企業におけるハラスメント防止が義務化されるようになった背景も含めて、日本におけるハラスメントの現状を確認しましょう。
ハラスメントによる損失
まずはハラスメントが、企業にどのような損失を及ぼすのかを見ていきましょう。以下は平成26年版厚生労働白書における「パワハラが企業にもたらす損失」の調査結果です。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/backdata/1-2-3-15.html
具体的な項目を見ていくと、「職場の雰囲気が悪くなる(97.1%)」、「従業員の心の健康を害する(95.5%)」が圧倒的に多数を占めており、メンタルヘルスの上で大きな問題があることが分かります。
また「従業員が十分に能力が発揮できなくなる(85.3%)」、「職場の生産性が低下する(74.0%)」と心理的安全性が低下することで組織の生産性も落ちてしまうことが読み取れます。
現在、長時間労働の是正や人手不足へ対応にするため、生産性向上の必要性が叫ばれています。そのような状況の中で、生産性を落としてしまうハラスメントの防止を徹底することは非常に重要です。
他にも回答割合が過半数のものとして、「人材が流出してしまう(69.3%)」「企業イメージが悪化する(56.0%)」という回答もあります。少子化に伴って優秀人材、また若手人材の取り合いが激化する中で人材の流出、また企業イメージの悪化は組織を維持・成長させるうえでかなりの痛手となるでしょう。
ハラスメントに対する意識の高まり
この数十年でハラスメントに対する社会的な意識も大きく変化しました。人権意識の高まりを背景に、ハラスメントに対する世間の捉え方は非常に厳しいものとなっています。
たとえるなら、喫煙への捉え方にも似たものがあるでしょう。
数十年前は、職場内で喫煙できる環境は当たり前でしたが、受動喫煙による健康への悪影響がよく知られるようになった中で、喫煙スペースのみで吸える、応接室などから灰皿が無くなる、全面禁煙の飲食店が増える、路上や建物内の喫煙スペースがどんどん撤廃されると、喫煙者にとって肩身が狭い環境になっています。
語弊はあるかもしれませんが、同じように個人の権利や人権意識が高まるなかで、数十年前にはハラスメントとしては捉えられなかったもの、個人の我慢の範疇だと思われていたものがハラスメントとして捉えられる、また、発覚した場合にはマスコミやSNSで糾弾されるようになりました。
とくにSNSが圧倒的な拡散力を持った中で、組織的にハラスメントが習慣化していた、また、ハラスメントをもみ消そうとしたといったことが明るみに出れば、大きなトラブルにもなりかねません。企業イメージの悪化にもつながり、事業活動や採用にも支障をきたす恐れが出てきます。
次々と登場する「〇〇ハラ」
ハラスメントの代表的なものと言えば「パワハラ」と「セクハラ」ですが、近年では時代の変化や価値観の多様化により、さまざまな「〇〇ハラ」も登場してきています。
職場のコミュニケーションにおいて問題になるようなったのが、お酒が飲めない人に対して飲酒を強要する「アルハラ」です。
また、仕事の進め方についても、PCやスマホなどのデジタル機器にうまく対応できない人への嫌がらせである「テクハラ」や、働き方改革を背景として残業削減の具体的な方策を示さないまま定時退社を強要する「ジタハラ(時間短縮ハラスメント)」があります。
さらに、自分が他者からの注意や指導に対して「嫌だ、不快だ」と感じた際に「ハラスメントをされた!」と過剰に主張するという「ハラハラ(ハラスメント・ハラスメント)」と呼ばれるものも出てきました。
時代や価値観が変化する中で、それに合わせて「〇〇ハラ」の数も増えていきます。その多くは、従来のパワハラやセクハラに見られるような悪意を持った暴力や暴言といったものではなく、無意識的な思い込みや一方的な価値観の押しつけによるものがほとんどです。
こうした数多くの「〇〇ハラ」に対応するためにも、ハラスメント研修を通じて時代の変化や価値観の多様性を認識してもらうことが大切です。