「AI面接」で目指すのは効率化ではなく、採用の“質”向上

更新:2025/08/23

作成:2025/08/20

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<目次>

候補者への理解度を深めるための「AI面接」

ホリプロデジタルエンターテインメントは、2018年にホリプログループのデジタル特化型企業として設立されました。「世界にエンタメは必要だ」をビジョンに掲げ、タレント事業、マーケティング事業、e-Sports事業、自治体・行政支援事業の4事業を展開しています。

 

私が入社したのは2022年で、当時は10数名の会社規模でした。2023年6月に組織体制の変更に伴い組織改革のフェーズに入りました。その際に部長から声をかけてもらい、人事として組織改革の役割を担うこととなりました。

 

当社の採用活動は「応募者との相互理解」を軸に設計しています。その実現のために、AIと人との役割分担によるハイブリッドな面接プロセスを取り入れています。AI面接では、候補者のエピソードからコンピテンシー(行動特性)を客観的に評価しています。

 

これは単なる効率化やスクリーニングのためではありません。AI面接によって得られるレポートは候補者に対する理解度を深め、面接全体の質を高める役割を担っています。

 

「AI=冷たい」「人=あたたかい」という単純な構図ではなく、それぞれの特性を活かして補完し合うことで、候補者との納得感のある関係構築を目指しています。ホリプロデジタルエンターテインメントは、採用活動を“企業が評価する場”ではなく、“お互いを理解し、共に未来を考える場”として捉えているのです。

 

AI面接の導入を検討した背景には「選考基準のあいまいさ」という課題がありました。面接の評価において客観的な基準がなかったため、候補者を公平に判断できているのか疑問がありました。評価基準が統一されていないため「面接官個々の主観で合否が左右されているのではないか?」という懸念があったのです。

 

ちょうどその頃、先行してAI面接を導入していた株式会社ホリプロからAI面接を教えてもらいました。

 

当社が導入しているAI面接サービスは、採用改革の一環としてAI面接よりも先に導入していた「構造化面接」をAIに学習させており、私どもが考えていた面接手法をデジタルでも実践できるということで、導入に至りました。

 

 

「AI面接」への抵抗感を払拭するための工夫

導入検討の際、私自身がAI面接を受検した際に思ったこととしては、自分自身で弱みと感じていた部分が、正確に評価されており、結果には非常に納得感がありました。

 

また、既存社員の受検結果を見ることで、社員一人ひとりへの理解が格段に深まりました。過去の経験や背景を詳細に把握でき、履歴書や職務経歴書では見えてこなかった人柄や考え方の傾向まで読み取ることができるなと感じています。AI面接の結果を見ている代表の鈴木からも、非常に納得感がある結果だったと言ってもらえました。

 

導入に際して、馴染みがないものに対する抵抗感が候補者側にも当社社員にも少なからずありましたので、まずは既存社員にAI面接を受検してもらいました。

 

受検後は結果を元に、各コンピテンシー(行動特性)の意味や、点数のとらえ方などを説明した上で、当社としてどのようにAI面接の結果を活用していくのかを共有し、理解度を高めてもらいました。

 

さらに、既存社員のコンピテンシーをもとに、各部署と連携して求める人材像の明確化にも取り組むなど、応用的な活用も行いました。コンピテンシーが共通言語として機能し、社内で自然に会話できるようになることが、理想的な活用の形だと考えています。

 

また、候補者にも受験前に「AI面接での合否はありません。あくまで適性検査という意味合いです」と伝えるなど、抵抗感があることを念頭に置いたコミュニケーションを心掛けています。

 

*写真提供:ホリプロデジタルエンターテインメントで導入する対話型AI面接サービスSHaiN

 

AIと人の役割分担で“納得度”の高い選考プロセスを実現

AI面接というツールを加えたことで、理想的な役割分担ができたと感じています。

 

現在、候補者には一次面接と二次面接の間にAI面接を受検していただいています。二次面接以降では、カルチャーフィットや指向性など、対人の面接でしか確認できない点に重点を置き、自由度の高い面接を行っています。

 

大切なのは人とAI、双方の長所を理解して、うまく使い分けることです。人+AIの活用によって、定性的な判断と定量的(同一基準で冷静かつ客観的)な判断の両方ができるようになり、面接のクオリティが上がりました。結果、活躍人材の採用が実現しています。

 

AI面接の導入にあたっても「効率化」ではなく「面接のクオリティを上げる」ためのプラスアルファの要素として取り入れています。こういった活用の仕方は他社と比べると珍しいかもしれません。

 

人による面接は、カルチャーフィットや動機付けなど、人でないと確認が難しいところを重点的に深堀りしています。一方、AI面接では各コンピテンシーを定量的に評価してもらい、より冷静かつ客観的な判断をするための材料として活用しています。

 

AIには客観とデータの強み、人には共感と対話の強みがあります。それぞれの良さを生かしながら、候補者にとっても企業にとっても納得度の高い選考プロセスを目指しています。

 

(入社した人の声)実際、AI面接を受けて入社した社員からは「ひとつのお題に対して2回3回と質疑応答が繰り返されるので、一次面接では話さなかったエピソードもたくさん話して、すごく深掘りしてもらった感覚になりました。AI面接を通して自分のことを深く知ってもらったので、ミスマッチへの不安も軽減された状態で二次面接や最終面接に臨むことができました」といった声もいただいています。

 

 

「人とAIをどう組み合わせるか」に“らしさ”が出る時代へ

今後の採用活動において「人×AI」の領域は加速していくと考えています。AIが候補者の理解を深めるサポート役となり、人が対話を通じて動機付けをしていく。この役割分担が、採用におけるスタンダードになっていくのではないでしょうか。

 

ただし「どこでAIを使い、どこに人の力を活かすのか」は、企業のカルチャーや採用ポリシーによって異なってくる部分です。今後は、そうした”AIの使い方そのものに企業らしさが表れる”時代になるのではないかと感じています。

 

採用におけるテクノロジー活用が一般化する中で、企業は「人の手を活かす部分はどこか?」を選択しながら、自社らしい候補者体験をつくっていく必要があると考えています。

 

また採用時のデータと入社後の人事評価データを紐づけることができている会社は、まだまだ少ないのではないかと感じています。そして入社後の人材を生かすも殺すも、入ってからのマネジメントの仕方次第です。

 

今後は「採用時のデータを入社後どう活用するか?」「データを基に入社後どのようなマネジメントや育成をしていけばいいのか?」なども考えて、AI面接で蓄積したデータを活かしていきたいと思っています。

 

株式会社ホリプロデジタルエンターテインメント

 

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