自社の人的資本をモニタリングする【人を残すvol.153】

経営者向けメールマガジン「人を残す」fromJAIC

自社の人的資本をモニタリングする

ジェイックの知見寺(ちけんじ)でございます。

 

先日、スマートウォッチの「Fitbit Charge 5」を購入しました。
目的は、Suicaを利用することです。
腕にSuicaがついていればわざわざカードを出す必要がありません。
カードを落としたり、紛失したりするリスクもなくなります。

 

また、ジョギングをするときに、Fitbitさえしていれば、
お金やカードなどを持ち歩く必要がなくなります。
途中で飲み物を買いたくなったとしても、コンビニや自動販売機でも
使えるものが増えているので、困りません。

 

更に、睡眠時間や睡眠の質、心拍数、運動強度、歩数などのデータをつけているだけ取得して、
それをアプリ上で時系列に確認することができます。
なかなか面白いので、お風呂に入るとき以外、寝るときもつけたままにしています。

 

そこで気づいたことがあります。
在宅勤務で、1日一歩も家から出なかったときでも、だいたい6,000歩くらい歩いています。
えー、こんなに歩いているのか!と驚きました。

 

それまでは、500歩も歩いていないと思っていましたので。

 

やはり、先入観にとらわれず、モニタリングすることの大切さを実感しました。
また、手間がかからず、簡単にモニタリングする仕組みも重要だと感じた次第です。

 

今回は、このところ頻繁に目にする「人的資本経営」について情報をご提供させていただきます。

 

3月6日の日本経済新聞でも2分の1くらいのスペースで記事が掲載されていました。

 

冒頭の書き出しは、

「働く人をコストではなく、価値を生み出す源泉ととらえる『人的資本』の開示が、
2023年3月期の有価証券報告書から上場企業に義務化される。手慣れた財務情報の開示とは勝手が違い、
何をどう社会に伝えるべきか、戸惑う企業も多いだろう。」

 

この記事で紹介されている開示情報は
・職場の推奨率(自分の働く職場を親しい友人や知人にどの程度薦めるのか)
・世代別エンゲージメント
・出生率
・新卒離職率

 

そして、まとめは
「人的資本の開示の本質は規定演技ではなく自由演技だ。どんなデータを公表すれば
労働市場や資本市場で評価されるか、経営者はとことん本気で考え抜く必要がある。」

 

財務情報と異なり、各社ごとに判断して、公表する情報を決めることになります。
よって、どんな情報を公表するのかについて、迷う企業も多いだろうと推測します。

 

私もどうしたものかと思い、東京駅八重洲口にある八重洲ブックセンターに行くと
「人的資本」のキーワードが入った本が山のようにあります。

 

そこで、とりあえず「人的資本」に関する書籍を5冊買って、読んでみました。

 

その中で、網羅的に書かれていて、事例も豊富で、実際の経営に繋がる記述が多く
大変参考になった書籍をご紹介します。

 

吉田 寿・岩本 隆『企業価値を実現する人的資本経営』、日本経済新聞出版、2022年
https://www.amazon.co.jp/dp/4296115162/

 

私にとって最も参考になったのは、
株式会社リンクアンドモチベーションの人的資本報告書の項目一覧です。
同社は、ISO30414を取得しているので、開示情報は網羅的に多数の指標に渡っています。
(ISO30414とは、企業や団体の人事および組織に関する情報開示の国際規格のことです。)

 

その項目は以下の通りです。

 

1. 倫理とコンプライアンス
1-1 提起された苦情の種類と件数
1-2 懲戒処分の種類と件数
1-3 倫理とコンプラ研修を受けた従業員割合
1-4 第三者に解決を委ねられた係争
1-5 外部監査で指摘された事項の数と種類

 

2. コスト
2-1 総労働力コスト
2-2 外部労働力コスト
2-3 総給与に対する特定職の報酬割合
2-4 総雇用コスト
2-5 一人当たり採用コスト
2-6 採用コスト
2-7 離職に伴うコスト

 

