
最近、悪質なクレームのなかには、威力業務妨害や偽計業務妨害に該当するケースも増えています。犯罪の構成要件を満たすような場合は、警察と連携してきちんと対処することが大切です。
この章では、クレーマーがどのような言動をした場合に各罪状に当たるのかを、詳しく解説します。
脅迫罪に当たるケース
脅迫罪とは、以下のように生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える意図を告知して人を脅迫することです。
- 「俺はお客だぞ?お前はナメてんのか?殺すぞ!」
- 「お前の名前は覚えたぞ!Twitterで晒してやるからな!」 など
脅迫罪の対象は、店舗や事業所などの法人ではなく、「人」もしくは「人の親族」です。脅迫罪に該当した場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金になります。
強要罪に当たるケース
強要罪は、以下のように、生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知することによる脅迫や暴行を用いて、人に義務のないことを行なわせたり、権利の行使を妨害したりする場合に成立するものです。
- 「(社員に暴力を振るったうえで)早く土下座しろ!」
- 「ほかの客にも聞こえるように、俺への謝罪文を読め!」
- 「早く店長を辞めないと、お前をボコボコにぶん殴るぞ!」 など
強要罪も、脅迫罪と同様に、法人ではなく「人」もしくは「人の親族」が対象です。強要罪に該当した場合、3年以下の懲役になります。
恐喝罪に当たるケース
恐喝罪とは、以下のような脅しによって恐怖を感じた相手に、財物を交付させたときに成立する行為です。脅しだけでは脅迫罪になる一方で、恐喝罪は、金銭その他の財物が加害者もしくは第三者に渡ったときに成立します。
- 「お前の謝罪なんて求めてないんだよ、早く100万円もってこい!」
- 「本部に報告されたくなかったら、お前のポケットマネーで10万円払えよ!」
- 「この問題を公にされたくなかったら、“誠意”を見せるべきだよね?」 など
恐喝罪が成立した場合、10年以下の懲役になります。
威力業務妨害罪に当たるケース
威力業務妨害罪とは、以下のような威力を用いて、他人の業務を妨害するなどの行為に対して成立するものです。
- 「(机を蹴りながら)お前、俺の話を聞いてんのかよ?」
- 「(店内で大声を出しながら)皆さーん、こんな店で食事をしちゃダメですよ!」
- 「(客席でゲホゲホと咳をしながら)俺はこの店でコロナ感染したんだけど?」 など
なお、威力業務妨害は、SNSやインターネット上における以下のような行為も対象になります。
- 「会場に突撃する!」とTwitter投稿し、イベントを中止させる
- クレームの電話をかけ続けるなど、正常な店舗運営を妨害する
- 社員の名前や自宅の住所などを、インターネット上で晒す など
威力業務妨害罪が成立した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
偽計業務妨害罪に当たるケース
偽計業務妨害罪とは、虚偽の風説の流布や偽計を用いて人の信用を毀損したり、相手の業務を妨害したりするときに成立するものです。虚偽の風説の流布とは、真実ではないことを世間に広めることを意味します。偽計とは、人を騙す、他人の不知や錯誤を利用する、誘惑するなどのことです。
具体的には、以下の言動が偽計業務妨害罪に当たります。
- 店内でほかの顧客に「皆さんが食べてる肉は、中国産なんですよ!」と叫ぶ
- SNSで「あの店のスープには毒が入っている」と嘘を流す
- 他人を装い、大量の宿泊予約を入れて、ほかの顧客が施設利用できなくする など
なお、偽計業務妨害罪と混同されやすいものに、威力業務妨害があります。両者の違いは、情報が正しいかどうかです。正しい情報を流した場合、基本的には、偽計業務妨害にあたりません。ただし、両者には似た側面もあるため、実際は、事案によって個別に判断されています。
偽計業務妨害罪が成立した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
不退去罪に当たるケース
不退去罪とは、要求を受けたにも関わらず特定の場所から退去しなかった場合に成立するものです。不退去罪が成立するには、以下の3要件が必要となります。
- 1.退去要求を受けたこと
- 2.滞留に正当な理由がないこと
- 3.退去しない場所や建造物が、人によって住居・看守されていること
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 退店のお願いを無視して、客席に何時間も居座っている
- 「ホテルの設備サービスが悪いから宿泊費を支払わない!」と言い、チェックアウト時間を過ぎても客室にこもり続けている など
なお、クレーマーの要求内容や店側の損害によって、威力業務妨害や脅迫罪、恐喝罪などもセットになることがあります。不退去罪が成立した場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。