最近では、採用活動の生産性を高めたり、自社社員の工数をコア業務に投入したりするために採用代行サービス(RPO)を利用する企業も増えるようになりました。
一方で、Web上の記事コンテンツのなかには、「採用代行は違法である」といった記載をしているものがあります。
記事では、まず委託募集という観点から、採用代行サービスに違法性があるのかどうかを確認します。
そのうえで、効果性の高い採用代行サービスの選び方と、採用代行サービスの効果を引き出す活用方法を解説しますので、参考になれば幸いです。
<目次>
採用代行は「委託募集」には該当せず、許可も不要
まず、Web上には、「採用代行は委託募集に該当するため、許可が必要になる」と記載された記事があります。
たしかに委託募集には、職業安定法第36条に記載のあるとおり、委託元・委託先での届け出と許可が必要です。
参考:委託募集許可等申請書 委託募集届出書
参考:委託募集許可等申請書 委託募集届出書の記載例
参考:委託募集許可等申請書 委託募集届出書の記載要項
しかし、委託募集は、たとえば、以下の事例のように「求職者の募集のみを委託する」といった少し特殊な形態であり、一般的に実施されることは殆どありません。
新聞業界でよく実施されていた委託募集のやり方
- 新聞社が、知名度と自社の紙面を使って傘下販売店の配達員募集をまとめて実施する
- 新聞社は、エリア毎による応募者の振り分けだけを行い、選考にはタッチしない
- 各販売店が、選考以降の採用・雇用プロセスはすべて実施する
一般的な採用代行における採用計画の立案、採用チャネルの調査、応募者への対応代行、面接の日程調整などは、すべて事務代行であり、委託募集には該当しません。
したがって、採用代行を利用するうえで、委託募集の届け出は不要です。
なお、採用代行を依頼する際には、委託募集ではない側面で、もうひとつ注意すべきポイントがあります。
その注意点とは、書類選考や面接などに関して、委託先に抽象度が高いレベル、主体的な「選考」行為を依頼する場合、事務代行ではなく、選考行為であると考えられ、委託先が職業紹介免許を有している必要があるということです。
ただし、「適性検査でB以上の人のみ合格として次の選考を案内する」「一次面接はこの10個の質問を順番にしていき、この基準で回答を判断して合否を定める」といった場合は、主体的に選考行為を実施しているとは考えられず、職業紹介には該当しません。
採用代行サービスの選び方
採用代行を活用して自社の採用活動の効果性を高めるには、以下のポイントを確認して選定するとよいでしょう。
得意分野と依頼したい業務が一致するか?
採用代行サービスは、提供企業によって得意分野や対応範囲が異なるものです。
そのため、まずは、以下のような実績・事例チェックを行ない、どういう分野が得意な企業かを確認する必要があります。
- ITエンジニア採用が得意
- 大量採用の実績が豊富
- 中途よりも新卒での実績が多い など
自社のターゲットユーザーや採用目的に合う提供企業が見つかったら、次は、以下のような実際に依頼したい業務の対応が可能かどうかを確認していきましょう。
- 求人媒体の運用
- エージェント対応
- 説明会代行
- 合否連絡
- 採用管理ツールの入力 など
情報管理体制がしっかりしているかどうか?
依頼範囲によっても変わってきますが、採用代行サービスを依頼するとなれば、社外の企業に求職者の個人情報や面接における評価、合否判定などの情報を共有することになります。
こうした情報に漏洩や不正な持ち出しがあれば、自社の信用を大きく落とすことになります。
したがって、採用代行サービス企業を選ぶときには、情報セキュリティマネジメントシステム基準であるISMS認証やプライバシーマーク取得などに基づく情報管理体制があるかどうかは確認しておく必要があるでしょう。
参考:ISMS適合性評価制度
参考:プライバシーマーク制度
求職者対応の品質に問題がないかどうか?
近年では、新卒・中途の両方が売り手市場になっています。
景況感の変動もありますが、少子化状況を考えれば、中長期的には優秀人材の売り手状況は継続、さらに強まるものと考えられます。
その中で、採用難に陥りやすい中堅・中小企業が優秀な人材を獲得するには、求職者対応を丁寧かつ迅速に行なうことが欠かせません。
最近では、SNSの普及によって、求職者が採用企業への不安・不満などをネット上に投稿することも珍しくありません。
求職者対応の品質は、自社の評判を落とさないためにも大切なことです。
費用対効果が見込めるか?
採用代行サービスを利用すると、「自社で専任担当を用意する際の人件費+諸経費」よりもコストを抑えられるでしょう。
採用代行サービスの費用対効果は依頼前に見極めにくいポイントですが、しばらく運用してみた段階で以下のようなポイントをチェックし、費用対効果が低い場合は、他サービスへの変更、利用中止をきちんと検討しましょう。
- 当初の目標は達成されたか?
- 浮いた工数で社員が何を実施できているか?
- 実際に支払っている額はパフォーマンスに見合うと考えられるか? など
採用代行サービスの効果を引き出す活用方法
採用代行の利用効果を高めるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
工数を圧迫する単純業務を委託する
採用代行サービスの利用を検討する際は、まず、自社の工数を圧迫する単純業務の洗い出しから始めてみましょう。
採用したい求職者への対応、特に採用の後半工程での対応は非常にデリケートなものであるため、なるべく自社で行なったほうが良いと考えられます。
一方で、以下のような単純業務は、採用代行サービスに切り出しやすいでしょう。
- 求職者への一次対応
- 面接の日程調整や前日確認
- 適性検査の不合格通知
業務プロセスを整理する
サービス提供企業の担当者に“自社の人事部”と同じ対応をしてもらうには、仕事に必要な情報をすべて提供する必要があります。
これまで人事部のメンバー同士が阿吽の呼吸で仕事を進めてきた場合、採用代行サービスの利用を機に、新人でもわかる業務マニュアルの整備をしても良いかもしれません。
担当者と連携を密にする
採用活動を進めるなかで生じた新しい情報や気付きなどは、可能な限り迅速に提供企業の担当者と共有し合う必要があります。
無機質な事務連絡だけでなく、ポジティブなフィードバックや感謝の気持ちを伝えることで、採用代行企業の担当者との関係も良くなっていくでしょう。
まとめ
利用企業が増えている採用代行サービスですが、職業安定法の「委託募集」には該当しないため、厚生労働大臣の許可などは不要です。
したがって、許可がなくても違法にはなりません。
採用代行サービスを選ぶときには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- 得意分野と依頼したい業務が一致するか?
- 情報管理体制がしっかりしているかどうか?
- 求職者対応の品質に問題がないかどうか?
- 費用対効果が見込めるか?
採用代行サービスについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。