3. ダイバーシティ
3-1 労働力のダイバーシティ(年齢)
3-2 労働力のダイバーシティ(性別)
3-3 労働力のダイバーシティ(障がい者)
3-4 労働力のダイバーシティ(その他)
3-5 労働力のダイバーシティ(経営陣)

 

4. リーダーシップ
4-1 リーダーシップに対する信頼
4-2 管理職一人当たりの部下数
4-3 リーダーシップ開発

 

5. 組織風土
5-1 エンゲージメント/満足度/コミットメント
5-2 従業員の定着率

 

6. 健康・安全・幸福
6-1 労災により失われた時間
6-2 労災の件数
6-3 労災による死亡者数
6-4 健康・安全研修の受講割合

 

7. 生産性
7-1 従業員一人当たりの業績
7-2 人的資本ROI

 

8. 採用・異動・退職
8-1 募集ポスト当たりの書類選考通過者
8-2 採用社員の質
8-3 採用にかかる平均日数
8-4 重要ポストが埋まるまでの日数
8-5 将来必要となる人材の能力
8-6 内部登用率
8-7 重要ポストの内部登用率
8-8 重要ポストの割合
8-9 全空席中の重要ポストの空席率
8-10 内部異動数
8-11 幹部候補の準備度
8-12 離職率
8-13 自発的離職率
8-14 痛手となる自発的離職率
8-15 離職の理由

 

9. スキルと能力
9-1 人材開発・研修の総費用
9-2 研修への参加率
9-3 従業員当りの研修受講時間
9-4 カテゴリー別の研修受講率
9-5 従業員のコンピテンシーレート

 

10. 後継者計画
10-1 内部承継率
10-2 後継者候補準備率
10-3 後継者の承継準備度(即座)
10-4 後継者の承継準備度(1~3/4~5年)

 

11. 労働力
11-1 総従業員数
11-2 総従業員数(フル/パートタイム)
11-3 フルタイム当量(FTE)
11-4 臨時の労働力(独立事業主)
11-5 臨時の労働力(派遣労働者)
11-6 欠勤

 

具体的な内容は、以下のURLから全47Pの資料をみることができます。
https://www.lmi.ne.jp/ir/library/h_c_report/pdf/h_c_report_2021.pdf
(株式会社リンクアンドモチベーション Human Capital Report 2021)

 

弊社が、ここまでの情報を集め開示することは、とてもできないですし、適切とも思いません。
しかし、どんな指標を開示していくのか思考する際には、網羅的なので非常に参考になります。

 

また、書籍の中では、以下の通り10社の事例が紹介されています。

 

第5章 先進企業にみる人的資本経営の現在
1 従業員の「自分ごと化」をASVの中核に――味の素グループ
2 「従業員インパクト会計」のインパクト――エーザイ
3 「人的創造性」の向上に取り組む――オムロン
4 豊かな共生社会を実現する――花王
5 10年改革の視座――カゴメ
6 人的資本は「将来の財務情報」――双日
7 多様な個の成長の総和がグループ全体の成長をもたらす――ソニーグループ
8 パーパス浸透と連動した人材戦略――SOMPOホールティングス
9 10年ビジョンの人財マネジメント改革――日立製作所
10 変革に向けた人材戦略――三菱ケミカル

 

ここまでお読みになられて、うちは、上場企業ではないから人的資本経営は関係ないと思われる
経営者や人事の方もいらっしゃると思います。

 

しかし、ドラッカーは、著書の中で、次のように言っています。

 

「企業にも企業以外の組織にも、本当の資源は一つしかない。人である。」
「人は唯一、成長する資源である。」

 

これから、人的資本に関して多くの情報・データにアクセスできるようになります。
自社の人的資本について、何をモニタリング指標にするのか決めて、データを集めれば
他社と比較ができるようになります。

 

冒頭の話に戻りますが、実態を把握して、改革・改善するのであれば
スタートはモニタリングになるだろうと思います。

 

御社は、自社の人的資本の状況を、何をもって評価・判断されますか?

 

今回の執筆者:「知見寺直樹」
(株式会社ジェイック 取締役)

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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