です。主に履歴書や職務経歴書の内容を基に、自社が求める人材に合致しているかをチェックします。具体的な質問例を見ていきましょう。
コミュニケーション能力を確かめる質問
一次面接では、組織で働くにあたって必要な『コミュニケーション能力』をチェックします。「コミュニケーション力はあると思いますか?」と抽象的に聞くのではなく、以下のような質問で相手から答えを引き出しましょう。
- コミュニケーションをする上で大事にしていることは何ですか?
- 一緒に仕事をしていく上で、苦手なタイプは?
- 好きなことは何ですか?
- 自己紹介(自己PR)をお願いします
「好きなことは何ですか?」という質問は一見、コミュニケーション力とは無縁に思えるかもしれません。しかし自分について相手に伝える能力を見るのに、役立つ質問です。「旅行が好きです」の一言で終わる人もいれば、好きな理由を具体的に述べ、経験や得たことを分かりやすく伝える人もいるでしょう。
面接の初めに『自己紹介』や『自己PR』をしてもらうことで、基本的な会話力が把握できます。
履歴書や職務経歴書の内容に関する質問
一次面接では、履歴書や職務経歴書に記載された内容が事実であると確認すると同時に、『学業や仕事を通して何を得たのか』を相手に質問します。
- 〇〇という仕事において、実績や成功体験を教えてください
- 〇〇という経験を弊社でどう生かしたいと考えていますか?
- 2年ほどブランクがあるのはなぜですか?
面接官は面接前に応募者の書類に必ず目を通し、『経歴で気になること』や『具体的に聞きたいこと』をピックアップしておきましょう。面接の段階になって初めて書類を確認する素振りがあると、応募者は「自分に興味がないのだ」と入社意欲を失ってしまいます。
経歴や職歴について『経歴を自慢するだけの人』や『曖昧な回答しか返ってこない人』は、筆記テストや技能テストでスキルを見極める必要があります。
応募した理由を深掘りする質問
履歴書やエントリーシートには、必ずといってよいほど『志望動機』についての記載があります。入社したい理由は書類の確認だけでなく、面接で改めて確認しましょう。
「志望した理由を教えてください」とストレートに聞くのもよいですが、一歩掘り下げて聞くのがポイントです。
- 企業に応募する際、何を判断基準にしていますか?
- 弊社のどんなところに魅力を感じましたか?
- 弊社への転職に期待することは何ですか?
面接では『どれぐらいの志望度か』という見極めが求められます。選考序盤であれば、志望度が低いからといってNGというわけではなく、優秀な人物であれば志望度の現状を把握して、志望度を高めるためのアプローチが必要です。
なお、単に自社への志望度を質問するのではなく、就職・転職活動の軸や前職を理由などから質問していくことも有効です。全体的な活動基準等から入っていくことで、志望動機に矛盾がある、本音ではなく面接向けに喋っているといった可能性を見極めやすくなります。
業界や仕事への理解を確認する質問
中途採用の場合は応募者が自社のニーズに合っているか、また仕事のスタイル等を確かめるために、『業界や仕事への理解度』を確認する質問を加えることも有効です。
- ユーザー動向の変化やトレンドは?
- そのトレンドが業務にどのような影響を与えると思いますか?
- 今後は業界がどう変化していくと思いますか?
実際の質問内容は採用職種等によっても変わってきます。ただ、応募者がどう回答するかによって、仕事でどれぐらい準備するかの習慣、業界への理解度やアンテナ感度の高さ・視野の広さ等が分かるでしょう。
中途採用では新卒よりも短期間で即戦力として活躍することが期待されます。受け入れ側の対応も大切ですが、仕事に対してきちんと準備したり、想像・考察する力を持っていたりするかも大切です。
一次面接以降の選考フェーズを意識しよう
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一次面接以降は多くの場合、マネージャーや役員が面接官となり応募者に一歩踏み込んだ質問を投げかけます。応募者からの逆質問も多くなり、会話は専門性を帯びてくるでしょう。
一次面接しか担当しない面接官も、二次面接以降の目的な内容を把握しておくことで精度の高い面接が実現します。
二次面接では専門性や会社との相性確認をする
二次面接は会社と応募者の『専門性』『相性』を見る機会です。一次面接よりもより深く即戦力として働けるスキルや実績を探っていきます。
また、実際にマネジメントするマネージャーや役員からは『相性』の見極めも大切です。前述したようにスキルや実績があったとしても、個人の性格と会社の価値観がマッチしなければ長く働いてもらえません。
どの組織にも従業員と共有している価値観や、行動規範があります。自社の企業文化や理念が、応募者に合っているかを確かめます。
- 仕事する上で大切にしていることは何ですか?
