少子高齢化のなかで、優秀人材の獲得競争は激しさを増しています。
採用活動のやり方も多様化する中で、確実かつ効率よく人材を獲得していくには、しっかりと採用計画を作成して、活動を進める必要があります。
記事では、まず採用計画の概要と必要性を確認したうえで、採用計画を作成する5ステップと効果的な採用計画を作るためのポイントを解説します。
<目次>
採用計画とは?
採用計画とは、採用活動における以下のゴールや大枠の行動計画を定めたものです。
- どのような人材を、いつまでに、何人採用するかという採用活動のゴール
- どのような方針に沿って、どのような手法を打つかという大枠の行動計画
計画の精度や粒度は、以下のようにどの程度の期間やゴールで作るかによって変わってきます。
- 3ヵ年(中期)
- 1年(年度)
- ○○ポジションの採用 など
採用計画の必要性
自社に合う人材を確実に採用するには、計画的に採用活動を進める必要があります。中長期的な計画や方針を作ることで、時間がかかる施策も少しずつ実施できるようになります。
また、短期における計画をきちんと策定して迷いなく取り組むことで採用活動の効率性も向上します。
実際に活動に入ってしまうと、採用チャネルの選択なども目先の提案に迷わされてしまいがちです。
きちんと計画策定時点で一度立ち止まり、採用ターゲットや自社の採用力を踏まえて、チャネル選択することが大切です。
採用計画を作る5ステップとは?
採用計画を作る場合は、以下の5ステップで作業を進めていくとよいでしょう。
事業計画の確認と経営陣とのすり合わせ
採用は、経営戦略や事業計画に紐づくものです。採用単体で計画を考えることはできません。
そのため、採用計画の作成では、以下のような経営戦略や事業計画と一貫性を持たせることが大切になります。
- 2025年までに業界トップシェアを目指す
- A事業を縮小し、成長性の高いB事業に力を入れる
- 2026年に欧州と東アジアに新しい営業拠点をつくる など
優秀な人材を口説くうえでは、社内を動かす必要があります。したがって、経営陣の協力は不可欠です。
経営陣との間では、事業計画を実現するためにどのような採用が必要かを合意しておく必要があります。
採用ターゲットの設定
採用ターゲットとは、自社が求める人物像です。ここまで洗い出した事業計画や自社の現状などから、どのような人材を採用すれば課題解決や目標達成できるかを考えていきましょう。
以下はかなり短絡的な事例ですが、参考になれば幸いです。
- ・2026年に欧州と東アジアに新しい営業拠点をつくる
- ⇒海外でのチャレンジ志向があり、語学力のある新卒学生を数名
- ・コンスタントに新卒を獲得できているものの、次世代リーダーが育っていない
- ⇒今までの採用基準よりもかなり高いレベルを設定して、幹部候補となる新卒・第二新卒の採用に取り組む必要がある
- ・サポート体制を見直し、2025年までに業界トップシェアを目指す
- ⇒カスタマーサポートやコールセンターのリーダー経験がある中途人材を数名確保する
また、採用ターゲットに関しては、企業内では、経営陣と現場の間で、たとえば、以下のようなギャップが生じたりします。
- 経営陣は「中途で幹部候補になり得る層を入れて刺激を与えたい」と思っている
- 現場では「自分たちにとって“使い勝手”が良い若手を入れたい」と思っている など
こうした認識のズレを抱えたままでは、本当の意味で、自社の課題解決や目標達成につながる採用はできません。
したがって、経営陣や現場ともすり合わせて、採用のレベルなども確認しておくことも大切になります。
なお、採用ターゲットが決まったら、たとえば、中途採用であれば、経歴、転職の理由、性格、仕事観、自社を選ぶ理由などを肉付けしていき、採用ペルソナを作ることがおすすめです。
採用ターゲットはもちろん大切ですが、採用ターゲットの段階では、ある種“面接の合否基準”を箇条書きにしたものになりがちです。
しかし、採用基準の情報では、チャネル選定や採用メッセージの作成には使いづらい状態です
採用基準を満たす人は、どのような経歴や志向性を持っているのか、性格や価値観、仕事観などを含めた、“人物像”を作ることが有効です。
現状の整理と課題の明確化
採用ターゲットが決まって、ゴールが明確になったら、自社の採用現状を整理して、課題を明確化しておくことがおすすめです。
採用ターゲットが決まったら、すぐに採用手法を考えたくなりますが、採用手法の検討はどうしても短期的な取り組みとなります。
しかし、採用活動における以下のような取り組みは、中長期的な取り組みが必要です。
- 採用レベルの向上
- 採用費の削減
- リファラル採用やアルムナイ採用、SNS採用などの立ち上げ
- 受け入れ時の待遇や評価に関連する人事制度 など
いきなり採用手法の検討に入ってしまうと、短期的、場当たり的な採用活動を繰り返してしまうことになる可能性が高いでしょう。
場当たり的な採用活動にならないためには、たとえば、以下のように採用活動や受け入れ後の課題を洗い出す必要があります。
- 求人広告を出しても、応募がなかなか集まらない
- 紹介会社への依存度が高く、採用単価が落とせていない
- 新卒メンバーの2割が、入社1年以内に辞めてしまっている
- 営業職の定着率が高い一方で、エンジニアは離職率が高い
- エンジニア層に関しては待遇面で他社に負けるケースが多い
- “内定基準をクリアするぐらいの良い人”は採れているが、“幹部候補だ!”という層に接触して内定は出せていない
- 繁忙期は残業時間がパンクしてしまう など
採用手法の設計
採用ターゲットが決まって、採用関連の課題も整理できたら、具体的な採用手法を検討します。
