新卒採用の手法はさまざまなものがありますが、昔からあるものが新卒採用イベントです。
昔は、大学主催の合同企業説明会と、媒体社が開催する新卒採用イベント程度でしたが、この数十年で新卒採用イベントも多様化しています。
新卒採用イベントは、成功のポイントを押さえて参加すれば、非常に有効なものになります。
記事では、新卒採用イベントの種類や新卒採用イベントで成功するためのポイントを紹介します。
<目次>
新卒採用イベントとは?
まずは新卒採用イベントの概略、目的や効果を確認しておきます。
新卒採用イベントとは?
新卒採用イベントとは、就職活動をする新卒学生と採用したい企業が集まるイベント全般を指す言葉です。
冒頭でもコメントした通り、大学主催のものや求人サイトの運営会社が開催するものが多くなっています。
新卒学生向けの説明会が解禁となる3月から4月にかけては、1万人規模の大規模イベント、また、大学内での合同企業説明会などが開催されます。
また、単なる会社説明だけでなく、一気に一次面接に近いことまで実施できるようなイベントも開催されています。
新卒採用イベントの目的
新卒採用イベントに参加する企業側の目的は、学生に自社の魅力を直接アピールし、応募につなげることです。
求人媒体などと違って、「直接話をできる」ことが採用イベントの最大の魅力です。
逆に、学生にとっては、興味がある企業や業界について情報を集めたり、会場に集まっている様々な業種、職種の採用企業と一気に出会ったりする機会となります。
個別の会社説明会に参加したり、求人サイトを検索したりするのではなく、ある種“偶然の出会い”のようなものがあることが新卒採用イベントの面白さです。
新卒採用イベントの効果
大規模な新卒採用イベントでは、就活生に一気に出会ってアピールすることができます。
イベントの形式によりますが、10~20分程度の会社説明をしっかりとすることができますので、求人サイトなどよりもしっかりと自社の魅力を伝えることができます。
とくに、求人サイトでは検索されづらい業種や職種の企業、BtoBなどで少し事業内容が分かりづらい企業、また、中小企業などにとっては、“直接説明できる”効果は非常に大きなものがあります。
新卒採用イベントの種類
新卒採用イベントの種類をいくつかのタイプに分類して解説します。
1.総合型
総合型のイベントとは、業種や規模の制限がない合同説明会のことです。大規模なものでは参加企業も数百社、来場者も数千人から数万人になります。
総合型の大規模イベントでは、これまで全く接点のなかった学生に出会える可能性があります。
また、参加学生は、まだ業界が絞り切れていない状態の人も多いので、企業紹介がうまくいけば自社にエントリーしてもらえる可能性も高いでしょう。
成功のポイントは、いかに多くの学生を自社ブースに誘導できるか、また、自社のよさが伝わるプレゼンテーションができるかどうかです。
ただ、総合型の大型イベントは、大手企業なども多数参加するため、どうしても参加企業の一覧表を見て、社名を知っている企業、人気業界などに学生が集中する傾向があります。
中堅中小の企業の場合は、大規模イベントでは埋もれてしまう可能性があるので、中規模~小規模のイベントに参加するほうが成果につなげられるかもしれません。
2.特化型
特化型とは、参加企業の業界や求人の職種、または対象学生の専攻、企業のエリアなどを絞り込んだ新卒採用イベントのことです。
たとえば、「エンジニア求人」や「○○エリア」、「建設業界」といった形で特化した開催されます。
総合型と比べて小規模になり、参加する学生の数も少なくなりますが、自社の業界や職種に興味を持っている学生、また、自社で求める学生に会える可能性は高くなります。
3.大学主催型
大学主催型は、その名の通り、特定の大学が自分たちの学校の学生向けに開催する新卒採用イベントです。
「学内合同企業説明会」「○○大学合同企業説明会」といった名称で実施されることが多いでしょう。
大半は主催大学の学生だけが参加する形になりますが、学生数が多い大学であればかなり規模が大きくなります。
とくに3月4月に開催されるものは数日間で延べ数千人になることもあります。
なお、特定の大学単体で開催していることが多いですが、数大学で合同、またエリアの大学で合同開催しているようなケースもあります。
企業側からすると、参加学生のレベルが想定できるため、ターゲットに近い学生に会える可能性があります。
また、開催大学のOBやOGを採用した実績や活躍ストーリーなどをアピールできると魅力付けしやすいでしょう。
4.学部開催型
