離職率の計算式|ケース別の算出方法や離職率の目安を紹介

更新:2023/07/28

作成:2022/08/23

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

離職率の計算式|ケース別の算出方法や離職率の目安を紹介

経営やマネジメントする上で、組織の離職率は重要事項のひとつです。ある程度の新陳代謝はあってしかるべきですが、高すぎる離職率は、採用や教育費用の上昇、生産性やエンゲージメントの低下などにつながります。自社の離職率とその推移を把握して、必要があれば手を打っていくことが必要です。

 

本記事では離職率の計算方法、離職が生じる要因、改善事例を紹介します。

<目次>

離職率の計算式と計算方法

離職率の計算式と計算方法

 

離職率は、一定の期間で組織内のどれくらいのメンバーが退職したのかを示す指標であり、働きやすさの指標といわれることもあります。対象となるメンバーを分母として、期間内に退職した人の割合で計算します。

離職率の計算式

離職率 = 期間内の退職者 ÷ 対象となるメンバー数 × 100

「誰を対象とするか」や対象期間の設定によっても離職率は大きく異なり、分母が少なければさらに激しく変動します。

 

例えば、「新卒の入社3年以内離職率」を考えた場合、新卒入社が3人で、3年以内に1人退職していれば離職率は33%です。しかし、同じ33%でも、新卒入社が100人で、3年以内に33人辞めている場合の離職率33%と一概に比較することは難しいでしょう。このように離職率を見るときは対象や期間、分母の数などを確認することが大切です。

一般的な離職率の計算式

前述の通り、“離職率”と一口にいっても期間や対象をどうするかによって結果は異なってきます。その中でも、“離職率”という場合によくある計算式をいくつか紹介します。

 

全メンバーの離職率

一般的に離職率という場合、正規雇用のメンバーを対象として、1年間の期間で計算されることが多くなります。

離職率 = 年度内の離職人数 ÷ 年度初めの正規雇用メンバー数 × 100

 

新入社員の離職率

新入社員の離職率という場合には、以下のとおりです。但し、期間を明確しないと比較できませんので、新卒の場合には、次に紹介する「3年以内離職率」がよくつかわれます。

離職率 = 対象となる新卒の離職人数 ÷ 新卒の入社人数 × 100

 

新入社員の3年以内離職率

新入社員の3年以内離職率は以下のとおりです。

離職率 = ある年度の新卒入社人数 ÷ その年度の新卒入社で入社3年以内に離職した人数 × 100

新卒社員の3年以内離職率は、最近は新卒メディアや新卒ハローワークなどで募集する際には公表が義務付けられています。従って、新入社員の3年以内離職率は採用活動をする際に、求職者が働きやすさの判断基準として見えてくる数字です。

 

新卒社員の3年以内離職率は、よく言われる通り「3年で3割」が一般的な数字です。従って、3割を超えている企業は求職者から警戒される可能性も高くなりますので、改善が必要といえるかも知れません。

 

なお、実際には、学歴別や規模別、業種等でも3年3割の数字は変わってきます。詳しい情報が知りたい方は、厚生労働省が毎年「新規学卒者の離職状況」を調査・公表していますので調べてみて下さい。

離職率の目安

前章では新卒の入社3年以内離職率の目安となる「3年で3割」という数字も紹介しましたが、それ以外の離職率はどうなっているでしょうか。ここでは、日本企業全体、産業別、性別・雇用形態別のデータを紹介します。離職率を考えるひとつの目安にしてください。

  • 日本企業全体の離職率
  • 産業別の離職率
  • 性別・雇用形態別の離職率

 

日本企業全体の離職率

厚生労働省『入職と離職の推移 』によると、日本企業全体を対象とした離職率の平均値は以下のとおりです。

  • 2018年:14.6%
  • 2019年:15.6%
  • 2020年:14.2%

以上のデータから、1年間に約15%の従業員が何らかの理由で離職しているのがわかります。ただし、本データは、正規雇用と非正規雇用の両方を合算した数値ですので、少し注意が必要です。なお、次節以降で紹介するデータも同様です。

 

※参考:厚生労働省『令和2年雇用動向調査結果の概要』

 

産業別の離職率

業界によっても離職率は大きな開きがあります。離職率が高い業種は以下です。

  • 1位:宿泊業,飲食サービス業:26.9%
  • 2位:サービス業(他に分類されないもの):19.3%
  • 3位:生活関連サービス業,娯楽業:18.4%
  • 4位:教育,学習支援業:15.6%
  • 5位:不動産業,物品賃貸業:14.8%

※参考:厚生労働省『令和2年雇用動向調査結果の概要』

 

性別・雇用形態別の離職率

男女での離職率の違いや正規・非正規雇用での違いも紹介します。

 

<性別による離職率の違い>

  • 男性の離職率:12.8%
  • 女性の離職率:15.9%
  • 一般労働者の離職率 :10.7%
  • パートタイム労働者の離職率:23.3%

女性のほうが出産や育児などで離職するケースが多く、男性よりも数値が高くなっています。また、イメージ通りだと思いますが、正規労働者の方が離職率は低く、アルバイトやパート雇用の方は、正規雇用の2倍以上の離職率となっています。

 

※参考:厚生労働省『令和2年雇用動向調査結果の概要』

離職の要因と離職率が高い企業の特徴

離職の要因と離職率が高い企業の特徴

 

