リーマンショック後から2020年まで売り手市場が加速してきた新卒採用は、コロナ禍の影響で求人倍率が一時的に下がることになりました。しかし、22年卒からいよいよ大卒新卒の少子化 が始まります。中長期的に見ると、新卒採用の売り手市場は加速して難易度は上がっていく状況になると考えられます。
こうした時代に新卒採用について考えた場合、以下の迷いが生じることもあるでしょう。
「そもそも、なぜ新卒採用をする必要性があるのだろうか?」
「中途採用に切り替えたほうが良いのではないか?」
経営陣や採用担当者のこうした疑問を解消するために、新卒採用の定義や特徴、中途採用との違い、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
<目次>
新卒採用とは?
「新卒採用」という言葉にはいくつかの解釈がありますが、最も一般的なのは大学を卒業したばかりの人材を一定人数採用していく形式です。俗に「新卒一括採用」と呼ばれる採用スタイルです。新卒一括採用は、終身雇用や年功序列と併せて高度経済成長期に普及、定着した日本的雇用慣行の一つです。
企業によっては、高卒や専門学校卒を対象として新卒一括採用することもあります。また、近年では、政府の働きかけなどによって、卒業3年以内の既卒者を新卒採用の対象に入れている企業も増えるようになりました。
ただし、基本は変わりませんので、記事内では「新卒採用」=「大学生を中心に就労経験がない在学中の学生を定期かつ一括で採用する仕組み」として、新卒採用の説明を行ないます。
新卒採用と中途採用の違い
まず新卒採用と中途採用には、以下の違いがあります。
新卒採用は原則として、在学中の学生が採用対象になります。一方で中途採用は、既卒~社会人経験者までが対象となります。社会人経験が浅い既卒者から第二新卒、即戦力者といった幅広い人材が中途採用のターゲットになります。
新卒採用は、中長期的な成長戦略や事業計画に基づいて将来の幹部候補を採用します。中途採用の場合は、どちらかというともう少し短期的な事業計画に基づく要員拡大、自社に不足する専門職や管理職の採用、欠員補充などが目的となります。
新卒の場合はポテンシャル、中途はスキルや即戦力性を重視する傾向があります。ただし、既卒者や第二新卒の場合、新卒と同様にポテンシャルに重きを置くこともあります。
新卒の場合、卒業年の4月に入社することが基本です。決まった時期に一斉に入社させるため、「新卒一括採用」と呼ばれます。中途の場合は、特に採用・入社時期は決まっていません。欠員や状況に合わせた個別対応・不定期での入社となります。新卒の場合、採用プロセスも長期化しています。インターンからの早期採用をする場合、接触から内定承諾まで半年~1年、さらに内定承諾から入社まで半年~1年かかるのが一般的です。中途の場合は、数日~1、2週間での選考が中心となり即時入社が可能な場合もあります。内定段階で求職者の離職が済んでいない場合も、内定承諾から1~2ヵ月以内の入社が一般的です。
新卒/中途を1人採用するのにかかる採用単価は、採用ターゲットや使う媒体、企業の採用力によって大きく変わります。ただ、新卒は40~50万円が中心的ですが、採用対象者のレベルや企業の採用力に応じて、20~100万円程度の幅があります。一方で、中途の費用相場は、50~150万円程度です。中途の場合、企業が求める採用レベルに応じて、採用単価や給与の幅が広くなります。既卒や第二新卒なら50~120万円程度ですが、人材紹介などを使ってスペシャリスト層や管理職を獲得する場合、150~200万円程度の費用が必要となることもあります。
以下に、ここまで解説してきた新卒採用と中途採用の違いをまとめました。
新卒採用のメリットとは?意義や目的、必要性
新卒採用のメリットは以下のようなものです。
中長期的な幹部候補の確保
新卒社員は、自社が初めての就業先となります。したがって、自社の文化や価値観を浸透させたり、企業への愛社精神を育てたりしやすい特徴があります。