- どのような環境で働きたいですか?
- 弊社のバリューを見て、とくに強く共感するものはありますか?
また、会社の一員になる上で、『どのようなキャリア志向・将来ビジョンを有しているか』『長期的な活躍が見込めるか』もポイントです。
- 今後、どんなキャリアを作っていきたいと思っていますか?
- 入社後はどんな仕事がしたいですか?
- 採用された場合、将来のプランはどうなりますか?
入社した後のビジョンまで聞き、経営層が描く企業の未来に貢献できる人材かどうかをチェックします。
最終面接は基本的に役員が担当する
一次面接や二次面接は、人事部や採用担当者が面接を行い『自社が求める人物像』に合致した応募者を選出します。
対して最終面接では、応募者を本当に採用したいか判断して合否を決定することになります。会社によっても異なりますが、最終面接は経営者から役員クラスが担当するのが基本です。
人を雇うには多大な人件費がかかるため、会社に利益をもたらす人材かどうかを見極めなければならないためです。最終面接で不採用が続く場合、前の段階までの選考を見直す必要があるともいえます。
人事や面接官の立場からすると、自分たちが通した応募者が最終面接で多く落ちているとすると、最終面接の合否基準と途中の選考基準がどこかズレているかも知れません。NG理由等も踏まえて、再度選考基準や質問項目を考えましょう
自社で長く活躍する人材を採用するには
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従業員の離職は多くの企業にとっての悩みの種です。採用と育成に時間とお金を掛けたにもかかわらず、1年足らずで離職すれば大きな損失となってしまうでしょう。長く活躍する人材を確保するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
コンピテンシー面接を取り入れる
面接では限られた時間内で、応募者の資質や能力を見極める必要があります。しかし面接官の経験やスキルが不足していると、『すぐ辞める人』を見抜けない可能性があります。面接の精度を上げるのに有効なのが、『コンピテンシー面接』です。
コンピテンシーとは高業績を上げる人材に共通する、行動特性を指します。コンピテンシー面接を取り入れるためには、優秀な社員の行動特性、優秀な社員とそうではない社員の違いを分析して指標を作るのが最初のステップです。
面接では応募者の過去の取り組みについて質問を重ね、『回答が自社のコンピテンシーと合致するか』を判断していきます。「この回答があれば、さらに別の掘り下げ質問をする」「この答えなら終了」といったように、質問と回答を組み合わせてマニュアル化するのがポイントです。経験の浅い面接官でも判断に迷う頻度が少なくなるでしょう。
自社を売り込み応募者の心をつかむ
自分のキャリアプランと会社のビジョンが一致していない場合、応募者は内定を受けても早期に離職する可能性があります。優秀な人材に対しては、仕事内容や待遇の説明だけでなく、やりがいやビジョンに関するアプローチが必要です。
今後のプロジェクトや将来の展望などを具体的に説明し、活躍の場があることを示します。「自社で活躍してほしい」「こういうキャリアを築ける環境である」といった会社側からの熱意やアピールが伝われば、長く活躍する可能性も高まるでしょう。
転職が多い人は離職しやすい傾向があるものの、企業の魅力が伝われば定着する可能性もあります。自社をうまくアピールして『辞めない人』を作る努力も、採用の分母となる労働人口が減ってきた現代では重要な施策です。
まとめ
面接では採用フローや採用基準に則って、応募者の評価を行います。面接官の役割は応募者の本質を見極め、自社で活躍してくれる人材に入社してもらうことです。会社の代表として応募者と真剣に向き合い、基準を満たす人を見つけましょう。
個人面接では相手に興味を持って深掘り質問を重ねることで、応募者の本質的な能力を見極めやすくなります。適切な質問を選ぶためにも、自社の欲する人物像を事前に把握しておくのは大事なポイントです。
また、面接は組織が人材を選ぶだけでなく、応募者が組織を選ぶ場でもあります。面接官は「こちらも評価されているのだ」という意識を常に持ち、魅力的な人材にアピールすることが大切です。