大学主催の説明会も、特定キャンパスや学部のみで実施されるケースがあります。企業からとくに人気が高いのは理系学部のキャンパスで開催されるものです。
採用難易度が高い建築や土木、また機械や電気など、理工学部等で開催されるイベントは、半年~1年近く前に参加企業の選定されてしまうこともあります。
5.学内企業説明会
大学と連携して自社単独の説明会を学内で開催する場合もあります。
就職活動時期の中盤などに実施されることが多く、ターゲットになる学生に会えれば大学の信用力を借りて個別の接点を作ることができます。
6.マッチングイベント
マッチングイベントは、通常の新卒採用イベントよりも企業と学生の話す場がしっかりと設けられたイベントです。
通常の新卒採用イベントは「合同企業説明会」という通り、参加企業は自社のブースを設けて、興味を持った学生はブースで各企業の話を聞く形になります。
合同企業説明会型のイベントでは、知名度がない中小企業や敬遠されがちな業種の企業などは、自社ブースに学生が集まらず苦戦するケースが多くなります。
しかし、マッチングイベントは、多くの場合、参加した学生と総当たりで話をする機会があり、確実に学生にアピールする場を設けることができます。
その場で一次選考できるような形式になっているものもあり、うまく活用すれば一本釣りのような形で採用につなげることができます。
7.逆求人
一般的な新卒採用イベントは、上述のように企業ブースを学生がまわるというスタイルです。
しかし、逆求人と呼ばれるイベント、学生側がブースを構えて自己アピールを行い、企業から声が掛かるのを待つ仕組みになっています。
学生にとって自分の強みをアピールし、そこに興味を持った企業のほうがアプローチしてくれることになります。
企業にとっても、自社の求める人材に直接アプローチできることや、企業規模に関わらず出会うチャンスがあるといったメリットがあります。
逆求人型のイベントは、ベンチャー志向がある学生、また、スタートアップやベンチャー企業向けに開催されていることが多くなります。
採用イベントの開催形式
コロナ禍の影響で新卒採用イベントの形式も大きく変化しました。
2020年に緊急事態宣言が出された際には多くのイベントが中止となりましたが、その後はオンラインで開催されるようになりました。
オンラインイベントと従来からのオフライン(対面)イベントでは、それぞれどのような特徴やメリット・デメリットがあるかを確認します。
オンラインの新卒採用イベント
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、大勢の人が集まるイベント開催が難しくなり、オンラインでの新卒採用イベントが急激に増加しました。
コロナ禍収束後もオンラインでのイベントは継続されるものと思われています。
オンラインイベントの大きなメリットは、まず運営側、参加企業、参加学生、いずれにとっても手間や工数が少なく済むことです。
参加企業にとっては、会場に設営するブースの装飾、展示物や配布資料などが不要になります。参加する社員の人数も少人数で済むことが多いでしょう。
また、オンラインイベントは学生にとっても移動時間が生じないため参加しやすいですし、遠方の学生なども参加できますので、参加学生の人数は対面よりも増える傾向にあります。
また、参加学生の情報も事前にデータ化されていますので、後々の連絡などもしやすいでしょう。
一方で、オンラインでの企業説明になるので、どうしても“雰囲気”を伝えづらい、また、商品サンプルなどの“現物”を使って学生の興味を惹きつけるようなことも難しくなります。
また、簡単に参加しやすい反面、熱意が薄い学生が多い、簡単に離脱しやすいといった傾向もあり、企業側には学生の興味を惹きつける工夫、また、次ステップに進んでもらうための工夫が必要になります。
オフライン(対面)の新卒採用イベント
オフライン(対面)の新卒採用イベントは、前述の通り、会場に企業ブースを設営して、参加学生に資料を渡して企業説明や質疑応答を行うような合同企業説明会の形式が一般的です。
オフライン(対面)の魅力は、学生と直接話して、商品や実際に働いているところを見せたりすることも出来ることです。
企業の雰囲気や魅力を伝えやすく、細かいニュアンスや熱量なども伝えやすくなります。
また、ブースの前を通りがかった学生に声をかけたり、アピールしたりすることで、もともとは興味を持っていなかった学生と接点を持つようなことも出来ます。
デメリットとしては、前述の通り、オンラインと比べると準備の費用や手間がかかることです。
新卒採用イベントのメリット・デメリット
