生産性向上を実現するには、さまざまな施策から自社に合うものを選び、しっかりと取り組む必要があります。本章では生産性向上の主な施策を紹介します。
設備投資
設備投資は、製造業や物流業などの生産性向上でとくに大切になるポイントです。設備投資には、工場や物流倉庫の新設といった大規模なものから、機械や設備の導入など部分的なものまでさまざまなものがあります。
要件に該当すれば、業務改善助成金などが使える場合もありますので、参考にしてください。
参考:生産性向上のヒント集(厚生労働省)
参考:ESG投資(経済産業省)
IT活用
IT活用は以下のようなIT技術を使って生産性を向上させる方法です。
- パソコン・タブレット端末の導入
- 業務システムの導入
- 自社のオンラインストア開設
- さまざまなクラウドサービスの活用
- ITによる自動化 など
近年では、IT技術の導入を単なる業務改善や生産性向上だけでなく、顧客への提供価値の拡大、事業内容の変更までつなげるDX(デジタル・トランスフォーメーション)も注目されています。
IT活用やDXは、物理的な設備投資と同様に、要件に合った場合は、業務改善助成金などが使える可能性もありますので調べてみるとよいでしょう。
参考:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
参考:生産性向上のヒント集(厚生労働省)
業務プロセスの見直し
業務プロセスの改善を通して生産性を向上させる場合、業務効率化とBPRという2つの考え方があります。
業務効率化は、既存の業務プロセスや業務フローから無理・無駄などを省き、限られた資源をより効率よく有効活用する考え方です。業務効率化をする場合は、ECRSの原則に当てはめて考えることがお勧めです。
- E(Eliminate、削除)⇒そもそも工程や作業をなくしてしまえないか?
- C(Combine、結合)⇒別の作業をまとめてしまうことで効率化できないか?
- R(Rearrange、交換)⇒順番を入れ替えたりすることで効率化できないか?
- S(Simplify、単純化)⇒作業をもっと単純にできないか?
また、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、業務プロセスや業務フローを根本から見直して再設計することです。
業務効率化は、今ある業務プロセスや業務フローを改善していくイメージですが、BPRの場合は、プロセスの目的や位置づけを踏まえてゼロベースで再設計するような考え方です。優劣があるわけではないので、うまく使い分けが考えられるとよいでしょう。
人材育成
既存の人材を育てたり成長を促したりすることでも、個人や組織の生産性を向上させることができます。人材育成による生産性向上も2つの視点で考えるとよいでしょう。
・能力開発
能力開発とは、各人材が本来持っている能力や資質を高めて、また生かしていくアプローチです。研修などを通じて能力開発、また、場合によっては強みを生かせるように適材適所に役割付与することなども含まれます。
・ワークエンゲージメント向上
ワークエンゲージメントとは、メンバーがポジティブな状態で仕事に没頭できている度合いを示すものです。メンバーがポジティブな気持ちで仕事ができれば、集中力やパフォーマンスがアップすることで、生産性も向上します。
「能力開発」が発揮できる能力そのものを高めるアプローチだとすると、「ワークエンゲージメント向上」は能力を発揮する人のやる気を高めるアプローチです。
ワークエンゲージメントを向上させるためのアプローチは大きく分けると、仕事資源へのアプローチと個人資源へのアプローチという2つの方法があります。
仕事資源のアプローチの基本は、各メンバーが抱える仕事の負荷、また能力を発揮するための環境などを以下のように整備していくやり方です。
- 上司による適切なスケジュールと仕事量の調整
- 集中力アップにつながるハードとソフトの整備
- 心理的安全性の高いチームの構築 など
また、個人資源へのアプローチとは、以下のように各メンバーの内面の要素を向上させることで、ワークエンゲージメントを高める施策です。
- 仕事の意味づけ
- 成功体験や成長実感が得られる目標設定
- リフレクションの習慣化 など
能力開発とワークエンゲージメント向上をうまく組み合わせて、人材育成を実施していきましょう。
組織力の向上
人材育成は“個人”に対するアプローチでの生産性向上ですが、個人が集まった“組織”に対してアプローチすることで生産性向上を図るアプローチもあります。個人が単に集まった状態から以下のようなチームワークや知の共有を行うことで、生産性を向上させることができます。
・ナレッジマネジメント
組織内で働く各メンバーの頭のなかには、言語化されていない以下のような「暗黙知」があります。
- 早く作業するコツ
- 経験から身につけた顧客対応の工夫
- ベテランだから知る独自のノウハウ など
ナレッジマネジメントは、「暗黙知」を、組織内で共有・アクセスできる「形式知」にすることで、組織・個人の生産性を向上させる方法です。個人の視点で見ると一種の能力開発でもありますが、多くの人が集まった組織だからこそできる、生産性向上の方法です。
・相互理解
相互理解とは、各メンバーの異なる価値観や資質、考え方などを互いに理解し合うことで、信頼関係を高め、協働や共創につなげることです。
人間関係におけるさまざまなコミュニケーションの問題などは、「人間関係」という言葉のとおり、個人と個人の「間」に発生します。また、組織における仕事の連携などの問題も部門と部門の「間」、職種と職種の「間」に発生しがちです。
相互理解が深まり、信頼関係がつくられることで、こうした「間」の問題が解決され、組織全体の生産性が向上するようになります。
ビジネスモデルの見直し
ビジネスモデルとは、どのように価値を生み出し、どんな顧客に届けるかということです。マクロな視点でみると、ビジネスモデルによって生産性の高低が左右される側面があります。従って、生産性向上を考える上で、ビジネスモデル自体の見直しも大切です。
一般的な生産性向上は、設備投資や人材開発といった部分的な施策や改善活動に目が行きがちです。改善の積み重ねももちろん素晴らしいものですが、同時に、ゼロベースで見直しをかけることで飛躍的な生産性向上が実現する場合もあります。
ビジネスモデルの見直しは、業務プロセスの見直しにおける業務改善とBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)のような関係です。
たとえば、
- 商社や問屋経由で流通させていたものを、中間マージンなどをすべて省いたオンラインでの直販にする
- 高付加な商品サービスを開発して、高価格帯で販売していく
- 売り切り型だった商品を、クラウドサービスとしてサブスクリプションモデルで提供する
といったものがビジネスモデルの見直しです。
当然、リスクもあり、上手くいかない可能性も大いにありますが、成功した場合には飛躍的な生産性の向上や成長が見込めるかもしれません。