採用手法の選定では、採用ターゲットへのアプローチと自社の採用力(母集団形成に関する採用広報力、魅力付けに関する採用営業力)という2つを掛け合わせて考えることが大切です。
同時に、社内の工数や課題との照らし合わせも必要です。
- 求人媒体
- ダイレクトリクルーティング
- 人材紹介/新卒紹介
- 就職/転職フェア、合同企業説明会
- マッチングイベント
- リファラル採用
- ソーシャルリクルーティング(SNS採用)
- オウンドメディアリクルーティング など
たとえば、ダイレクトリクルーティングの場合、ある程度の運用工数を確保できなければ、成果は上がりづらいです。
また、リファラル採用やソーシャルリクルーティング、オウンドメディアリクルーティングなどは低単価で優秀層にリーチできる一方、確実性が低かったり、効果が出るまでに時間がかかったりする特徴があります。
ただし、前述のとおり、短期的な採用手法ばかりに取り組んでいると、中長期的な採用力は向上しません。
状況にはよりますが、中長期的な採用力の向上も視野に入れて採用手法を考えることが大切です。
また、採用手法に応じて、カジュアル面談の実施や母集団形成後の書類選考・筆記試験・適性検査・面接で使う採用基準や進め方なども考える必要があります。
採用活動にあまり多くの工数を割けない場合は、人材紹介/新卒紹介や代行がついているサービスを選択することも一つの方法です。
スケジュールへの落とし込み
採用手法が決まったら、todoに落とし込んでスケジュールを決めていきます。
新卒採用の場合、この数年で改めて早期化がかなり進んでいますので、採用ターゲットに応じていつから動き始めるかを決めることも大切です。
中途採用の場合、賞与前後、また、年度末の数ヵ月前といった時期に、転職者の動きが活性化しやすい傾向はありますが、新卒ほど大きなシーズン変動はありません。
したがって、中途採用の場合は、“いつまでに入社してもらいたいか”から逆算して、余裕を持って活動をスタートすることが大切です。
効果的な採用計画を作るためのポイント3つ
採用計画の効果性を高めるには、以下3つのポイントを大切にする必要があります。少し繰り返しになる点もありますが、改めて確認していただければ幸いです。
経営・事業戦略と採用計画をリンクさせる
先述のとおり、採用計画は自社の経営戦略・事業計画に紐づくものです。
まず採用人数や職種が事業計画や予算計画に紐づくことは言うまでもありません。
同時に、中長期の採用計画を作るに際しては、採用ターゲットやレベルに関して自社の事業特性や経営戦略とのマッチングが必要になります。
採用ターゲットと自社の採用力を考慮する
自社に適した採用手法は、採用ターゲットと自社の採用力のかけ合わせで変わってきます。
採用力とは、自社の企業属性×採用スキルとのかけ合わせであり、採用広報力(母集団形成力)と採用営業力(内定承諾の獲得力)に分類できます。
企業属性と採用スキルは、以下のようなものです。
- 企業属性:所属業界の人気度、企業規模、一般への認知度、上場有無など……
- 採用スキル:求人広告の作成力、人事や面接官の魅力付けのうまさなど……
たとえば、企業の採用広報力が高い場合には、求人媒体を使うことによって、比較的低単価で母集団形成を行なえるでしょう。
一方で、採用広報力が高くない場合には、接近戦であり1対1で口説けるマッチングイベントやダイレクトリクルーティング、また人材紹介/新卒紹介が向いているかもしれません。
また、採用営業力が高くない場合には、サポートをもらえる人材紹介/新卒紹介が向いているかもしれません。
さらに、採用広報力・採用営業力がともに高くない場合には、そもそも競合が少ないマーケットやタイミング、たとえば、以下のような方法を選択肢にすることもおすすめとなります。
- 大手企業のほうが有利になりがちな新卒ではなく既卒者をターゲットにする
- 大手中堅と競合しない秋採用を実施する など
中長期的な目線を持つ
採用の成果を振り返る際には、採用人数だけでなく、離職率や定着率、入社数年後の活躍度合いなども見て、採用計画に反映していくことが大切です。
また、前述のとおり、低単価で優秀層にリーチできるリファラル採用やソーシャルリクルーティング、オウンドメディアリクルーティングなどは、確実性が低かったり、効果が出るまでに時間がかかったりします。ただ、着手しなければ、いつまでも状況は変わりません。
同様に、採用ターゲットを変えていくうえでは、人事評価制度や報酬制度の検討が必要な場合もありますし、そもそも企業自体を“より魅力的な職場”にする取り組みも大切です。
人事がこうした目線を持たない限り、中長期的な採用力の向上は望めません。
まとめ
近年では、優秀人材の獲得競争が激しくなり、また、採用手法も多様化しています。
こうしたなかで、確実かつ効率よく人材を獲得するには、しっかりと採用計画を作成したうえで、採用活動を進める必要があります。
採用計画は、中長期的な採用力の強化を考えるうえでも非常に大切です。
採用計画の作成は、以下の5ステップで進めていきましょう。
- ステップ1:事業計画の確認と経営陣とのすり合わせ
- ステップ2:採用ターゲットの設定
- ステップ3:現状の整理と課題の明確化
- ステップ4:採用手法の設計
- ステップ5:スケジュールへの落とし込み
採用計画の効果性を高めるには、中長期的な目線を持ち、経営・事業戦略と採用計画をリンクさせたうえで、自社の採用力や市場動向を考慮して媒体選択などをすることが大切になります。
また、評価や報酬制度などの改定も考える必要があるかもしれません。本記事が採用力の向上に取り組む参考になれば幸いです。