離職率を低下させる上では、離職の要因、離職率が高い企業の特徴を知ることが大切です。大きくは以下3つへの対策が離職率を一般以下の水準まで低下させるポイントになります。

  • 待遇(給与)への不満
  • 人間関係が好ましくない
  • 労働時間、休日等の労働条件が悪い

 

待遇(給与)への不満

厚生労働省『令和3年上半期雇用動向調査結果の概況』 によれば、「その他の個人的理由」を除いた25~29歳の退職理由第1位は「給料等収入が少なかった」です。イメージしやすいと思いますが、給与への不満から退職する人はかなり多いことが分かります。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』 によれば、令和2年版の調査では、平均給与は433万円(正規と非正規両方を含む)となっており、雇用形態別にみると、正規496万円・非正規176万円となっています。

 

性別でみると、男性532万円、女性293万円となっています。なお、先は正規と非正規の双方を含んだデータであり、女性にパートタイム雇用が多くなっていることが、男女格差が大きくなっている理由と考えられます。

 

また、年齢別に見ると以下のとおりです(こちらも、正規と非正規の双方を含んだデータです)。

  • 20〜24歳:260万円(男性:277万円、女性:242万円)
  • 25〜29歳:362万円(男性:393万円、女性:319万円)
  • 30〜34歳:400万円(男性:518万円、女性:311万円)
  • 35〜39歳:437万円(男性:571万円、女性:317万円)

給与は地域や業種・業態などによって大きく異なるため「全国平均に満たないから」といって離職率の悪化と直接的につながるわけではありません。しかし、地域や業種の平均、市場の相場観から著しく給与が低い場合は離職の主たる要因になり得ます。

 

人間関係が好ましくない

20〜24歳、40代で最も多い退職理由は人間関係です。職場の人間関係は、極端にいえば週5日・1日8時間、働いている間はずっと付きまとうためです。従って、人間関係が良好でない状態は、モチベーション低下や結果的に離職につながりやすくなります。

 

特に部下にとっては、上司との人間関係は非常に重要です。上司と部下の人間関係は、上司にだけ責任があるわけではありませんが、職場において優越的な地位、指揮命令権や評価者である上司が良好な人間関係を作れるように気を配ることは大切です。

 

人間関係には、上司の人間性や器量が大切になります。特定の部門だけ離職率が高い等があれば、上司向けの研修を考えることも必要です。

 

労働時間、休日等の労働条件が悪い

30代で多い退職理由が労働条件です。30代になると結婚して家庭を持つ人が増え、体力的に20代のような働き方ができなくなってくることもあり、労働条件が退職につながる可能性も少なくありません。

 

労働条件は給与などと同じく衛生要因です。平均よりも悪いと大きな不満要因につながりやすくなります。当たり前のことですが、きちんと労働基準法を遵守した状態へと組織全体を改善することが重要です。

離職率を改善させた事例

社内組織の見直しを行なうことで離職率の改善に成功した企業は多くあります。実際に離職率が改善した事例を見ていきましょう。

 

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、一時期、離職率が28%と非常に高い水準になった時がありました。そこで人事方針の見直しを行ない「100人いれば、100とおりの人事制度があって良い」という新たな方針を打ち立てました。

 

上記の方針は究極のボトムアップとも呼べる「人事制度をメンバーが考え、構築する」ことができる制度につながっています。“100人100色の人事制度”という方針の下、在宅勤務制度、副業の自由化、育自分休暇制度(自己研鑽等に向けた長期休職制度)などのさまざまな施策が実現した結果、離職率は28%から4%に激減し離職抑止に成功しました。

 

鳥貴族

居酒屋を経営することで知られる鳥貴族では、採用とも連動させて、新入社員の入社後フォローを手厚く行なっています。具体的には、入社してから1ヵ月前後の新入社員を、採用した際の面接官が面談するという取り組みを実施しています。現場で言えていない声、また、採用時の認識とのギャップなどを吸い上げるのが目的です。

 

また、鳥貴族には社長室も役員室もありません。本社にいる社員は全員が一つの大部屋で仕事するというスタイルで、役職や部署を問わないフランクな関係、心理的安全性が生まれやすい環境を構築しています。

 

カネテツデリカフーズ株式会社

カネテツデリカフーズ株式会社で、新卒の入社3年以内離職率が50%という高水準な状態から数%に低下させることに成功した事例です。

 

成功の大きなポイントは企業風土の改革です。それまでは「仕事は見て覚えろ」という風土で、新人に対するコミュニケーション、スキルやノウハウの共有が常に不足していました。この風土がカネテツデリカフーズ株式会社の新卒の3年以内離職率が高い原因となっていました。

 

そこで既存社員が新入社員をマンツーマンで指導するマンツーマン制度を導入し、新入社員への教育を徹底する風土に変えました。結果として組織全体のコミュニケーションが活性化し、劇的な離職率の低下を実現しています。

離職率は施策次第で低下を防げる

離職率は、従業員の働きやすさを示すひとつの指標です。適切な新陳代謝は必要ですが、高すぎる離職率はさまざまな悪影響を発生させます。待遇・人間関係・労働環境といった基本要素の改善、また事例で紹介した通り、人材育成の仕組みや人事制度などの改善を積み重ねていくことで離職率は改善できます。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、上司の人間関係力やリーダーシップ、また、組織風土の改革を実現する研修などを提供していますので、ご興味あれば、ぜひご覧ください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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