新卒採用イベントは、他の新卒採用チャネルと比較してどのようなメリット・デメリットがあるかを紹介します。
新卒採用イベントのメリット
新卒採用イベントに参加することで得られるメリットは主に下記の2つです。
- 求人サイト上では自社の求人を見ない、エントリーしない層との接点が得られる
- 学生に直接アピールできる
複数の企業が参加する新卒採用イベントは、規模が小さいなイベントでも、自社のことを知らない学生や求人サイトでは興味を持たない学生にもアプローチできる可能性があります。
こうした機会を活かすことができれば、より多くの応募者を生み出すことができるでしょう。
また、直接学生とアピールできることもポイントです。
求人だけではどうしてもイメージしにくい仕事、学生から少し敬遠されがちな業種も、人事の人柄や熱意をしっかりと伝えることができます。
オフライン(対面)の新卒採用イベントなどであれば、商品サンプルなどを持ち込むことも出来ますので、このメリットはさらに大きなものとなります。
新卒採用イベントのデメリット
新卒採用イベントに参加することになれば、イベント規模や運営形態にも寄りますが、イベント開催日までに様々な準備をする必要があります。
オフラインのイベントであれば、ブースの装飾や配布する資料などの準備も必要です。
また、イベントは2日相程度にわたって開催されるものも多く、期間中は終日工数をロックされることになります。
イベントは複数名で参加することが多く、スケジュール的な負担も大きくなります。
また、会社説明会と異なり、新卒採用イベントに来る学生は自社に興味を持ってきている学生ではないことが大半です。
会社説明会であれば、一般的に8~9割程度は選考へと進んでくれますが、新卒採用イベントの場合はそうもいきません。
当日接触した学生に選考へと進んでもらうためには、当日の魅力付けに加えて後工程の工夫も必要です。
過去に参加したことがあれば別ですが、イベント参加の効果がどのぐらいになるかをある程度予測ができますが、初めての場合、2~3日間×複数名の工数を投下してどの程度の成果に結びつくかは未知数です。
新卒採用イベントへの参加を成功させる5つのポイント
新卒採用イベントに参加して成果を上げるために重要な5つのポイントを紹介します。
1.イベント参加のゴールを明確にする
当たり前の話ですが、イベントに参加することのゴールを明確にして、そのゴールへの道筋をしっかり考えていきましょう。
例えば、応募する母数を増やすことが目的で当日はその場で会社説明会に予約してもらうことをゴールにする場合もあるでしょうし、その場である程度見極めもして採用したいと思った学生に1対1の面談を設定することがゴールになることもあるでしょう。
具体的なゴールをきちんと設定しておかないと、当日の流れやアフターフォローも曖昧になりがちです。
2.目的にあった新卒採用イベントを選ぶ
前述のように、ひとくちに新卒採用イベントといっても規模や種類、形式は様々です。
自社の採用ターゲットや採用力、予算や時期など様々なことを考慮して適したものを選ぶことが大切です。
総合型or特化型、マッチングイベント、逆求人など、自社の採用ターゲット、また、ブースへの集客力、その場で惹きつける営業力などを踏まえて検討しましょう。
3.イベント当日に向けた事前準備を行う
採用イベントに参加することが決まれば、しっかりと準備することが非常に重要です。
資料を用意するにしても、ブース装飾を検討するにしても、参加メンバーを決めるにしても、前述のイベントゴールから逆算して決めることが大切です。
とくに参加メンバーをどうするか、また、当日のゴールが何で、そこに向けて具体的にどんな流れにするかが非常に大切です。
4.参加者へのフォロー体制を充実させる
イベントに参加して多くの学生と話ができたとしても、それだけでは必ずしも応募にはつながりません。イベント後のフォローが非常に重要です。
合同企業説明会タイプの新卒採用イベントであれば、参加学生は数社から10社ぐらいの企業をまわることになります。
つまり、数社から10社ぐらいの企業から一気に連絡が入るわけです。
その中で、選ばれるためには連絡のスピード、またきめ細かさなどが大切です。
イベントの現場でどんな終わり方をするか、イベントが終わったらすぐに、何ならイベント中にでも次ステップに誘導する連絡を入れていくことが大切です。
5.トップ営業を参加させる
新卒採用イベントは、学生に直接アピールできることが大きなメリットです。
そのチャンスを活かすためにも、自社の魅力をしっかり伝えられる現場社員に参加してもらうことが有効です。