また、同じ時期に就活生が一斉に動くからこそ母集団形成しやすく、知名度や待遇の不利を工夫でカバーすることで、中小企業やベンチャーでも優秀人材を確保できます。したがって、新卒採用は中長期的な幹部・管理職候補を見込んだ採用がしやすいといえます。
人員構造の最適化
新卒採用は、平均年齢の高い企業や、年齢分布に偏りが見られる企業で人員構造を最適化するうえで効果的です。一定数の新卒を継続的に採用することで、組織の年齢構成は安定します。
組織の活性化、社風形成
新卒社員の受け入れや教育・育成プロセスは、受け入れ部門やOJT担当者などの既存社員にとっても刺激になります。場合によっては、社内の空気や社員の意識が変わるきっかけにもなりえるでしょう。社風や企業文化をつくるうえでも新卒採用は有効です。
まとまった人数の計画的な確保
新卒一括採用は、まとまった人数を一度に採用することにも向いています。したがって、中長期的な事業計画や成長戦略に基づき、必要な人数を確保しやすいといえます。新入社員は同期が存在することで支え合いや切磋琢磨の意識が生まれ、早期離職の防止にも効果があります。
育成コストの低下
新卒採用は入社時期が同じであり、社会人経験がないという意味では同じスタートですので一斉に研修を行なえます。新卒社員の集合研修は、個別に人材育成を実施するよりもコストを抑えられます。また、毎年のPDCAをまわすことで、研修のブラッシュアップや品質安定もさせやすいでしょう。
新卒採用のデメリット(留意点)
新卒採用には、以下のような留意点があります。デメリット部分を把握して、中途採用とうまく組み合わせていきましょう。
選考プロセスが長期化する
一般的な新卒採用の選考スケジュールは、「3月:説明会の実施→翌年4月:入社)」という形になり接触から入社まで1年かかります。また、優秀層の早期採用に取り組んだ場合、「3年生の6月~9月:サマーインターン実施→翌々年:4月入社」という流れになり、トータル2年近くかかります。
したがって、新卒一括採用を成功させるには、短期的な欠員補充・人員増強目的での実施ではなく、中長期的な経営計画と連動して工数や費用を投下する意識や覚悟が必要になります。
即戦力は望めない
新卒採用はポテンシャル採用ですので、即戦力は望めません。ビジネスマナーや業務スキルなどの基本的なことから丁寧に教育する必要があります。育成体制(OJTやOff-JTなど)の整備も必要となります。
採用工数の投下が必要
新卒の就職活動は一斉に行なわれるため、ほぼ必ず採用競合が走ることになります。また、新卒一括採用では、前述のとおり長期にわたる採用プロセスの運用も必要です。優秀層を採用しようと思えば、選考チャネルや採用プロセスの工夫も大切です。つまり、それなりの工数投下が求められます。
これまで「少子化」といわれてきたなかでも、実は、大学進学率の上昇によって大卒新卒の人数は増加してきました。しかし、ついに大学進学率は頭打ちとなり、今後は大卒新卒者数が減少し始めます。新卒の採用難易度は景気に関わらず、中長期的に上昇していくでしょう。
また、大手ナビサイト離れも起こるなかで、中小企業やベンチャー企業が優秀人材を確保するには、ダイレクトリクルーティングなどの採用チャネル選定の工夫なども必要です。
まとめ
新卒採用で最も一般的な形式は、大学を卒業する人材を一定人数採用するものです。「新卒一括採用」と呼ばれます。新卒採用には、以下のメリット・デメリットがあります。
【新卒採用のメリット】
- ・幹部候補の確保
- ・年齢構成の最適化
- ・組織の活性化、社風形成
- ・まとまった人数の計画的な確保
- ・育成コストの低下
【新卒採用のデメリット】
- ・選考プロセスの長期化
- ・育成の必要性
- ・採用工数の投下が必要
新卒採用は、コロナ禍で一度求人倍率が下落しましたが、今後は少子化の影響で厳しい状況になっていきます。効率よく新卒採用を行なうには、自社に合った採用方法やツールを活用することが必要です。
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