ターゲット層の学生に合わせて、営業、技術、企画などの現場で活躍して、強いアピール力、営業力を持った社員に参加してもらうことがベストです。
新卒採用イベントの失敗ケース
「せっかく費用や手間をかけて新卒採用イベントに参加したのに思うような成果を得られなかった…」ことがないようにしたいものです。
ここでは失敗ケースをみることで、どんな理由で失敗するかを改めて確認しておきます。
準備不足で失敗
イベント参加企業は、イベント当日までに多くの準備事項があります。
特にオフラインのイベントはやることも多岐に渡りますし、複数の人が関わるので念入りな準備が必要です。
採用担当のAさんは、準備が遅れてしまい、参加メンバーのスケジュールを押さえられませんでした。
何とか数名のスケジュールを押さえましたが、積極性が高いメンバー、営業力があるメンバーを確保できませんでした。
当日、ブースの前を通る学生に積極的に声がけすることができず、興味を持ってくれた学生を誘導する程度になってしまい、接触人数も伸ばしきることができませんでした。
また、Aさんが会社説明をするだけで終わってしまい、せっかくイベント接触した学生の説明会参加率もかなり低い数字となってしまいました…。
オフライン型のイベントは、とくに参加メンバーの選定、また、当日の流れが大切です。そのあたりに重点をおいて、しっかりと準備しましょう。
自社に合わないイベントに参加
繰り返しになりますが、新卒採用イベントは、様々な業種が集まる大規模な総合型から、職種や学部で絞った規模の小さな特化型、マッチングイベントまで様々な形式で開催されています。
企業側は自社の状況に合わせて参加イベントを決定することが大切です。
B社では、マッチングイベント形式の新卒採用イベントに参加していましたが、採用人数が拡大することも踏まえて、予算を増額して、3月4月の大規模な総合型イベントに出店することにしました。
しかし、総合型イベントになると、予算的にブースの場所も一番小さなもの、また申込時期も遅くなったため、ブースの場所も人の流れから少し外れたところになってしまいました。
イベント自体の来場学生は多いものの、知名度がないB社の話を聞きに来る人は予想以上に少なく、せっかく用意したパンフレットも多く残ってしまいました。
求人サイトで応募が集まりづらい企業は、総合型の大規模イベントに参加しても興味を持ってブースに来てくれる学生は少なくなります。
自社の集客力を踏まえたイベントを選択する、また、イベントの会場内で集客するための策を考えて参加することが大切です。
フォローできず他社に流れる
採用担当のCさんは、初めて参加した大型イベントで予想以上の数の学生と接触できて、「大きな成果を得られた!」と手ごたえを感じていました。
3日間頑張って、接触した学生は100名をはるかに超えました。
当日は会社説明会の案内をしたので、説明会に予約してくれる学生も伸びるだろうと期待していましたが、後から確認してみたところ、イベント当日に接触した学生の説明会予約数は思ったよりも少ないものでした。
初めてイベントに参加したCさんは、当日の学生対応で疲れてしまった、また、接触した学生数が多かったことに満足してしまい、イベント後のフォローを十分に行っていなかったのです。
イベントで接触した学生は、情報収集が目的という人も多く、自社への興味度もまちまちです。
イベント当日に、会社説明会の参加日程を決めてもらう、また、当日の接触人数で満足せずにしっかりと次のステップに進んでもらうためのフォローをすぐ実施することが大切です。
まとめ
新卒採用イベントは、求人媒体などと違って、学生に直接接して、自社をアピールできることが大きな魅力です。
求人サイト等では魅力が伝わりづらい企業、経営されがちな業界の企業なども、イベントの場でしっかりと魅力を伝えることで志望度を向上、母集団を形成できるでしょう。
ひとくちに新卒採用イベントといっても、総合型、特化型、マッチングイベント、大学が主催する合同企業説明会、逆求人など様々な種類があります。
自社のニーズや採用力に合ったものを選んで参加することが重要です。
参加する場合は、事前に十分な準備をし、イベント後のフォロー体制までしっかり考えておかなければ、思うような成果は得られないでしょう。
2020年からの数年でコロナ禍の影響により、新卒採用イベントも一気にオンライン化が進みました。オンラインイベントとオフライン(対面)イベントにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
イベント参加後の効果検証などもしっかり実施しながら、自社に適したイベント種類や形式を見出していきましょう。